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願いと妄想の夢違え
12☆闇堕ち
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「はっ!法子様!?」
夜子もいない。
男はいま闇に溶けるようにいなくなった。
闇に包まれ突然取り残された。
不覚だった……
男との対決に《夢中》になりすぎて法子様、夜子の存在が頭の中から抜けていた。
ただ、自分の想いをぶつけることに集中してしまっていた。
いや、陛下、皇族の事になると熱くなってしまう悪い癖……それよりも理性が効かなくなることがもうひとつある、自分の血筋のことを思う時だ……
(自分の弱点は分かってる……克服したいとは思うけど、なかなか上手くいかない……)
原因は父であり、我が国に侮辱を働く国の血が少しでも入っているのは嫌だという、どうしようもない己の潔癖さ……
冷静でいようと穏やかでいようと努めるが中々上手くいかないともどかしい気持ちになる。
暗闇の世界はわざと心の闇にヒシヒシと染み込むように心を解放しようとする。
普段ならば考えないように閉まっておく蓋が空いてしまう感覚だ。
慰めの言の葉が異様に欲しくなるのは感情で男を負かせた後遺症かもしれない。
闇は現実の世界で心を休ませるならば癒しになるが、ここは夢の中だ……しかもあやかしが作り出した異界の夢……
(これ以上は危険だ!)
と心を引き締めようとした時、
「李流!私も李流の強い想いを感じたぞ!だから、その思いを貫いて……」
法子は暗闇に光を放つが如くの言葉を届ける。
そして、その光は大きな白く輝く扉となって李流の前に現れた。
「今度はあなたに運命を委ねることにしたわ……夢は所詮夢……だけど、現実と繋がる誓約をしたなら、あなた達の方が適任よ……なにせ、ハルの神との契約の駒なのだから……」
ふふっと夜子は笑う。
「さぁ、祈り姫を救いたければこの扉を開けなさい……そして真の誓約の賭事が始まるわ……ふふ」
法子様が夜子に囚われていると思うと迷いなく、罠でもある重い扉を開けると、前にいるのは大人になった法子内親王が玉座に座っていた。
その玉座の手置きには手錠がかけられて逃げられないようになっていた。
そしてフォックスガールの夜子は玉座の肘掛に寄りかかり李流を楽しげに見つめる。
「法子殿下を救うには、法子と結婚し次なる新たな御子を孕ませる事が条件よ♡」
「はぁ!?そんな恐れ多いこと出来るわけないだろ!」
あまりの卑猥な言霊に李流は顔を赤くして怒鳴る。
同い年になられた法子はとても美しかったとしてもお体を穢すような事など考えになかった。
神誓をして、結婚する約束はしたけれど現実的なものではなくてまさに夢のようにふわふわしたものだ。
「は、は、孕ませるなんて、そんな言葉はダメでスっ!汚らわしい!」
李流はつい無意識に妄想してしまい声まで裏返って混乱する。
「まぁ、可愛いわぁ……純粋で潔癖……珍しいわね……真っ白な穢れをも跳ね返す魂……」
夜子はあやかしであり神でもあるので魂の色形を見定めることが出来る。
夜子でさえ魅了されてしまう輝きだ……自らの手で染め上げてしまいたいほどの……
怪しく光る瞳を一度閉じて、艶っぽい唇をひと舐めし、
「その純白さに免じて、祈り姫に私の前で誓のキスをしたら彼女を
解放してあげるわ……」
「えっ……そ、それは……嬉しいかも……はっ!」
法子はつい本心を言霊に出して顔を真っ赤にして口を噤む。
この、恋心を付け込まれたのだ。
恋心が媒体になってあらぬ男の妄想と繋がって、今や李流を巻き込んで誓約中だ。
己の望みを叶えては行けないのだ……何がなんでも……
法子は悲しい気持ちにならずには居られないけれど、李流が守りたいものの皆の大切なものを守るために我慢することを決めた。
「もう余計な言霊は出さないっ!」
法子はそう宣言して口をへの字に結んで噤む。
妙齢の女性になっても子供には変わりなかった。
