38 / 117
第一章
32話
「フィリア嬢が挨拶に、ですか」
「ええ。と言ってもただ立っているだけで何かするわけでもないのですけれど」
「それでも大勢の前に立つんですから大変でしょう。応援しています」
「僕たちも絶対見に行きますから頑張ってくださいね!」
カイ様とレオン様にも挨拶のことを伝えると笑顔でそう言ってくださった。自分が多くの人の前に出ると言うことが少しずつ現実味を帯びてきて緊張が増していく日々の中でも、こうしてお友達に応援してもらえたらやはり勇気がもらえる。ただ……ジェイくんが無言でレオン様に腕をがっしり掴まれているのは少し気になるけれど。
「あれは平民でも見に行けるから俺も見る。頑張れよ」
そんなジェイくんも帰り際にこそっとそう言ってくれた。私は本当にいいお友達を持ったものだ。そう思って心が温かくなっていくのを感じた。
******************
それから少しして建国記念日前日になると私は王宮に向かうことになった。当日の準備が大変なので前日から王宮に泊まらなければならないのだ。ラナとリサにはついてきてもらうことにして、他の屋敷の者たちとはそこでほんの少しだけお別れだ。もちろんお父様やお兄様とも。
「君は私の自慢の娘だ。胸を張って行ってきなさい」
「私の天使ならきっと大丈夫だ。何も恐れることはないからね」
優しい笑顔でそう言ってくださったお父様とお兄様に続き使用人たちもたくさん応援の言葉をかけてくれて、中には泣いている人もいた。離れるのはたった一晩だし私はただ突っ立っておくだけだから少し大袈裟な気はするけれどそれだけ思ってくれているのだと思うとやはり嬉しい。みんなに感謝の言葉を言って私は出発した。
そして王宮に到着。私はまず国王陛下に挨拶をしに行った。
「よく来てくれた、フィリア嬢。まだ幼い君に大変な仕事をさせてしまって申し訳ない。君のことはルークベルトが責任をもってエスコートするだろう。明日はよろしく頼む」
よく響く低音の声。ちゃんとお話をするのは初めてなので聞き慣れないそれに少し体を震わせながらも返事をしようと口を開く。
「こちらこそまだまだ未熟な身でございますが誠心誠意努めさせていただきますのでよろしくお願い致します、陛下」
「……なるほど、随分としっかりとしたご令嬢のようだ。これなら心配することはなさそうだな」
頭を上げて見ると陛下はとても優しく慈愛に満ちた微笑みをしていらっしゃった。この方の顔に泥を塗るわけにはいかない。私はそう思ってその微笑みを目に焼き付けた。
それから案内されたお部屋に到着し、疲れ切っていた私はすぐに眠りについた。
そんなこんなで今現在、私は大人数の侍女たちによって磨かれている。今回は先日のお茶会よりも複雑な髪型にもなるし準備も念入りになる。確かにこれは前日から泊まっていないとしんどいだろう。自分の身なりだけではなく今日の動きやマナーの最終チェックもあるのだからだいぶ時間を取られる。
慌ただしい空気の中ノック音が聞こえてきた。人に見られても大丈夫な姿ではあったので入ってもらうように言うと勢いよく扉が開いた。
「フィリア様!ついに渾身の作品が出来上がりました!貴女様の魅力を最大限に引き出すための貴女様のためだけに捧げるドレスが!」
そう大きな声で言いながらやってきたのはやつれてボロボロの格好をしたルミアーノさんだった。その姿もそうだし、まず着替えの段階に入っていなかった私は今の今まで自分の着るドレスがなかったことを知らなかったのでそのことにも驚いた。けれど王宮の侍女たちが全く驚いた反応を見せないのでもしかしたらこれはよくあることなのかもしれない。もちろん、ラナやリサは私と同じく口をあんぐりと開けて驚いているけれど。
ただルミアーノさんが両手で持つそのドレスは今まで見たことがないほど美しく自分が着るのが申し訳なくなるくらいだった。やつれてボロボロになるまで一生懸命考えてくださったルミアーノさんにお礼を言って、彼が退室したあとそのドレスに袖を通す。準備はできた。もう後戻りはできない。この日が誰にとっても素敵な思い出になるよう願いを込めて私は足を一歩前へと踏み出した。
○○○○○○○○○○○○○○○○○○
いつまで建国記念日引っ張るんだよっていうくらいですが次回には確実に建国記念日を迎えます。幼少期が長くなってしまっている中根気強く読んでくださっている皆様に本当に感謝です。幼少期編はもうそんなに長引かせたくないとは思っていますがもし予定が狂ったときはごめんなさい……。
「ええ。と言ってもただ立っているだけで何かするわけでもないのですけれど」
「それでも大勢の前に立つんですから大変でしょう。応援しています」
「僕たちも絶対見に行きますから頑張ってくださいね!」
カイ様とレオン様にも挨拶のことを伝えると笑顔でそう言ってくださった。自分が多くの人の前に出ると言うことが少しずつ現実味を帯びてきて緊張が増していく日々の中でも、こうしてお友達に応援してもらえたらやはり勇気がもらえる。ただ……ジェイくんが無言でレオン様に腕をがっしり掴まれているのは少し気になるけれど。
「あれは平民でも見に行けるから俺も見る。頑張れよ」
