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【番外編】クリスマスだから
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ハロウィンのオレンジ、黒、紫、の灯りから一晩、瞬いたかと思ったら、世間は赤と緑の灯りに切り替わっている。
クリスマスシーズン。
冬の間の沢山のイベントの中で一番盛り上がる行事の一つ。
街ですれ違う人達も忙しそうな顔をしているがどこかそわそわ楽しそうな季節がやってきた。
考えてみれば春や夏の楽しい行事は日が決まっている訳じゃなく、花見や花火や、海水浴は……花があるうちに、暑いうちになんて自由にやればいいけど冬の行事は違う。
クリスマス、正月、バレンタイン……全てその日限定。
だからもちろんうちのリユイの仕事は一番の稼ぎ時なんだよ。
ね。
元号が変わってもう数年経つからか、日本人はやっと「12月23日はもう休みじゃない」を受け入れたようだけど今年の23日は土曜日でイブは日曜日。
せっかく受け入れたのにまたリセットされそうな日周り。
リユイが一ヶ月ばかり前、いや、ハロウィンが終わった直後に凄く真面目な顔をして俺に「カイ、ちょっといいですか?」とカレンダーを前に申し訳ない声を出すからなんだろうと思ったら。
「クリスマスはこちらでは恋人同士で過ごす大事な日だと聞きました」って。
あ~、あの同僚さんにまたなんか教えられたんだなあと思って、「うん、まあ、そうだけど」って何となく曖昧に返事した。
だって多分クリスマスに恋人同士で会って食事してプレゼント交換してエッチしなければならぬ!……なんて考えは日本人だけじゃない?
多宗教といえばきこえいいけどどちらかといえば無宗教、色んな宗教ごっちゃ煮、でも米粒にでも石ころにも便所にも貧乏にも神様がいると思っているおおらかな日本人が勝手に決めたクリスマスの過ごし方であってキリスト教の国では教会に礼拝に行き家族で厳かに過ごす日なんだと思うんだよね。
「リユイは仕事だろ?今年クリスマスイブ日曜日だもんな」
カレンダーをペロリとめくって俺は日付を確認する。
「そうですね。それについての打ち合わせが本日ありまして」
「いいじゃん。俺その日冬期講習だしさ。受験生にはクリスマスも正月もないよ」
共通テストの願書はとっくに出していてラストスパートの年末だ。
12月、高校生の冬休み期間中の予備校の休みは1月1日だけだ。
先生達も大変だなあと思うんだ。
「夜、チキン食べようよ。予備校帰りにリユイの職場寄るからさ。買って帰ろう」
予約した方がいいのかな?
父さんにも何が食べたいか確認しなきゃ。
「すみません」
なんで謝るの。
仕事なんだから仕方ないし、別に俺「仕事と俺どっちが大事なの!」なんて言うタイプじゃないと思うんだけどなあ。
あちらの世界では偉そうだったリユイはこちらの世界ではたまにそんなに謝らなくてもいいんじゃない?というくらいへりくだり卑屈になる時がある。
無理、させてるのかな、とたまに心が痛む。
この世界に帰りたくて帰りたくてでも離したくなくて無理矢理連れてきてしまった俺の最愛。
俺だけでは彼にとってはこの世界にいる意味が足りないのかもしれない。
「大丈夫。というか謝る事ある?だってリユイはサンタさん代行なんだからさ」
めくっていたカレンダーから手を離し俺はリユイを上目遣いでちょっとだけ睨みながら言った。
「……はい?」
リユイは「訳がわからない」って顔してる。
「リユイみたいな仕事、誰もやらなかったらパーティ出来ないし、サンタさんも来ないじゃん?大変だけど頑張って欲しいな」
「ああ」
なるほどとリユイは軽く頷いた。
「分かりました。朝からケーキ販売の係なので夕方いつもの時間には終わります」
「ん、じゃ迎えにいく」
俺はリユイの胸元に手を添えて軽く彼の唇に自分の唇を重ねた。
クリスマスイブ当日。
予備校の授業が終わった俺はいつもより少しだけ早くリユイの職場へ向かった。
クリスマスのスーパーの店員さんといえば……と少しの下心。
ちらりとケーキ売り場をのぞけばリユイがいた。
サンタ帽を被って!
