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伝統の縁(でんとうのえにし)
8☆親子の仲直り
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瑠香は勢い良く廊下に倒れる。
「瑠香様っ!」
李流は机を破壊した威力の拳を知っているから慌てて駆け寄り上半身を起き上がらせ支える。
口を切ったのか血が出る。
それを瑠香は拳で拭っている間に、ドスンと瑠香の腹の上に薫は馬乗りになる。
「うっ…!」
大きくなった我が子は重かった…
薫はきつね耳としっぽが興奮のあまり出ている。
瑠香の狩衣の襟元を両手で掴んで引き寄せる。
「瑠香さまっ!香茂やめろ!」
李流が流石に止めに入るが振り払われた。
「よくも、俺達をほうりやがって!クソ親父が!」
顔近くに突き合わせてそうほえるように叫ぶと、ポロポロと溢れる涙を必死に止めようと更に泣き顔になる。
「薫…」
亡くなった妻に似てると瑠香は思う……
……だから会いたくなかった。
思い出すと苦しいから…
何も思わなければ苦しみから逃げられると思ってた…
でも、晴房と雪を見ていたら思い出しても辛くなかった。
思い出になっていた…
息子たちに会いたいとも思う心も芽生えていた…このように殴られても…謝りたかった……
子供のように瑠香の胸で泣く薫の頭をやさしく撫でる。
幼かった薫によくやっていた撫で方だ。
「すまなかった……父さんも辛かったんだ……」
瑠香は一筋涙を流していた。
『お前たちさえいなければもっと葛葉子との時間がもうけられたのに…』
子どもたちと愛しい妻との時間を否定することを言ってはいけなかったのに…罪悪感で会えなかった…逃げていた…いろんなことが辛すぎて…
……いや、嫌われていることが怖かった…
「許してくれとは言わないよ…もっと殴ってくれてもかまわないよ…」
「うん。許さないけど、なんか、もういい。父さんのことずっと好きだったから」
掴んでいた襟を離し、薫は父の広い背中に腕を回す。
ギュッ!と父親の狩衣を掴み抱きしめる。
幼い頃から甘えん坊だった薫の癖だ。
親子揃ってポロポロと涙をこぼして泣いた。
しかし、瑠香はハッとして薫の頬を綺麗な手で挟んで心配そうに眉をひそめて、
「薫、お前は、白狐として西を守っているというが、死んで継いだわけではないのか?かーさんと同じ様に…」
瑠香はその事が一番心配だった。
そんな父にニコッと笑って、
「俺は元から狐だから、かーさんみたいに死んでないよ!ひいじいさんと同じだよ!それに男だしな」
「そうか、よかった……」
そう言ってさらに息子を抱きしめた。
妻と同じだったら…と思って一番心配だったみたいだ…
李流はその会話に一瞬首を傾げるが、滝口臣が『神憑き』の家系の薫の母は白狐神に命を永らえさせてもらうために『白狐のあやかし』になったという話を思い出して納得がいった。
「心配してくれてありがとう…とーさん!」
へへっ!と笑う笑顔が葛葉子に似ていて、涙が止まらない父親を慰めるのに苦労する薫だった。
「よかったな。薫」
そんな仲直りした二人を親子を見た李流は自分も父親と…
と想像して、鳥肌しかたたなかった。
李流は薫のように許す心を失ってる。
自分は感情が欠けてるのだろうか……と考えてしまったら突然頭に檜扇で軽く叩かれる。
ハッとして振り向くと晴房がムッとして、
「今のお前の父親は私だぞ、李流」
「……そうですね。ありがとうございますハル様」
頭を覗いてそう言ってもらえて自分は欠陥のある人間なのではないかという思いが消える。
晴房は檜扇を広げてまじまじと薫を見る。
「葛葉子の息子か…どことなく似てるな。そして、私の従兄弟になるのか…」
