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未来の縁
10☆安堵と切なさと
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地面は穴が塞ぎ封印された芽の周りに晴綛はその場に仕上げだというように御幣を立てる。
「………父の予言が本当にならなければいいけれど……」
それは、日和が滅びの危機に直面していると言うことなのだから……と威津那はつい、暗い思考をつぶやいた途端、咲羅子にバンッ!と背中を思いっきり叩かれた。
あやかしになっての力は半端なく、つい涙目になって睨む。
「何いってんの!そうならないように日和を守るのは今を生きる私達の役目なのよ!」
ふんっ!と胸を張り鼻息荒い。
「暗いこと考えてる威津那に励ましの言葉よ。咲羅子姐さんをうらんじゃだめよ?」
橘は咲羅子の行動を庇いながら威津那に忠告する。
いや、今までの恨みもかなりこもっていた気がする…とは思うものの、今度は優しく季節に肩を叩かれた。
「そうだな、生きてる人間にしか、未来は変えられない。だから俺達はこの世を精一杯生きることが大事なんだ…亡くなっていった者のためにもな」
季節は芯を持った力強い言霊を言う。
それは戦地を生き延び仲間たちの無念をじかに見てきたからだろう。
「希望を持たない人に未来などないと、思います。たとえ暗い未来が来ることがあったとしても生きて未来を作りかえていく事が人間の役目でしょう?」
槐寿も明るい言霊を放つ。
「威津那殿、今後も一緒に宮中で仕事をしていきましょう。そして、僕の右腕となってくださいねっ!」
部下としてこき使うまんまんな高良は照れ隠しでもあり、そう言って威津那の手を握った。
みんなから、希望の言葉を…キラキラと輝く言霊を受け止めて、威津那の中の不穏な暗い未来を消し去ってくれる言霊に優しさと嬉しさが不安を浄化してくれるようだ……
「うん…これからも、末長くよろしくお願いします…!」
代表として、高良の手をとってそういった。
「それ、私に言ってよ!もうっ!」
通常に戻ったいつなの天然ボケぶりに橘はわざと憤って見せてみんなを笑わせたのだった。
橘の尻尾は九本ではなく、一本にもどり、九尾の依代となっていた紺太の尻尾を高良に無事に返した。
高良はタヌさんと相談して大切に保管をすることにした。
「菊は?」
威津那は菊の気配が感じられないので橘に尋ねる。
「疲れたから、私の中でしばらく寝るって」
橘は、胸を押さえて菊が自分の命を永らえさせてくれていることに感謝する。
「さぁ、最後の仕事だ。お主らの勾玉を御幣にかけるのだ。」
祭壇を作り上げ、最後の仕上げは四神の力を込めた勾玉で飾ることだ。
四人は晴綛がいうように、あやかしの四神の勾玉を四か所にかけた。
「あ、あれ?」
「うっ…」
「体が重力に…勝て、ない?」
勾玉を外し御幣にかけて人間に戻ったら四人は足腰が急に立たなくなるほどの疲労が襲ってきてその場に倒れた。
「い、言うの忘れてました。普通の人間には神を宿すのは苦で、あやかしがワンクッションですが、抜けるとかなりの疲労が襲うと……」
と、高良はいい、安堵感と達成感で気絶する。
咲羅子も季節も槐寿も気絶した。
能力を持った依代としては最適な存在だとしても所詮人間だった。
「無事なのは結局橘と威津那だけかの。」
晴綛はふーっとため息を吐いて、改めて橘をじっと見つめてから頬を愛おしく撫でる。
「….辛い思いをさせてすまなかったの、橘……」
焔に橘を攫われたと知って一番心配していた。
無事でよかったと、心底ホッとして心の糸が切れた。
涙が溢れて止まらず、愛娘を胸の中に閉じ込めた。
「お前を白狐に…させてしまってすまぬ….」
橘の寿命は最悪、親より短いと思うと切なく、辛い……
「そんなことないよ!白狐にならなければ綺麗な体に生まれ変われなかったもん!気にしなくていいのっ!」
と、泣く父を励まそうとするが、
「気にするわ!バカ娘!」
その言葉に威津那も胸が辛く、ひしっと、後ろから橘を抱きしめて、三人で無事を喜び泣いた。
