祈り姫

花咲マイコ

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願いと妄想の夢違え

13☆正しきエンディング

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「これは夢だ!現実ではない!俺は目が覚めたのに、おまえが目覚めなくなってどうする!」

 男は真剣に怒鳴って、李流を叱る。

「はっ!そうだった!」
 李流は我に返って目をぱちくりする。
 それに、不敬な夢を見ていた男に止められるとは思ってもみなかった。
 男はホッとして清々しい笑みをして、
「オレの負けだ!」
 夜子に向かって言い放つ。
「はっ!?な、何、勝手に宣言しているの!?」
 夜子は戸惑う。
 目が覚めたとしても、廃人として現し世をさまようだけのはずの人間が立派な輝きを放っている。
 そして、男の宣言に世界は闇から真っ白の輝く世界になる。
 男の顔は穏やかに李流に微笑んでいた。
 意外と意志の強そうなしっかりとした男になっていた。
 さっきの品のない男と別人格になっている。
 それは国を守る仕事をしている叔父のような雰囲気だった。
 そして、彼は雰囲気とともに年齢が上になっている気がする。

「あなたの出る幕はもうないのよ!何を今更邪魔しに出てくるのよ!」
 夜子は癇癪で指をさして怒鳴る。
「俺もこの夢の駒なんだろ……夢に口出す権利はあるはずだ。
 それに、このガキにずっと負けっぱなしなのも気に食わなかったしな」
 李流の自害を止めたことで一勝したそれだけで満足だ。
「ふん……まぁね……」
 夜子は腕を組んで気に食わないけれどそっぽを向いて肯定した。
「李流っ!」
 法子は元の幼い姿に戻って駆け寄り李流に抱きつく。
 李流も法子を優しく抱きしめた。
 この二人はほんとに恋愛していて絆も強いな……と男は苦笑した。
 この二人がもし最高エンディングを迎えたならば、現実では李流の望まないことが起きていただろう……
「参ったよ……君の皇室への忠誠心……夢の中とはいえ、皇女の旦那になることを諦めるよ。
 もう、俺にとっては昔の夢だけどね……」
 どうやら、男は少し未来の夢から来たようだった。
「ずっと心に残っていて、気になっていた……」
 夢の事でも現実で覚えていて時を超えてこの夢に戻ってきた様だと李流は察した。
 正気に戻ると素晴らしい理性的な性格なのかと思うと、夢とは本来の自分とはかけ離れた存在にもなり得る恐ろしく曖昧なものだな…と李流は改めて思う。
(まぁ、夢だから、深くは考えてはいけないという事なんだな……)
 現実的なものが好きな李流は夢の世界の曖昧さを受け入れた。
「現実に及ぼすのならば、俺も国民のひとりとして国のためにこの神がかった夢を終わりにする……君に感化されてこうなった。」
 男の着ているものは軍服だった。
 皇室はもとより国そのものを守る存在としての仕事を将来見つけた、ゲームにない【エンディング】を彼は迎えた。
 李流と法子の【エンディング】はゲームが終わったためにまだ未定だ……それは未来ある二人には正しいエンディングだ。

 
《我の勝ちだな……女狐》

 ハルの神の声が白い夢の世界に優しく響き、光り輝く大きなハルの神が満足げに小さくとも煌めく魂をもつ人間達を見つめていた。
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