あやかしと神様の恋愛成就

花咲マイコ

文字の大きさ
100 / 181
あやかしと神様の夏休み(番外編)

3☆従兄弟の春陽

しおりを挟む
 瑠香が葛葉子の服を持ってきてそれを着て一緒に下の広間のテーブルに照れながらつく。
 お母さんが子どもたちの分のかき氷を、テーブルに並べる。

 春陽が葛葉子を睨む。
「メギツネが…」
 春陽に睨まれボソリと呟かれた。
 春陽が来た時は狐ではなかったのに見ぬかれてるようだ。
 それに、何故か嫌われてしまったことにも困惑する。

 春陽をよく見れば、自分に少し似てると感じた。

 切れ長な瞳の一族的な香茂とは違い、瞳が大きく一見女の子に見える。
 どちらかというと阿倍野の一族に似てる…と葛葉子は思ったら、

「狐の一族と一緒にするな!」
 春陽に怒鳴られた。

「ご、こめん。」
 テレパシーが使えるのはやはり香茂の一族だと思った。

「そういえば、香茂の親戚っていっぱいいるの?」
 葛葉子は首を傾げて尋ねる。

「まぁな、父さんの兄弟八人もいるし、分家もたくさんある。」
「お母さんは、香茂の親戚の人?」
「母さんの家は両家と関係ない神職の名家だよ。」
「真陽と一緒で、そういうこと興味ないけどね。私のところも親戚たくさんいるわね。」
「阿倍野家の遠縁とも繋がりのあるものもいるよ。」
と陰陽寮長がにこやかに言う。
「阿倍野の従兄弟とはオレは親しいぞ。」
 瑠香は、昔遊んだ年上の従兄弟を思い出した。
 遠い血筋でも、何度か交わるというのは本当だったのかと葛葉子は、ワクワクする。

「うむ、春陽は香茂よりも阿倍野のほうが強いかもな。」

 陰陽寮長も葛葉子と同じことを言った。
 そう言われてムッとする。

「僕は、香茂の人間だし!狐の一族と一緒にされたくない!」
 何故か阿倍野の一族はコンプレックスらしい。

「瑠香にいみたいに、かっこ良く大人っぽくて、神々しい容貌になりたいんだ!」

 乱暴にかき氷にスプーンを入れて、氷を思いっきり散乱してしまった。

「もう、春陽は天性のどじっこだな!」
 瑠香は無意識に世話を焼く。
 瑠香のかき氷を春陽に譲る。

「えへへ。ありがとう瑠香ニイ」
 春陽は瑠香の優しさを知っているらしい。本当の弟みたいだと思った。
 晴房とは性格が違うから態度も違うのかな?と思う。

 いたずらっ子と甘えん坊。
 どちらも可愛いし、自分の子供が生まれた時を想像する。
 楽しい家族になりそうだなぁとうふふと微笑む。
 そんな葛葉子に瑠香は幸せを感じる。

 玄関の扉が開くと、ドサドサと多くの荷物を放り投げる音がする。

「ただいまー!まったく!荷物重かった!」

 やっと、真陽が帰ってきた。
 広間にいくと一人多いことに気づく。

「あら、春陽くん来てたんだー。」
「おじゃましてまーす!」
 キラキラした瞳で真陽に挨拶する。

「それにしても、荷物持ってくるの大変だったわ!」
 と叫ぶように言う。

 そういえば、真陽とかなり買物したことを思い出した。

「ごめん、真陽姉さん!置いていっちゃって!」
「瑠香のせいだからね!葛葉子ちゃんは被害者よ!」
《そういえば、子作りで来た?》
《春陽にじゃまされた…》
《ざまぁ》
 ドヤ顔して笑われる。
 ムッと瑠香は姉を睨む。

 春陽はクイッと真陽の腕を引き、
「真陽姉も誕生日迎えて、さらに、綺麗になったね」
「うふ。ありがとう。口も、うまくなったわね。」
 真陽はなんの気もなしに、春陽のおでこにキスをしたら、真っ赤になった。

