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オーネの努力
6☆危険な夜の街
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夜のアルバイトと言ったら、大体が酒場の仕事がメインだ。
この街は経済的にも発展していて、夜になると酒場が盛り上がりを見せて、夜明けまで明るい。
更に夜深ければ男どもがうじゃうじゃと酒の匂いを漂わせながら顔を赤らめながらハシゴをしている。
さらに荒くれ者も混じる。
通りによっては静かに飲みたい通りとワイワイ飲みたい通りもある。
酒場通りといっても、家族とともに過ごすレストランのお店もある。
さらに、人間のみならず、魔女も占い師として稼ぎを行うことも許されているが、今宵は占いの店が一件も見当たらなかった。
数年街に行ってない間にルールが変わったのかもしれないとボースは思う。
ボースは黒髪のかつらをかぶり赤いフード付きのマントにオーネに昔着せていたフリルの付いた白の足首までの長さのドレスを着て靴もマントと同じ赤い色だ。
オーネがこの衣装を子供すぎると着るの嫌がってタンスの中にしまってあった。
つい、いつもと違う自分になれた勢いで普通の女の子の格好以上のおしゃれをしてしまった。
さらに、十三、四くらいの少女が酒場通りを歩くのは目立つらしい。
視線が気になり、ボースは焦る。
(オーネの様子を見たら、すぐに帰るんだから!)
と、顔を真っ赤にさせつつ、オーネの気配をたどる。
おとなしめの酒場通りなら良かったのに、荒くれ者が暴れる通りに近い場所に感じる……
その気配をたどりながら道を行く。
まだ暴れるような飲み方をしている人間はいなかった。
そういう荒くれ者がある証拠に壁がビビが割れていたり、血痕が飛び散った跡がある。
そしてガラの悪そうな、人間がお店を出していると思う。
それらに目を奪われたのを気を取り直し、オーネの気をたどる。
目を閉じながら、感じながら歩いたら、ドン!と人とぶつかりボースは弾き飛ばされたように尻餅をついた。
「いてて…」
久々に転んだな…と思いながら、ぶつかった人物を見ると黒いスーツを着た丸々と太った男だった。
「ああ、ごめん、大丈夫かい?」
といい、やはり丸く肉厚な手を差し出してくれた。
「怪我はないかい?手当てをしてあげるよ…。」
といい不気味な笑顔をして、無理やりボースを引っ張る。
「な、何をするんだ!離せ!」
ボースは男を睨む。
「その瞳……魔女だよね……」
ボースの緑の瞳孔に煌めく金を察する人間はそうはいない。
ボースも男の正体を見抜いていた。
「お前、悪魔…か?」
「ふふふ……人の集まるところ悪魔ありってね…」
昔のように悪魔に魂を売る女は少なくなったがこの街では多少いるようだ。
「だが、僕は人間に興味がないんだよ。魔女に興味があるんだよ。君みたいに悪魔と契約をしていない純粋な乙女の魔女にね……」
悪魔は人間でも魔女でも契約することで力を与えてくれる。
その誘惑に惑わされた魔女がどれだけいたことやら……いや今もいる。
「悪魔と魔女が手を組めばこの街を支配することは容易いだろう…楽しそうだろう?みんな君にひれ伏せられるんだょぉ?」
悪魔の言葉は不毛のものでも、耳に入る言葉は甘く感じさせる力がある。
「……僕にそんな甘言聞くと思ってんの?馬鹿らしい。」
ボースは睨んで苦笑してやった。
「んー、そうだなぁ。無理やり契約される力は持ってるんだよねぇ、それとも可愛い赤ずきんちゃんはおいしそうだよねぇ……とても強い力も持ってそうだし」
悪魔の瞳はヤギのように横に瞳孔が変形する。
悪魔は人の負の感情で力を得る。
この場所は人の心をはけ口が溜まる場所。
悪魔は相当力を得たようだ。
肥えた悪魔は汚らしく自分の唇をひと舐めする。
「契約してくれない魔女は食べちゃうのがボクの流儀だょぉ」
この悪魔は拒否する魔女を食べてきた悪魔だと察した。
その不気味さに占いの店を出していないのだ。
この街の真っ当な魔女は悪魔と契約をしない清らかさのために食べられてしまったと察する。
ボースは無意識に拳を握る。
仲間がこんな悪魔に食べられてしまった事が悔しい。
どう料理してやろうか……とも思いながら悪魔を睨む。
「君が【魔女を裁く魔女】といえど、悪魔の僕を裁くことはできるのか……最強の眷属のいない今のお前に…!」
悪魔の情報は古い……とボースは思うが、肥えた悪魔は豚のような様子になり、大きな口を開けてボースを飲み込み食らうことにしたようだ。
ボースは不敵な顔をして微動だにしない。
眷族ならすぐそばに…すぐに駆けつけてくるのだから……
ドゲシぃぃぃん!
