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あやかしと神様の恋の枷
13☆皮肉な枷☆エンド☆
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葛葉子は、暗い闇世の中、魂だけで白狐と向き合う。
《心から好きなのは祝皇陛下
ただ一人……》
わかってる…でも、瑠香を好きになってはいけないの?
《神違えをしてはならぬよ……》
陛下をもちろん愛してるよ…
白狐は頷くと、葛葉子の胸に体を溶けこませて、
《けして、言霊にしてはならぬよ…
お前の心はお前だけのものではないのだから……》
そう、葛葉子に宿る白狐は荒手な忠告をした。
☆
葛葉子が吐血して気を失い、その場にいた者たちは慌てる。
八尾比丘尼の計らいで、葛葉子を布団に寝かしつける。
瑠香の顔は心配のあまり真っ青になっていた。
葛葉子の手を握って離さない。
握る手が、かすかに震えている。
その健気な姿を見る方が胸が痛い。
「神も意地悪ですね。
心からの愛を言えない神呪いを誓わせるとは…」
八尾比丘尼は尼姿に身なりを整えて、葛葉子の様子を見守る。
「けれど、そういう貴方たちの恋の行方を楽しみにしているのですよ」
死なれてはつまらない。
それが本心だ。
「葛葉子は?葛葉子は、大丈夫なのか?」
瑠香は今にも泣きそうに八尾比丘尼に問う。
「魂を永らえさせている神狐から戒めを、忠告をされたらしいですわ…」
ここは八尾比丘尼の異界。
何でも筒抜けだ。
葛葉子におきたことも何もかも視ようとすればみえた。
「人魚の肉を食べさせるわけには行きませんしね…」
熱い思いをこもった恋愛を見せてもらうために同じ永遠を行かさせるわけには行かない。
「ほんとに人魚の肉は永遠の命にできるのか?」
「私を見てみればわかるでしょう?」
苦笑して瑠香を見た。
実際に自分以外食べたものいない。
けれど…
「血を飲めば、一度は蘇ることはできる…この娘にはそれで十分だと思ったが……
白狐の神は気が立っていて、飲ませたら白狐の呪いで私が腐って死ぬと、ルカの神にそう告げられました。
私は葛葉子と同じで意地でもひとになりたいから飲ませられません…」
審神者の自分を通さず八尾比丘尼と話すとは…
「今は、ただ癒やすだけです…」
「すまない…」
同じあやかしなら気が通い、回復できるらしい。
「うふふ、よいのです。
貴方たちの生き様が私の楽しみなのだから、邪魔する奴は誰でも許さないですわ。たとえ神でも…仏でも…」
気に入った者には優しく、尽くす八尾比丘尼だった。
「キミは優しいのだね。」
その優しさは覚えがある東はつい手をとって八尾比丘尼と見つめ合うが、八尾比丘尼は東の頬を、ぎゅっ!とつねる。
「惚れなおしても、今世のあなたとでは人になれないなら恋は致しません。
来世を待ちます。
だから、今世では好き勝手に恋をしてよいのですよ…」
その行為も前世でやられたお仕置きの仕方をこの空間では懐かしく思ってやばい…
ほんとに惚れ直しそうだ。
つねられた頬をさすりながら
「…来世ねぇ。そこまでわかるの?」
「何百年生きてるとお思いで?
魂は人ではないから人に戻りたいのですわ」
ルカの神が、ふふっと笑ったのが聞こえた。
《神としては羨ましい、稀なる存在よ。》
ルカの神は瑠香の背から浮き出て美しく笑う。
神は瑠香と八尾比丘尼しか見えない。
《神は見守ることしかできぬが、お前は神並の力をもっているのだから…》
「だから、あやかしなのでしょう。」
「ほんとに、神とまで話ができるとは恐れ入る」
瑠香は素直に感心する。
自分にしか神の声は聞こえなかったからだ。
いや、陛下や高位の巫女たちは聞こえるらしいが…
気さくに話しかけるのは、化身を依り代で審神者でなくては無理だ。
格は違うが、巷に言う守護霊みたいなものだ。
「長く生きていればそうなるのでしょう…」
八尾比丘尼は苦笑して言った。
「生きているのも悪くはない…
けれど、死ねないのも良くない…
人として生きて死ねるのは幸せなことよ…」
八尾比丘尼は今にも死んでしまうように、眠り続ける葛葉子の額を優しく母のように撫でて、
「けれど、死した魂が、神狐と契約してあやかしとしての枷の中で自由に生かされていても、誠に愛した男に、真実の愛の言葉を告げる事が死罪になり得るということは皮肉な枷ですね…」
八尾比丘尼は熱い思いを宿せばひとになれるのに、葛葉子は愛の告白で死に至る…
同じあやかしでも、条件が真逆…とは、ほんと、皮肉のものよ。仏にその者の恋を見届けろと生かされ続けたように思える。
曲がりなりにも仏に帰依している八尾比丘尼は葛葉子を憐れに思った。
熱い思いをこもった恋愛を見せつけてくれる約束を八尾比丘尼は切に守ってもらいたい。
自分のことというより、二人の想いの為に……
☆
その後、マスゴミに姿を表した東はピンピン元気な姿を見せた。
陛下から直接に危険な事象探しを禁止されてしまったのは世間を騒がした制裁として、粛々と受けることになった。
そんな東は八尾比丘尼の異界に留まる部下二人が心配だった。
無事に目を覚まして戻ってきておくれ二人とも……
葛葉子は、未だに目を覚ます気配はなかった……
瑠香は一時も離れることなく葛葉子のそばに寄り添っていた。
《心から好きなのは祝皇陛下
ただ一人……》
わかってる…でも、瑠香を好きになってはいけないの?