そんなジェイくんも帰り際にこそっとそう言ってくれた。私は本当にいいお友達を持ったものだ。そう思って心が温かくなっていくのを感じた。
******************
それから少しして建国記念日前日になると私は王宮に向かうことになった。当日の準備が大変なので前日から王宮に泊まらなければならないのだ。ラナとリサにはついてきてもらうことにして、他の屋敷の者たちとはそこでほんの少しだけお別れだ。もちろんお父様やお兄様とも。
「君は私の自慢の娘だ。胸を張って行ってきなさい」
「私の天使ならきっと大丈夫だ。何も恐れることはないからね」
優しい笑顔でそう言ってくださったお父様とお兄様に続き使用人たちもたくさん応援の言葉をかけてくれて、中には泣いている人もいた。離れるのはたった一晩だし私はただ突っ立っておくだけだから少し大袈裟な気はするけれどそれだけ思ってくれているのだと思うとやはり嬉しい。みんなに感謝の言葉を言って私は出発した。
そして王宮に到着。私はまず国王陛下に挨拶をしに行った。
「よく来てくれた、フィリア嬢。まだ幼い君に大変な仕事をさせてしまって申し訳ない。君のことはルークベルトが責任をもってエスコートするだろう。明日はよろしく頼む」
よく響く低音の声。ちゃんとお話をするのは初めてなので聞き慣れないそれに少し体を震わせながらも返事をしようと口を開く。
「こちらこそまだまだ未熟な身でございますが誠心誠意努めさせていただきますのでよろしくお願い致します、陛下」
「……なるほど、随分としっかりとしたご令嬢のようだ。これなら心配することはなさそうだな」
頭を上げて見ると陛下はとても優しく慈愛に満ちた微笑みをしていらっしゃった。この方の顔に泥を塗るわけにはいかない。私はそう思ってその微笑みを目に焼き付けた。
それから案内されたお部屋に到着し、疲れ切っていた私はすぐに眠りについた。
そんなこんなで今現在、私は大人数の侍女たちによって磨かれている。今回は先日のお茶会よりも複雑な髪型にもなるし準備も念入りになる。確かにこれは前日から泊まっていないとしんどいだろう。自分の身なりだけではなく今日の動きやマナーの最終チェックもあるのだからだいぶ時間を取られる。
慌ただしい空気の中ノック音が聞こえてきた。人に見られても大丈夫な姿ではあったので入ってもらうように言うと勢いよく扉が開いた。
「フィリア様!ついに渾身の作品が出来上がりました!貴女様の魅力を最大限に引き出すための貴女様のためだけに捧げるドレスが!」
そう大きな声で言いながらやってきたのはやつれてボロボロの格好をしたルミアーノさんだった。その姿もそうだし、まず着替えの段階に入っていなかった私は今の今まで自分の着るドレスがなかったことを知らなかったのでそのことにも驚いた。けれど王宮の侍女たちが全く驚いた反応を見せないのでもしかしたらこれはよくあることなのかもしれない。もちろん、ラナやリサは私と同じく口をあんぐりと開けて驚いているけれど。
ただルミアーノさんが両手で持つそのドレスは今まで見たことがないほど美しく自分が着るのが申し訳なくなるくらいだった。やつれてボロボロになるまで一生懸命考えてくださったルミアーノさんにお礼を言って、彼が退室したあとそのドレスに袖を通す。準備はできた。もう後戻りはできない。この日が誰にとっても素敵な思い出になるよう願いを込めて私は足を一歩前へと踏み出した。
○○○○○○○○○○○○○○○○○○
いつまで建国記念日引っ張るんだよっていうくらいですが次回には確実に建国記念日を迎えます。幼少期が長くなってしまっている中根気強く読んでくださっている皆様に本当に感謝です。幼少期編はもうそんなに長引かせたくないとは思っていますがもし予定が狂ったときはごめんなさい……。
あなたにおすすめの小説
噂の悪女が妻になりました
はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。
国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。
その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。
ヒロインに躱されて落ちていく途中で悪役令嬢に転生したのを思い出しました。時遅く断罪・追放されて、冒険者になろうとしたら護衛騎士に馬鹿にされ
古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
第二回ドリコムメディア大賞一次選考通過作品。
ドジな公爵令嬢キャサリンは憎き聖女を王宮の大階段から突き落とそうとして、躱されて、死のダイブをしてしまった。そして、その瞬間、前世の記憶を取り戻したのだ。
そして、黒服の神様にこの異世界小説の世界の中に悪役令嬢として転移させられたことを思い出したのだ。でも、こんな時に思いしてもどうするのよ! しかし、キャサリンは何とか、チートスキルを見つけ出して命だけはなんとか助かるのだ。しかし、それから断罪が始まってはかない抵抗をするも隣国に追放させられてしまう。
「でも、良いわ。私はこのチートスキルで隣国で冒険者として生きて行くのよ」そのキャサリンを白い目で見る護衛騎士との冒険者生活が今始まる。
