57 / 117
第二章
3話
私たちが今いるのは食堂近くの廊下。そしてそのすれ違い様に彼女が見えた。もう声をかけても気づかれないくらいの距離に行ってしまったけれど。
「どうかしたの?フィリア嬢」
私が一人の少女に視線を奪われているとルカルド様が不思議そうにこちらを覗き込んできた。
「あ、いいえ、なんでも」
そう答えながらも私の視線は彼女から動かなかった。それを不思議に思ったようで他のみんなも全員リリーちゃんの方に視線を向けた。
「私たちと同じ、新入生の方ですね」
メルルは私の背後からピョコッと顔を出してそう言った。
「あぁ、オルコック家の令嬢だね。確か入学試験は次席だったと記憶しているけど」
「次席……賢い方なんですね」
ルカルド様の説明にレオン様が相槌を打つ。私はその中でもただ彼女の背中を見つめ続けた。なるほど、リリーちゃんは次席だったのね。ということはリリーちゃんが賢いことには変わりないし、今回ズレが生じていたのはルカルド様の方かもしれない。とりあえず、リリーちゃんはゲーム通りに進んでいるような気がする。
「フィリア様、そろそろ次に行きましょう?」
「あ、えぇ、そうね」
メルルがなかなか動かない私を連れて行こうと私の腕に彼女のそれを絡めた。いや、可愛すぎるでしょ。
話を戻そう。今物語にズレを生じさせているのはルカルド様。なら、本人に聞いてみるのが一番早そうだ。校庭の温室に行くとレオン様がメルルを連れて先に行ってしまったので早速聞いてみることにした。
「ルカルド様、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「?……何でもどうぞ」
「あの、珍しいな、と思いまして……」
「あぁ、僕が試験に本気を出したこと?」
「っ!……はい」
何がというまでもなく核心をつかれた。エスパーか何かなのかしら。
でも実際、ゲームの世界だけでなくルカルド様はこれまで全力でやればもう少し上までいくだろうことに手を抜いていた。それはもちろん本人にも自覚があるだろう。
「まぁ、手を抜く理由がなくなったからね。それに、兄上を支えられるようになりたいし」
ルカルド様は憑物が落ちたようなすっきりとした顔でそう言った。ルカルド様が手を抜く理由、それは私が考える限り第二王子派以外にはあり得ない。私が誘拐されてから第一王子派が本格的に第二王子派を潰しにかかったというのは聞いている。それでもこの5年間ルカルド様はあまり本気を出していなかった。おそらく様子見だろう。そしてやっと手を抜かなくて良くなったと判断できた、ということ……ずいぶんと慎重な性格なのね。
「もう!レオン様、いい加減になさってください!」
ふとメルルの声が聞こえてきた。あぁ、レオン様がまた揶揄いすぎたのね。レオン様のおかげなのかせいなのか分からないけれど、メルルは本当にしっかり者になった。特にレオン様に関しては。
「怒らないでくださいよ、メルルさん。でも、怒っていても可愛らしいですね」
「お世辞は結構です。そろそろ行きますよ?」
もう可愛いと言われたくらいでは恥ずかしがらなくなった。たぶんレオン様が言いすぎて本気にしなくなったのだと思う。まぁ、私がたまに言うと真っ赤になってくれるのでレオン様に対してだけだけれどね。
それから校内も大体回り終わったので寮に帰った。明日からは授業も始まる。リリーちゃんとも仲良くなりたいけれど私があまり関わらない方が良いような気もするし、遠くから見守りつつ手助けができたらそれが理想だ。勉強も頑張るけれど、何よりみんなの幸せのためにも上手く立ち回れるように頑張ろう!
「どうかしたの?フィリア嬢」
私が一人の少女に視線を奪われているとルカルド様が不思議そうにこちらを覗き込んできた。
「あ、いいえ、なんでも」
そう答えながらも私の視線は彼女から動かなかった。それを不思議に思ったようで他のみんなも全員リリーちゃんの方に視線を向けた。
「私たちと同じ、新入生の方ですね」
メルルは私の背後からピョコッと顔を出してそう言った。
「あぁ、オルコック家の令嬢だね。確か入学試験は次席だったと記憶しているけど」
「次席……賢い方なんですね」
ルカルド様の説明にレオン様が相槌を打つ。私はその中でもただ彼女の背中を見つめ続けた。なるほど、リリーちゃんは次席だったのね。ということはリリーちゃんが賢いことには変わりないし、今回ズレが生じていたのはルカルド様の方かもしれない。とりあえず、リリーちゃんはゲーム通りに進んでいるような気がする。
「フィリア様、そろそろ次に行きましょう?」
「あ、えぇ、そうね」
メルルがなかなか動かない私を連れて行こうと私の腕に彼女のそれを絡めた。いや、可愛すぎるでしょ。
話を戻そう。今物語にズレを生じさせているのはルカルド様。なら、本人に聞いてみるのが一番早そうだ。校庭の温室に行くとレオン様がメルルを連れて先に行ってしまったので早速聞いてみることにした。
「ルカルド様、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「?……何でもどうぞ」
「あの、珍しいな、と思いまして……」
「あぁ、僕が試験に本気を出したこと?」
「っ!……はい」
何がというまでもなく核心をつかれた。エスパーか何かなのかしら。
でも実際、ゲームの世界だけでなくルカルド様はこれまで全力でやればもう少し上までいくだろうことに手を抜いていた。それはもちろん本人にも自覚があるだろう。
「まぁ、手を抜く理由がなくなったからね。それに、兄上を支えられるようになりたいし」
ルカルド様は憑物が落ちたようなすっきりとした顔でそう言った。ルカルド様が手を抜く理由、それは私が考える限り第二王子派以外にはあり得ない。私が誘拐されてから第一王子派が本格的に第二王子派を潰しにかかったというのは聞いている。それでもこの5年間ルカルド様はあまり本気を出していなかった。おそらく様子見だろう。そしてやっと手を抜かなくて良くなったと判断できた、ということ……ずいぶんと慎重な性格なのね。
「もう!レオン様、いい加減になさってください!」
ふとメルルの声が聞こえてきた。あぁ、レオン様がまた揶揄いすぎたのね。レオン様のおかげなのかせいなのか分からないけれど、メルルは本当にしっかり者になった。特にレオン様に関しては。
「怒らないでくださいよ、メルルさん。でも、怒っていても可愛らしいですね」
