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1☆魔女の身代わり

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 十年以上も前のこと、ある国のある城のある塔は炎に包まれていた。
 事故か、国民の反乱か、それとも………
 鉄格子を魔法で溶かして侵入し、窓枠に座る緑色のとんがり帽子に隠れた男の子のように短い髪の金髪で半ズボンの魔女の仕業か……
 囚われの身のオーネにはどうでもいい事だった。
 ただ、いつもの退屈な囚われの日常が、壊されたことはわかった…その後の反応をどうすればいいのかも考える思考も感情も失われていた。
 オーネはまだ十歳になったばかり。
 黒髪に右の瞳はエメラルド、左目は金に光る瞳を宿すオッドアイは宝石のように炎の光を写して妖しくきらめく。
 ウェーブかかった漆黒の髪は色気を漂わせて、さらに素肌白く透き通る美しさを際立たせた。

 オーネを見つめる魔女はその美しさに息を呑み、微笑む。

「【魔女の中の魔女】の予言通り、君を僕の従者に……いや。身代わりになってもらう。」

 魔女は窓枠から飛び降りると、オーネの前に近づき微笑む。
 彼女はオーネより少し年上に見えてよく顔をみると瞳はブルーの瞳にかすかに金が煌めき大きく可愛らしい容姿をしていた。
 魔女と言うにはやはり稚すぎだろうとオーネは思った。

「…僕は見ての通り魔女に見えないからね…」
 魔女はオーネの思っている事を読んだのか苦笑してそういった。 
 そのことは己自身認めているらしい。

「だからこそ、オーネ……君の美しさはこの僕【魔女を裁く魔女】の僕、ボースの身代わりに相応しい…」
 ボースと名乗った魔女は、オーネの頬をそっと撫で、髪を一房取り口付ける。
 まるでボースの仕草は王子様のようだとオーネは思う。

 ボースはオーネの細い足首に嵌まる枷に気づき、指を指すと枷はカチャリと音を立てて外れた。

「さぁ、僕と契約をしておくれ。僕の身代わりであり、眷属となるならば人としての最低減の人権を保証しよう」
 ボースは左手の手袋を外すと赤く輝く十字に円を描かれた十字の印を施された手の甲をオーネに見せる。
「牢屋に閉じ込められていた君には夢のような願いだろう?」
 オーネは無意識にボースの手の甲に口付けた。
 オーネの美しい紅をひいたような唇は魔女の眷属の証になった。
「ふふ。これで契約完了だ。
泣こうが喚こうが、この契約は解けない…君は僕のモノ……何でも僕言いなりだ。」
 ボースは外見に似合わずフフッと、大人のような笑みをした。
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