16 / 26
16
しおりを挟む
首を失い、ジークにたどり着く前にふらふらと地に伏していく騎士だった者たち。
水溜まりのように点在する血溜まり。
その中に沈む、惨たらしい亡骸の数々。
まさしく、地獄絵図。
しかしその中でその男だけは無表情でそこに佇んでいた。
眉根ひとつ動かさず、血にその身を染めたジーク。
闇を纏いゆっくりと己の手のひら下ろす存在だけが、そこには立っている。
その、異様な光景。
そのあり得てはならない、現実。
それにレオナの視界がぐらつく。
「ぅぐ……っ」
込み上げる、吐き気。
口元を抑え、懸命に吐瀉を堪えるレオナ。
その目は涙で潤み、その身は小刻みに震えている。
"「レオナ様ッ、我ら騎士団はなにがあっても負けること等ありません!」"
"「この剣は国の為に!! そしてこの命はッ、守るべき大切な者の為に!!」"
"「レオナ様ッ、今日も稽古お願いします!!」"
昨日まで、そんな風に声をあげていた騎士たちの面影。
それを思い出し、ぽたりと。
レオナの頬をつたう、涙。
つい数時間前まで、自分に忠誠を誓い敵倒すと決意していた騎士たちの姿。
それが、それが。
「みんな。死ん、だ」
レオナの口。
そこから漏れる、自身の言葉。
刹那。
レオナの全身。
そこから力が抜け、レオナは糸の切れた人形のように地に両膝をつく。
戦意などもはやない。
あるのは、視界に広がる光景に対する恐れと佇むジークに対する畏れ。
震えが止まらない、レオナ。
「怖い、こわい。こ、こわい。あいつが、怖い。化け物、化け物。こわい、こ、こわい。わたしは、守れなかった。大切な。部下を、誰、ひとり」
譫言のように響く、レオナの震え声。
呼応し、涙が滴り落ち続ける。
まるで壊れた蛇口のように。止まることなく。
そのレオナを見据え、ジークは歩を進める。
一歩、一歩。
闇で地を濡らしながら。
そしてレオナの眼前に辿り着き、呟いた。
「収納する。お前の正義。そして忠誠。そして、心を」
刹那。
レオナの両目。
そこから光が消え、闇に染まる。
同時に、ジークは行使する。
後ろを仰ぎ見、首無き死体に向け、己の力を。
「収納する、お前たちの死を」
ジークの言葉。
それに呼応し、首無き騎士たちはその身を起こす。
ぽたぽたと血を滴らせ、その身をふらつかせながら。
その騎士たちに、壊れたレオナは歓喜した。
「みんな、生きていた。貴方がみんなを、生き返らせてくれた。嬉しいな。嬉しいナ。うれしいな」
立ち上がり、狂気に満ちた笑いを響かせるレオナ。
その笑いを聞き、ジークはレオナに告げた。
「命をくだせ、騎士たちに」
「皆殺しの命を」
そのジークの言葉。
それにレオナは、応える。
騎士たちの前に立ちーー
「これよりッ、各地に向け進軍する!! 目的は皆殺しッ、一人の残らず、殺すこと!!」
そう声を紡ぎ、壊れた笑いを響かせたのであった。
水溜まりのように点在する血溜まり。
その中に沈む、惨たらしい亡骸の数々。
まさしく、地獄絵図。
しかしその中でその男だけは無表情でそこに佇んでいた。
眉根ひとつ動かさず、血にその身を染めたジーク。
闇を纏いゆっくりと己の手のひら下ろす存在だけが、そこには立っている。
その、異様な光景。
そのあり得てはならない、現実。
それにレオナの視界がぐらつく。
「ぅぐ……っ」
込み上げる、吐き気。
口元を抑え、懸命に吐瀉を堪えるレオナ。
その目は涙で潤み、その身は小刻みに震えている。
"「レオナ様ッ、我ら騎士団はなにがあっても負けること等ありません!」"
"「この剣は国の為に!! そしてこの命はッ、守るべき大切な者の為に!!」"
"「レオナ様ッ、今日も稽古お願いします!!」"
昨日まで、そんな風に声をあげていた騎士たちの面影。
それを思い出し、ぽたりと。
レオナの頬をつたう、涙。
つい数時間前まで、自分に忠誠を誓い敵倒すと決意していた騎士たちの姿。
それが、それが。
「みんな。死ん、だ」
レオナの口。
そこから漏れる、自身の言葉。
刹那。
レオナの全身。
そこから力が抜け、レオナは糸の切れた人形のように地に両膝をつく。
戦意などもはやない。
あるのは、視界に広がる光景に対する恐れと佇むジークに対する畏れ。
震えが止まらない、レオナ。
「怖い、こわい。こ、こわい。あいつが、怖い。化け物、化け物。こわい、こ、こわい。わたしは、守れなかった。大切な。部下を、誰、ひとり」
譫言のように響く、レオナの震え声。
呼応し、涙が滴り落ち続ける。
まるで壊れた蛇口のように。止まることなく。
そのレオナを見据え、ジークは歩を進める。
一歩、一歩。
闇で地を濡らしながら。
そしてレオナの眼前に辿り着き、呟いた。
「収納する。お前の正義。そして忠誠。そして、心を」
刹那。
レオナの両目。
そこから光が消え、闇に染まる。
同時に、ジークは行使する。
後ろを仰ぎ見、首無き死体に向け、己の力を。
「収納する、お前たちの死を」
ジークの言葉。
それに呼応し、首無き騎士たちはその身を起こす。
ぽたぽたと血を滴らせ、その身をふらつかせながら。
その騎士たちに、壊れたレオナは歓喜した。
「みんな、生きていた。貴方がみんなを、生き返らせてくれた。嬉しいな。嬉しいナ。うれしいな」
立ち上がり、狂気に満ちた笑いを響かせるレオナ。
その笑いを聞き、ジークはレオナに告げた。
「命をくだせ、騎士たちに」
「皆殺しの命を」
そのジークの言葉。
それにレオナは、応える。
騎士たちの前に立ちーー
「これよりッ、各地に向け進軍する!! 目的は皆殺しッ、一人の残らず、殺すこと!!」
そう声を紡ぎ、壊れた笑いを響かせたのであった。
0
あなたにおすすめの小説
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる