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1☆狐巫女と陰陽師
しおりを挟む狐のお姫様は人間になりたいと願いました。
けれど、
人になれる魔法はひとつだけ。
恋しい王様の口づけで、人になれたのです。
☆☆☆
新しい祝皇の御代になられて半年いろいろな行事や神事、元号も変わられ、日和国は毎日がめまぐるしく華やいでいた。
すべてが新しくなると、神々しく真新しい世の中を黒に染めてしまおうというものが出てくる。
それは、レッドスパイなる神や皇室を壊す事を目的にするテロ組織が存在する人の世だけではなく、
この世……この夜に跋扈する神の光を闇に染めようとする神であり神ならざる妖たちも蠢く。
現代社会は夜でも明るく、闇から遠ざかった生活を出来るため、世闇とは遠い存在になりつつある。
その分、人は妖ものたちに鈍感になりつつある。
皇室を守る役目を持つ宮廷警備衛士職の『内裏衛士』又は『伝統衛士』とよばれる皇室を愛し、正式な職員ではないが、皇室を守る役目を持つ青年が特別になれる名誉職があった。
香茂瑠香が今宵は見回り役となった。
彼は今年で十七歳の青年だ。
切れ長な瞳に鋭い剣のような鋭いキリリとした眉に長い髪を巫女のように縛っているから一見、女性のように見えるが、男らしい色気が香る。
そんな瑠香は普段宮中普段着の狩衣ではなく、胸当てに弓と太刀をもち、現在は松明ではなく良く光る懐中電灯をもち、
伝統衛士の仕事である宮中見回りをしていた。
本来ならば代々皇室を刀を使い守る役目を持もっている青年の役目である。
代々伝統衛士を努めている滝口臣が体調不良のため、陰陽師で伝統衛士も兼ねている。
「任務が遂行できないなら、宮廷警察にやらせておけばいいのに…」
宮内省所属の宮廷警察は警護のプロの本職だ。
さらに宮廷警察から『宮廷警備』があり、『近衛の舎人職、内裏衛士』は皇室をさらにお側近くで護れる優秀で信頼された特別な人材がつく。
陛下おそばお守り出来る内裏宮廷衛士に優先して推薦もしてもらえる。
けれど、この伝統衛士は二十歳以下の若者限定の特別職だったことを思い出す。
大人になったら関わることも稀な異界を感じる事が少なくなる、もしくは感じなくなる。
だから、この職は陰陽寮の者も臨時でつけられ、見回りをさせられることもある。
そして、夜中に伝統衛士で見まわりさせる意味は人ざるものを宮廷に入れない為の伝統守護の役目である名誉職であることを思い直し、気を引き締めて夜闇をライトを照らして歩く。
決められた場所を一周すれば終わりな楽な仕事だが、瑠香は陰陽寮に帰れば幼い弟のようで神の化身の晴房の世話の仕事がまっている。
日和国は神の国の、皇を守るための超人的な力をなる使うには生まれた時から定められた力。
それは血族から生まれることもあるが、『神がかり』で誓うこともある。
国を思う気持ちが強く忠誠がなければ誓いなんて恐れ多くて命を落とす。
命を顧みず神と誓いをし、化身と成ったのが瑠香と晴房だった。
神の化身しかも子供のおもりも正直面倒くさかった。
瑠香は神の化身で神の良し悪しを見定める審神者を担っている。
そのために晴房のおもりを任された。
暴れん坊でいたずらっ子の晴房は手に負えず、審神者の力を使うことが必要だった。
陛下への敬愛は誰にも負けないと自負しているから神誓いをしたが、同じ神の化身そのものの子供の面倒を見させられることになるとは思いもよらなかった……
もう、八歳になってくれたので分別ができて楽になったけれど………疲れる。
(オレは、何かと背負うものが多すぎる……いい加減疲れる……)
はぁ…とため息を吐く。
他人の面倒ばかり見すぎて、自分を見失い、楽しいことも嬉しいことも自ら感じない人生を送るのが運命なのか………?
と、絶望すらしてきてさらに何もかもかも感じない、神の化身と言っても依代で、その器になるために人生に華を見いだせないようにされているのではないか…?
と自問自答するが、もう、それでも構わない……
なにか、面白いこと、心躍る、心を縛るような楽しい出会いをしてみたい……
渇望……というものを鬱々と心に抱いていた……
いや、この渇望も絶望をも感じる原因は、半年前、心ときめいた少女との出会い。
それさえ知らなければ、人生に色など必要なかった……
(彼女にもう一度会いたい……)
月に帰ってしまったかぐや姫を思う切なさで、空の月を眺めようとしたら、塀の上に何か駆ける気配を感じた。
反対の塀に飛び移ると勘が働いた瑠香は懐中電灯のライト当てる。
一瞬目を疑った、狐の耳に尻尾を持った、巫女装束を着た少女だった。
銀の髪は上限の月に輝き金にもみえる、妖というより神にも見えた。
驚いた狐巫女は目を見開いて、瑠香をみる。
「……我を見るとは、喰われたくなければ今すぐ我を忘れるが良い!」
と脅し、慌てて逃げた。
瑠香はにやりと笑う。
「………面白いではないか……」
ただの見回りだけではつまらないと感じていたが今日は当りだ。
求めていた心のときめきを感じてしまったのだから……
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