「お世辞は結構です。そろそろ行きますよ?」
もう可愛いと言われたくらいでは恥ずかしがらなくなった。たぶんレオン様が言いすぎて本気にしなくなったのだと思う。まぁ、私がたまに言うと真っ赤になってくれるのでレオン様に対してだけだけれどね。
それから校内も大体回り終わったので寮に帰った。明日からは授業も始まる。リリーちゃんとも仲良くなりたいけれど私があまり関わらない方が良いような気もするし、遠くから見守りつつ手助けができたらそれが理想だ。勉強も頑張るけれど、何よりみんなの幸せのためにも上手く立ち回れるように頑張ろう!
あなたにおすすめの小説
公爵家の養女は静かに爪を研ぐ 〜元々私のものですので、全て返していただきます〜
しましまにゃんこ
恋愛
リヴィエール公爵家に養女として引き取られた少女、アリサ・リヴィエール。
彼女は華やかな公爵家の嫡子マリアとは対照的に、家でも学園でもひっそりと息を潜めて生きていた。
養女とは言っても、成人と同時に修道院へ入ることが決まっており、アリサに残された時間は僅かだった。
アリサはただ静かに耐えていた。
——すべてを取り戻す、その時まで。
実は彼女こそが、前公爵が遺した真の娘であり、水の加護を持つリヴィエール公爵家の正統なる後継者だった。不当に奪い取られた地位と立場。
アリサは静かに時を待つ。
一方、王太子リュシアン・ルミエールは、傲慢な婚約者マリアに違和感を抱きつつ、公爵家に隠された不正の匂いを嗅ぎ取っていく。
やがて二人の思惑は重なり、運命の卒業パーティーが幕を開ける。
奪われた名前も、地位も、誇りも——
元々、私のものなので。まとめて返してもらいます。
静かに爪を研いできた養女の、逆転ざまぁと溺愛ロマンス。
完結保証&毎日2話もしくは3話更新。
最終話まで予約投稿済み。
悪女と呼ばれた死に戻り令嬢、二度目の人生は婚約破棄から始まる
冬野月子
恋愛
「私は確かに19歳で死んだの」
謎の声に導かれ馬車の事故から兄弟を守った10歳のヴェロニカは、その時に負った傷痕を理由に王太子から婚約破棄される。
けれど彼女には嫉妬から破滅し短い生涯を終えた前世の記憶があった。
なぜか死に戻ったヴェロニカは前世での過ちを繰り返さないことを望むが、婚約破棄したはずの王太子が積極的に親しくなろうとしてくる。
そして学校で再会した、馬車の事故で助けた少年は、前世で不幸な死に方をした青年だった。
恋や友情すら知らなかったヴェロニカが、前世では関わることのなかった人々との出会いや関わりの中で新たな道を進んでいく中、前世に嫉妬で殺そうとまでしたアリサが入学してきた。
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ
汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。
※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。
プロローグでケリをつけた乙女ゲームに、悪役令嬢は必要ない(と思いたい)
犬野きらり
恋愛
私、ミルフィーナ・ダルンは侯爵令嬢で二年前にこの世界が乙女ゲームと気づき本当にヒロインがいるか確認して、私は覚悟を決めた。
『ヒロインをゲーム本編に出さない。プロローグでケリをつける』
ヒロインは、お父様の再婚相手の連れ子な義妹、特に何もされていないが、今後が大変そうだからひとまず、ごめんなさい。プロローグは肩慣らし程度の攻略対象者の義兄。わかっていれば対応はできます。
まず乙女ゲームって一人の女の子が何人も男性を攻略出来ること自体、あり得ないのよ。ヒロインは天然だから気づかない、嘘、嘘。わかってて敢えてやってるからね、男落とし、それで成り上がってますから。
みんなに現実見せて、納得してもらう。揚げ足、ご都合に変換発言なんて上等!ヒロインと一緒の生活は、少しの発言でも悪役令嬢発言多々ありらしく、私も危ない。ごめんね、ヒロインさん、そんな理由で強制退去です。
でもこのゲーム退屈で途中でやめたから、その続き知りません。
私が生きていたことは秘密にしてください
月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。
見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。
「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」
噂の悪女が妻になりました
はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。
国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。
その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。
【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!
こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。
そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。
婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。
・・・だったら、婚約解消すれば良くない?
それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。
結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。
「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」
これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。
そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。
※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。
※本編完結しました。
※後日談を更新中です。