「最初の設定の男子皇族さえいなければ、皇位を継ぐものは女子しかいなくなる……と言うエンディングよりもとてもドラマチック、法子様の望みも叶うとても素敵な夢妄想だと思わない?」
いつの間にか夜子は李流の傍に寄り添い胸元をあやしく触る。
さらに耳元に唇を寄せて
「夢の原因は、法子様が李流君とと結婚する夢でもOKよ……李流君にとってはいい事でしょ?」
夜子の言葉は甘い、誘うように心にさざめくように言う。
そして、さらに甘く、艶っぽく男を魅了させる声で畳み掛ける。
「あなたが祝皇陛下になればいい……私は神でもあるのよ……あなたの血筋の事を知っているわ……
桜庭家は元は、祝宮家の家系なのだから……不釣り合いでもないでしょう?」
「それは…………オレが……女性なら有り得るでしょうが……オレは……オレの血には……ううっ!」
がはっと、真っ赤な血を吐いた。
夢なので己の心の吐き出したいものを吐き出す事を具現化させた。
「まあ!吐血する程あなたは己を呪っているのね!いいわぁ!楽しい!きゃはは!」
真っ白な魂に小さな黒いつぼみのような闇を咲くのを夜子は見る。
誰にでもある心の弱いところ…己自身の背負う黒歴史……
「私は日和国ので生まれた神だから他国の因縁が分からないのぉ……だから詳しく教えて……」
夜子は瞳を爛々と輝かせて李流の魂を見つめる。
その瞳は獲物を定めて楽しむ獣そのもの。
「……それだけは絶対嫌だ……っ!」
太陽のように熱かった思いが地の底に落ちるような李流を見るのを夜子は楽しんでいる。
白い魂の中に黒い花が咲く様を見るのが楽しいためになお煽り、妖力をも使うため、李流の魂に手を当てて容赦なくマイナス思考になる力を注ぐ。
「やめろ!李流を傷つけることは許さないぞっ!」
法子は本気で怒り怒鳴る言葉は強く夜子を制しようとするが、
「あら?もう宣言を破ってるわよ。ふふっ」
とあしらわれた。
「オレの血筋が入ったら日和国は滅びます……」
李流の瞳に先程の熱の欠片も無くなっていた李流は闇に魂が捕われた……
一番憧れから、遠く呪う己自身の闇……
「国が…皇室が……滅びるくらいなら……」
李流は腰に差した刀を抜く。
「この世界が現実のものになるならオレは迷いなく、この世から消え去ります……」
これは神誓いされた世界、中途半端では守れない……
夜子は勝利を確信し笑い出したいのを堪える。
誓約の駒の人間が闇堕ちすればこちらのものだ。
皇室命の李流は己が滅びのきっかけになるなら迷いはない。
それはもう一人のこの夢の媒体の男に思いをぶつけた通りにだ。
「李流!それはダメじゃ!嫌じゃ!私との神誓いを忘れるな!」
法子の言の葉は今は逆効果だった。
「……オレは皇室が滅びることが一番辛いのです……」
伝統衛士の刀を己の喉元に迷いなく突き刺そうとした手を男の手止めた。
夜子もいない。
男はいま闇に溶けるようにいなくなった。
闇に包まれ突然取り残された。
不覚だった……
男との対決に《夢中》になりすぎて法子様、夜子の存在が頭の中から抜けていた。
ただ、自分の想いをぶつけることに集中してしまっていた。
いや、陛下、皇族の事になると熱くなってしまう悪い癖……それよりも理性が効かなくなることがもうひとつある、自分の血筋のことを思う時だ……
(自分の弱点は分かってる……克服したいとは思うけど、なかなか上手くいかない……)
原因は父であり、我が国に侮辱を働く国の血が少しでも入っているのは嫌だという、どうしようもない己の潔癖さ……
冷静でいようと穏やかでいようと努めるが中々上手くいかないともどかしい気持ちになる。
暗闇の世界はわざと心の闇にヒシヒシと染み込むように心を解放しようとする。
普段ならば考えないように閉まっておく蓋が空いてしまう感覚だ。
慰めの言の葉が異様に欲しくなるのは感情で男を負かせた後遺症かもしれない。
闇は現実の世界で心を休ませるならば癒しになるが、ここは夢の中だ……しかもあやかしが作り出した異界の夢……
(これ以上は危険だ!)