 瑠香は心の中を覗くと、

(真陽姉、ほんと綺麗…恋人とかいるのかなぁ…)

 ふーん。真陽姉に気があるのか……葛葉子に好意を持ってなければ別にかまわないけど…


「お盆はみんなで集まるから先に阿倍野家におじゃまして、来てくださる方をきいてきてね。」
「はーい。」
 更にそうお願いされて、香茂家ともとから近い関係だと思うとうれしい。

「阿倍野家はみんなバラバラになっちゃったみたいだし…
 今や、私しか跡取りいないし。晴房はもう宮中の神様だし…」
そうなると、やっぱり自分が後を継ぐことになるのかと思う。

「そうか…その問題があるのか…」
 瑠香は葛葉子の頭を覗いて考える。

「でも、早く子供いっぱい作ってこの家みたいに温かい家庭をつくって、温かい阿倍野をとりもどしたい!そんな夢が新たにできたよ!」
 瞳を輝かせて言う。

「でも、葛葉子ちゃんはもう私達のお嫁さん決定だからね。」
とお母さん。

「孫を一応阿倍野の跡取りにしてもらえばいいんじゃないか?」
とお父さんの陰陽寮長。

「難しい問題じゃないわよねー。私婿もらうしー。
 瑠香が、婿に行ってもかまわないし!」
(なら、僕が婿になりたい…)
と春陽は考えるが複雑に思う。
 阿倍野は不吉という噂を鵜呑みにしてる。
 家族みんなに後押しされたので、

「瑠香、早く子供作ろうな!」
「あ、ああ。」
 瞳がさらに輝いてる。
 かわいいし愛しい。

「葛葉子の夢はなんでも叶えてやるよ」
 ぎゅっと抱きしめ合う。
 かき氷がさらに溶けてしまうほど熱い思いを込める。

(葛葉子は単純だなぁ。)
 そこが可愛いんだけど。
 正直、阿倍野殿に挨拶する事は気が重い。不安だ。

 でも幸せな家庭をオレと作りたいと言われると葛葉子の為に頑張ってやると瑠香の夢にもなった。

(瑠香は、ほんと純粋だわ。だから、神の化身できるんだわー)
と、呆れる真陽だった。

「僕だって純粋だよ!」

 突然話とは関係ないことを言い出したけれど、考えを読む香茂の人たちは普通のことで大抵なことは驚かない。
 春陽はテレパシーは聞こえてもテレパシーで会話できないらしい。

「でも、葛葉子ちゃんをいじめる純粋さは、いただけないわねー。」
 葛葉子を敵視してるのを真陽は、見抜いて言う。

「男の子は女の子にやさしくなきゃね!」
 つんと、春陽のおでこをつついて注意する。

「そうだぞ、瑠香!」
 さっき意地悪されたことを思い出して言う。

「葛葉子ちゃん、それ、フォローになってないから」
 と苦笑する。

「それにしても、どうして、葛葉子を敵視するんだ?
 阿倍野家抜きに言ってみろ」
「………大好きな瑠香にいを独り占めしてムカつく。きっと葛葉子から誘ったんでしょ狐なんだし!」
 自分の心正直に発する。
 心に迷いがないのも春陽の性格みたいだ。
 春陽はまだまだ若いゆえか決めつけるところがあるし、人の言葉を鵜呑みにするところがある。
 まだ十三才だから仕方ないが…
「なんで狐ってわかった?」
「僕は魂が見える能力に長けてるんだ。葛葉子の魂は狐に見えるし…普通じゃない感じがする。しょ、所詮、阿倍野だからな」
 ふんっと怒って言う。
「そうなんだ、すごいな。流石は香茂だな!」
 葛葉子も、素直に感心する。
 そう言われて悪い気はしないがバツが悪くなる。