と、長く美しい脚がボースを飲み込もうとする悪魔の頭をボールのごとく蹴り飛ばした。
悪魔の頭は【つ】の形にへしゃげる。
「あたしのご主人様に何する気?」
オーネのウェーブかかった髪が右目を隠し金に閃く左目を強調させる。
東洋のお面の(般若)の表情だ。
そして、悪魔界に名を轟かす
【魔女の中の魔女】のようだと思ったのが最後の思考だった。
悪魔の存在は塵と化した。
神の剣を宿す特殊なオーネの蹴りは雑魚の悪魔は消滅するのだった。
「それにしても、オーネその格好……」
ボースは瞳をキラキラとして見つめた。
オーネはピッタリとした赤いドレスを着ている。
さらに、肩には男らしい肩を隠すために白いもふもふの毛皮を羽織っている。
靴もヒールが高く、脚を美しく強調されている。
「これは、すごくいけるかも…」
ボースは無表情でグッジョブポーズをオーネに向けた。
「は?なにいってんのてか、ボース、てかなんで、こんなところにいるの?」
オーネは予想はつくが、ボースに詰問する。
「は、いや、オーネが心配だったから」
あまりのトラブルに、目的を忘れて呆けて言った。
「もう、ボースの方が心配だよ。
店の近くに居なかったらと思うと……」
オーネは想像して青ざめる。
力ある眷族でよかったと改めて思った。
「とりあえず職場に一緒に来て…紹介するから……」
オーネは気まづそうな顔をして優しくボースの手をとって立たせた。
ボースはオーネが握る手を見つめて
(矛盾そのものの存在で成長した男らしい、綺麗な手だ……)
ボースは密かにため息を吐いて信頼できる安心の手だと思うのだった。
この街は経済的にも発展していて、夜になると酒場が盛り上がりを見せて、夜明けまで明るい。
更に夜深ければ男どもがうじゃうじゃと酒の匂いを漂わせながら顔を赤らめながらハシゴをしている。
さらに荒くれ者も混じる。
通りによっては静かに飲みたい通りとワイワイ飲みたい通りもある。
酒場通りといっても、家族とともに過ごすレストランのお店もある。
さらに、人間のみならず、魔女も占い師として稼ぎを行うことも許されているが、今宵は占いの店が一件も見当たらなかった。
数年街に行ってない間にルールが変わったのかもしれないとボースは思う。
ボースは黒髪のかつらをかぶり赤いフード付きのマントにオーネに昔着せていたフリルの付いた白の足首までの長さのドレスを着て靴もマントと同じ赤い色だ。
オーネがこの衣装を子供すぎると着るの嫌がってタンスの中にしまってあった。
つい、いつもと違う自分になれた勢いで普通の女の子の格好以上のおしゃれをしてしまった。
さらに、十三、四くらいの少女が酒場通りを歩くのは目立つらしい。
視線が気になり、ボースは焦る。
(オーネの様子を見たら、すぐに帰るんだから!)
