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1出会い
しおりを挟む私は吸血鬼だ……
名前はとりあえず、ルイと名乗っている。
人間だった時の記憶がない、とにかく自分の存在が吸血鬼だということしか分からず生きてきた。
鏡に自分の姿が映らないから、どんな姿をしているのかすらわからない。
だが、太陽もニンニクも怖くない……
怖いのは貧血!空腹!
お腹が減ると死にそうになる……
だからといって、人を無闇矢鱈に襲うのはポリシーに反する。
私に血を与えたものには、ひとつだけどんな願いも叶えてやろうと決めているのに……
今の世の中、願いを叶えてもらおうなんて、必死になる人間なんていない。
お金もキャッシュレスとか言って現金を持って歩く奴などいないし、現金を手に入れたとしても足がついて私の救済者は犯罪人になってしまう……。
「うーっ!でも、お腹すいた!ね、猫の血でもいい!犬でも…!最悪ネズミでも!」
クラァぁあ……
ばたり……
と倒れてしまった。
「あ。目が覚めた」
目が覚めたらベッドの中だった。
「あんた、俺の目の前で倒れたんだよ」
「そうですか、ごめんなさい……」
私はしゅんとなって謝る。
「お前、女…なんだな…ボロボロの吸血鬼のコスプレすぎて気がつかなかった……」
「な、なぜ!そんなことを」
胸を押さえると、さらしがない。
自分のふくよかな手が胸に当たる。
晒しだけ取られてからちゃんと服を着せてもらっていた。
襟元は胸元近くまであけられていたけれど…
「そりゃ、息苦しいので倒れるわ……」
「ですよね…」
「顔色もすこぶる悪いし……」
そういって顔を隠していた髪をどかされる。
視界が空けて、助けてくれた彼を見ると、警察官の制服を着た、ガタイが良くて、少し目つきが鋭いイケメンだった。
黒髪なのに、灰色に光る不思議な色だ。
まるで狼みたい……
と思ってしまった。
「あの。お腹すいて…」
「カツ丼でも食べるか?」
「事情聴取されるようなことしてないので遠慮しておきます…」
「じゃ、何が食べたい?」
「血を……少し……」
「ここは病院じゃねぇから点滴はねぇな」
どうしてもお腹すいてどうにもならない、襲ってやろうか?と思ったら、目の下の瞼をベッと剥かれて、
「ほんっと、貧血で死にそうだな」
もう我慢できない。
彼の手を両手で掴み、手首を見つめ血の通っているところを見る。
「痛っ!」
カプリと牙を立てて、血を吸った。
「お前……」
だんだん血の気が戻っていくのがわかる。
彼の血は、美味しいとは言えないけれど空腹よりマシだった。
「ごちそうさまでしたぁ♡」
頬を赤らめて、満面の笑みをした。
その私の様子をみて、
「お、お前……」
と警察官は震えていた。
本当に血を吸われるとは思っていなかったんだろう。
吸血鬼で腹減らしとは言え、私は少食だ。
一ヶ月に一リットルもらえればそれで、すごい力を発揮しなければ普通に生きていける…と自分の体の特徴に関しての記憶はある。
警察官は逆に私の手を握り返して、頬を染めていた。
「お、俺の嫁にならないか?俺が一生養ってやるから!守ってやるから!どうか、俺の奥さんになってくれ!」
「…………はっ?」
キョトンとする私に彼は
「好きだ……結婚しよう!」
それが、血をくれた彼の望みならば叶えるのが私が自ら定めた掟。
「はい、あなたの望みを叶えます。
す、末長くよろしくお願いします…」
私はこうして警察官の柴田健十郎と結婚することになった。
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