見たかったんだよね、と、俺はリユイに気付かれないように少し遠くから眺める。
写真を撮りたいけどさすがに変な人だと思われるからやめておく。
うちでも頼めばサンタ帽くらい被ってくれそうだけど働いているサンタリユイが見たかったんだよね。
にこやかな対応とは言わないけれどきちんと接客しているリユイを見ているとやっぱり胸が痛む。
本当なら貴族で医者のリユイ。
職業に貴賎はないとはいうけど場違い感はある。
ちゃんと戸籍が出来たら、俺と一緒に医者を目指してくれないだろうか。
……その戸籍の為にならなくていい病気を装っているわけだけど。
どの道俺の胸は痛んだ。
俺は子どもを三人産むなんて、こっちの世界ではまず経験しない事をしたけれどそんな事言わなきゃ誰も知らない事だから三年程行方不明になってた……で終わるんだけどリユイの場合はあっちの世界でのキャリアを全部捨ててこれからのウン十年を過ごさなきゃいけない。しかも自分が生まれ育ったのとは違う世界で。
どちらが大変かなんて考えなくても分かる話しなんだよなあ。
クリスマスイブだとケーキやチキンを抱えて楽しくしている人達の中で俺だけ後悔を抱えていた。
「お待たせしました」
どれだけぼんやりしていたのか、気づけば私服に着替えたリユイが横に立っていた。
「え?仕事終わった?」
「はい。カイが見てるなあと思ってきっちり定時にあがりました」
あ。
バレてた。
「大丈夫なの?」
見ればケーキ売り場はまだまだ長蛇の列だ。
「残業したら叱られます。働き方改革?とかなんとか」
「そっか。じゃあ帰ろう」
俺はそっと空いている手でリユイの手を取った。
こんなこと滅多にしないからそっと繋ぐつもりだったのにユリイは力強く握りなおしてくれた。
ケーキもチキンもリユイが予約をしていたから待つことなくすんなり受け取れた。
チキンをリユイが、ケーキを俺がそれぞれ持った。
じゃ、とうちに近い方の出口に向かえばリユイが「ちょっと遠回りしませんか?」と声をかける。
「ん?いいよ」
そう返事をすればリユイは、では、と駅に近い方の出口に向かう。
地図的に説明すると俺の日頃の行動範囲は、うち→予備校→スーパーとなる。
スーパーの向こうに駅があるんだけど特段出掛ける用事も無いので滅多に行かない。
ああ。でも。
リユイがこちらの出入口に連れて来てくれた理由が自動ドアをくぐる前に分かってしまった。
ガラス越しにキラキラ見えるイルミネーション。
駅前にツリーのイルミネーションが飾られていた。
ネットでみる都会のイルミネーションやそれをウリにしている観光地のイルミネーションなんかと比べるのは申し訳ないくらいに素朴な灯りだけど道行く人の大部分は一度は足を止めてニコニコ笑顔で見ている。
みんな手に沢山の荷物を持っているから滞在時間は短いけど。
「こんなのあるの知らなかった」
そんなに遠くない距離なのに。
自分の生活圏に無いと近くても全く知らない事になるらしい。
「いつかお誘いしようと思っていて、今日になりました」
「いや、ありがとう。めっちゃ嬉しい」
俺は光の足りないツリーや赤い固まりになってるサンタや犬に見えるトナカイに目をやる。
決して派手じゃないんだけど俺には今まで見たどんなイルミネーションより色鮮やかに煌めいて見えた。
多分リユイと一緒にいるからだ。
「この世界に来て今まで想像もしていなかったキレイなものを見たり楽しい事を経験したり、全てカイのおかげです」
「本当に?」
穏やかに言うリユイに俺は少しだけ泣きそうになりながら問う。
「ええ。あちらにこんなに鮮やかで煌めく灯りはなかったですから」
確かに王様の誕生祭は夜も灯りがともっていたけどランタンの淡い光がメインだった気がする。
魔法じゃこんなピカピカな灯りはともせないのかな。
「夏のスイカ割りもお月見も楽しかったですよね。来年カイが大学生になったらもっと色々楽しみましょう。イルミネーションも都内のを是非見に行きたいです」
今のリユイのこの世界の楽しかった思い出全部に俺がいるんだなあと思うと胸にきゅっと締め付けられるような甘いけど苦しい痛みが走る。
「……来年も隣に居てくれるの?」
「当たり前です。どこにいくんです?せっかく誰にも邪魔されずに貴方の隣にいられるのに」
それともカイは私を捨てるの?
