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桜庭の姫カップルと混浴温泉旅行
2☆お宿の忖度
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お宿に着いたら早速女将に部屋へ案内される。
女将はとても美しい人だった。
けれど、頭に白い角がちょこんと生えているのは目の錯覚ではなさそうだった。
それを皆見て見ぬ振りをする。
橘は何か知っているようなので後で聞くことにしようと三人は思う。
何かの髪飾りだといいのだが……
廊下も綺麗で埃ひとつ落ちてない新築のようだ。
「本日は予約の方のみ貸切なのですが、山登りで足を怪我された方が数人いらっしゃって、離れたお部屋に監禁しておりますが、気になったらおしゃってください。」
にっこり微笑んで女将はこともなげに、そう言った。
「……監禁って…?」
不穏な単語を聞いて聞き間違えかと思い咲羅子は思わず聞き返す。
「あ、軟禁の間違えでした……ほほほ。」
口もとを抑えてごまかし笑う。
どちらにしても客扱いはしていないと言うことだろうか。
「ご招待した方しか本来、当宿は入れないので、警戒でそうしているのです。」
「しっかりしてますね」
と、威津那はにこやかに言った。
「そう言う契約のもと宿を運営させていただいているので……」
ふふふと、笑う彼女はやはり人ではないのではないかと威津那は直感的に感じた。
自分と似た闇の匂いを感じる…とさえも思うと親近感が湧く。
「威津那さん、女将さんに惚れちゃダメよ。食べられちゃうんだから!」
「え…それはどっちの意味で?」
威津那は意地悪で聞いてみる。
「両方………」
ぽつりと、橘は暗く真剣に呟く。
「通りで、刀は置いて行けと陰陽寮長がいうわけよね……」
咲羅子はため息を吐く。
口には出さないけれど退魔の刀の持ち主の咲羅子には女将の存在が『鬼』だとわかる。
刀を持っていったら刀が敵意を発してしまう事もあるから置いていけ言うことだった。
実態の鬼なのか、作られた鬼なのか、はたまた地獄の仕事から逃げてきた鬼なのか…そこまではわからないけれど、こう言う時は正体は口に出さないのがお決まりなのでいわないけれど……
咲羅子はチラリと季節を見る。
その視線を見て、『わかってる』と口パクで安心させられた。
そのことに咲羅子はホッとする。
季節は養子といえど、桜庭家の者。
咲羅子が生まれる前、咲羅子の母ととんでもない事件に散々巻き込まれたと言っていた事を思い出した。
四人の行儀良さに、女将は微笑んだ。
部屋は二つ用意されていて、紅葉と滝壺が観られる風景の良い部屋だった。
夜になるとちょうど満月でこの世のものとは思えない美しい景色が見られると言う。
二組は男女別れて山伏の服装を着替えることにした。
男物は青っぽい浴衣に黒の羽織で男らしく、女物は桃色の浴衣に赤の羽織で女性らしい。
着替えたら、廊下に出て、すでに用意されている食事処に案内をしてくれる手筈になっていた。
「わぁ!威津那似合う!かっこいい!素敵すぎるぅっ!」
橘は威津那の浴衣姿に興奮する。
「季節も、素敵よ…」
男らしいガタイの良い男性の着物は男としての魅力があると思う。
恥ずかしくて、咲羅子は顔を赤くして下を向く。
意外と女の子らしい。
本当だったら男から女性の愛らしさを褒めてやられなばならなかったが、見惚れて声が出なかったのはじじつだ。
「女性の浴衣って、やっぱりいいですね…隊長」
「そうだな…」
わざとボソボソ声で喋る。
歳の近い二人は同じ感想を持つ。
(未来の嫁が一番可愛い)
と同時に思う。
宴会場には四人だけ。
山の幸、川の幸のお料理が運ばれてきて、旅行に来たー!という感じを味わう。
「やっぱ、ここの旅館最高です!おいしぃ!また家族で来ますね!」
橘はおいしいものに満たされてほくほく笑顔だ。
「来年家族が増えてることを祈ってますよ。お客様、今夜作っちゃいますか?用意しますよ?」
料理を作る感覚で女将は言う。
「やだー!女将さんったら!出来たらそうして欲しいですぅ!」
お酒を少し飲んでほろ酔いの橘は気分良くそう言ってしまう。
「こら、橘、はしたないこと言わないの!」
咲羅子は顔を赤らめて注意する。
(まるでそれが目的で旅館に来たようじゃない……季節の疲れを取るための温泉旅行なのに……)
とは思うものの、あの険しい山登りで尚更疲れちゃうんじゃないの?とか矛盾に感じる。
