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9、真一郎さん
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ホストクラブの店長の真一郎さんは三五歳
高級マンションに住んでいた。
すずさんと住んでいたアパートなんかと比べ物にならない程の立派な住まいだった。
一言でいえば白亜な宮殿の一室って感じだ。
テレビで『ホスト特集!女の金でリッチな暮らし!?許せますか?』
で観た通りの高級マンション…
この人はどのくらい女を泣かせてきたんだろう…
やっぱり悪い人なのかも…と考えをしてしまった。
けれど、今目の前で、高そうなソファーまで抱えてもらって座らせてもらい、足の手当てをしてくれている。
そんなに悪い人じゃないのかも知れない。
ちょっと顔見知りなだけの僕を丁寧に手当てしてくれて優しい。
もし、僕が女だったらやっぱり惚れてしまうかもしれない…
湿布を貼って包帯を丁寧にまいて、僕にニッと微笑んだ。
なんだか、不安な気持ちを吹き飛ばしてくれる笑顔。
つられて、かたい表情だった僕も頬を緩めた。
「よし、これで大丈夫だ。ちょっと着替えてくるから、そこで待っていてくれ」
ミルクをカップに注ぎレンジに入れ、自室に入っていった。
待っている間、何もすることがないので、部屋を ぼーっと眺めていたが、奇妙なモノが目に飛び込んできた。
室内は白を貴重としたシンプルなものだけど、所々に子供の玩具が散らかっていた。
なんで、おもちゃなんかが落ちてるんだろう?
ふと隣を見ればウサギの縫いグルミが…?
手にとって持ち上げてよく見てみると、子供の字で「あい」とかいてあった。
ウサギの名前だろうか?
「やあ、待たせてすまなかったね」
「あ、いいえ…」?
真一郎さんは意外に早く着替えて来た。
しかもミルクを暖めていたレンジが調度チーンと鳴った。
真一郎さんはスーツを脱いでシャツのボタンを適度に鍛えた胸が見える位あけたラフな格好で戻ってきた。
カップを持って正面に座り、僕にカップを進めてくれた。
「あ、ありがとうございます」
手にしていた縫いグルミをもとの場所に置く。
けれど、その縫いぐるみが気になる…
なので、
「この、ぬいぐるみ可愛いですね」
遠回しに聞いてみたつもりだけど、露骨だったかも知れないと反省。
「ああ、可愛いだろう?」
真一郎さんは頭をかき苦笑した。
真一郎さんの趣味というわけでも無さそうだが、もし趣味だったら恐い。
「うちの子の玩具だよ。散らかっていて恥ずかしいな」
「こ、こども?」
「うん。男女の双児のシングルファザー」
もしかして、『これはあなたの子供よ!』
とか言われて押し付けられた子供とか?
無駄なことを勘ぐっているのを察したのか、真一郎さんはクスクスと笑いながら説明してくれた。
「違うよ、とっても愛していた妻の忘れ形見。妻は一昨年死んでしまったんだ。」
「そ、そうですか…ごめんなさい…」
気まずいことを聞いてしまった気がして頭を下げて謝った。
「誤らなくていいよ。それに付け足すとしたら、俺はすずちゃんの義理の兄だよ。」
「義理の兄って?」
「俺の妻はすずちゃんの姉なんだ」
「え…え~~!?」
驚きの余り大声で叫んでしまった。
「声が高い!子供が目がさめちゃうだろう」
チョップで軽く僕の頭を冗談で叩いた。?
「ご、ごめんなさい。だけど、どうして僕の事知ってるんですか?」
面接で会ったとは言え、全くの初対面である。
そんな僕の驚きに彼は、女子高生がもつようなシール手帳に、僕とすずさんが写ってるプリクラを見せた。
ゲームセンターに遊びにいった時、撮った物だ。
僕には半分も分けてよこさず、すずさんがもっていて、なくしてしまったというシールの一部だった。?
どこでなくしたかは、きっとあの、ホストクラブだろう。
シールのフレームはなく、まん中に堂々と、夜露死苦!と書いてあって、僕の顔も半分その豪快な赤文字で埋まってるのによく、僕だと理解できたな…
「君のことはすずちゃんから聞いている通りだね。とっても面白くていい子だ。」
「面白くていい子ですか?」
「ああ、家事手伝いをよくこなすいい子だともいっていたよ。」
すずさんが僕のことをそんな風に言ってくれていたなんて嬉しかった。
だけど、もう、すずさんのところに戻れない…?