リユイがそんな感じの少しだけ困った顔で俺を見た。
多分随分困ってるんだろうけどリユイの表情筋は動きに乏しいからね。
俺は思い切りブンブンと首を振りリユイを見上げる。
「リユイ、キスしていい?」
「は?今ですか?」
唐突な俺の申し出に今度こそリユイは怪訝な顔をした。まあ、確かに?日頃の自分は人前でリユイと手を繋ぐこともしないのに。
ここでキスをしたいなんて、なんと大胆な。
クリスマスに浮かれている奴がここにも一人いたわけで。
「リユイと今年の思い出を一個でも沢山増やしたい」
「でも、ここは外で人前です」
「……誰も俺たちなんて見てないし」
周りの人はみんなイルミネーションを見たり隣の自分の大事な人を見ている。
誰も自分達以外の事なんて気にもしていない。
だって、恋人同士のクリスマスを過ごしたいって言ったの、リユイだろ。
リユイに責任転嫁して、俺は持っていたケーキの箱もリユイに持たせて両方の手を埋めた。
「なんでしょう?」
「いいから」
そうして、自分からリユイの首に腕を回すと近づいて素早くキスをする。
イルミネーションに照らされるリユイの横顔は少しだけ照れている様に見えた。
誰かに見られていても別に構わない。
このイルミネーションを来年も再来年も見る度に俺は今年のこのキスをした事を思い出すんだ。
枷をつけられて最愛を抱きしめることも出来なかったあの三年間と、その最愛を抱きしめるために我儘で異世界に連れてきてしまった俺の少しの後悔も一緒に。
ずっと。
「持つ」
俺はもう一度ケーキの箱をリユイの手から奪った。
「ええと、本当に、なんでしょう?」
「いいの、気にしないで。帰ろう」
ケーキとチキンをあの頃の枷の代わりにしただなんて。
持っていたら抱きしめられないだろ?俺のあの頃の気持ち、少しだけ味合わせて。
一生リユイに俺という枷をつけたつもりなんて、言わない。
クリスマスシーズン。
冬の間の沢山のイベントの中で一番盛り上がる行事の一つ。
街ですれ違う人達も忙しそうな顔をしているがどこかそわそわ楽しそうな季節がやってきた。
考えてみれば春や夏の楽しい行事は日が決まっている訳じゃなく、花見や花火や、海水浴は……花があるうちに、暑いうちになんて自由にやればいいけど冬の行事は違う。
クリスマス、正月、バレンタイン……全てその日限定。
だからもちろんうちのリユイの仕事は一番の稼ぎ時なんだよ。
ね。
元号が変わってもう数年経つからか、日本人はやっと「12月23日はもう休みじゃない」を受け入れたようだけど今年の23日は土曜日でイブは日曜日。
せっかく受け入れたのにまたリセットされそうな日周り。
リユイが一ヶ月ばかり前、いや、ハロウィンが終わった直後に凄く真面目な顔をして俺に「カイ、ちょっといいですか?」とカレンダーを前に申し訳ない声を出すからなんだろうと思ったら。
「クリスマスはこちらでは恋人同士で過ごす大事な日だと聞きました」って。
あ~、あの同僚さんにまたなんか教えられたんだなあと思って、「うん、まあ、そうだけど」って何となく曖昧に返事した。
だって多分クリスマスに恋人同士で会って食事してプレゼント交換してエッチしなければならぬ!……なんて考えは日本人だけじゃない?
多宗教といえばきこえいいけどどちらかといえば無宗教、色んな宗教ごっちゃ煮、でも米粒にでも石ころにも便所にも貧乏にも神様がいると思っているおおらかな日本人が勝手に決めたクリスマスの過ごし方であってキリスト教の国では教会に礼拝に行き家族で厳かに過ごす日なんだと思うんだよね。
「リユイは仕事だろ?今年クリスマスイブ日曜日だもんな」
カレンダーをペロリとめくって俺は日付を確認する。
「そうですね。それについての打ち合わせが本日ありまして」
「いいじゃん。俺その日冬期講習だしさ。受験生にはクリスマスも正月もないよ」
共通テストの願書はとっくに出していてラストスパートの年末だ。
12月、高校生の冬休み期間中の予備校の休みは1月1日だけだ。
先生達も大変だなあと思うんだ。
「夜、チキン食べようよ。予備校帰りにリユイの職場寄るからさ。買って帰ろう」
予約した方がいいのかな?
