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「ここか~」
圭のアパートから思ったより近い位置に七生のマンションはあった
スタジオのある駅から圭の自宅の最寄り駅まで電車で三駅ほど手前。
いつも通るが降りたことはなかった。
住宅街のイメージが強くわざわざ降りる用がない。
あんなに売れていたんだ、どっかんと海べたの高級タワーマンションにでも住んでいるのかと思っていたが見かけは普通のマンションだった。
もちろん圭が住んでいるアパートとは雲泥の差だが。
借りた……押し付けられた鍵でエントランスをくぐると、けっして『管理人のおじさん』ではなく『コンシェルジュ』がいてにっこりと笑みを浮かべ「お帰りなさいませ」と会釈をしてくれる。
こじんまりした見かけによらず高級マンションなんだ……
「あ、ども」
そんな対応に慣れていない圭はモゴモゴと口の中で返事を返すと慌ててエレベーターに乗り込んだ。
五階建ての五階。
最上階が七生の部屋らしい。
さすがに黙って向かうのは……と思い連絡しようとしたが電話は繋がらなかった。
そういえば葛城が「とうとう電源が切れた」と苦笑いしていたのを思い出す。
皆心配しているようでしていない様な態度だった。
何が起こってるのか……。
そもそもなんで皆様子を見に行きたがらないんだ?
不安と不信を抱えた圭をエレベーターは静かに五階へと運んだ。
五階の一番奥の部屋のチャイムを押す。
もちろん返事はない。
預かったキーカードをドア横の機械に通すと『カチャ』と解除される。
恐る恐るドアを開けると、チェーンはされていないようでドアは圭を招き入れた。
「……御堂さん?お邪魔します……」
典型的なマンションの部屋の造りで目の前には廊下があり突き当たりにドアがある。
そのドアの向こうがリビングになっているのだろう。
行くまでに左右にドアがある。
私室や寝室、バスルームというところか。
廊下を抜けてリビングに行くが誰もいない。
生活感は余りないがソファーの隅に服が丸めて置いてあったりテーブルにDMの類いが無造作に置かれていたりして雑多な印象はある。
まあ、普通の男性の独り暮らしって感じだなあ。
「……他のドア、開けていいのかよ……」
一悩みするが今回のミッションは御堂をスタジオに呼び戻すこと、だ。本人を見つけなければ話にならないと家探しを決心する。
バスルーム……いない。
トイレは……ノックしたあとそっと開けたがいない。
寝室……いない。
もう一つのドアをそっとノックする。
ん?
今までのドアに比べて響く音が低い
もしかして……。
ゆっくりとドアを押す
普通のドアと比べやはり重い。
……防音か……。
という事は、この部屋が御堂さんの作業場かなあ……。
そっとドアを開けるとグランドピアノがまず目に入る。
アンプやギター、パソコンや楽譜が散らばっている。
スタジオの延長線上の様な部屋なのに何故かここだけ、人が生活しているような気配がする。
コンビニの袋や空のペットボトルが楽譜の隙間に見え隠れしているからか。
「……御堂……さん?」
見えない部屋の主の名前を呼べば、ふっと空気が動いた気がした。
奥にソファーがあるのに気づき目を移すとその上で何かが動く。
「……御堂さん?生きてます?」
そこか、と傍により、声をかけるとソファに置かれた毛布の塊がさらに動いた。
「……う……」
中からくぐもった声が聞こえる。
とりあえず、生きてる……。
と圭は胸を撫で下ろした。
「御堂さん?」
もう一度の問いかけに今度はゆうらりと毛布が揺れた。
「……なんだ、ヒロキ?」
ん?
聞こえた七生のハスキーな声に圭は返事を返すことは出来なかった
今、俺の事、ヒロキって呼んだか?
誰かと間違ってる?そう思ったが訊ねる事は出来ない。
圭のアパートから思ったより近い位置に七生のマンションはあった
スタジオのある駅から圭の自宅の最寄り駅まで電車で三駅ほど手前。
いつも通るが降りたことはなかった。
住宅街のイメージが強くわざわざ降りる用がない。
あんなに売れていたんだ、どっかんと海べたの高級タワーマンションにでも住んでいるのかと思っていたが見かけは普通のマンションだった。
もちろん圭が住んでいるアパートとは雲泥の差だが。
借りた……押し付けられた鍵でエントランスをくぐると、けっして『管理人のおじさん』ではなく『コンシェルジュ』がいてにっこりと笑みを浮かべ「お帰りなさいませ」と会釈をしてくれる。
こじんまりした見かけによらず高級マンションなんだ……
「あ、ども」
そんな対応に慣れていない圭はモゴモゴと口の中で返事を返すと慌ててエレベーターに乗り込んだ。
五階建ての五階。
最上階が七生の部屋らしい。
さすがに黙って向かうのは……と思い連絡しようとしたが電話は繋がらなかった。
そういえば葛城が「とうとう電源が切れた」と苦笑いしていたのを思い出す。
皆心配しているようでしていない様な態度だった。
何が起こってるのか……。
そもそもなんで皆様子を見に行きたがらないんだ?
不安と不信を抱えた圭をエレベーターは静かに五階へと運んだ。
五階の一番奥の部屋のチャイムを押す。
もちろん返事はない。
預かったキーカードをドア横の機械に通すと『カチャ』と解除される。
恐る恐るドアを開けると、チェーンはされていないようでドアは圭を招き入れた。
「……御堂さん?お邪魔します……」
典型的なマンションの部屋の造りで目の前には廊下があり突き当たりにドアがある。
そのドアの向こうがリビングになっているのだろう。
行くまでに左右にドアがある。
私室や寝室、バスルームというところか。
廊下を抜けてリビングに行くが誰もいない。
生活感は余りないがソファーの隅に服が丸めて置いてあったりテーブルにDMの類いが無造作に置かれていたりして雑多な印象はある。
まあ、普通の男性の独り暮らしって感じだなあ。
「……他のドア、開けていいのかよ……」
一悩みするが今回のミッションは御堂をスタジオに呼び戻すこと、だ。本人を見つけなければ話にならないと家探しを決心する。
バスルーム……いない。
トイレは……ノックしたあとそっと開けたがいない。
寝室……いない。
もう一つのドアをそっとノックする。
ん?
今までのドアに比べて響く音が低い
もしかして……。
ゆっくりとドアを押す
普通のドアと比べやはり重い。
……防音か……。
という事は、この部屋が御堂さんの作業場かなあ……。
そっとドアを開けるとグランドピアノがまず目に入る。
アンプやギター、パソコンや楽譜が散らばっている。
スタジオの延長線上の様な部屋なのに何故かここだけ、人が生活しているような気配がする。
コンビニの袋や空のペットボトルが楽譜の隙間に見え隠れしているからか。
「……御堂……さん?」
見えない部屋の主の名前を呼べば、ふっと空気が動いた気がした。
奥にソファーがあるのに気づき目を移すとその上で何かが動く。
「……御堂さん?生きてます?」
そこか、と傍により、声をかけるとソファに置かれた毛布の塊がさらに動いた。
「……う……」
中からくぐもった声が聞こえる。
とりあえず、生きてる……。
と圭は胸を撫で下ろした。
「御堂さん?」
もう一度の問いかけに今度はゆうらりと毛布が揺れた。
「……なんだ、ヒロキ?」
ん?
聞こえた七生のハスキーな声に圭は返事を返すことは出来なかった
今、俺の事、ヒロキって呼んだか?
誰かと間違ってる?そう思ったが訊ねる事は出来ない。
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