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願いと妄想の夢違え
10☆再開
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法子は首を絞められて意識を失う一瞬、突然李流が男に落ちてきて助かった。
その李流は直ぐにパッと消えてしまったけれど、その隙を塗って廊下をかけて、倉庫のような所にとりあえず逃げ込んだ。
逃げ切れれば、最悪な事態は避けられると、法子は思う。
現世の自分が目が覚めるまでの間何とかこの宮殿の中を隠れて逃げようと思う。
そして、その間に……
「大丈夫!きっと李流が助けてくれる!」
法子はすくっと立ち上がって、そっと倉庫の扉を開けて廊下の左右を確認すると誰もいない。
とりあえず、直感で陰陽寮を探す、それがいいと、囁かれている気がする。
そこには、李流がいると思うから、
「きっと!きっと!絶対じゃ!」
廊下を一歩出た瞬間、奴に気づかれ憎悪が法子の背中をさす。
怖くて後ろを振り向けない。
振り向きたくない。
夢の中の宮殿の長い長い廊下が続いてまっすぐだ。
逃げ道は進むかまた部屋に逃げるかしかない。
法子を捕まえようとしている男は一人ではない、影のように蠢く人影が法子を捕まえようと捉えて亡きものにしようとしている。
この恐怖で目が覚める前に死んでしまうのではないか?という想像してしまう。
それもとてつもなく強く。
むき出しの魂の夢だからこそ強く感じる。
ぎゅっと怖さに瞼を瞑る。
何も見たくないし、今後怒ることが怖い……
長い廊下はくらい洞窟のように不気味で闇は後ろから迫ってくる。
夢で目を瞑るのは変な感覚だ。
変なのは、この夢自体……
夢……夢って……
「……夢は不安の言霊ではない、夢は希望じゃ……」
法子は無意識にそう呟きひらめく。
「だから、私の希望は目の前に現れる!現れるに決まっているのじゃ!」
閉じていた瞳を開けて目の前を向くと、
「法子さま!」
「李流っ!」
李流は優しい光のように輝いて見える。
優しい温かさ。
魂から結ばれた、私の伴侶……
法子は李流に手を伸ばす。
李流は法子の背を抱き小さな体を包み込んでくれた。
何者からをも護るように……
そうすると、後ろに蠢いた闇の触手は手は消え散った……
「本物の李流なのか?」
法子は涙をボロボロと零しながら顔を上げる。
「はい。お待たせして申し訳ありません。法子様」
そう言い、片膝を折り拳を作って地に置いて礼をする。
李流の姿は伝統衛士……武士のような武装した格好でカッコよすぎる。
西洋の王子様のナイトであり、キリリとした誠実な武士だ。
「わーーん!やっぱり李流は素敵すぎるぞよ!」
法子は李流に惚れ直してしまう。
感情がぐしゃぐしゃになって、とりあえず李流に抱きついて抱擁することに徹する。
李流は法子が落ち着くのを優しく抱きしめて待ってくれた。
☆
「その偽宮の夫を探して、説得するか脅して離婚させるか、従者エンディングにしてしまえばいい……という、簡単なことなのだな!」
と、法子は納得した。
「だけど、既に結婚しているのなら、従者エンディングは無理なことですよね……やはり……」
李流は腰に差した刀に手を掛ける。
罪に問われようとも夢の中なのだから、現実では罪に問われないと思うが、これは予知夢に近い夢。
将来自分は誰かを手にかける可能性があることなのか……と少し不安があるが、己がしっかりしていれば大丈夫だ……と心に留める。
「そこのもの!何者だ!皇女殿下のお通りだぞ!」
と怒鳴るように声をかけられた。
「あいつだ!皇女と結婚して我が物にしようとしている男は!」
法子は怒り叫びながら言う。
夢の中の記憶が優先して確信する。
李流は現実の方の記憶しかないために、訝しむ。
男の格好が滑稽だった。
ド派手なマントに金の王冠。
細かなレースが立った東洋の合わせ襟のような服装に派手な羽織を着て、下は派手さを引き立てるように漆黒の袴に僅かに金の刺繍をされている、統一性のない服装が滑稽に見える男だった。
夢の中だから魂の浅はかさが現れて見えるのだ。
だが、男の格好はこの城に似合う。
もう一人の夢の主だからだろうなと李流はひとり納得し、隣に微笑むのは夜子に似ている。