父さんにも何が食べたいか確認しなきゃ。
「すみません」
なんで謝るの。
仕事なんだから仕方ないし、別に俺「仕事と俺どっちが大事なの!」なんて言うタイプじゃないと思うんだけどなあ。
あちらの世界では偉そうだったリユイはこちらの世界ではたまにそんなに謝らなくてもいいんじゃない?というくらいへりくだり卑屈になる時がある。
無理、させてるのかな、とたまに心が痛む。
この世界に帰りたくて帰りたくてでも離したくなくて無理矢理連れてきてしまった俺の最愛。
俺だけでは彼にとってはこの世界にいる意味が足りないのかもしれない。
「大丈夫。というか謝る事ある?だってリユイはサンタさん代行なんだからさ」
めくっていたカレンダーから手を離し俺はリユイを上目遣いでちょっとだけ睨みながら言った。
「……はい?」
リユイは「訳がわからない」って顔してる。
「リユイみたいな仕事、誰もやらなかったらパーティ出来ないし、サンタさんも来ないじゃん?大変だけど頑張って欲しいな」
「ああ」
なるほどとリユイは軽く頷いた。
「分かりました。朝からケーキ販売の係なので夕方いつもの時間には終わります」
「ん、じゃ迎えにいく」
俺はリユイの胸元に手を添えて軽く彼の唇に自分の唇を重ねた。
クリスマスイブ当日。
予備校の授業が終わった俺はいつもより少しだけ早くリユイの職場へ向かった。
クリスマスのスーパーの店員さんといえば……と少しの下心。
ちらりとケーキ売り場をのぞけばリユイがいた。
サンタ帽を被って!
見たかったんだよね、と、俺はリユイに気付かれないように少し遠くから眺める。
写真を撮りたいけどさすがに変な人だと思われるからやめておく。
うちでも頼めばサンタ帽くらい被ってくれそうだけど働いているサンタリユイが見たかったんだよね。
にこやかな対応とは言わないけれどきちんと接客しているリユイを見ているとやっぱり胸が痛む。
本当なら貴族で医者のリユイ。
職業に貴賎はないとはいうけど場違い感はある。
ちゃんと戸籍が出来たら、俺と一緒に医者を目指してくれないだろうか。
……その戸籍の為にならなくていい病気を装っているわけだけど。
どの道俺の胸は痛んだ。
俺は子どもを三人産むなんて、こっちの世界ではまず経験しない事をしたけれどそんな事言わなきゃ誰も知らない事だから三年程行方不明になってた……で終わるんだけどリユイの場合はあっちの世界でのキャリアを全部捨ててこれからのウン十年を過ごさなきゃいけない。しかも自分が生まれ育ったのとは違う世界で。
どちらが大変かなんて考えなくても分かる話しなんだよなあ。
クリスマスイブだとケーキやチキンを抱えて楽しくしている人達の中で俺だけ後悔を抱えていた。
「お待たせしました」
どれだけぼんやりしていたのか、気づけば私服に着替えたリユイが横に立っていた。
「え?仕事終わった?」
「はい。カイが見てるなあと思ってきっちり定時にあがりました」
あ。
バレてた。
「大丈夫なの?」
見ればケーキ売り場はまだまだ長蛇の列だ。
「残業したら叱られます。働き方改革?とかなんとか」
「そっか。じゃあ帰ろう」
俺はそっと空いている手でリユイの手を取った。
こんなこと滅多にしないからそっと繋ぐつもりだったのにユリイは力強く握りなおしてくれた。
ケーキもチキンもリユイが予約をしていたから待つことなくすんなり受け取れた。
チキンをリユイが、ケーキを俺がそれぞれ持った。
じゃ、とうちに近い方の出口に向かえばリユイが「ちょっと遠回りしませんか?」と声をかける。
「ん?いいよ」
そう返事をすればリユイは、では、と駅に近い方の出口に向かう。
地図的に説明すると俺の日頃の行動範囲は、うち→予備校→スーパーとなる。
スーパーの向こうに駅があるんだけど特段出掛ける用事も無いので滅多に行かない。
ああ。でも。
リユイがこちらの出入口に連れて来てくれた理由が自動ドアをくぐる前に分かってしまった。
