祈り姫☆恋日和

花咲マイコ

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陰陽寮のひと時

陰陽寮の食事思い出

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 陰陽寮の食事をしていたある日のこと。
 寮住まいの職員みんな揃って
「いただきます」を言う。
 そしてから、夕餉を食べる。
 瑠香がわざと横から葛葉子の好物をよこどりして頬張る。

「あっ!なにをする!」
 葛葉子は睨む。
 好物のいなり寿司…
 瑠香は意地悪く微笑むと
「口開けて、あーんして。葛葉子」

 葛葉子は不服ながら命令を素直に聞くと瑠香の皿から取ったいなり寿司を葛葉子の口に入れる。
 一口で食べさせて、頬がリスみたいだと思う。
 よく噛んで飲み込んだところを見計らって、

「美味しい?」
「うん。」
「じゃぁ、もう一個。あーん。」

 また素直に口を開ける。
 食べてるところを見ているのも、好きだ。
 ご飯食べている時は素直だから。
「瑠香の皿のなくなっちゃったよ」
「葛葉子のと交換な。今度は食べさせて」

 口元を指でさしてジェスチャーする。
「しかたないな。」
 瑠香の口元に手を添えて零れないように注意して口に運ぶ。
 瑠香は何故か満足な顔をする。

 傍から見ればラブラブすぎていたたまれない。
 陰陽寮長は注意をしようと思ったが、
「陰陽寮長、ハルにもやってくれ!」
「はしたないから本当はしてはいけないぞ。」
 と言いながら
 口に卵焼きを運んでもらった。
 
 そのときのご飯の美味しさが忘れられなかった。



 そんなことを晴房はふと思い出した。



 今日は雪の夕飯を食べに李流と共に桜庭家にお泊りだ。
 みんなで「いただきます」を言い、夕食を食べるとき晴房は隣に座る雪に、

「雪、あ~ん。」
「ん?」

 口を大きく開けてジェスチャーする。
 李流も季節も雪も意味がわからなかったが、

「あ~ん…してくれ!」
 ちょっとアホ面かもしれないと顔を赤らめながらも要求する。
 察した雪は微笑み、厚焼き卵を箸ではさみ、

「うふふ。はい、あーん。」

 晴房の好物の甘い厚焼き卵を口に優しく入れる。

「なおさら、おいしいなっ!」
 子供みたいに満足気にほほえむ。
「雪にもしてやるぞ!」
「うふふ。じゃ。あーん。」

 ラブラブで見てられない息子の李流だった。
(いつか法子様にしてさし上げよう。)
 と李流は夢見る。
 
「李流、わしにもやってくれ」
 祖父の季節は李流に少し照れながら言った。
 二人が羨ましくなったらしい。
 けれど愛しの孫は、
「え?介護みたいにならない?」
 素で言った。
「………だな」
 なぜか、がっかりする季節だった。



「はい、あーんしてください。」
 法子は、バレンタインのチョコをあげた。
 李流はそのチョコを法子の口に入れて差し上げる。
 自分のチョコは見た目とは違いおいしく感じる。
 それは口にいれてもらってるからかしら?と思う…

「李流、私もやりたいぞ。」
「えっ!そんな、恐れ多い!」
 自分でいつか、して差し上げたいとは思ったけれど、してもらおうとは思っても見なかった。
 頑なに、拒否する李流にイライラした法子は口に含んで、無理やり李流の口に押し込んだ。
「んっ!」
「ど、どう?美味しい?」
 ついしてしまった行動に恥ずかしくなって、聞く。
「お、お、いしい、です」
 唇の柔らかさもおいしかった…
「もう一回食べる?」
「い、いえ、こんどは、普通に、いただきます!」
「じゃあ、李流が私にして…」

 そんな様子を見張っていた晴房は、
「私の神聖な『あーん』を穢しおって…!」
と、少し怒りを感じた晴房の頭をコツンと瑠香は、叩き。

「オレは李流君と法子様のようにしたかったんだよ」

 新婚の時はしまくったけど…

「瑠香のすけべがっ!」
「もう、昔のことだ」

 幸せは伝染し伝わるものなんだなと思うと瑠香は微笑んだ。
 
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