鬼総長緒丹子の恋

花咲マイコ

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5☆鬼の呪い

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 「まぁまぁ、お待ちしておりました。ご用意は出来てますよ」
『恋愛成就異界温泉旅館「和泉いずみ」』鬼女将はいつも変わらず美しく気さくだ。
 百%効果ある恋愛成就というおまけ付きという自負があり自信満々な宿名だ。
(私の恋愛は叶わないんだけどな……)
 と、心の中でため息を吐いた。
「緒丹子ちゃんもよくいらしたわね。」
「急にごめんなさい。今日、泊まっても良い?」
 叔母さんの宿には父に叱られては逃げる駆け込み寺でもあった。
 その代わり宿の手伝いを任される。
「ええ。」
 叔母さんは、そそそと、私の耳元にこそこそ話しをするように、
「一緒のお部屋用意するわよ?どうする?」
 その言葉を理解すると私の顔は真っ赤になった。
「そ、そんな関係じゃねぇよ!」
 と言って怒鳴って、誠さんを指差す。
「誠さんは結婚してるし!そんなことできるか!」
 想像も爆発して口走ったことに尚更顔を真っ赤にしてしまう。
 だけど、冷静になると瞳を伏せてため息をつく。
「もう、多分子供もいるんだろ…家族のところに帰れよ…」
 現実はそんなものだと思うと妄想した自分が馬鹿らしい…
 六歳上なのだから二十一歳と若いけれど…五年前に許嫁がいたんだからもう結婚して子供がいて幸せな家庭を作ったのだろうと思っていたが、

「僕、結婚できなかったんだよね…ははは…」
 と、困ったように頭を掻いて言った。
「は……はァァアああ!?」
 私は大声で叫んでしまった。
 誠さんも叔母さんも耳を塞ぐ。
「なんで結婚してねぇんだよ!私の五年間の鬱憤気分どうしてくれるんだよ!」
 言葉は怒鳴って眉も吊り上げ怒っているが、口元が嬉しすぎて口元が上がって歪んでしまう。
「彼女、鬼の呪いで死んじゃったんだよね」
 水をかぶらされたように私の熱い空気は一気にまた冷めた。
「鬼族を前にしてよくそんなことケロッと言えるよな……」
「ご、ごめん。そうだよね、でも大昔にかけられた鬼の呪いなんだよね。」
 誠さんは深刻な話でもさらりと普段の話に盛り込む癖がある。
 本当に心に思ったことは顔を見せずに心を込めて謝ってくれることを知っているが、普段は飄々とした風のような人だと改めて思う。
「鬼の呪いなんて、すごい恨まれてるんですね。」
 いつもニコニコの叔母も真剣な表情になる。
 鬼は情熱的で短絡的で感情的で一途でこうと決めたら決して揺るがない信念がある。
 呪いもそうだ。
 陰陽の陰の気で具現化した存在でもある鬼の一族なのだから、呪いに特化したあやかしでもある。
 実際、鬼の呪いといえば父も仏に帰依したとしても失恋で傷つい私を思い呪ってたし私も失恋に恨みを持っていた。
 それがまさか影響したのかと思うと罪悪感で地獄で反省したい気分になった。

「そうだよね、呪われたのが一千年も前のことらしいんだよね」
 誠さんは自分自身が呪われているのに他人事のように言う。
 私たち家族が恨んだ念じゃないのとにほっとしつつも、父が言っていたことは本当だったのだと緒丹子は思った。
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