祈り姫☆恋日和

花咲マイコ

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香茂家の事情

父親嫌い

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「俺も親父が嫌いだ」

 高校一年生の香茂薫はボソリと李流にそう言った。
 そう言いながら悲しい顔をしている。

 李流は意外だった。
 自分も父親が大ッキライだから…
「たけど、お前の父親、瑠香さまだろ?」
 二人は親子だが外見は似ても似つかない。
 性格も静かで凛としている瑠香とガサツな薫は正反対に思える。

 その理由を親友になったばかりの李流に告白する。
 李流が自分の父を素晴らしい人だと思っているのも複雑な気持ちだった…



「……お前たちが生まれなかったら、もっと葛葉子との時間がもうけられたのに。」
 その酷いつぶやきを聞いてブチ切れたのは薫だった。

「だったらやらなきゃ良かったじゃないか!スケベ親父!」
 更に殴りかかろうとした薫を兄の桂はとめる。

「……それほど母さんを愛していたということだよ…わかってあげなよ。」
 桂の内心はかなり薫より激しく罵る。
 しかもテレパシーで、

《僕達とともにあってこそ母さんはさらに幸せだったと思うよ》

「父さん違う?」

 あまりにも葛葉子を亡くしたのが辛すぎて答えられなかった。

 子どもたちのことも考えられなかった…

 その後、叔母の真陽がすぐにかけつけて親父を殴り飛ばしテキパキと手続きしたあと一日中家族とともに泣いていた。

 葬式もたくさん母を慕う人たちが来て悲しんだ。
 東親王殿下までいらして父を慰めた。

「約束通り宮中に戻るのが義務だよ。」

 しばらくして、父は宮中へ出仕し、家に戻ってこなかった。

 子供に会いに来ようともしなかった。

 そして、今に至るらしい…

 李流はそんな瑠香の話を聞いても幻滅しなかった。

「薫はいいさ、母親を愛してもらっていたのだから……」
 李流は暗い顔をして瞳を光らせるとすごい怒りのオーラを薫は感じてゾッとする。

「オレの父親なんか、母さんを最初っから愛してなかった。
『じいさんと結婚すれば良かったんだ!』
って言いやがったんだぞ!」
 声を荒げて怒りを吐き出して背中で息をするほどの怒りだった…

「お前にもそんな激しい怒りあったのか」
 李流が気色ばみで口が悪いのを初めてみて笑う。

「そりゃそうだな。
 母さんをものすごく愛してたからあんなこと言ったんだよな。」
 薫はフーっと溜息を吐いた…なんだか李流の話を聞いたら、怒りが収まってしまった。
 複雑だったのは自分も母さんと父さんが、愛し合っている姿を見るのはすきだったからだ…
 子どもたちに悲しみをぶつけてしまうほどに辛かったんだな…と思えるようになっていた。

「……愛してなかったらやってなかったら俺、生まれてなかったし、あの親父のことだから本気で子供嫌いだったら降ろされてたもんな。」
 そう思うと父を許せて心なしか薫は瞳を潤ませた。

 なんだか、李流のおかげで父を許してもいいかと思ってしまった…
 もう、仲直りしてやろうとおもった。

その四年後、

 桂が子供を授かり、見にこいと言われたのでしぶしぶ見に来た。
 小さな命の存在に目を見張る。

「……葛葉子……」

 魂は葛葉子ではないが、そっくりで可愛らしい。
 しかも孫。
 血のつながりがある。

 息子が生まれた時の葛葉子の嬉しそうな笑顔を思い出す。

 孫の菊と書いてココの頬に涙を落とす。

「生まれてきてくれてありがとう…」


 四歳になる孫は晴房の末っ子、季節と仲良しだ。

「オレの目が黒いうちはやらぬぞ!」
 瑠香が本気で宣言したのを晴房は笑顔で
「今すぐ目を白くしてやろうか?」
 息子を脅されて喧嘩する晴房と瑠香だった。

 ココだけじゃなくて、孫は可愛くてしょうがなくなってしまった瑠香だった。
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