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茨の魔女
6☆元凶のきっかけ
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立派な青年領主となったアーサーに仲良くしている近隣の領主は年頃の令嬢を紹介した。
令嬢は見た目から性格まで狡猾そうな女性だった。
よく言えばとてもしっかりした気の強い女性だった。
そして、王族の血筋を鼻にかけた令嬢でもあった。
アーサーはリネル以外の女をなんとも感じない。
寧ろ、その令嬢のことを好ましくは思わなかった。
なかなか振り向かないアーサーを落とすべく令嬢は積極的にアーサーの唇を奪ったことが始まりだった……
翌日令嬢は茨の棘にやられたようだ。
この土地のものではない令嬢は茨の森の毒のことを知らずにさわった悲しい事故ということになった。
(あれは僕の命を狙った従兄弟の死因と似ている…むしろリネルではなくてはできない事……)
アーサーはリネルにはその経緯を確信を持って告げた。
別にリネルを責めるつもりは一切なかったのだが、リネルは責められたと思って悲しい顔を一瞬したと思うと、眉を釣り上げて瞳を光らせた。
それは魔女そのものの姿だとゾッとした事は確かだった。
けれど、そのことも含めてリネルを愛している。
あまり感情を出さないリネルがヤキモチを焼くことも嬉しくも思う。
「アーサーは私のもの……アーサーに近づく女は……私以外の女は許さない……」
いつもは色とりどりの薔薇の花はどす黒く濁っていた。
「ごめん、そうだよね…僕はリネルのものだよ…いつだって…どんな時だって……」
そう言って抱きしめれば薔薇の色は元通りになった。
「私のアーサーに触れる女性を許せないの……奪われるのは嫌なの、この命も、アーサーの心も……」
それは冷静な彼女から出る情熱的な愛の告白のようだが、魔女の呪いの宣言だった。
それから女性たちの死はエスカレートしてアーサーが用事のために声をかけた女性は年齢関係なく亡くなった。
それはリネルの呪いのせいだが……
「すべての原因は僕だ…この罪を神に告げることが恐ろしかった」
卑怯者だと、臆病者だと自らを卑下し反省する。
愛する彼女を守り抜きたいが、領民を守る領主の義務を果たさなければならないという葛藤に苛まれしばらくリネルに会うのをやめた。
そのことも原因なのか会わなければアーサーに拘らずとも領民は魔女の棘に刺されて帰らぬ人となっていくほどだった。
みかねた叔父が派遣した聖職者が来る前に自らリネルを抑えようと決意しリネルのもとに訪れる。
「……私はアーサーにキスをしたあの女が羨ましかっただけ、なのに、どんどん心が穢れていくの…苦しいの…アーサーのキスが欲しい…」
薔薇色の涙を流して訴える。
「キスが…したいのかい…?そうしたら君は……」
アーサーもできるならキスをしたい。
何度も…けれど一度の口づけで永遠の別れは辛いし嫌だ。
「私も、キスをしたい……でも、生きていたいの……生きていなくてはいけないの……』
ざわざわと草木が風がないのに揺れて、リネルの唇から風のように響く声が漏れる。
『私達のリネルを傷つける者は許さない…また殺すことは許さない!』
ブワッとリネルの背後から茨が伸びてくる。
リネルは黒いバラが咲く茨のドレスを見に待とうかの如くに蔦に絡まってすでに人の姿とはいえない魔女となっていた。
アーサーはあまりの姿に驚愕する。
「その目はあの優しい瞳ではなく、魔女だと蔑む瞳をしてるわ……」
アーサーは瞳をそらし隠す。
リネルを傷つけたくないし、心を覗かれるようで気まずい。
「どうしてそんな目で見るの?やっぱり、あなたも私を差別するのね…あの時だってそうだった…そうだったのよぉぉ!」
リネルは真っ赤な涙をさらに瞳から流して叫び続けたことにアーサーは恐れを感じて逃げ出してしまった。
それから、リネルの殺戮が始まった。
女たちだけではなく男も襲う。
今は数人の聖職者に女たちを協会に囲い守らせている。
アーサーの十字架と同じ聖なる守りの造りの教会には近づけないようだった。
魔女はそれほど十字を掲げる協会を忌避している。
派遣された勇ましい聖職者はリネルを成敗するために森に入っては帰ってこなかった。
聖職者側もムキになって何人も派遣する。
森は茨になりアーサーを拒む。アーサーにはもうリネルを止める力がないことに絶望する。それは拒絶されているということだからだ。