「葛葉子を独り占めしてるのはオレだよ。」
 うんうんと真陽も頷く。
 一日、葛葉子を貸してくれたのは誕生日だったからだ。

 それでも信じたくないのか、春陽はムッとして、

「どんな色仕掛けで籠絡されたの!
 もっと、神々しく気高い楚々とした感じだったのに!雰囲気かわった!デレデレ顔たるんでる!」
 プンプン怒って言いたかったことを言う。
「た、たるんでない!失礼な!」
「確かにねぇ。たるんでるし。
もとから意地悪なのはかわらないけど、情熱的になったわよね」

 それは瑠香自身が一番そう思う。
 こんなに、余裕のない自分に戸惑う程に変わってしまったと……
さらに。
 つい最近両思いになったばっかりだ…
 仕方ないではないか。

 その、瑠香の考えを覗いて、

「やっぱり、阿倍野のメギツネ!お前の仕業だ!何か呪いでもかけたんじゃないのか!」
「か、かけてないよ!」
 そういえば、瑠香に白狐になって再開した時、瑠香に言われた言葉だと思い出した。
 瑠香は、にやりと意地悪を考えて、

「そうだな、恋の呪いかけられて、一生解けないんだよ。だから、責任とって、オレと今夜一晩ベッドで過ごそう」
「それは一晩過ごすだけで呪いが解けるの…?」
 なぜだか悲しい気持ちになる。
「ん?どうした?葛葉子?」
 その様子に気づき優しく聞く。
 …やな予感がすると瑠香は思う。
 呪いは冗談だとわかってるけど…

「一晩で、嫌われるということか?」
「ちがうよ!一生死ぬまで葛葉子と添い遂げても解けない愛の呪いだよ!
 いや、宿命だってわかってるだろ?」
 瑠香は、焦ってフォローする。

「わかってるけど…呪いっていわれるのいや…呪いでも解けるのもやだ…」
 矛盾なことを言ってポロポロと思わず涙する。
 キュンキュン瑠香は、胸が鳴って、更にぎゅーっ!と葛葉子を抱きしめる。

「呪いでも祝福でもお前と一緒にいられるのがオレの幸せなの!泣かないで…」
 キスするように唇で涙を拭う。

「私も瑠香と一緒にいるのが幸せだよっ!」
「葛葉子、オレもだよ」
 キスしまくる。
 葛葉子は家族公認だから恥ずかしくないらしい。

「はじまったな…まったく…」
 陰陽寮長は家では止めなかった。
 晴房はいないし、春陽は年頃だからキスぐらい見てもかまわないだろうと思ってる。

「…もう、接着剤で体くっつけてやろうか!」
 真陽も、あまりのラブラブぷりに暴言を吐く。

「そういうことは、自分のへやでやりなさい。」
 母は冷静に注意したけど孫がほしいし葛葉子の夢を後押ししたいから注意は柔らかだし案に既成事実化しろと言っている。
 お母さんに背中を押されて二人追い出された。
 真陽は、ため息を吐いて、

「こういう二人だから、春陽くんが何言っても無理だと思うわよ…なおさら煽るだけなんじゃない?」

 春陽は、むむむむっ!と眉間にシワを寄せて、

「しばらく、瑠香にいに、ふさわしい女か審査してやる!」
 権限もないのに勝手に決めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

ワイルド・プロポーズ

藤谷 郁
恋愛
北見瑤子。もうすぐ30歳。 総合ショッピングセンター『ウイステリア』財務部経理課主任。 生真面目で細かくて、その上、女の魅力ゼロ。男いらずの独身主義者と噂される枯れ女に、ある日突然見合い話が舞い込んだ。 私は決して独身主義者ではない。ただ、怖いだけ―― 見合い写真を開くと、理想どおりの男性が微笑んでいた。 ドキドキしながら、紳士で穏やかで優しそうな彼、嶺倉京史に会いに行くが…

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...