死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話

みっしー

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第二章

4話

 今日から事前に配布された時間割通りの授業が始まる。授業は外国語が二カ国分と政治学と地理と国語と数学。それぞれの科目でクラスは3つに分かれていて、入学試験での成績によってレベル別で振り分けられている。さすがに第一王子の婚約者が低い成績を取るわけにもいかないのでこのために私も勉強は頑張った。おかげさまで何とか上位クラスに入ることができた。メルルやレオン様も同じクラスで、主席のルカルド様や次席のリリーちゃんももちろん同じだ。教室の移動も全部一緒だし、これなら観察もしやすい。

 ふぅ、と一限目の自分の席について一息つくと外国語の担当の先生が教室に入ってきた。あ、そうそう、そういえば……

「皆さんこんにちは。外国語1の担当をします。ロナン・ラインホルトです」

 そう、お兄様はゲーム内と同じようにこの学院の教師になっている。専門は外国語で、私やリリーちゃんのホームルームのクラスの担任でもある。お兄様が相変わらずの美しい微笑みを湛えて挨拶をすると女子生徒からの黄色い悲鳴が聞こえてきた。さすがお兄様、おモテになるのね。

「皆さんの入学試験での外国語の問題も私が作りました。決して簡単なものにはしていませんが、皆さんはこうして上位クラスに入れるだけの成績をとることができています。自信を持って、意欲的に学習に取り組んでください」

 お兄様は3年間他国に留学していただけあって語学にとても堪能だ。その才能を認めた国王陛下が期間限定で王立学院の教師になるように依頼したらしい。お兄様の授業を受けると外国語の成績がよく伸びるらしく、評判が良いというのは聞いている。

 授業を聞きながらリリーちゃんの席を盗み見ると真面目に勉強している姿が目に入った。メルルを除く他のご令嬢たちはお兄様に見惚れているように見られるので、こういったところを見るとさすがヒロインかつ次席だと感心した。こういう努力家なところに攻略対象たちは惹かれていくのね。でも、今彼女は誰のルートに進んでいるのかしら……?



「では、これで初回の授業は終わりです。復習は欠かさないようにしてくださいね」

 お兄様の声と同時に鐘がなった。休憩の合図だ。ルカルド様の号令で礼を済ませるとみんな肩の力が抜けたようで所々楽しく会話する声が聞こえてくるようになった。

「ラインホルトさん、少し話があるのでこちらに」

 お兄様にそう声をかけられて一緒に教室を出た。

「あの、どこまで……」

 少し話すだけなら廊下でも良いはずなのにお兄様はなかなか止まらない。そして急にとある教室のドアを開けたと思えばそこは無人だった。

「~~~っ!会いたかったよ!私の天使!」

「っ?!」

 気がつくとものすごい勢いでお兄様に抱き締められていた。

「おにい、……ラインホルト先生、痛いです」

「っあぁ、ごめんよ。しかし、先生と呼ばれるのも悪くないね」

「?……それでお話というのは?」

「あぁ、そうだったね。……私としては賛成しかねるのだけれど、君を生徒会に推薦する声があってね」

「生徒会、ですか?」

「ああ。ちなみに今の会長は君の婚約者だよ。王族は生徒会に入るのが原則だからね」

「はぁ……それで、どうして私が?」

「第一王子の婚約者だというのが大きいかな。それに入学試験での成績も君は上から三番目だった」

 頑張ったつもりではいたけれどまさか三位だとは思っていなかったので驚いた。でも、生徒会は何かと表立って行動することが多いし、本来ここにいないはずの私がそこまで目立つわけにもいかない。下手に動けば物語をさらに歪めてしまうこともあるだろう。

「ありがたいご提案ではありますが、辞退させていただくことは可能でしょうか?」

「何か気になる点でも?」

「いいえ、私には少し荷が重いと感じただけです。生徒会に入って成績を維持できる気もしないので」

「そうかい……ではそう伝えておこう」

「はい、よろしくお願いします。……ところで先生、どうして廊下ではなくわざわざこちらまで?」

 話が落ち着いたところで私がずっと気になっていたことを聞くとお兄様は突然溢れそうなくらいの笑顔になった。

「それはもちろん、こうでもしないと愛する私の天使を抱きしめることができないからね!一応、教師だから」

 お兄様はそう言いながらまた思い切り私を抱きしめた。まぁ、この学院で何が起きるかわからないし油断はできないから、こういうところで家族の温かさを感じるのも悪くはないのかもしれない。それにしても……

「先生、痛いです」

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