皇女の夜子は不気味に微笑む口元を扇で隠してゲームを楽しんでいるようだった。
その李流は直ぐにパッと消えてしまったけれど、その隙を塗って廊下をかけて、倉庫のような所にとりあえず逃げ込んだ。
逃げ切れれば、最悪な事態は避けられると、法子は思う。
現世の自分が目が覚めるまでの間何とかこの宮殿の中を隠れて逃げようと思う。
そして、その間に……
「大丈夫!きっと李流が助けてくれる!」
法子はすくっと立ち上がって、そっと倉庫の扉を開けて廊下の左右を確認すると誰もいない。
とりあえず、直感で陰陽寮を探す、それがいいと、囁かれている気がする。
そこには、李流がいると思うから、
「きっと!きっと!絶対じゃ!」
廊下を一歩出た瞬間、奴に気づかれ憎悪が法子の背中をさす。
怖くて後ろを振り向けない。
振り向きたくない。
夢の中の宮殿の長い長い廊下が続いてまっすぐだ。
逃げ道は進むかまた部屋に逃げるかしかない。
法子を捕まえようとしている男は一人ではない、影のように蠢く人影が法子を捕まえようと捉えて亡きものにしようとしている。
この恐怖で目が覚める前に死んでしまうのではないか?という想像してしまう。
それもとてつもなく強く。
むき出しの魂の夢だからこそ強く感じる。
ぎゅっと怖さに瞼を瞑る。
何も見たくないし、今後怒ることが怖い……
長い廊下はくらい洞窟のように不気味で闇は後ろから迫ってくる。
夢で目を瞑るのは変な感覚だ。
変なのは、この夢自体……
夢……夢って……
「……夢は不安の言霊ではない、夢は希望じゃ……」
法子は無意識にそう呟きひらめく。
「だから、私の希望は目の前に現れる!現れるに決まっているのじゃ!」
閉じていた瞳を開けて目の前を向くと、
「法子さま!」
「李流っ!」
李流は優しい光のように輝いて見える。
優しい温かさ。
魂から結ばれた、私の伴侶……
法子は李流に手を伸ばす。
李流は法子の背を抱き小さな体を包み込んでくれた。
何者からをも護るように……
そうすると、後ろに蠢いた闇の触手は手は消え散った……
「本物の李流なのか?」
法子は涙をボロボロと零しながら顔を上げる。
「はい。お待たせして申し訳ありません。法子様」
そう言い、片膝を折り拳を作って地に置いて礼をする。
李流の姿は伝統衛士……武士のような武装した格好でカッコよすぎる。
西洋の王子様のナイトであり、キリリとした誠実な武士だ。
「わーーん!やっぱり李流は素敵すぎるぞよ!」
法子は李流に惚れ直してしまう。
感情がぐしゃぐしゃになって、とりあえず李流に抱きついて抱擁することに徹する。
李流は法子が落ち着くのを優しく抱きしめて待ってくれた。
☆
「その偽宮の夫を探して、説得するか脅して離婚させるか、従者エンディングにしてしまえばいい……という、簡単なことなのだな!」
と、法子は納得した。
「だけど、既に結婚しているのなら、従者エンディングは無理なことですよね……やはり……」
李流は腰に差した刀に手を掛ける。
罪に問われようとも夢の中なのだから、現実では罪に問われないと思うが、これは予知夢に近い夢。
将来自分は誰かを手にかける可能性があることなのか……と少し不安があるが、己がしっかりしていれば大丈夫だ……と心に留める。
「そこのもの!何者だ!皇女殿下のお通りだぞ!」
と怒鳴るように声をかけられた。
「あいつだ!皇女と結婚して我が物にしようとしている男は!」
法子は怒り叫びながら言う。
夢の中の記憶が優先して確信する。
李流は現実の方の記憶しかないために、訝しむ。
男の格好が滑稽だった。
ド派手なマントに金の王冠。
細かなレースが立った東洋の合わせ襟のような服装に派手な羽織を着て、下は派手さを引き立てるように漆黒の袴に僅かに金の刺繍をされている、統一性のない服装が滑稽に見える男だった。
夢の中だから魂の浅はかさが現れて見えるのだ。
だが、男の格好はこの城に似合う。
もう一人の夢の主だからだろうなと李流はひとり納得し、隣に微笑むのは夜子に似ている。
皇女の夜子は不気味に微笑む口元を扇で隠してゲームを楽しんでいるようだった。
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