臣と野薔薇の恋愛事情

花咲マイコ

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ドキドキ両親に挨拶

2☆情報収集

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 陰陽寮のみんなは喜んでくれたのに両親には、怒られるとは……
「当然といえば当然だけど、あんなに怒鳴ることないじゃないでつか!」
 野薔薇は、また晴房、瑠香、李流、薫を集めて相談相手をさせる。
 仕事も終わった自由時間だから仕事に支障はないが、李流と薫の勉強時間は削られた。

「臣は良い奴だとあきらさんには私から伝えておくから大丈夫だよ」
 と、瑠香は励ます。
 野薔薇の父の晶は瑠香の従兄弟で仲がいい。
 幼い頃は兄のように慕っていた。
 本来は阿倍野家の姓の当主と言ってもいいのだが当人は宮中の仕事や神事に関わる器ではないと自負し放棄している。
 なので、晴房は一生宮中住まいだが、阿倍野家の当主という事に一応なっていて何か戸籍や法律に関わるときは全力でサポートすると約束していた。
 そんな晴房は桜庭家の婿になり姓も阿倍野から桜庭に変えて複雑な状況でもあった。
 遺産などは親戚の香茂家が管理しているが、阿部家は今は事実上、野薔薇の実家のみだ。
 一人娘の野薔薇が滝口家に嫁ぐと尚更阿部家は消滅してしまう危機があった。
 姓は、香茂だが事実上ほぼ婿養子の瑠香は自ら姓を変えるか、息子を阿倍野家の当主に据えるか、もしくはもう少し先の晴房の三つ子の一人を阿倍野家の当主におくか考え中だった。
 だが阿倍野家は女子が継ぐと白狐の宿命もついてくる……
 いまは葛葉子の御霊と一体化しているが、陛下のお傍を菊はまだ狙っている。
 どうしたものかと、そんな複雑さを悶々と瑠香は考え始めた時、

「たしかに、突然大事な娘に男ができて出来ちゃった結婚なんかゆるせるものじゃないがなっ!」
 と晴房は当然のごとく腕を組んでフンっ!と鼻を鳴らして言った。
 生まれたての娘二人の将来を重ねての素直な感想だったが、

「ハル様に言われたくありませんねっ!」
 すかさず、李流は鋭くツッコミを入れて晴房を睨んだ。
(母さんをわざと孕ました人の言うことか!?)
 李流は当時の気持ちを思い出してイラッとする。

「ぶはっ!たしかにな!」
 薫は爆笑して腹を抱える。

「李流くん。臣さんの御家族の事をもっと詳しく教えて貰えますか?」
 野薔薇は事前準備はなるべく収集しておきたい慎重さももっているんだなぁと李流は野薔薇の真剣さに感心し、
「滝口家は代々、皇室をそば近くでお守りする一族で、由緒正しい敷居の高い家ですよ。武道だけではなく茶道も華道も営んでいる今にも生きる武家の家って感じですね……」
 宮中の、守護職に使える一族は武術も芸術も一流でなくてはならない。

 さらに優れた刀の一族は幼い頃から叩き込まれるという。
 皇室をお守りする一般庶民から宮廷警察になるには、学校でそういう事も教えてくれる。
 李流も高校卒業後は宮廷警察学校で武術から茶道、和歌に至るまで一流を勉強するつもりだ。
 
 薫も李流と同じ道を行きたいと思って二人目を合わせニコッと笑う。
「え、そ、そうなんでつか?」
 臣の職業を思えばそうかもしれないけれど臣自身は休みがあればゲーム三昧、漫画本読み放題アニメ見放題のオタクだと自負していたし、臣の自宅も普通の一軒家だった。
 自分の自由の為の家であり、いつお嫁さんが来ても大丈夫のように建てたと言っていた。
 その家に今後生涯住む予定だが……本家がそんな凄いところだとは知らなかった。
 野薔薇はすごく青ざめていて李流はびっくりする。
「そんな御曹司の嫁になるなんて考えてもいなかった……」
 野薔薇は今更ながら、たった今、将来の事を本格的に考えた。 (普通の家で家族水入らずで過ごせる幸せを考えていたのに……そんな姑がうるさそうな所ろに嫁ぐなんて思ってもなかった……)
 よく、大きな家の敷居は高く、礼儀品格がなっていない!と怒られいびられる想像をする。

「あ、大丈夫ですよ、臣さんは長男ですけど、次男に家督を譲って宮中の警備の仕事を生涯務める事ができると喜んでましたし……」
 結婚の縁がないと諦めて宮中で仕事を集中することに人生をかけていたと言っていたことを野薔薇は思いだす。
「うー……私、臣さんの仕事の邪魔してしまったのでしょうか……」
「今更そこに心配かよ!」
 薫は呆れる。
「野薔薇は極端に心配しすぎだ。子供に影響及ぼすぞ……」
 晴房は野薔薇を心配して注意する。
 そんな野薔薇に慌てる陰陽寮に、ちょうどよく、
「そんなことないよ!野薔薇ちゃんと結ばれて俺の人生はやっと輝き始めたんだから。」
 臣が瑠香の式神の手紙を読んで慌てて駆けつけてきた。
 臣は警備室の仕事を部下に任せて愛しの妻の一大事に駆けつけた。
「野薔薇ちゃんがいるから尚更仕事頑張ろうって気にもなったんだよ。野薔薇ちゃんが心配する事なんてなんにもないんだよ。俺の実家が怖いなら行かなくてもいいしね!」
 臣は心配して青ざめていた野薔薇の手を握ってそういった。
 野薔薇ははっと最初の目的に返って思い直し臣と瞳を合わせ、
「そういう訳にもいきません!野薔薇は臣さんの親戚の家族にもなるのでつから挨拶だけはしっかりしたいでつ!」
「野薔薇ちゃん。ありがとう。俺も野薔薇ちゃんの家にきちっと挨拶するよ!、俺だって野薔薇ちゃんの家の親戚になるんだから」
「臣さん……」
「野薔薇ちゃん……」
 互いに瞳がキラキラし、ひしっ!と抱き合う。
 他の人間は見えていない二人だけの世界になっている。
 李流も薫も晴房も呆れる。
 瑠香は二人を懐かしい思い出共に見ている。

「もう、明日でも良いから挨拶にいけ!物忌みシフトの休みにしてやるから!」

 ということで野薔薇の家の前に来た。
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