季節には心も体も癒えてほしいと咲羅子は切実に思うのだった。
「それでは、良きに計らっておきますね。」
オホホといって女将さんは用意しにいった。
☆
布団は各部屋、一組の大きめの布団が用意されていた。
「本当に用意されるなんて………」
咲羅子は顔を真っ赤にする。
「これはカップル別々の部屋ってことでイイのよね?」
橘は戸惑いながら威津那を見る。
「そういうことなのかな……」
威津那も顔を真っ赤にしている。
「だめよ!私と橘で、一組!季節と威津那で一組!決定!」
咲羅子は指をビシっと指して、そう言い切った。
「隊長、よろしくお願いします」
「マジで俺と寝る気か?」
「え、隊長…僕に何をしようと…」
頬をわざと赤らめて自分の体を抱く。
「なんもせんわ!布団を貰いに行けば良いだけだろ!」
季節は酔いも覚めて、ボケた事を言う威津那にすかさずツッコミを入れる。
「むー!せっかくの機会なのに!」
橘は咲羅子に抗議する。
「だって、恥ずかしいじゃない。
まだ結婚前だし、初夜のドキドキは取っておかなきゃね。橘。」
姉のように咲羅子は優しく諭す。
それでも、橘はむすっとして、
「私は今すぐにも結ばれたい!そうすれば咲羅子姐さんも愛でたく結ばれるじゃない!」
「正式に結婚してからでしょ!威津那にはレッドスパイを滅す使命もあるでしょ!わきまえなさい!」
本気で咲羅子は叱った。
「そうだね、手を出したら命の糸切られちゃうからね」
と、威津那は無謀な口論をやめさせるためにそう言う。
「むう…………ごめんなさい……」
橘は狐耳を後ろに下げて俯いて謝った。
しかも瞳に涙まで溜めて反省しているようだ。
「か、可愛すぎるでしょ!そんな橘を、男に襲わせたくないのぉぉぉ!」
思わずぎゅっと咲羅子は抱きしめる。
「ごめんね、きつい事言ってー!泣いちゃダメ、よしよし!」
「ううん、私も変な欲情なんかして興奮してはしたなかったの……」
季節は、その言葉にピコン!と来て、
「欲情だけに浴場へいこう!なーんてな……はは…」
寒い親父ギャグをかました季節を冷たい視線で咲羅子は見た。
「隊長……天才ですね!面白いです!」
すべった駄洒落を全力で威津那は褒める。
季節は逆にいろいろ恥ずかしくなって顔を真っ赤にして、
「いや、その、橘が哀れでな……」
「そんな慰め方いらないもーーん!」
と、橘は叫んだ。
女将はとても美しい人だった。
けれど、頭に白い角がちょこんと生えているのは目の錯覚ではなさそうだった。
それを皆見て見ぬ振りをする。
橘は何か知っているようなので後で聞くことにしようと三人は思う。
何かの髪飾りだといいのだが……
廊下も綺麗で埃ひとつ落ちてない新築のようだ。
「本日は予約の方のみ貸切なのですが、山登りで足を怪我された方が数人いらっしゃって、離れたお部屋に監禁しておりますが、気になったらおしゃってください。」
にっこり微笑んで女将はこともなげに、そう言った。
「……監禁って…?」
不穏な単語を聞いて聞き間違えかと思い咲羅子は思わず聞き返す。
「あ、軟禁の間違えでした……ほほほ。」
口もとを抑えてごまかし笑う。
どちらにしても客扱いはしていないと言うことだろうか。
「ご招待した方しか本来、当宿は入れないので、警戒でそうしているのです。」
「しっかりしてますね」
と、威津那はにこやかに言った。
「そう言う契約のもと宿を運営させていただいているので……」
ふふふと、笑う彼女はやはり人ではないのではないかと威津那は直感的に感じた。
自分と似た闇の匂いを感じる…とさえも思うと親近感が湧く。
「威津那さん、女将さんに惚れちゃダメよ。食べられちゃうんだから!」
「え…それはどっちの意味で?」
威津那は意地悪で聞いてみる。
「両方………」
ぽつりと、橘は暗く真剣に呟く。
「通りで、刀は置いて行けと陰陽寮長がいうわけよね……」
咲羅子はため息を吐く。
口には出さないけれど退魔の刀の持ち主の咲羅子には女将の存在が『鬼』だとわかる。
刀を持っていったら刀が敵意を発してしまう事もあるから置いていけ言うことだった。
実態の鬼なのか、作られた鬼なのか、はたまた地獄の仕事から逃げてきた鬼なのか…そこまではわからないけれど、こう言う時は正体は口に出さないのがお決まりなのでいわないけれど……
咲羅子はチラリと季節を見る。
その視線を見て、『わかってる』と口パクで安心させられた。
そのことに咲羅子はホッとする。
季節は養子といえど、桜庭家の者。
