続/穂高市役所ストリートビュー年史

十二滝わたる

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小早川との対立

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 「今度の代表は小早川さんだと。大変だぜ。」と隣の部局の同僚が近づいてきた。

 「ああ、少しは知ってるよ、好い人じゃない、面白くって。」と答えると、ニヤリと笑い、「さあ、どうだかな‥‥‥‥」と憐れんような顔をした。

 また、あるやや美人だと思われている女史は、「あんな自己利益優先の人見たことない。辛く、大変だった。私から離れて異動して行ったから助かった。」と言った。

 後に、小早川は、「女史と二人して、色々と施策を練ったんだ。」と女史とは親しい間なんだと語っていたが、まるで嫌われていたことなど感じてもいない。

 またある先輩は、「小早川の周囲では、また誰か、死んだり、辞めたりする人が沢山出てくるんだよな。」と言った。

 その意味が分からず、細菌でも撒くのか、とただすと、「その内、そうなるから、その時に分かるよ。あれは人格全てが神経さ。つまり人格や人徳という徳目は存在しない。およそ理智なるものはないんだ。そういう人間性を喪失した見かけだけの人間がどんなものなのか、深く接すれば馬鹿でもすぐに分かるさ。あいつが示す見たくないおぞましい人間の不気味な深淵をさらけ出す姿を見て人間不審にならないようにしなければいけないよ。人間は理智で時制して抑制している本性はあんなものだよ。理智のない姿をさらけ出す奴は、むしろ人間観察には打って付けだから、醜い人間の深層を学べ機会とすればいいよ。己の嫌悪に耐えて、あいつの復讐に耐えてな。あれはまるで精神病棟から抜け出してきたような、正気なりすまし人間だから気をつけてな。出来るだけ関わりは最小限にしろよ。」と言う。

 僕がその意味が分かるまで、さほど時間を必要とはしなかった。

 それまでは、小早川とは同じ部局になったことはなかったし、広い職場で同じ趣味があるはずでもなかったので、直接の付き合いはなかった。

 何故か話をすることが多かったのは、夜の繁華街でしばしば飲み歩いているところをすれ違うことが多かったからかもしれない。その放蕩無頼のスタイルに親近感があった。 

 普通の近所付き合いをしている上での好い人の関係と、家族や親族の愛憎にまみれた濃い付き合いでの関係とは明らかに違うのだが、仕事を通した関係などは、極端な変人や異常な性格でもない限りはそれなりに互いに尊重しあえていることが多いはずだ。

 ヘッドになるくらいの人物なのだから、それなりの人格であるはずだ。どうしようもない同族会社の跡取りのワンマン社長がいることはよくあることだが、曲がりにりにも市役所の人事だ、そのくらいの最低限度はいくらお手盛りでもあるはずがないと思った。

 最終的にこの男をどう形容すればいいのだろう。

 疫病をばら蒔く細菌保持の邪鬼。自分の縄張りを注意深く監視する猜疑心の塊。

 羊達の沈黙のレクター教授のような狡猾な狂人。自分の言ったことを忘れるアルツハイマー。自分の言ったことと他人の言ったことを取り違える倒錯するパラノイア。

 他人を貶める又は他人が苦しむのを愉快に思いそう仕掛ける精神構造。自己中心だけの自己満足を求める自己愛性人格障害。自分の世界を誇示する社会的欲求。

 とめどなく自分の意見のみを永遠に半日も話を続けるアルコール性障害。自分の縄張りにマーキングする野良犬。

 強い者へは徹底した服従の姿をみせる飼犬。他人の意見を全く聞かないわがままな専制独裁。頭ではない神経だけでものを考える無策の自慢話。

 蟻を怖がる象ような臆病者。オリジナル意見を思い付かずに他人のパクり依存者。

 自分を褒めちぎる低能を重宝し周囲な群が盾にするだけの卑怯者。怒号と粛清による恐怖支配。未発達な人格者。

 つまりは、自己愛性偏愛性解離性固執性強迫観念性アルツハイマーボーダーパーソナルであり、強烈なパラノイアなサイコパスだ。

 最初の頃は、〈また始まったか〉と皆は下を向いた。しかし、時が経つに連れて、それは〈また〉ではなく、毎日であり毎回でりその都度であり必ずであることに気が付いた時、ある者は立ち去り、ある者は愛想を尽かし、ある者は忍従の黙りを決めつけて下を向いた。二百人の職員はさしずめ小早川の世話をし、小早川を介護をし、小早川のカウンセリングをし、小早川の気ままなわがままを充たすために東奔西走使い走りする介護施設の職員だ。小早川は患者でありトップでありヘッドだ。

