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執行
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部屋の五人には残りの刑がどんなものかわからないが、これでも視聴者が一番重い罪を選択したのではないかと感じていた。
<それでは、タニア君を束縛させていただきます!>
何が行われるのか、という不安から部屋にいる人間は緊張で黙り込んだ。
ガシャッ!
映像が流れる壁とは反対側にある壁がシャッターのように開き、外から銃をもった兵士風の男達が入ってきた。
「きゃあ!」
銃口を向けられ、立花が叫ぶ。
「な、なんだ!」
「おちつけ!俺たちには関係ないはずだ!」
田口と五十嵐がそれぞれ、焦りながら壁の隅へと下がる。
日下部だけは落ち着いていた。
「なにするのっ!」
銃口を向けられたまま兵士二人に服をつかまれ、タニアはもがこうとするが、銃を近づけられるとさすがにおとなしくなった。
ずるずると引き連れられるようにしてタニアが部屋を出ると、すぐに壁が閉まり、部屋には再び沈黙が訪れる。
不意に、映像が切り替わり、タニアらしき女性が目隠しをされる所が映された。
最初はおとなしくしていたタニアも、目隠しをされると不安になったのか、何かをつぶやきながら、もぞもぞと身体を縛る縄を外そうと動き出す。
だが、縄が外れることなく、彼女はまるで物のように扱いながら木箱の中へと入れられた。
そして、蓋がされると鍵がかけられ、葬式のようにそのまま車に積み込まれた。
<皆さん、ご覧になりましたか? タニア君はこのまま二時間の刑罰の後、警察に送られます。そして、強制送還してもらう事が決定しております。我々、日本人を脅かす麻薬ブローカーを我々の手で追い出したのです!>
司会者の言葉に、拍手の音が鳴り響く。
<この調子でどんどん追求していきたいところですが、いったん小休憩です。このようなショッキングな映像を見せられた残りの四人がどう動くか、何を話すのか、注意深く観察しておいてください。次の審査に影響が出るかもしれませんよ>
意味深な台詞をあごに右手をあてて、にやりと笑って言った。
<自分の手で犯罪を挫くことができるのは当番組だけ!まだまだ番組は続きます。チャンネルはそのままで。それでは皆さん、グッチョイス!>
カメラを指差し、かっこよくポーズとった数秒後、壁のモニターは真っ暗になった。
画面が切り替わり、部屋の内部の様子だけが視聴者のパソコンに映し出されているのだろう。
「…………」
確かに、司会者が言うようにタニアが連れ出され、木箱に詰められて警察に送られるというショッキングな映像を見せられた4人は改めてこの部屋の異様さにのまれていた。
いや、日下部だけは相変わらず、のんびりとした表情だった。
田口が壁に寄りかかりながら、立花はへたりと地面に座り込み、強気な五十嵐さえ突風のようにタニアを連れ出した銃をもった兵士に圧倒されたのか、それぞれが呆然と壁を見つめていた。
「お、俺たちもあんな風にムショへぶちこまれるのか……」
がっくりとうなだれるように、地面を見つめていた五十嵐がつぶやいた。すると、ふと、なにかを思いついたように天井を見上げながら叫んだ。
「おい! これはあきらかに人権侵害だぞ! 警察でもないのに、こんなことをしていいと思ってるのか!? 俺たちを警察に連れていかれたら真っ先にこのことを……」
「……無理よ」
「なにィ?」
疲れた表情で座っている立花に反論され、五十嵐が睨みつける。
「まず、ここがどこかわからなければ警察に説明したところで探しようがないわよ。どうせ連中のことだから、放送が終了したとこで別の所へ隠れてまた同じような番組を放送をするはず」
「お前ら、落ち着いてる場合か!?」
真っ赤になって怒鳴る五十嵐に、横から田口が口を挟む。
「いや、気持ちはわかるが、ここは落ち着こう。いくら騒いでも番組側が困ることはないし、状況も改善されないだろう。ここまで強引な連中だ。弁護士を頼んでも百%無視されるのがオチだ」
「うるせえ! このロリコン!」
不安と怒りが頂点に達したのか、五十嵐が座っている田口の顔面を蹴ろうと、足を突き出した。
「お、おっ?……つぅっ!」
とっさに放たれた蹴りを、日下部が片手で防いだ。そのまま勢いよく持ち上げたことによって五十嵐はバランスを崩してしりもちをつく。
「いてえな!」
「喧嘩はナシですよ。怪我しても連中が治療してくれるかわからないんですから」
「……ちっ!」
軽く舌打ちをすると、五十嵐は壁に座り込んだ。
☆☆☆☆☆
雨がしとしとと降っている。
黒い雲が太陽を隠し、どんよりとした存在感で自己主張していた。
「…………」
さほど広くないこの街にたくさんあるビルの一室で、一人の女性が外の天候と同じように晴れない気分で窓の外を眺めていた。
「ダーリン、今日も連絡ないね~」
「ここでは所長と呼びなさいって言ってるでしょ」
背後からの声に、窓の外を見ていた女性が振り返ってため息をつきながら叱る。
「だって、こんなんじゃ仕事にならないじゃない」
「表の仕事は私達の役目でしょ」
二人が居る部屋は、比較的他の建物を比べて新しいマンションだ。そして、会話から推測するにその一室を事務所にしている。
綺麗に整頓され、企業用に隔離された部屋で小柄な、ゴシック&ロリーターファッションの少女が客間のソファーにごろごろしながらノートパソコンをいじっていた。
<それでは、タニア君を束縛させていただきます!>
何が行われるのか、という不安から部屋にいる人間は緊張で黙り込んだ。
ガシャッ!
