鬼総長緒丹子の恋

花咲蝶ちょ

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9☆呪物

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『結婚ナンテ許サナイィィ、喰ラッテヤロウゾォォ!』
 闇の空間の歪みからのしのしと胴体が這い出てくる。
 頭は椿のものだったが、首から下は大きなトカゲのような蛇のような、ぬめぬめした黒く長い胴体をしていた。
 鬼というより化け物。
 いや、怪獣というものか……

 瘴気と共に漂うドブの臭いは穢れそのものだ。
「穢れじゃ穢れじゃーー!なんて祝言じゃーー!」
 ウカ様の眷属の狐達はと言って慌てふためく。
「お前ら落ち着け!我らは高みの見物をしてれば良いだけじゃ!」
「そうですわ!新郎新婦の愛の力で鬼に入刀……」
 と叔母は言ったが、
「そんなウェディングケーキは嫌だ!」
 私は即座に否定した。
 
「もう、鬼というより化け物だ……」
 誠さんは眉根に皺を寄せて化け物になった鬼を見る。
「鬼に喰われた人の腐敗と念や魂も入って一緒になって蠢いてる…鬼というより呪いそのものだな……魂は解放させてやりたいが……」
 私は地獄の鬼の目で化け物を見定める
「あの中に魂って入ってるの?」
 誠さんが首を傾げて聞いた。
「ああ、あの体の核に椿の霊が入ってる……あれじゃ成仏できねえな…」
 私はその事を、哀れに思う。
「成仏させることできるの?」
「この化け物を退治できればな…」
 地獄の鬼である私が特別最速で閻魔様に頼んで転生させる道を導いてやろうとは思っていた。
「そうか…解放させてあげたいね」
 誠さんはそう言った。
「誠さんは鬼に優しすぎるだろ!」
「緒丹子ちゃんも優しいよ。亡くなった人の魂の事思ってるから」
「もう、そ、そんなんじゃねぇよっ!」
 私は真っ赤になって恥ずかしくてそっぽを向く。
 優しいって言われるのは慣れてない。
『私ノ誠様とイチャツイテンジャアアアアナイぃ!』
 椿鬼は尻尾を振り上げて上座をぶっ壊した。
 私たちはその攻撃を素早く左右に交わし、合流する。
「僕たちの結婚式をぶち壊した罪は重いよ!」
 誠さんは嬉しいことを言いながら懐からひと枝取り出し念を込めると、太刀の形に変わった。
「ひっ!」
 私は浮いた気分が急に恐怖でゾワっとする。
 鬼は退魔の太刀は嫌いだ。
 人間とのハーフだからすぐに滅せられるわけではないけれど、苦手なものだ。
「緒丹子ちゃん大丈夫?」
 私の様子に気づいて声をかける。
「鬼だから太刀は苦手なんだよ。やつもそうだろ!」
 と、椿の鬼を見ると、ほほほ!と笑い転げるように笑う。
『ソンナモノ怖くないわ!私とても強い呪物をもらったの…これで貴方と結婚して全てを滅ぼスことができるワっ!』
 鬼になった椿は狂ったことを叫び高笑いをする。
「呪物だと…?」
 ウカ様は余裕をかまして私たちの戦いを見守ろうとしていたが、椿の鬼の中心を目を凝らしてみる。

「あれは威津那の巻き散らかした呪物を得たんじゃな……」
 ウカ様はどこか視線を感じたもを睨みつける。
「面倒ごとを楽しみよって……」
 そう言ってため息を吐いた。
「正妻とは仲良くなったのに、あの鬼は結婚しと言っているのかしら?」
 八尾比丘尼は首を傾げる。
 この結婚式は太刀の者の榊誠を狙う鬼を打ち払うための仮初の結婚ということを説明されていたが腑に落ちないところを思ったらしい。

「一千年前の榊家の正妻の姫は『鬼姫』と言われていた『祈り姫』の斎宮。
 通常ならば幸せの思いを身に入れて幸せをを世に昇華させることが正常だが、負の思いばかり身に入れるから『鬼姫』と呼ばれておったのよ。」
 ウカ様は当時のことを思い出したようだ。
 世の中不思議なもので、平穏な世の中ほど人を恨む念が強くなる。
 なので平安時代は鬼の念が跋扈した。
「むしろ鬼は周りの妻たちの嫉妬の塊。
塊鬼……いや女の念の塊じゃった。」

 同時の榊の当主は嫉妬を避けるために鬼姫と呼ばれた祈り姫には手を出さず側室ばかり相手にしそれにキレた鬼姫の具現化の念が側室どもの魂を食らって鬼に化した、手に負えない状態だから封印してたんじゃろ。

 封印が解けた時に最後の一族の女子をくらい実態を得て望みを叶えようとした……しているところだな。

 結ばれ喰らうことをな……

「念は呪物になる。封印したのが黒御足の一族ならいつか呪詛に使おうと思っていたのかもな……まぁ、逆に威津那がばら巻いている呪物石の力をこの鬼は手に入れたと言うことだ。
 やれやれ……あやつはそんなことも忘れて虎視眈々と九尾殿の復活を待っているがの……」
 ウカ様はため息を吐いて哀れみの瞳を虚空に向けた。
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