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あやかしと神様のドキドキ同居

幸せな未来の夢

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「一度やってみたかったのだ!」
 晴房に川の字を要求された。

 葛葉子と瑠香の部屋を作る几帳をどかして、大広間を作り三人の布団を晴房みずから並べ、真ん中を陣取る。
 その左に葛葉子と右に瑠香が眠る様に要求する。

 ジメジメとする梅雨時期だけど、冷える時は冷える。
 布団着てお腹を冷やさないようにする。

「見回りをしなくちゃいけないんだけど……」

「大丈夫、今日はハルが結界を張ってみた。」
 晴房は胸を張る。

「葛葉子がいない時に修行したから」

「私は用済みということか?」
少し寂しげに言う。

「今日はお狐様とハルが寝たいと言うから特別、神様たちが力を合わせて結界を張ったんだから有難く今日は川の字を味わえばいいんだよ」

 と、偉そうに瑠香は言った。
 葛葉子を、悲しがらせないためにわざと横柄に言ったことを葛葉子はありがたく思う。

「では今日はゆっくり眠れるということだな。ありがとうございます。お父さんと二柱に感謝だ!」
「明日からは仕事がんばれよ、何かあれば手伝うから……」
「うん、ありがとう」
晴房は二人の手を握って満足だけど、
いつの間にか葛葉子に抱きつく。
「うふふ。なんだか親子みたい。」
「親子というか兄弟だけど……」
むしろ夫婦になりたいと瑠香は思う。

「もし、子供ができたら晴房みたいな可愛いのがいいな。」
「オレは大人しい子供がいい……」
「どっちにしても可愛くて健康ならいいな。」
 私が健康じゃなかったから……
 ただ希望を言霊にしているだけの会話なのに

「今すぐ作るか?」
 瑠香にそんなこと言われると冗談じゃなくなる気がして怖い。

「作れるわけ無いだろ!晴房いるし……」
「そうだな。」
 晴房がいなければヤッていいことか?と
 意地悪を言うのをやめた。
 更に警戒されそうだ。

《可愛らしい、お前たちに未来を少し見せてやろう……》

 ルカの神は寝入った葛葉子と瑠香に夢を見せる。

 俯瞰してみて見ているようなでも、自分たちの事のような不思議な感覚の夢。

 隣に寄り添うのは大人になった瑠香で髪が短い。
 男らしい色気も増しているように感じる。
 その傍らにいるのは葛葉子で瑠香に頭を預けて髪に瑠香の綺麗で長い指が髪を優しく撫でる。
 二人の子供を優しく見つめている。
 おとなしく面倒見よさそうな瑠香に似たお兄ちゃんと晴房に少し似た弟。
 やんちゃぽい。
 その弟を兄はなだめるのが好きみたいだ。
 あまり歳は変わらないようにみえる。

 幸せな家庭築いてる。
 お互い見つめ合うとキスをする。
 それは、作業的なキスではなく、お互い愛しさを込めたキスを何度もする。
 子どもたちは見てみないふりをしてくれる。

 愛してるという感情が胸を締め付ける。

ずっとそばに……
添い遂げたい……
年老いるまで……ずっと……

 強く切ない思いが寄せていて涙が止まらない……
 そう思うとなぜだかとても悲しくて、でも愛しくて……

 大人の瑠香は葛葉子を愛しく抱きしめてキスをする。
 唇だけではなく、愛撫され体にくちづけをされる。
 嫌がらず葛葉子もその思いを受け止める……
 とても、愛おしそうに切なく。

幸せになりたい…
瑠香とずっと
共に……

生きていたい……


 葛葉子は涙が止まらなくて、涙を指で拭かれた。
 目が覚めると、目の前に瑠香がいて、晴房を抱きしめていたと思ったら瑠香を抱きしめていた。

「瑠香……?」
「おはよう」

 瑠香からぎゅっと更に抱きしめられる。
 おでこにキスされる。
 頬にくちづけされる。

 夢のつづきかと思った。
 だから素直に受け入れ微笑む……


 だけど、ハッとして現実に頭が完全に戻る。
 ガバッと起きて、
「おはようじゃないだろ!晴房はどこに行った!?」

「あそこで暑くて転がってる」
 晴房はもともと寝相が悪い。

「お前なぁ!晴房が可哀想だろ!」

 晴房を元の場所に持ってこようとして、腕をひかれて再び抱きしめられて、見つめられた。
 真剣な顔をしていた。

「夢見てた……お前と結婚して幸せになる夢……」

 葛葉子は、どきりとする。
 自分も同じ夢を見ていたから。

「今すぐ幸せを作らないか?」

 優しい声音で言われると、夢のつづきかと思ってしまうが、恥ずかしくて、いつの間にか空気も湿気を帯びた暑さでくるしく……
汗をかいてる。

……誘いを断る理由が見つかった。
「……くっつくな、あつい…汗臭い」
 上半身を檻のように覆い被せて

「お香でどうにかなるし……」
 耳元で囁かれる。
 いつの間にか襟もとをゆるめさせられる。
 胸元が顕にさせられる。

 でもブラジャーをしていた。

 あまり色気はない。
 愛用の着古しブラジャーらしい。
カップが不自然に盛られてる……
「いつもノーブラのくせになんでしてるんだ?」

「お前から胸をカードするためにお姉さんに買ってもらった」
ドヤ顔でいった。

 この間の胸の蕾を触ったことを気にしていたらしい……
 そういう役割のものではないはずだけど。
 むしろ、寄せられて谷間の曲線が色っぽい。
 そこに思いっきり顔を埋めてみた。

「おまえ!やめろ!汗臭いっていってるだろ!汗もひどいし!」
 自分が汗臭いことを、気にしていたのか。
 かわいい。
「葛葉子の汗なら臭くない、嗅いでいたい。」
「変態か!」
 肩紐をずらして、胸を顕にさせようとする。
 半分冗談意地悪で半分本気で反応を楽しむ。

「ちょっと!や、やめて!外さないで!」
「子作りの許可は得てるし、心配するな……」
「そーゆーことじゃないだろ!スケベ!」

「あー!!ルカ!赤ん坊みたいなことしてる!」
 流石に会話が煩くて目が覚めた晴房が、二人の様子をゆびさして叫ぶ。
 葛葉子の柔らかい懐に頭を突っ込んでるのを見た晴房が正直な感想をいう。
 子供に言われると恥ずかしくなって葛葉子から離れる。
 葛葉子も、胸元を整えてそっぽを向く。

「大人のくせに、乳を飲もうとするなんて、瑠香は赤ちゃんなのか?」
 首を傾げて疑問に思ってる。

「そうだそ!そんなに飲みたいならお母さんに貰え!」

 二人に素で言われては瑠香の顔が真っ赤になる。
 恥ずかしい。
 ばっと、立ち上がり晴房にビシッ!と指を指し、

「男なら好きな女の胸がすきなんだよ!」
と開き直る。

「それに、スケベは男のたしなみだ!晴房良く覚えておけ!」

そう言って、怒ったふうに足踏みをし、風呂に行ってしまった。

「馬鹿息子が。晴房にバレるなと、いっただろが……」

孫がほしい陰陽寮長はため息を吐いた。


「そういえば、ハルも女神の乳すってた!夢の中で!」
ちょっと顔を赤くして言う。
「まだ子供だからいいんじゃないか?」
「もう赤ちゃんじゃないからはずかしかったぞ!」
「まだ許せる年頃だよ。瑠香と違って。」

 でも、なんだか、夢の中では自分は大人だった気がする……と、夢の出来事だったのでこのことはすぐ忘れてしまった晴房だった。
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