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高良の宝石
3☆出会い
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……お見合いか……
「オレも恋愛で結婚したかったな…」
本心をポツリと言葉に出す。
橘と威津那の二人の馴れ初めに憧れていた。
二人は十年間思い続けて、願いが叶い恋人になり恋を阻む困難があって結婚して幸せな結婚生活を営んでいる。
橘の命は十五年くらいしかないと言うが……なおさら一緒にいることを大切に大事に思っている様子がわかる。
オレにはそんな運命的に約束されてるような物語のような縁なんて、全くなかった。
お見合いで出会って結婚してその相手と一生を過ごす。
それも縁で、その女性を一生涯愛することが定められたことなのかもしれないが……
そこに、『恋』という、トキメキは芽生えるのだろうか……?
恋心を抱かずに、人を愛することなんて……可能なのだろうか……?
オレには恋は憧れな夢物語で現実を生きるのがふさわしいのだろうか?
ふと、紺太のことが頭をよぎった。
ウカ様の孫で縁結びの能力に優れた亡き親友を……
「紺太……君が生きていたら悪戯で運命の恋人と引き合わせてくれたかな……?」
そう言って苦笑して寂しさが胸を締めた。
☆
真夏の晴天は暑い。
蝉の鳴き声もけたたましい。
土の道はコンクリートにほぼ覆われ、都会は畑すら少なくなり、ビルの建設ラッシュだ。
排気ガスを噴き出す車やトラックが道を行き交う。
「五行のバランスが崩れてしまっているな……」
と、つくづく思う。
宮中の奥はほぼ千年前と変わらない自然あふれる生活なのでいつもギャップを覚える。
近代化、変化の激しい時代だなと嘆きと自国の発展の喜びに複雑な思いを抱きながら大学に行く。
なるべく日陰を歩くようにする。
汗を拭きながら目的地に着くように歩いていたら、すぐ後ろから柔らかい花の匂いがして、ハッとしてふり向くと、白い日差しよけの帽子に、白いワンピースに薄紅色のスカーフを首にオシャレに巻いた甘栗色の髪をした女性がオレを追い越すようにすれ違った。
(お嬢様かな……)
けれど、お付きの者もいない。
すごい早足で颯爽と歩いている。
そう思いながら、暑さで心を読む余裕すらなく彼女の背を見ていた。
彼女のスカートから、桃色のハンカチが落ちた。
………いや、落とした?
オレはすかさずハンカチを拾い彼女に声をかける。
「あの、ハンカチ落としましたよ?」
「えっ!」
彼女は不自然にびくりとして、おずおずとこちらを見ると、帽子を取ってオレの方を見た。
戸惑った顔をしてこちらをみた。
オレも彼女の顔を見る。
瞳があってしまって少し視線をずらす。
少し戸惑って眉は下がり気味で、その戸惑う表情にドキリとした。
瞳は大きく二重瞼で、眼はキラキラとした藍色をしていて、見た目は日和人だが、外国の血が入っているとわかる。
けれど、それは流花叔母さんにとても似ていたので、
「おばさん……?」
悪い癖で思ったことを口に出していた。
「お、おばさんじゃないものーーーーーっ!」
顔を真っ赤にして瞳を潤ませて叫んでにげた。
「あ、まてっ!」
猛スピードで走り去った彼女を見送った。
「失礼な事を言ってしまった…今度会えたら謝ろう……」
オレは猛反省して、つい思ったことを言霊に出す悪い癖を封印する心構えを身につけようと強く誓った。
「オレも恋愛で結婚したかったな…」
本心をポツリと言葉に出す。
橘と威津那の二人の馴れ初めに憧れていた。
二人は十年間思い続けて、願いが叶い恋人になり恋を阻む困難があって結婚して幸せな結婚生活を営んでいる。
橘の命は十五年くらいしかないと言うが……なおさら一緒にいることを大切に大事に思っている様子がわかる。
オレにはそんな運命的に約束されてるような物語のような縁なんて、全くなかった。
お見合いで出会って結婚してその相手と一生を過ごす。
それも縁で、その女性を一生涯愛することが定められたことなのかもしれないが……
そこに、『恋』という、トキメキは芽生えるのだろうか……?
恋心を抱かずに、人を愛することなんて……可能なのだろうか……?
オレには恋は憧れな夢物語で現実を生きるのがふさわしいのだろうか?
ふと、紺太のことが頭をよぎった。
ウカ様の孫で縁結びの能力に優れた亡き親友を……
「紺太……君が生きていたら悪戯で運命の恋人と引き合わせてくれたかな……?」
そう言って苦笑して寂しさが胸を締めた。
☆
真夏の晴天は暑い。
蝉の鳴き声もけたたましい。
土の道はコンクリートにほぼ覆われ、都会は畑すら少なくなり、ビルの建設ラッシュだ。
排気ガスを噴き出す車やトラックが道を行き交う。
「五行のバランスが崩れてしまっているな……」
と、つくづく思う。
宮中の奥はほぼ千年前と変わらない自然あふれる生活なのでいつもギャップを覚える。
近代化、変化の激しい時代だなと嘆きと自国の発展の喜びに複雑な思いを抱きながら大学に行く。
なるべく日陰を歩くようにする。
汗を拭きながら目的地に着くように歩いていたら、すぐ後ろから柔らかい花の匂いがして、ハッとしてふり向くと、白い日差しよけの帽子に、白いワンピースに薄紅色のスカーフを首にオシャレに巻いた甘栗色の髪をした女性がオレを追い越すようにすれ違った。
(お嬢様かな……)
けれど、お付きの者もいない。
すごい早足で颯爽と歩いている。
そう思いながら、暑さで心を読む余裕すらなく彼女の背を見ていた。
彼女のスカートから、桃色のハンカチが落ちた。
………いや、落とした?
オレはすかさずハンカチを拾い彼女に声をかける。
「あの、ハンカチ落としましたよ?」
「えっ!」
彼女は不自然にびくりとして、おずおずとこちらを見ると、帽子を取ってオレの方を見た。
戸惑った顔をしてこちらをみた。
オレも彼女の顔を見る。
瞳があってしまって少し視線をずらす。
少し戸惑って眉は下がり気味で、その戸惑う表情にドキリとした。
瞳は大きく二重瞼で、眼はキラキラとした藍色をしていて、見た目は日和人だが、外国の血が入っているとわかる。
けれど、それは流花叔母さんにとても似ていたので、
「おばさん……?」
悪い癖で思ったことを口に出していた。
「お、おばさんじゃないものーーーーーっ!」
顔を真っ赤にして瞳を潤ませて叫んでにげた。
「あ、まてっ!」
猛スピードで走り去った彼女を見送った。
「失礼な事を言ってしまった…今度会えたら謝ろう……」
オレは猛反省して、つい思ったことを言霊に出す悪い癖を封印する心構えを身につけようと強く誓った。
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