ガラス越しにキラキラ見えるイルミネーション。
駅前にツリーのイルミネーションが飾られていた。
ネットでみる都会のイルミネーションやそれをウリにしている観光地のイルミネーションなんかと比べるのは申し訳ないくらいに素朴な灯りだけど道行く人の大部分は一度は足を止めてニコニコ笑顔で見ている。
みんな手に沢山の荷物を持っているから滞在時間は短いけど。
「こんなのあるの知らなかった」
そんなに遠くない距離なのに。
自分の生活圏に無いと近くても全く知らない事になるらしい。
「いつかお誘いしようと思っていて、今日になりました」
「いや、ありがとう。めっちゃ嬉しい」
俺は光の足りないツリーや赤い固まりになってるサンタや犬に見えるトナカイに目をやる。
決して派手じゃないんだけど俺には今まで見たどんなイルミネーションより色鮮やかに煌めいて見えた。
多分リユイと一緒にいるからだ。
「この世界に来て今まで想像もしていなかったキレイなものを見たり楽しい事を経験したり、全てカイのおかげです」
「本当に?」
穏やかに言うリユイに俺は少しだけ泣きそうになりながら問う。
「ええ。あちらにこんなに鮮やかで煌めく灯りはなかったですから」
確かに王様の誕生祭は夜も灯りがともっていたけどランタンの淡い光がメインだった気がする。
魔法じゃこんなピカピカな灯りはともせないのかな。
「夏のスイカ割りもお月見も楽しかったですよね。来年カイが大学生になったらもっと色々楽しみましょう。イルミネーションも都内のを是非見に行きたいです」
今のリユイのこの世界の楽しかった思い出全部に俺がいるんだなあと思うと胸にきゅっと締め付けられるような甘いけど苦しい痛みが走る。
「……来年も隣に居てくれるの?」
「当たり前です。どこにいくんです?せっかく誰にも邪魔されずに貴方の隣にいられるのに」
それともカイは私を捨てるの?
リユイがそんな感じの少しだけ困った顔で俺を見た。
多分随分困ってるんだろうけどリユイの表情筋は動きに乏しいからね。
俺は思い切りブンブンと首を振りリユイを見上げる。
「リユイ、キスしていい?」
「は?今ですか?」
唐突な俺の申し出に今度こそリユイは怪訝な顔をした。まあ、確かに?日頃の自分は人前でリユイと手を繋ぐこともしないのに。
ここでキスをしたいなんて、なんと大胆な。
クリスマスに浮かれている奴がここにも一人いたわけで。
「リユイと今年の思い出を一個でも沢山増やしたい」
「でも、ここは外で人前です」
「……誰も俺たちなんて見てないし」
周りの人はみんなイルミネーションを見たり隣の自分の大事な人を見ている。
誰も自分達以外の事なんて気にもしていない。
だって、恋人同士のクリスマスを過ごしたいって言ったの、リユイだろ。
リユイに責任転嫁して、俺は持っていたケーキの箱もリユイに持たせて両方の手を埋めた。
「なんでしょう?」
「いいから」
そうして、自分からリユイの首に腕を回すと近づいて素早くキスをする。
イルミネーションに照らされるリユイの横顔は少しだけ照れている様に見えた。
誰かに見られていても別に構わない。
このイルミネーションを来年も再来年も見る度に俺は今年のこのキスをした事を思い出すんだ。
枷をつけられて最愛を抱きしめることも出来なかったあの三年間と、その最愛を抱きしめるために我儘で異世界に連れてきてしまった俺の少しの後悔も一緒に。
ずっと。
「持つ」
俺はもう一度ケーキの箱をリユイの手から奪った。
「ええと、本当に、なんでしょう?」
「いいの、気にしないで。帰ろう」
ケーキとチキンをあの頃の枷の代わりにしただなんて。
持っていたら抱きしめられないだろ?俺のあの頃の気持ち、少しだけ味合わせて。
一生リユイに俺という枷をつけたつもりなんて、言わない。
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