Hearty Beat

いちる

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「寝起き?暴れるんですか?」

「まあな……いや、俺はあんまり覚えてないけど」

 自家製ピクルスから始まり、レバーのディップや鶏のグリル焼き、マダコのカルパッチョなどなど、キノコ類(七生はしいたけだけではなくキノコ類全般が苦手だった)を避けたメニューがカウンターに並び、つまみながら話す。

 どれも味は抜群で、客が多いのも頷けた。

「とにかく起きないんですって!」

 たまに照井が二人の話に口を挟む。

「叩いても殴っても起きないってリョウちゃんが困ってたわー」

 葛城もこの店の常連のようでしばしば照井の口から名前が出る。

「叩いても、殴ってもって……俺そんなことされてたのかよ」

「ううん。下手したら起きないって暴れてリョウちゃんが殴られるって。覚えていないからタチ悪いって言ってたわ」

「……そんなこと、多分、しねーよ」

 小声で弁明し、ふてくされてビールをあおる姿はある意味可愛らしいと圭は目を細めて横顔を見ていた。空いたグラスをことりとカウンターに置けば七生はぼそりぼそりと話し始める。

「……あの日は矢作さんが嫌で帰ったわけではなくて、そんなにこの曲を圭に歌わせるのが嫌なら、他の、圭のキーにあった曲を作ってやる!って思って、作業部屋にこもってたら、今日だ」

「俺に、曲?」

「ああ。HEARTY BEATは俺だけのユニットじゃない。お前の声もきかせたいんだ。矢作さんには滅茶苦茶反対されてるけど」

「……どうして?」

 その問いに七生は答えず、また照井が注いでくれたグラスをくいっと飲む。

「以前から『LINKS』で曲作ってた時からこういうことばっかでみんな慣れてはいるんだけど。スマホの充電も忘れて、とうとう電話繋がらなくなっただろ?みんなが『こりゃ、寝落ちたな、そろそろ腹減って動けなくなるころじゃない?でも起こしに行くのめんどくさい、あ、圭がいるじゃん』ってなったんだと思う」

「でも、御堂さん、すんなり起きてくれましたよね?」

「あ、うん…」

 七生は気まずそうな表情を浮かべて言い淀んだ。

「ま、殴られなくて良かったです」

「別に殴るなんてしねえよ……多分……」

「この、レバーのパテ、美味いですね。御堂さん、レバーは食べられるんですか?」

 圭が話を切り上げ話題を変えると七生はほっとした表情を浮かべたが、圭がその横顔を複雑そうな表情で見ていた事には気付かなかった。

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