と心を引き締めようとした時、
「李流!私も李流の強い想いを感じたぞ!だから、その思いを貫いて……」
法子は暗闇に光を放つが如くの言葉を届ける。
そして、その光は大きな白く輝く扉となって李流の前に現れた。
「今度はあなたに運命を委ねることにしたわ……夢は所詮夢……だけど、現実と繋がる誓約をしたなら、あなた達の方が適任よ……なにせ、ハルの神との契約の駒なのだから……」
ふふっと夜子は笑う。
「さぁ、祈り姫を救いたければこの扉を開けなさい……そして真の誓約の賭事が始まるわ……ふふ」
法子様が夜子に囚われていると思うと迷いなく、罠でもある重い扉を開けると、前にいるのは大人になった法子内親王が玉座に座っていた。
その玉座の手置きには手錠がかけられて逃げられないようになっていた。
そしてフォックスガールの夜子は玉座の肘掛に寄りかかり李流を楽しげに見つめる。
「法子殿下を救うには、法子と結婚し次なる新たな御子を孕ませる事が条件よ♡」
「はぁ!?そんな恐れ多いこと出来るわけないだろ!」
あまりの卑猥な言霊に李流は顔を赤くして怒鳴る。
同い年になられた法子はとても美しかったとしてもお体を穢すような事など考えになかった。
神誓をして、結婚する約束はしたけれど現実的なものではなくてまさに夢のようにふわふわしたものだ。
「は、は、孕ませるなんて、そんな言葉はダメでスっ!汚らわしい!」
李流はつい無意識に妄想してしまい声まで裏返って混乱する。
「まぁ、可愛いわぁ……純粋で潔癖……珍しいわね……真っ白な穢れをも跳ね返す魂……」
夜子はあやかしであり神でもあるので魂の色形を見定めることが出来る。
夜子でさえ魅了されてしまう輝きだ……自らの手で染め上げてしまいたいほどの……
怪しく光る瞳を一度閉じて、艶っぽい唇をひと舐めし、
「その純白さに免じて、祈り姫に私の前で誓のキスをしたら彼女を
解放してあげるわ……」
「えっ……そ、それは……嬉しいかも……はっ!」
法子はつい本心を言霊に出して顔を真っ赤にして口を噤む。
この、恋心を付け込まれたのだ。
恋心が媒体になってあらぬ男の妄想と繋がって、今や李流を巻き込んで誓約中だ。
己の望みを叶えては行けないのだ……何がなんでも……
法子は悲しい気持ちにならずには居られないけれど、李流が守りたいものの皆の大切なものを守るために我慢することを決めた。
「もう余計な言霊は出さないっ!」
法子はそう宣言して口をへの字に結んで噤む。
妙齢の女性になっても子供には変わりなかった。
「最初の設定の男子皇族さえいなければ、皇位を継ぐものは女子しかいなくなる……と言うエンディングよりもとてもドラマチック、法子様の望みも叶うとても素敵な夢妄想だと思わない?」
いつの間にか夜子は李流の傍に寄り添い胸元をあやしく触る。
さらに耳元に唇を寄せて
「夢の原因は、法子様が李流君とと結婚する夢でもOKよ……李流君にとってはいい事でしょ?」
夜子の言葉は甘い、誘うように心にさざめくように言う。
そして、さらに甘く、艶っぽく男を魅了させる声で畳み掛ける。
「あなたが祝皇陛下になればいい……私は神でもあるのよ……あなたの血筋の事を知っているわ……
桜庭家は元は、祝宮家の家系なのだから……不釣り合いでもないでしょう?」
「それは…………オレが……女性なら有り得るでしょうが……オレは……オレの血には……ううっ!」
がはっと、真っ赤な血を吐いた。
夢なので己の心の吐き出したいものを吐き出す事を具現化させた。
「まあ!吐血する程あなたは己を呪っているのね!いいわぁ!楽しい!きゃはは!」
真っ白な魂に小さな黒いつぼみのような闇を咲くのを夜子は見る。
誰にでもある心の弱いところ…己自身の背負う黒歴史……
「私は日和国ので生まれた神だから他国の因縁が分からないのぉ……だから詳しく教えて……」
夜子は瞳を爛々と輝かせて李流の魂を見つめる。
その瞳は獲物を定めて楽しむ獣そのもの。
「……それだけは絶対嫌だ……っ!」
太陽のように熱かった思いが地の底に落ちるような李流を見るのを夜子は楽しんでいる。
白い魂の中に黒い花が咲く様を見るのが楽しいためになお煽り、妖力をも使うため、李流の魂に手を当てて容赦なくマイナス思考になる力を注ぐ。
「やめろ!李流を傷つけることは許さないぞっ!」
法子は本気で怒り怒鳴る言葉は強く夜子を制しようとするが、
「あら?もう宣言を破ってるわよ。ふふっ」
とあしらわれた。
「オレの血筋が入ったら日和国は滅びます……」
李流の瞳に先程の熱の欠片も無くなっていた李流は闇に魂が捕われた……
一番憧れから、遠く呪う己自身の闇……
「国が…皇室が……滅びるくらいなら……」
李流は腰に差した刀を抜く。
「この世界が現実のものになるならオレは迷いなく、この世から消え去ります……」
これは神誓いされた世界、中途半端では守れない……
夜子は勝利を確信し笑い出したいのを堪える。
誓約の駒の人間が闇堕ちすればこちらのものだ。
皇室命の李流は己が滅びのきっかけになるなら迷いはない。
それはもう一人のこの夢の媒体の男に思いをぶつけた通りにだ。
「李流!それはダメじゃ!嫌じゃ!私との神誓いを忘れるな!」
法子の言の葉は今は逆効果だった。
「……オレは皇室が滅びることが一番辛いのです……」
伝統衛士の刀を己の喉元に迷いなく突き刺そうとした手を男の手止めた。
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