映像が流れる壁とは反対側にある壁がシャッターのように開き、外から銃をもった兵士風の男達が入ってきた。
「きゃあ!」
銃口を向けられ、立花が叫ぶ。
「な、なんだ!」
「おちつけ!俺たちには関係ないはずだ!」
田口と五十嵐がそれぞれ、焦りながら壁の隅へと下がる。
日下部だけは落ち着いていた。
「なにするのっ!」
銃口を向けられたまま兵士二人に服をつかまれ、タニアはもがこうとするが、銃を近づけられるとさすがにおとなしくなった。
ずるずると引き連れられるようにしてタニアが部屋を出ると、すぐに壁が閉まり、部屋には再び沈黙が訪れる。
不意に、映像が切り替わり、タニアらしき女性が目隠しをされる所が映された。
最初はおとなしくしていたタニアも、目隠しをされると不安になったのか、何かをつぶやきながら、もぞもぞと身体を縛る縄を外そうと動き出す。
だが、縄が外れることなく、彼女はまるで物のように扱いながら木箱の中へと入れられた。
そして、蓋がされると鍵がかけられ、葬式のようにそのまま車に積み込まれた。
<皆さん、ご覧になりましたか? タニア君はこのまま二時間の刑罰の後、警察に送られます。そして、強制送還してもらう事が決定しております。我々、日本人を脅かす麻薬ブローカーを我々の手で追い出したのです!>
司会者の言葉に、拍手の音が鳴り響く。
<この調子でどんどん追求していきたいところですが、いったん小休憩です。このようなショッキングな映像を見せられた残りの四人がどう動くか、何を話すのか、注意深く観察しておいてください。次の審査に影響が出るかもしれませんよ>
意味深な台詞をあごに右手をあてて、にやりと笑って言った。
<自分の手で犯罪を挫くことができるのは当番組だけ!まだまだ番組は続きます。チャンネルはそのままで。それでは皆さん、グッチョイス!>
カメラを指差し、かっこよくポーズとった数秒後、壁のモニターは真っ暗になった。
画面が切り替わり、部屋の内部の様子だけが視聴者のパソコンに映し出されているのだろう。
「…………」
確かに、司会者が言うようにタニアが連れ出され、木箱に詰められて警察に送られるというショッキングな映像を見せられた4人は改めてこの部屋の異様さにのまれていた。
いや、日下部だけは相変わらず、のんびりとした表情だった。
田口が壁に寄りかかりながら、立花はへたりと地面に座り込み、強気な五十嵐さえ突風のようにタニアを連れ出した銃をもった兵士に圧倒されたのか、それぞれが呆然と壁を見つめていた。
「お、俺たちもあんな風にムショへぶちこまれるのか……」
がっくりとうなだれるように、地面を見つめていた五十嵐がつぶやいた。すると、ふと、なにかを思いついたように天井を見上げながら叫んだ。
「おい! これはあきらかに人権侵害だぞ! 警察でもないのに、こんなことをしていいと思ってるのか!? 俺たちを警察に連れていかれたら真っ先にこのことを……」
「……無理よ」
「なにィ?」
疲れた表情で座っている立花に反論され、五十嵐が睨みつける。
「まず、ここがどこかわからなければ警察に説明したところで探しようがないわよ。どうせ連中のことだから、放送が終了したとこで別の所へ隠れてまた同じような番組を放送をするはず」
「お前ら、落ち着いてる場合か!?」
真っ赤になって怒鳴る五十嵐に、横から田口が口を挟む。
「いや、気持ちはわかるが、ここは落ち着こう。いくら騒いでも番組側が困ることはないし、状況も改善されないだろう。ここまで強引な連中だ。弁護士を頼んでも百%無視されるのがオチだ」
「うるせえ! このロリコン!」
不安と怒りが頂点に達したのか、五十嵐が座っている田口の顔面を蹴ろうと、足を突き出した。
「お、おっ?……つぅっ!」
とっさに放たれた蹴りを、日下部が片手で防いだ。そのまま勢いよく持ち上げたことによって五十嵐はバランスを崩してしりもちをつく。
「いてえな!」
「喧嘩はナシですよ。怪我しても連中が治療してくれるかわからないんですから」
「……ちっ!」
軽く舌打ちをすると、五十嵐は壁に座り込んだ。
☆☆☆☆☆
雨がしとしとと降っている。
黒い雲が太陽を隠し、どんよりとした存在感で自己主張していた。
「…………」
さほど広くないこの街にたくさんあるビルの一室で、一人の女性が外の天候と同じように晴れない気分で窓の外を眺めていた。
「ダーリン、今日も連絡ないね~」
「ここでは所長と呼びなさいって言ってるでしょ」
背後からの声に、窓の外を見ていた女性が振り返ってため息をつきながら叱る。
「だって、こんなんじゃ仕事にならないじゃない」
「表の仕事は私達の役目でしょ」
二人が居る部屋は、比較的他の建物を比べて新しいマンションだ。そして、会話から推測するにその一室を事務所にしている。
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