 キャリアであろうとも通常は定例のお決まりの年数消化により順調に昇任がなされても管理職登用の時期を機会にさすがにこうした人間は淘汰されるものだ。しかし、小早川の場合は、弱小な能力にも関わらず、逸脱した人間性とガン細胞のように増殖した自己中心の精神と知的犯罪者の持つ神経を背景しした狡猾さに優れ、淘汰される普通の組織精錬を潜り抜けてしまったばかりか、似たような上司のガン細胞の懐にマッチしてしまうという奇異な経過を経てしまった。

 歳月の経過とともに、表面の異常とは別に精神内部に巣くった大きな穴は見えない闇の包まれたままに大きく育ちながら薄い影絵であるべき闇はやがてこの男の人格と前頭葉を支配するに至っていた。通常それは狂人と喚ばれる。

 反対の意見と理由を言えば、「歯向かった。」と言い、聞く耳を持たず、良かれと思ってした決してなんの無駄とはならない善意の行為をも「余計なことをした」と気分でけなす小早川。

 自分よりも少しでも前に出る者などは絶対に許さない小早川。

 「いいふりしてして話すな」が口癖だった。小早川自身、いい発想もできなかった。頭いいふりしているのは小早川だった。

 頭の悪いガキ大将が大人になったのだ。使っているのは頭ではなく、無理して反りを合わせるための神経だけだ。それも次第に歪んできたことすら自覚がないままに。

 「お前の代わりなどいくらでもいる。」と誰にでも言う小早川。けれど、その言葉は小早川にこそ似合っていた。誰かがもっと早く、「お前の代わりは、お前以外なら誰でもいい。」と小早川に言わなくてはならなかったのだ。

 小早川は、国の指導か他の市町村がすでにやっているパクリしかできなかった。独自性は皆無だった。すべての施策はどこからか持ってきた。前列のない施策しか評価しない。

 「逆らったら大変なことになる。」
 「怖い人だ。」
 「何も言わない方がいい。」

 そんな考えのイエスマンだけが揃い残った。

 トップダウンの優れた独裁経営ならばそれなりの評価も致し方ないだろう。

 しかし、小早川とはそんなものとは程遠い。
 ぐだぐだな無駄な時間を悪戯に費やすだけの臆病でわがままな坊っちゃんがさらに病的な固執を持った底辺ボーダーな奴なのだ。

 早川を心底から慕い、尊敬している者など皆無だった。あの恐怖支配におののき、早川と同じ考えと言葉を唱えるだけのゾンビとなったような腰巾着どもも、最後の最後では、小早川には信頼など置いてはいなかった。

 腰巾着どもも、本音は反小早川なのだ。どこかの独裁国家の大統領の如くに表には出てこない隠れ反早川勢力だ。

 とある国の大統領の腹心だった某氏は大統領をペテン師、弱い者いじめ、パクリ者、と暴露本に書いたが、目を被いたくなるほどの情けない腰巾着どもも、結局はこの腹心の暴露と同じように感じている。

 もっとも、これら腰巾着らの情けなさは、いかなるときも暴露するような気概を得ることはない。
 せいぜい、裏で陰口を恐る恐る注意深く口説くのが関の山だ。
 
 それにしても、事件となるような犯罪集団のカリスマ教祖にすら、最後の最後となっても、心を寄せるような取り巻きがいたではないか。それは、マインドコントロールが融けても、少しは心に纏いつくような人間味のある恩義や人情を感じたからではないのか。