《神違えをしてはならぬよ……》
陛下をもちろん愛してるよ…
白狐は頷くと、葛葉子の胸に体を溶けこませて、
《けして、言霊にしてはならぬよ…
お前の心はお前だけのものではないのだから……》
そう、葛葉子に宿る白狐は荒手な忠告をした。
☆
葛葉子が吐血して気を失い、その場にいた者たちは慌てる。
八尾比丘尼の計らいで、葛葉子を布団に寝かしつける。
瑠香の顔は心配のあまり真っ青になっていた。
葛葉子の手を握って離さない。
握る手が、かすかに震えている。
その健気な姿を見る方が胸が痛い。
「神も意地悪ですね。
心からの愛を言えない神呪いを誓わせるとは…」
八尾比丘尼は尼姿に身なりを整えて、葛葉子の様子を見守る。
「けれど、そういう貴方たちの恋の行方を楽しみにしているのですよ」
死なれてはつまらない。
それが本心だ。
「葛葉子は?葛葉子は、大丈夫なのか?」
瑠香は今にも泣きそうに八尾比丘尼に問う。
「魂を永らえさせている神狐から戒めを、忠告をされたらしいですわ…」
ここは八尾比丘尼の異界。
何でも筒抜けだ。
葛葉子におきたことも何もかも視ようとすればみえた。
「人魚の肉を食べさせるわけには行きませんしね…」
熱い思いをこもった恋愛を見せてもらうために同じ永遠を行かさせるわけには行かない。
「ほんとに人魚の肉は永遠の命にできるのか?」
「私を見てみればわかるでしょう?」
苦笑して瑠香を見た。
実際に自分以外食べたものいない。
けれど…
「血を飲めば、一度は蘇ることはできる…この娘にはそれで十分だと思ったが……
白狐の神は気が立っていて、飲ませたら白狐の呪いで私が腐って死ぬと、ルカの神にそう告げられました。
私は葛葉子と同じで意地でもひとになりたいから飲ませられません…」
審神者の自分を通さず八尾比丘尼と話すとは…
「今は、ただ癒やすだけです…」
「すまない…」
同じあやかしなら気が通い、回復できるらしい。
「うふふ、よいのです。
貴方たちの生き様が私の楽しみなのだから、邪魔する奴は誰でも許さないですわ。たとえ神でも…仏でも…」
気に入った者には優しく、尽くす八尾比丘尼だった。
「キミは優しいのだね。」
その優しさは覚えがある東はつい手をとって八尾比丘尼と見つめ合うが、八尾比丘尼は東の頬を、ぎゅっ!とつねる。
「惚れなおしても、今世のあなたとでは人になれないなら恋は致しません。
来世を待ちます。
だから、今世では好き勝手に恋をしてよいのですよ…」
その行為も前世でやられたお仕置きの仕方をこの空間では懐かしく思ってやばい…
ほんとに惚れ直しそうだ。
つねられた頬をさすりながら
「…来世ねぇ。そこまでわかるの?」
「何百年生きてるとお思いで?
魂は人ではないから人に戻りたいのですわ」
ルカの神が、ふふっと笑ったのが聞こえた。
《神としては羨ましい、稀なる存在よ。》
ルカの神は瑠香の背から浮き出て美しく笑う。
神は瑠香と八尾比丘尼しか見えない。
《神は見守ることしかできぬが、お前は神並の力をもっているのだから…》
「だから、あやかしなのでしょう。」
「ほんとに、神とまで話ができるとは恐れ入る」
瑠香は素直に感心する。
自分にしか神の声は聞こえなかったからだ。
いや、陛下や高位の巫女たちは聞こえるらしいが…
気さくに話しかけるのは、化身を依り代で審神者でなくては無理だ。
格は違うが、巷に言う守護霊みたいなものだ。
「長く生きていればそうなるのでしょう…」
八尾比丘尼は苦笑して言った。
「生きているのも悪くはない…
けれど、死ねないのも良くない…
人として生きて死ねるのは幸せなことよ…」
八尾比丘尼は今にも死んでしまうように、眠り続ける葛葉子の額を優しく母のように撫でて、
「けれど、死した魂が、神狐と契約してあやかしとしての枷の中で自由に生かされていても、誠に愛した男に、真実の愛の言葉を告げる事が死罪になり得るということは皮肉な枷ですね…」
八尾比丘尼は熱い思いを宿せばひとになれるのに、葛葉子は愛の告白で死に至る…
同じあやかしでも、条件が真逆…とは、ほんと、皮肉のものよ。仏にその者の恋を見届けろと生かされ続けたように思える。
曲がりなりにも仏に帰依している八尾比丘尼は葛葉子を憐れに思った。
熱い思いをこもった恋愛を見せつけてくれる約束を八尾比丘尼は切に守ってもらいたい。
自分のことというより、二人の想いの為に……
☆
その後、マスゴミに姿を表した東はピンピン元気な姿を見せた。
陛下から直接に危険な事象探しを禁止されてしまったのは世間を騒がした制裁として、粛々と受けることになった。
そんな東は八尾比丘尼の異界に留まる部下二人が心配だった。
無事に目を覚まして戻ってきておくれ二人とも……
葛葉子は、未だに目を覚ます気配はなかった……
瑠香は一時も離れることなく葛葉子のそばに寄り添っていた。
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