祈り姫☆恋日和

花咲マイコ

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お祖父ちゃん瑠香と孫の菊

阿倍野殿の子孫

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「私!阿倍野殿になりたいっ!」
 向日葵は突然そう宣言した!
 瑠香からあやかしの管理人でもある阿倍野殿……向日葵の曾祖母の話を聞きかっこいいし、恋物語も素敵だった。
 橘に関しての話はジジ様や父、義母や義父から母のことを聞いた葛葉子が親の物語をメモをとりプロットを書いていた物を瑠香は名前を変えて少し大人な小説に織り込んでヒット作になってしまった。
 そして、従兄弟の明が漫画化して世間に知られていた。
 断片的なメモを元にしたほぼオリジナルだけど、書かされた感じだった。
 いや、描くべき、伝えるべき話だったのかもしれない。
 そんな物語を十六歳になった向日葵は漫画本にも小説にもハマりそれが事実だったことを知って興奮気味に休憩中の陰陽寮でそう宣言したのだ。
「阿倍野殿というより、むしろ、桜庭の姫の方なんじゃないのか?桜庭家の者なのだから」
父の晴房はそう言った。
 晴房は阿倍野殿の孫であるが、桜庭の婿養子になり、その娘が向日葵なのだ。
 正当性ならば、桜庭家……小説の中で阿倍野殿と親友である桜庭の姫の血筋だ。
 向日葵は眉毛を下げて悲しげになり、
「だって…本家の血継いでないじゃない……」
 桜庭家の本家の血筋は兄である李流一人だ。
 さらに……
「ママ上は刀に選ばれたけど……私選ばれてないし……刀は若葉を選んでさらに、桃都とラブラブで本家を継ぐに相応しいし……」
 私の立場は……?どうしたらいいの?居場所もなくなりそうで不安だった。
 プライドの高い向日葵はそんなことを悩んでいたら、瑠香から、曾祖母が女陰陽師として、阿倍野殿として活躍していたことを聞きやるき満々らしい。
 刀には選ばれなかったけど、父譲りの超能力は持っているのだからと自ら陰陽師になることを目指して、父と共に陰陽寮で仕事をしているのでこれは運命かもっ!とやる気満々だった。
「ずるい!わたしだって阿倍野どのになれるのに!」
 香茂菊はそう言ったが、
「菊は『香茂』でいい…」
 菊は葛葉子に似てるから万が一にも同じ宿命になるなんて、許さない。
 阿部野になったら菊は白狐になってしまうかもしれない。
 それに比べて向日葵は気は強いし、自分の小説の桜姫と瓜ふたつな性格している。
 向日葵は阿部野を名乗りたいというが、桜庭家の血筋が濃いし、ちょっとそっとな運命や宿命など乗り越えられるだろう。
 前陰陽寮長曰く、
「二人は橘と咲羅子の生まれ変わりのようだな……」
 と、言って懐かしく、涙を一筋落としたほどだった。
「二人で阿倍野殿をすればいいじゃないか、血筋は二人とも継いでいるのだし、私が許可するよ」
 実は瑠香自身、【阿倍野殿】を引き継いでいる。
 いつかは自分を超える者に受け継がせるつもりだが、二人が継いでくれるならば安心だと思う。
 さらに、菊が白狐になる運命も薄まると直感が働く。
「まぁ、いま、阿倍野と香茂の二つの家は女の子しか跡取りいないからがんばってくれ。陰陽寮長まで登れるようにさらなる修行を積ませてやるぞ」
 といい、晴房はパシパシと、わざと扇を鳴らして向日葵を上から睨み凄む。
「容赦はしないけどな。」
「の、望むところよ!パパ上!」
「ここでは陰陽寮長と呼ぶように!」
 かわいい娘の頭を檜扇で軽くポンと叩き、
「そんなに神の刀が欲しかったのなら…………」
 晴房は口元に閉じた檜扇をあててニカッと笑いながら、
「無事習得したならば、この檜扇を授けよう。私の力の半分が入ったシロモノだから桜庭の刀より強いぞっ!」
 晴房は負けずぎらいにそういった。
 そこが向日葵と晴房が似ているところだ。
「わーいっ!あたし頑張るわ!そして阿倍野殿になってこの宮中を支配してやるわ!」
 向日葵はやる気満々のついでに夢が拡大している。
「……ジジ。私も何かほしい…」
 菊は羨ましかってそう祖父の瑠香に強請るように見つめてくる。
 その様子は何歳になっても可愛すぎる!
「なら、ジジのキスをあげよう。魔法のキッスだぞ!」
 唇をわざと寄せて今すぐあげようとしたが、菊は手の平で唇を抑えて、
「いらない。」
 無表情と声で拒否してそう言った。
 瑠香は涙目でショックでその場で固まってしまったのだった。
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