咲羅子が生まれる前、咲羅子の母ととんでもない事件に散々巻き込まれたと言っていた事を思い出した。
四人の行儀良さに、女将は微笑んだ。
部屋は二つ用意されていて、紅葉と滝壺が観られる風景の良い部屋だった。
夜になるとちょうど満月でこの世のものとは思えない美しい景色が見られると言う。
二組は男女別れて山伏の服装を着替えることにした。
男物は青っぽい浴衣に黒の羽織で男らしく、女物は桃色の浴衣に赤の羽織で女性らしい。
着替えたら、廊下に出て、すでに用意されている食事処に案内をしてくれる手筈になっていた。
「わぁ!威津那似合う!かっこいい!素敵すぎるぅっ!」
橘は威津那の浴衣姿に興奮する。
「季節も、素敵よ…」
男らしいガタイの良い男性の着物は男としての魅力があると思う。
恥ずかしくて、咲羅子は顔を赤くして下を向く。
意外と女の子らしい。
本当だったら男から女性の愛らしさを褒めてやられなばならなかったが、見惚れて声が出なかったのはじじつだ。
「女性の浴衣って、やっぱりいいですね…隊長」
「そうだな…」
わざとボソボソ声で喋る。
歳の近い二人は同じ感想を持つ。
(未来の嫁が一番可愛い)
と同時に思う。
宴会場には四人だけ。
山の幸、川の幸のお料理が運ばれてきて、旅行に来たー!という感じを味わう。
「やっぱ、ここの旅館最高です!おいしぃ!また家族で来ますね!」
橘はおいしいものに満たされてほくほく笑顔だ。
「来年家族が増えてることを祈ってますよ。お客様、今夜作っちゃいますか?用意しますよ?」
料理を作る感覚で女将は言う。
「やだー!女将さんったら!出来たらそうして欲しいですぅ!」
お酒を少し飲んでほろ酔いの橘は気分良くそう言ってしまう。
「こら、橘、はしたないこと言わないの!」
咲羅子は顔を赤らめて注意する。
(まるでそれが目的で旅館に来たようじゃない……季節の疲れを取るための温泉旅行なのに……)
とは思うものの、あの険しい山登りで尚更疲れちゃうんじゃないの?とか矛盾に感じる。
季節には心も体も癒えてほしいと咲羅子は切実に思うのだった。
「それでは、良きに計らっておきますね。」
オホホといって女将さんは用意しにいった。
☆
布団は各部屋、一組の大きめの布団が用意されていた。
「本当に用意されるなんて………」
咲羅子は顔を真っ赤にする。
「これはカップル別々の部屋ってことでイイのよね?」
橘は戸惑いながら威津那を見る。
「そういうことなのかな……」
威津那も顔を真っ赤にしている。
「だめよ!私と橘で、一組!季節と威津那で一組!決定!」
咲羅子は指をビシっと指して、そう言い切った。
「隊長、よろしくお願いします」
「マジで俺と寝る気か?」
「え、隊長…僕に何をしようと…」
頬をわざと赤らめて自分の体を抱く。
「なんもせんわ!布団を貰いに行けば良いだけだろ!」
季節は酔いも覚めて、ボケた事を言う威津那にすかさずツッコミを入れる。
「むー!せっかくの機会なのに!」
橘は咲羅子に抗議する。
「だって、恥ずかしいじゃない。
まだ結婚前だし、初夜のドキドキは取っておかなきゃね。橘。」
姉のように咲羅子は優しく諭す。
それでも、橘はむすっとして、
「私は今すぐにも結ばれたい!そうすれば咲羅子姐さんも愛でたく結ばれるじゃない!」
「正式に結婚してからでしょ!威津那にはレッドスパイを滅す使命もあるでしょ!わきまえなさい!」
本気で咲羅子は叱った。
「そうだね、手を出したら命の糸切られちゃうからね」
と、威津那は無謀な口論をやめさせるためにそう言う。
「むう…………ごめんなさい……」
橘は狐耳を後ろに下げて俯いて謝った。
しかも瞳に涙まで溜めて反省しているようだ。
「か、可愛すぎるでしょ!そんな橘を、男に襲わせたくないのぉぉぉ!」
思わずぎゅっと咲羅子は抱きしめる。
「ごめんね、きつい事言ってー!泣いちゃダメ、よしよし!」
「ううん、私も変な欲情なんかして興奮してはしたなかったの……」
季節は、その言葉にピコン!と来て、
「欲情だけに浴場へいこう!なーんてな……はは…」
寒い親父ギャグをかました季節を冷たい視線で咲羅子は見た。
「隊長……天才ですね!面白いです!」
すべった駄洒落を全力で威津那は褒める。
季節は逆にいろいろ恥ずかしくなって顔を真っ赤にして、
「いや、その、橘が哀れでな……」
「そんな慰め方いらないもーーん!」
と、橘は叫んだ。
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