冒険者がどんなものか全く知らない公爵令嬢とそれに仕方なしに付き合わされる最強騎士の恋愛物語になるはずです。でも、その騎士も訳アリで…。ハッピーエンドはお約束。毎日更新目指して頑張ります。
皆様のお陰でHOTランキング第4位になりました。有難うございます。
小説家になろう、カクヨムでも連載中です。
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
プロローグでケリをつけた乙女ゲームに、悪役令嬢は必要ない(と思いたい)
犬野きらり
恋愛
私、ミルフィーナ・ダルンは侯爵令嬢で二年前にこの世界が乙女ゲームと気づき本当にヒロインがいるか確認して、私は覚悟を決めた。
『ヒロインをゲーム本編に出さない。プロローグでケリをつける』
ヒロインは、お父様の再婚相手の連れ子な義妹、特に何もされていないが、今後が大変そうだからひとまず、ごめんなさい。プロローグは肩慣らし程度の攻略対象者の義兄。わかっていれば対応はできます。
まず乙女ゲームって一人の女の子が何人も男性を攻略出来ること自体、あり得ないのよ。ヒロインは天然だから気づかない、嘘、嘘。わかってて敢えてやってるからね、男落とし、それで成り上がってますから。
みんなに現実見せて、納得してもらう。揚げ足、ご都合に変換発言なんて上等!ヒロインと一緒の生活は、少しの発言でも悪役令嬢発言多々ありらしく、私も危ない。ごめんね、ヒロインさん、そんな理由で強制退去です。
でもこのゲーム退屈で途中でやめたから、その続き知りません。
【完結】私のことを愛さないと仰ったはずなのに 〜家族に虐げれ、妹のワガママで婚約破棄をされた令嬢は、新しい婚約者に溺愛される〜
ゆうき
恋愛
とある子爵家の長女であるエルミーユは、家長の父と使用人の母から生まれたことと、常人離れした記憶力を持っているせいで、幼い頃から家族に嫌われ、酷い暴言を言われたり、酷い扱いをされる生活を送っていた。
エルミーユには、十歳の時に決められた婚約者がおり、十八歳になったら家を出て嫁ぐことが決められていた。
地獄のような家を出るために、なにをされても気丈に振舞う生活を送り続け、無事に十八歳を迎える。
しかし、まだ婚約者がおらず、エルミーユだけ結婚するのが面白くないと思った、ワガママな異母妹の策略で騙されてしまった婚約者に、婚約破棄を突き付けられてしまう。
突然結婚の話が無くなり、落胆するエルミーユは、とあるパーティーで伯爵家の若き家長、ブラハルトと出会う。
社交界では彼の恐ろしい噂が流れており、彼は孤立してしまっていたが、少し話をしたエルミーユは、彼が噂のような恐ろしい人ではないと気づき、一緒にいてとても居心地が良いと感じる。
そんなブラハルトと、互いの結婚事情について話した後、互いに利益があるから、婚約しようと持ち出される。
喜んで婚約を受けるエルミーユに、ブラハルトは思わぬことを口にした。それは、エルミーユのことは愛さないというものだった。
それでも全然構わないと思い、ブラハルトとの生活が始まったが、愛さないという話だったのに、なぜか溺愛されてしまい……?
⭐︎全56話、最終話まで予約投稿済みです。小説家になろう様にも投稿しております。2/16女性HOTランキング1位ありがとうございます!⭐︎
水魔法しか使えない私と婚約破棄するのなら、貴方が隠すよう命じていた前世の知識をこれから使います
黒木 楓
恋愛
伯爵令嬢のリリカは、婚約者である侯爵令息ラルフに「水魔法しか使えないお前との婚約を破棄する」と言われてしまう。
異世界に転生したリリカは前世の知識があり、それにより普通とは違う水魔法が使える。
そのことは婚約前に話していたけど、ラルフは隠すよう命令していた。
「立場が下のお前が、俺よりも優秀であるわけがない。普通の水魔法だけ使っていろ」
そう言われ続けてきたけど、これから命令を聞く必要もない。
「婚約破棄するのなら、貴方が隠すよう命じていた力をこれから使います」
飲んだ人を強くしたり回復する聖水を作ることができるけど、命令により家族以外は誰も知らない。
これは前世の知識がある私だけが出せる特殊な水で、婚約破棄された後は何も気にせず使えそうだ。
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
人見知りと悪役令嬢がフェードアウトしたら
渡里あずま
恋愛
転生先は、乙女ゲーの「悪役」ポジション!?
このまま、謀殺とか絶対に嫌なので、絶望中のルームメイト(魂)連れて、修道院へ遁走!!
前世(現代)の智慧で、快適生活目指します♡
「この娘は、私が幸せにしなくちゃ!!」
※※※
現代の知識を持つ主人公と、異世界の幼女がルームシェア状態で生きていく話です。ざまぁなし。
今年、ダウンロード販売を考えているのでタイトル変更しました!(旧題:人見知りな私が、悪役令嬢? しかも気づかずフェードアウトしたら、今度は聖女と呼ばれています!)そして、第三章開始しました!
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。