鬼総長緒丹子の恋

花咲マイコ

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10☆鬼の姿

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『誠サンハ私のモノナのぉーーー!』
 といい、振りかぶった頭を横凪に襲いかかってきた。
 整えられた上座や屏風や酒樽が粉々になって吹き飛ぶ。
 まるで巨大首長竜が暴れているようだ。
 さらに椿の瞳は私を捉えるもと口を開け鋭く長い歯を剥き出しにして襲いかかってきた。
「私を食べるつもりらしいが、舐めんじゃねぇぞ!」
 私は地獄行きの金棒を召喚し、手に握った時には口を大きく開けた牙が頭上にあった。
「緒丹子ちゃん!」
 誠さんは枝ぶりの大きな榊木を降り鬼を薙ぎ風で飛ばす。
 粉々になった酒樽の破片と上座はの破片を織り交ぜて強風が私と椿の鬼に襲いかかる。
「ごめん!緒丹子ちゃん!怪我ない!?」
 何が何だかわからない間に私は誠さんの腕の中にいた。
「榊の木の風で吹き飛ばそうと思ったら手加減できなくて、ホント怪我とかない?」
 誠さんは必死に私の心配をして怪我をしてないか、顔や着物から出ている肌を調べる。
 不思議とわたしは無傷だった。
「胸元がカサカサする……」
 わたしはそのカサカサするものを取り出すと、誠さんがくれた「ごめんね」と書かれた枯れなかった榊の葉っぱがボロボロになっていた。
「…ずっと…持っていてくれたんだ…」
「な、なんだよ!悪いかよ…!」
 私は恥ずかしくなる。ずっとお守りみたいに持ってたのを知られてしまったから…
「これのおかげで護られてたのかも。陰陽師で言えば緒丹子ちゃんは僕の式神認定で僕のものだから怪我がなかったのかも?」
 誠さんもよくわかってないみたいだ。
 でも、「僕のもの」という言葉に嬉しさで涙が出てきちゃうではないか!
「どこか痛いとこあった?」
 胸のドキドキとからキュンキュンで痛いんだよ!むしろ幸せすぎて涙でちゃう!とは言えず冷静になりたくて、
「そう言えば、刀は?」
 私をゾッとさせる退魔の太刀を持っていない。持っているのはさっき吹き飛ばした榊木のひと枝だ。
「だって、緒丹子ちゃん刀、嫌でしょ?」
「わ、私のために遠慮すんな!」
 優しい誠さんにさらにドキドキしてしまう。
「緒丹子ちゃんにもう嫌われたくないからね?」

「ウギィぃぃ!イチャイチャすンナァア!」
 瓦礫から椿鬼は這い上がってきた。
 誠さんの気合の入った榊木の風でまとわりついていた瘴気は消えていた。
 榊木を天狗のうちわの如くに風を吹かせて邪気を祓ったおかげだ。

「でも…これじゃあの鬼は斬れないから困ったね……」

 吹き飛ばされた鬼は震えながらも瓦礫をなんともせずに起き上がる。

 ぐるりと首の長い頭をこちらに向けて清楚な椿の顔をして涙をする。

「わたしは誠様と結婚したかった……
本気で好きだったのにぃぃ…食べられちゃってこんな姿になっちゃった……」
 メソメソ泣き出した椿の鬼に誠さんは申し訳ないように
「ごめん…助けられなくて…答えてもあげられなくて…」
 本気で真摯に謝る。
「だったら、このお腹の中デ、一緒になりましょウー?」
 どっぷりとしたお腹をさする。
 その仕草はまるで妊娠した女のようで腹が立つ。
「お前が食べるのは私だろが!」
 わたしは手にした地獄の金棒で椿鬼の顔を打つ。
「ウギィ!」
「オラオラオラオラオラ!」
 そのまま全体をボコしていく。
 けれど、三メール以上ある動体にはあまり効かないようだ。
 さらに人間サイズのわたしの体では地獄の金棒の力は化け物に通じないようだ。
「ソウネェェ!あなたも榊誠を恨んでたじゃなぁあい!同じ恨みの鬼に…糧にしてあげるぅ!だから、あなたから食べてあげるぅ!そして恨みを共にハラソウゾ」
 もう、人間を喰らうことしか考えてない化け物の鬼になってしまっている。
 脳みその無い念の塊は思考能力も椿を介していたとしてもなくなっていく。
 呪物と同化したならば尚更かもしれない。
「ウルセェよ!元から私は鬼だ!逆にお前のせいで恨み湧いたわ!テメェをぶっ殺して私こそ五年間の恨み晴らしてやるわ‼︎」
 私は打掛をバッと脱ぐ。
 中の衣はビリビリと破れていくのは体が大きくなるからだ。
 ちょこんと生えだだけの角が大きくなるにつれて私の体も大きくなり牙を生やし赤鬼の姿になる。
 椿鬼と同じ大きさの鬼になる。

『地獄の鬼を舐めんなよ!』
 わたしは地獄の金棒を振りかぶると宿の壁に当たりベキベキバキバキ破壊してしまう。
『オラオラオラオラァァア!オラっ!』
 鬼になった私は気にせず金棒で鬼をボコボコにする。
 その度に宿を壊していく。
「怪獣対決……」
 誠さんは思ったことを口に出して唖然として一方的に椿鬼をボコる私の鬼の姿を見て口にする。

「宿がボロボロになってよろしいですの?」
 八尾比丘尼が心配してオロオロする。
「………まぁ、仕方ないですわね……」
 と、言いながら叔母さんの鬼の角は怒りのあまり天井を突き破りそうなほど伸びていた。


「うぉぉりゃぁぁああああああ!」
 思う存分ボコボコにした後金棒に鬼火を込めて椿鬼を薙ぐと化け物の胴体はチリとなって消えた。

 最後、核となっていた椿の魂が現れる。
 《羨ましい…あなたは誠さんに好かれて…
 はじめっから分かってた…
 誠さんは緒丹子ちゃんを好きだって…
 女の感でね……

 でも、解放してくれてありがとう……

 誠さんをこれからもよろしくね……》

 そう言って私に礼を言って天に上がってしまった…

「ちっ!せっかく地獄でしごいてやろうと思ったのに……」

 私は、ほっとして微笑んで見送った。
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