アーサーは無力な自分を呪い、狂った魔女になったリネルを止めて欲しいと強く願い、いつの間にかボースの森に来ていた。
令嬢は見た目から性格まで狡猾そうな女性だった。
よく言えばとてもしっかりした気の強い女性だった。
そして、王族の血筋を鼻にかけた令嬢でもあった。
アーサーはリネル以外の女をなんとも感じない。
寧ろ、その令嬢のことを好ましくは思わなかった。
なかなか振り向かないアーサーを落とすべく令嬢は積極的にアーサーの唇を奪ったことが始まりだった……
翌日令嬢は茨の棘にやられたようだ。
この土地のものではない令嬢は茨の森の毒のことを知らずにさわった悲しい事故ということになった。
(あれは僕の命を狙った従兄弟の死因と似ている…むしろリネルではなくてはできない事……)
アーサーはリネルにはその経緯を確信を持って告げた。
別にリネルを責めるつもりは一切なかったのだが、リネルは責められたと思って悲しい顔を一瞬したと思うと、眉を釣り上げて瞳を光らせた。
それは魔女そのものの姿だとゾッとした事は確かだった。
けれど、そのことも含めてリネルを愛している。
あまり感情を出さないリネルがヤキモチを焼くことも嬉しくも思う。
「アーサーは私のもの……アーサーに近づく女は……私以外の女は許さない……」
いつもは色とりどりの薔薇の花はどす黒く濁っていた。
「ごめん、そうだよね…僕はリネルのものだよ…いつだって…どんな時だって……」
そう言って抱きしめれば薔薇の色は元通りになった。
「私のアーサーに触れる女性を許せないの……奪われるのは嫌なの、この命も、アーサーの心も……」
それは冷静な彼女から出る情熱的な愛の告白のようだが、魔女の呪いの宣言だった。
それから女性たちの死はエスカレートしてアーサーが用事のために声をかけた女性は年齢関係なく亡くなった。
それはリネルの呪いのせいだが……
「すべての原因は僕だ…この罪を神に告げることが恐ろしかった」
卑怯者だと、臆病者だと自らを卑下し反省する。
愛する彼女を守り抜きたいが、領民を守る領主の義務を果たさなければならないという葛藤に苛まれしばらくリネルに会うのをやめた。
そのことも原因なのか会わなければアーサーに拘らずとも領民は魔女の棘に刺されて帰らぬ人となっていくほどだった。
みかねた叔父が派遣した聖職者が来る前に自らリネルを抑えようと決意しリネルのもとに訪れる。
「……私はアーサーにキスをしたあの女が羨ましかっただけ、なのに、どんどん心が穢れていくの…苦しいの…アーサーのキスが欲しい…」
薔薇色の涙を流して訴える。
「キスが…したいのかい…?そうしたら君は……」
アーサーもできるならキスをしたい。
何度も…けれど一度の口づけで永遠の別れは辛いし嫌だ。
「私も、キスをしたい……でも、生きていたいの……生きていなくてはいけないの……』
ざわざわと草木が風がないのに揺れて、リネルの唇から風のように響く声が漏れる。
『私達のリネルを傷つける者は許さない…また殺すことは許さない!』
ブワッとリネルの背後から茨が伸びてくる。
リネルは黒いバラが咲く茨のドレスを見に待とうかの如くに蔦に絡まってすでに人の姿とはいえない魔女となっていた。
アーサーはあまりの姿に驚愕する。
「その目はあの優しい瞳ではなく、魔女だと蔑む瞳をしてるわ……」
アーサーは瞳をそらし隠す。
リネルを傷つけたくないし、心を覗かれるようで気まずい。
「どうしてそんな目で見るの?やっぱり、あなたも私を差別するのね…あの時だってそうだった…そうだったのよぉぉ!」
リネルは真っ赤な涙をさらに瞳から流して叫び続けたことにアーサーは恐れを感じて逃げ出してしまった。
それから、リネルの殺戮が始まった。
女たちだけではなく男も襲う。
今は数人の聖職者に女たちを協会に囲い守らせている。
アーサーの十字架と同じ聖なる守りの造りの教会には近づけないようだった。
魔女はそれほど十字を掲げる協会を忌避している。
派遣された勇ましい聖職者はリネルを成敗するために森に入っては帰ってこなかった。
聖職者側もムキになって何人も派遣する。
森は茨になりアーサーを拒む。アーサーにはもうリネルを止める力がないことに絶望する。それは拒絶されているということだからだ。
アーサーは無力な自分を呪い、狂った魔女になったリネルを止めて欲しいと強く願い、いつの間にかボースの森に来ていた。
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