そう思うとまた、涙が出てきた。
「おいおいどうして泣くんだ?俺、なにか悪いことしたかい?」
「い、いえ…すずさんが僕のことをそんな風に思ってくれていたのに…僕は僕は……」
僕は事情をこの人に全て話した。
高級マンションに住んでいた。
すずさんと住んでいたアパートなんかと比べ物にならない程の立派な住まいだった。
一言でいえば白亜な宮殿の一室って感じだ。
テレビで『ホスト特集!女の金でリッチな暮らし!?許せますか?』
で観た通りの高級マンション…
この人はどのくらい女を泣かせてきたんだろう…
やっぱり悪い人なのかも…と考えをしてしまった。
けれど、今目の前で、高そうなソファーまで抱えてもらって座らせてもらい、足の手当てをしてくれている。
そんなに悪い人じゃないのかも知れない。
ちょっと顔見知りなだけの僕を丁寧に手当てしてくれて優しい。
もし、僕が女だったらやっぱり惚れてしまうかもしれない…
湿布を貼って包帯を丁寧にまいて、僕にニッと微笑んだ。
なんだか、不安な気持ちを吹き飛ばしてくれる笑顔。
つられて、かたい表情だった僕も頬を緩めた。
「よし、これで大丈夫だ。ちょっと着替えてくるから、そこで待っていてくれ」
ミルクをカップに注ぎレンジに入れ、自室に入っていった。
待っている間、何もすることがないので、部屋を ぼーっと眺めていたが、奇妙なモノが目に飛び込んできた。
室内は白を貴重としたシンプルなものだけど、所々に子供の玩具が散らかっていた。
なんで、おもちゃなんかが落ちてるんだろう?
ふと隣を見ればウサギの縫いグルミが…?
手にとって持ち上げてよく見てみると、子供の字で「あい」とかいてあった。
ウサギの名前だろうか?
「やあ、待たせてすまなかったね」
「あ、いいえ…」?
真一郎さんは意外に早く着替えて来た。
しかもミルクを暖めていたレンジが調度チーンと鳴った。
真一郎さんはスーツを脱いでシャツのボタンを適度に鍛えた胸が見える位あけたラフな格好で戻ってきた。
カップを持って正面に座り、僕にカップを進めてくれた。
「あ、ありがとうございます」
手にしていた縫いグルミをもとの場所に置く。
けれど、その縫いぐるみが気になる…
なので、
「この、ぬいぐるみ可愛いですね」
遠回しに聞いてみたつもりだけど、露骨だったかも知れないと反省。
「ああ、可愛いだろう?」
真一郎さんは頭をかき苦笑した。
真一郎さんの趣味というわけでも無さそうだが、もし趣味だったら恐い。
「うちの子の玩具だよ。散らかっていて恥ずかしいな」
「こ、こども?」
「うん。男女の双児のシングルファザー」
もしかして、『これはあなたの子供よ!』
とか言われて押し付けられた子供とか?
無駄なことを勘ぐっているのを察したのか、真一郎さんはクスクスと笑いながら説明してくれた。
「違うよ、とっても愛していた妻の忘れ形見。妻は一昨年死んでしまったんだ。」
「そ、そうですか…ごめんなさい…」
気まずいことを聞いてしまった気がして頭を下げて謝った。
「誤らなくていいよ。それに付け足すとしたら、俺はすずちゃんの義理の兄だよ。」
「義理の兄って?」
「俺の妻はすずちゃんの姉なんだ」
「え…え~~!?」
驚きの余り大声で叫んでしまった。
「声が高い!子供が目がさめちゃうだろう」
チョップで軽く僕の頭を冗談で叩いた。?
「ご、ごめんなさい。だけど、どうして僕の事知ってるんですか?」
面接で会ったとは言え、全くの初対面である。
そんな僕の驚きに彼は、女子高生がもつようなシール手帳に、僕とすずさんが写ってるプリクラを見せた。
ゲームセンターに遊びにいった時、撮った物だ。
僕には半分も分けてよこさず、すずさんがもっていて、なくしてしまったというシールの一部だった。?
どこでなくしたかは、きっとあの、ホストクラブだろう。
シールのフレームはなく、まん中に堂々と、夜露死苦!と書いてあって、僕の顔も半分その豪快な赤文字で埋まってるのによく、僕だと理解できたな…
「君のことはすずちゃんから聞いている通りだね。とっても面白くていい子だ。」
「面白くていい子ですか?」
「ああ、家事手伝いをよくこなすいい子だともいっていたよ。」
すずさんが僕のことをそんな風に言ってくれていたなんて嬉しかった。
だけど、もう、すずさんのところに戻れない…?
そう思うとまた、涙が出てきた。
「おいおいどうして泣くんだ?俺、なにか悪いことしたかい?」
「い、いえ…すずさんが僕のことをそんな風に思ってくれていたのに…僕は僕は……」
僕は事情をこの人に全て話した。
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