 小早川にはそれらが微塵もない。それを上回って余りある程の度重なる不義と反感と憎悪とがその理由だ。

 小早川は、歪んだ強迫神経に侵された性格と分裂した未熟な犯罪性の精神とでつくられている。

 人の気持ちが分からないのではない。狡猾に人の心を読み取る。だから、上には受けがいいように振る舞える。そして、読み取った下の者にはわざわざ指導との言い訳を盾に、自己満足の下手な持論を押し付け、あざとく苦痛を与え、しかも、その苦痛で喘いでいる姿を無自分の快感とし、自分の糧としている。

 歪んだ精神がさらに分裂した狂気に対する恐怖がそこら中に劣悪な空気が充満し始める。

 当然、誰からも立派な人間だとは思われていないから、目先の権力を失えば全てを失うのだ。だから、自己保身と収入確保のため、代表というポストを維持することに全力を費やす。

 さらに加えて、この男の価値基準は単純だ。

 自分を戦国武将に例える幼稚な知能は、あたかも路地の成り上がり者と同じだ。要は、戦国武将同様、自分の保身に役に立つ奴か否か、それだけだ。

 一流企業のように部下からの人事考課がなされれば、完璧に更迭となるだろう。しかし、残念ながら宴会、酒飲による昔ながらのロビー活動だけはうまかった。こうした組織の上の者や組織外の押さえ所への饗応により、組織下部の声は完全に無視された格好となった。

 よく、韓流ドラマで取り上げられる設定の、周囲には気付かれることのないボーダー。そのボーダーが見える周囲の線引きもが上下に分離されたと説明するのが正しいのかもしれない。執務事務所が離れた閉鎖組織の閉鎖的な組織環境であることが生息し増殖させた。

 この男のやってることは、1人ひとりの職員への大きな無限の数えきれない言葉と行動による侮辱の累積であり、ライフライン組織とラインラインを利用する市民への大きな冒涜でしかなかった。

 それを任命した者にも大きな責任があるのだが、ごますりの腰巾着のような取り巻きがこぞって押し寄せ、その取り巻きの担ぐ神輿に立派に乗りっぱなしだ。

 これだけ影響を与えるポジションに付いた愚者を、僕は後にも先にも小早川以外に知らない。

 普通は人格者を装おうとしたり、自分は器が大きい寛大な人間とばかりの演技も考えるものだが、そんな人間味のある体裁すら取ることすらもしない。
 
 小早川は絶対服従を当然のこと、自分の考えと行いは正しいことだ、と思っている。

 この男の周囲に事故や事件が絶えないのはこの男の狡猾なボーダー下に対する露骨で極端な抜け目のない徹底した神経の毒害に殺られるからだ。

 大きな自己認識、社会認識の倒錯した勘違いは、まるで、大きな権限を与えられ、利己丸出しを公的利益供与だと勘違いしているどこかの大統領のようであり、小さな組織にとっての小早川は大きな権力であり、それ故にその権力を制限する術がなかった。

 この男のために何人の人間が辞めていき、何人の人間が死んで行ったと言うのだ。その罪を己も感じずにのうのうとし、罪を問われることもなく、むしろ、上げ奉らふんぞり返る。

 専制主義は専制主義を選ぶのは道理だが、民主主義は必ずしも民主主義を選ばない。民主主義の寛容と制度的な不備が、時には巨大な独裁を、そして常に小さな専制独裁をも認めてしまうからだ。

 経済的な自由に民主主義の根幹を持つ限りに於いては、経済的有利が独裁を認めることとなるブチブル的な自由の蔓延が独裁を招く。

 制度と法でがんじがらめにしようとも、古めかしい概念である人の徳については、残念ながらコントロールするのは個人そのものとなる。

 小早川がこのポジションにいた期間は、偏差値どおりの大学出身に相応しくライフライン部局の大いなる失敗を招いた期間であり、大いなる時間の浪費と施策的な過ちによる将来に残した負の遺産は計り知れない。

 取り戻すにための徒労の時間は、着任していた倍の時間を必要とすることとなるはずだ。

 そして、その損失は市役所の損失となり、市民への付けとなる。市役所は痛まない。市民が市民の財政が痛むだけだ。

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