と、顔を真っ赤にさせつつ、オーネの気配をたどる。
おとなしめの酒場通りなら良かったのに、荒くれ者が暴れる通りに近い場所に感じる……
その気配をたどりながら道を行く。
まだ暴れるような飲み方をしている人間はいなかった。
そういう荒くれ者がある証拠に壁がビビが割れていたり、血痕が飛び散った跡がある。
そしてガラの悪そうな、人間がお店を出していると思う。
それらに目を奪われたのを気を取り直し、オーネの気をたどる。
目を閉じながら、感じながら歩いたら、ドン!と人とぶつかりボースは弾き飛ばされたように尻餅をついた。
「いてて…」
久々に転んだな…と思いながら、ぶつかった人物を見ると黒いスーツを着た丸々と太った男だった。
「ああ、ごめん、大丈夫かい?」
といい、やはり丸く肉厚な手を差し出してくれた。
「怪我はないかい?手当てをしてあげるよ…。」
といい不気味な笑顔をして、無理やりボースを引っ張る。
「な、何をするんだ!離せ!」
ボースは男を睨む。
「その瞳……魔女だよね……」
ボースの緑の瞳孔に煌めく金を察する人間はそうはいない。
ボースも男の正体を見抜いていた。
「お前、悪魔…か?」
「ふふふ……人の集まるところ悪魔ありってね…」
昔のように悪魔に魂を売る女は少なくなったがこの街では多少いるようだ。
「だが、僕は人間に興味がないんだよ。魔女に興味があるんだよ。君みたいに悪魔と契約をしていない純粋な乙女の魔女にね……」
悪魔は人間でも魔女でも契約することで力を与えてくれる。
その誘惑に惑わされた魔女がどれだけいたことやら……いや今もいる。
「悪魔と魔女が手を組めばこの街を支配することは容易いだろう…楽しそうだろう?みんな君にひれ伏せられるんだょぉ?」
悪魔の言葉は不毛のものでも、耳に入る言葉は甘く感じさせる力がある。
「……僕にそんな甘言聞くと思ってんの?馬鹿らしい。」
ボースは睨んで苦笑してやった。
「んー、そうだなぁ。無理やり契約される力は持ってるんだよねぇ、それとも可愛い赤ずきんちゃんはおいしそうだよねぇ……とても強い力も持ってそうだし」
悪魔の瞳はヤギのように横に瞳孔が変形する。
悪魔は人の負の感情で力を得る。
この場所は人の心をはけ口が溜まる場所。
悪魔は相当力を得たようだ。
肥えた悪魔は汚らしく自分の唇をひと舐めする。
「契約してくれない魔女は食べちゃうのがボクの流儀だょぉ」
この悪魔は拒否する魔女を食べてきた悪魔だと察した。
その不気味さに占いの店を出していないのだ。
この街の真っ当な魔女は悪魔と契約をしない清らかさのために食べられてしまったと察する。
ボースは無意識に拳を握る。
仲間がこんな悪魔に食べられてしまった事が悔しい。
どう料理してやろうか……とも思いながら悪魔を睨む。
「君が【魔女を裁く魔女】といえど、悪魔の僕を裁くことはできるのか……最強の眷属のいない今のお前に…!」
悪魔の情報は古い……とボースは思うが、肥えた悪魔は豚のような様子になり、大きな口を開けてボースを飲み込み食らうことにしたようだ。
ボースは不敵な顔をして微動だにしない。
眷族ならすぐそばに…すぐに駆けつけてくるのだから……
ドゲシぃぃぃん!
と、長く美しい脚がボースを飲み込もうとする悪魔の頭をボールのごとく蹴り飛ばした。
悪魔の頭は【つ】の形にへしゃげる。
「あたしのご主人様に何する気?」
オーネのウェーブかかった髪が右目を隠し金に閃く左目を強調させる。
東洋のお面の(般若)の表情だ。
そして、悪魔界に名を轟かす
【魔女の中の魔女】のようだと思ったのが最後の思考だった。
悪魔の存在は塵と化した。
神の剣を宿す特殊なオーネの蹴りは雑魚の悪魔は消滅するのだった。
「それにしても、オーネその格好……」
ボースは瞳をキラキラとして見つめた。
オーネはピッタリとした赤いドレスを着ている。
さらに、肩には男らしい肩を隠すために白いもふもふの毛皮を羽織っている。
靴もヒールが高く、脚を美しく強調されている。
「これは、すごくいけるかも…」
ボースは無表情でグッジョブポーズをオーネに向けた。
「は?なにいってんのてか、ボース、てかなんで、こんなところにいるの?」
オーネは予想はつくが、ボースに詰問する。
「は、いや、オーネが心配だったから」
あまりのトラブルに、目的を忘れて呆けて言った。
「もう、ボースの方が心配だよ。
店の近くに居なかったらと思うと……」
オーネは想像して青ざめる。
力ある眷族でよかったと改めて思った。
「とりあえず職場に一緒に来て…紹介するから……」
オーネは気まづそうな顔をして優しくボースの手をとって立たせた。
ボースはオーネが握る手を見つめて
(矛盾そのものの存在で成長した男らしい、綺麗な手だ……)
ボースは密かにため息を吐いて信頼できる安心の手だと思うのだった。
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