「えっ?そうなのですか?」
薫と晴房をよく見るとどことなく似てると李流は思って納得がいった。
「瑠香様っ!」
李流は机を破壊した威力の拳を知っているから慌てて駆け寄り上半身を起き上がらせ支える。
口を切ったのか血が出る。
それを瑠香は拳で拭っている間に、ドスンと瑠香の腹の上に薫は馬乗りになる。
「うっ…!」
大きくなった我が子は重かった…
薫はきつね耳としっぽが興奮のあまり出ている。
瑠香の狩衣の襟元を両手で掴んで引き寄せる。
「瑠香さまっ!香茂やめろ!」
李流が流石に止めに入るが振り払われた。
「よくも、俺達をほうりやがって!クソ親父が!」
顔近くに突き合わせてそうほえるように叫ぶと、ポロポロと溢れる涙を必死に止めようと更に泣き顔になる。
「薫…」
亡くなった妻に似てると瑠香は思う……
……だから会いたくなかった。
思い出すと苦しいから…
何も思わなければ苦しみから逃げられると思ってた…
でも、晴房と雪を見ていたら思い出しても辛くなかった。
思い出になっていた…
息子たちに会いたいとも思う心も芽生えていた…このように殴られても…謝りたかった……
子供のように瑠香の胸で泣く薫の頭をやさしく撫でる。
幼かった薫によくやっていた撫で方だ。
「すまなかった……父さんも辛かったんだ……」
瑠香は一筋涙を流していた。
『お前たちさえいなければもっと葛葉子との時間がもうけられたのに…』
子どもたちと愛しい妻との時間を否定することを言ってはいけなかったのに…罪悪感で会えなかった…逃げていた…いろんなことが辛すぎて…
……いや、嫌われていることが怖かった…
「許してくれとは言わないよ…もっと殴ってくれてもかまわないよ…」
「うん。許さないけど、なんか、もういい。父さんのことずっと好きだったから」
掴んでいた襟を離し、薫は父の広い背中に腕を回す。
ギュッ!と父親の狩衣を掴み抱きしめる。
幼い頃から甘えん坊だった薫の癖だ。
親子揃ってポロポロと涙をこぼして泣いた。
しかし、瑠香はハッとして薫の頬を綺麗な手で挟んで心配そうに眉をひそめて、
「薫、お前は、白狐として西を守っているというが、死んで継いだわけではないのか?かーさんと同じ様に…」
瑠香はその事が一番心配だった。
そんな父にニコッと笑って、
「俺は元から狐だから、かーさんみたいに死んでないよ!ひいじいさんと同じだよ!それに男だしな」
「そうか、よかった……」
そう言ってさらに息子を抱きしめた。
妻と同じだったら…と思って一番心配だったみたいだ…
李流はその会話に一瞬首を傾げるが、滝口臣が『神憑き』の家系の薫の母は白狐神に命を永らえさせてもらうために『白狐のあやかし』になったという話を思い出して納得がいった。
「心配してくれてありがとう…とーさん!」
へへっ!と笑う笑顔が葛葉子に似ていて、涙が止まらない父親を慰めるのに苦労する薫だった。
「よかったな。薫」
そんな仲直りした二人を親子を見た李流は自分も父親と…
と想像して、鳥肌しかたたなかった。
李流は薫のように許す心を失ってる。
自分は感情が欠けてるのだろうか……と考えてしまったら突然頭に檜扇で軽く叩かれる。
ハッとして振り向くと晴房がムッとして、
「今のお前の父親は私だぞ、李流」
「……そうですね。ありがとうございますハル様」
頭を覗いてそう言ってもらえて自分は欠陥のある人間なのではないかという思いが消える。
晴房は檜扇を広げてまじまじと薫を見る。
「葛葉子の息子か…どことなく似てるな。そして、私の従兄弟になるのか…」
「えっ?そうなのですか?」
薫と晴房をよく見るとどことなく似てると李流は思って納得がいった。
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