倒れて疲れて眠る四人を威津那の烏で家まで運んでもらい穢れと疲れを落とすために物忌という休暇を正月過ぎまで取る事になった。
「………父の予言が本当にならなければいいけれど……」
それは、日和が滅びの危機に直面していると言うことなのだから……と威津那はつい、暗い思考をつぶやいた途端、咲羅子にバンッ!と背中を思いっきり叩かれた。
あやかしになっての力は半端なく、つい涙目になって睨む。
「何いってんの!そうならないように日和を守るのは今を生きる私達の役目なのよ!」
ふんっ!と胸を張り鼻息荒い。
「暗いこと考えてる威津那に励ましの言葉よ。咲羅子姐さんをうらんじゃだめよ?」
橘は咲羅子の行動を庇いながら威津那に忠告する。
いや、今までの恨みもかなりこもっていた気がする…とは思うものの、今度は優しく季節に肩を叩かれた。
「そうだな、生きてる人間にしか、未来は変えられない。だから俺達はこの世を精一杯生きることが大事なんだ…亡くなっていった者のためにもな」
季節は芯を持った力強い言霊を言う。
それは戦地を生き延び仲間たちの無念をじかに見てきたからだろう。
「希望を持たない人に未来などないと、思います。たとえ暗い未来が来ることがあったとしても生きて未来を作りかえていく事が人間の役目でしょう?」
槐寿も明るい言霊を放つ。
「威津那殿、今後も一緒に宮中で仕事をしていきましょう。そして、僕の右腕となってくださいねっ!」
部下としてこき使うまんまんな高良は照れ隠しでもあり、そう言って威津那の手を握った。
みんなから、希望の言葉を…キラキラと輝く言霊を受け止めて、威津那の中の不穏な暗い未来を消し去ってくれる言霊に優しさと嬉しさが不安を浄化してくれるようだ……
「うん…これからも、末長くよろしくお願いします…!」
代表として、高良の手をとってそういった。
「それ、私に言ってよ!もうっ!」
通常に戻ったいつなの天然ボケぶりに橘はわざと憤って見せてみんなを笑わせたのだった。
橘の尻尾は九本ではなく、一本にもどり、九尾の依代となっていた紺太の尻尾を高良に無事に返した。
高良はタヌさんと相談して大切に保管をすることにした。
「菊は?」
威津那は菊の気配が感じられないので橘に尋ねる。
「疲れたから、私の中でしばらく寝るって」
橘は、胸を押さえて菊が自分の命を永らえさせてくれていることに感謝する。
「さぁ、最後の仕事だ。お主らの勾玉を御幣にかけるのだ。」
祭壇を作り上げ、最後の仕上げは四神の力を込めた勾玉で飾ることだ。
四人は晴綛がいうように、あやかしの四神の勾玉を四か所にかけた。
「あ、あれ?」
「うっ…」
「体が重力に…勝て、ない?」
勾玉を外し御幣にかけて人間に戻ったら四人は足腰が急に立たなくなるほどの疲労が襲ってきてその場に倒れた。
「い、言うの忘れてました。普通の人間には神を宿すのは苦で、あやかしがワンクッションですが、抜けるとかなりの疲労が襲うと……」
と、高良はいい、安堵感と達成感で気絶する。
咲羅子も季節も槐寿も気絶した。
能力を持った依代としては最適な存在だとしても所詮人間だった。
「無事なのは結局橘と威津那だけかの。」
晴綛はふーっとため息を吐いて、改めて橘をじっと見つめてから頬を愛おしく撫でる。
「….辛い思いをさせてすまなかったの、橘……」
焔に橘を攫われたと知って一番心配していた。
無事でよかったと、心底ホッとして心の糸が切れた。
涙が溢れて止まらず、愛娘を胸の中に閉じ込めた。
「お前を白狐に…させてしまってすまぬ….」
橘の寿命は最悪、親より短いと思うと切なく、辛い……
「そんなことないよ!白狐にならなければ綺麗な体に生まれ変われなかったもん!気にしなくていいのっ!」
と、泣く父を励まそうとするが、
「気にするわ!バカ娘!」
その言葉に威津那も胸が辛く、ひしっと、後ろから橘を抱きしめて、三人で無事を喜び泣いた。
倒れて疲れて眠る四人を威津那の烏で家まで運んでもらい穢れと疲れを落とすために物忌という休暇を正月過ぎまで取る事になった。
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