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茨の魔女

5☆前世から

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 神父である叔父にもう森に入るなと言われていたのに……
 リネルにも言われていたのに……

 アーサーの心は止められなかった。

 代々伝わる十字架を持っていれば茨の森は道を開けることを知ってしまえばリネルに何度も会いに行った。

 最初は見つけられた瞬間何度も拒絶して森から外に秒で追い出していたリネルもアーサーの若い子供の根性に疲れ諦めて森へ入ることを許した。
 そのたびに、色とりどりに美しく咲き誇るバラの見事さに見惚れ、リネルの感情の変化や表情が柔らかくなっていくことが嬉しかった。

 そして、リネルは森の侵入だけではなくアーサーに心も許すようになってくれた。


 アーサーが見た目リネルと同じ年頃になる頃には愛の告白をしていた。

 少年のころは恐ろしい魔女のイメージもあったが、同い年の年頃になってしまうと、可愛い愛おしい女性にしか映らなかった。

「僕はリネルを愛してる……もし、同じ気持ちじゃなければ今すぐ茨の棘で殺して欲しい……」

 リネルにフラれることは死を与えられたことに等しいと思うから…真剣に本心で告げる。

 リネルは戸惑っていたが、薔薇がいつも以上に華やかに咲き誇り甘い香りが漂った。

 リネルの心は丸わかりなのだ。
 その事に頬を染めて、
「私も出逢う前から…好きでした…」
 と告白してくれた。

 アーサーの前世はリネルが魔女になる前の領主。
 リネルはアーサーが生まれ変わって会いにきた事が本当はとても嬉しかった。

「私はこの時のために魔女として生きていたのかもしれない…そしてこれからも……アーサーと共に…生きていく…」

 そういった彼女は普通の人間の乙女なように微笑んだ。

 アーサーと魔女は密かな恋人同士になった。

 年頃のアーサーとリネルは恋人として心も体も絆を深めた…
 もう、離れがたい存在なほどに情熱が燃え上がっていた。
 ただ、リネルは唇にキスは許してくれなかった。
 頑なに拒まれた……

「真実の愛の誓のキスは魔女にとって死の宣告……」

 乙女から魔女になったのならば、真実の恋ほど嬉しいものはない.…幸せなものはない…その気持ちを持ったままあの世に逝く……

「それは魔女にとって最高の最後……でも私はまだあなたといたい…生きていたい…どうしても…」
 そう言われてしまえばキスはできなかった……
 アーサーもリネルにはこの世に留まっていてほしい…。
 腕の中で愛おしい人の死は見たくはなかった……
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