108 / 181
あやかしと神様の夏休み(番外編)
12☆いつまでも年中行事
しおりを挟む「ねーちゃん、良い体してるなぁ、はぁはぁ…」
後ろから抱きしめられて胸を掴むように触られる。
耳元で気持ち悪い、息を吐かれて鳥肌が立つ。
「おしりは、なんか、変なさわりごこちだな…」
胸から手を離し、おしりを撫でられる。けれど尻尾が盛り上がって触り心地に疑問を思われても、尻尾も敏感なところだ。
「ぎゃぁ!変態がっ!さわるな!」
触られて、怖くて、震える。
瑠香以外の、男にこんなことされて、怒りより恐怖だった。
「脱がせて確かめてみようぜ!」
「いや!やめて!」
「お、おかぁさん!」
青ざめた桂は何を間違えたか、葛葉子をお母さんと呼んだみたいだと、葛葉子は思ったが、それどころじゃない!
結った髪が解ける。
帯が解かれそうになる。
葛葉子は必死に抵抗する。
「やめて!瑠香っ!たすけて!」
「うるさいだまっつ!ぐつっ!」
煙が男の喉に絡みつき絞めて言葉を紡がせない。
「マジで、霊的に生まれ変わらせてやろうか?」
真っ黒な荒御魂を背後に揺らめかせて瑠香は低い声で言い放つと、手をかざして、キラキラ光る香の煙を更に出して男たちにまとわせつかせる。
「うわっ!なんだ!この煙は!」
「うごけない!っ!服が溶けてる!?」
神の力をまとった光りの煙は、人攫い共の服をみるみる溶かした。
「皮膚まで溶かしてやろう…」
さらに、そう想像しながら力を使おうとしたら、
『皇室のため以外にはそこまではしてはいけないよ…穢れてしまえば私はもう、力を貸せない…
命を奪う以外の方法ならいくらでもよいよ』
「ちっ!」
瑠香は、神に忠告されて、舌打ちをした。
本気で殺してやろうと思ったのを神に止められ瑠香は、仕方なく腕を上げると、操る煙は悪人を持ち上げ空に上がる。
素っ裸な人攫いは宙に浮き上がり、花火が打ち上がるのを待つ人々の目を疑わせた。
警察が来てわいせつ行為と最近騒がせている人攫いの容疑で逮捕された。
浴衣が着崩されて怯えていた。
瑠香が近づくと、涙を流しながら抱きつく。
瑠香は葛葉子を胸に抱きしめる。
「怖かった!瑠香以外に胸触られるのやだ!耳元に息を吐かれるのやだ!気持ち悪い!触り直して!」
あまりのことに錯乱してる。
「葛葉子、おちついて…」
さらに、ぎゅーーっと、泣きながら瑠香に抱きつく。
ほんとに怖い思いをしたんだと思うと可哀想で胸が痛い。
あの男どもをやっぱり抹殺したい気持ちになる。
抱きしめながら葛葉子の首筋にキスをする。
葛葉子の望みどおり胸にふれる。
着崩されてるから手が入りやすい。
自分以外の男が触ったと思うと自分自身に怒りが湧く。
もっと早く助けに来れればよかったと…
瑠香は葛葉子の豊かな膨らみの直接生肌を触れる。
ビクリと肩を振るわせる、顔が赤くなる。
「んっ…瑠香っ…」
自分で「触って」と言ったので、やめてとは言えなかった。
まさか、直接肌を触るとは…調子に乗りすぎだと思うけど…
瑠香以外の男に触られた感触をもっと消してほしい…
瑠香はその心を聞いて
胸の谷間に顔を下ろし唇を寄せキスをする…
さらに、浴衣を脱がす勢いだ。
瑠香は理性をなくしてると思うと、パシン!と手を叩いてやめさせる。
「さ、更に、脱がしてどうする!ひと目もあるのに!」
いや、明かりはあまり届かない場所で、人気もない所だけど…
瑠香はムッとして、
「彼氏に脱がされるのは彼女の義務だぞ。」
「恐れ多くも東殿下の真似するな…!」
いつもの売り言葉に買い言葉で、
ふふっと、お互い笑って見つめ合ってキスをする。
瑠香は葛葉子の浴衣を直すのを手早く手伝った。
「彼氏も彼女に脱がされるの義務?」
帯を締めてもらっている最中そんなことを葛葉子は言う。
「ん?」
瑠香の浴衣襟元を葛葉子に開けられ胸の真ん中にキスをされる。
「…つっ!」
「…はしたない?」
上目遣いで聞いてきた。
「もっとして」
「ばか!しないよっ!」
又、微笑み合ってもう二人だけの世界になっているが。
「………子どもたちの前でよくそんなことできるよね?」
桂にニコニコして言われた。
「わ、忘れてた!」
気配を消していたように大人しかったし、あまりの出来事に瑠香が助けてくれたことが嬉しすぎて二人だけの世界になってしまいすぎていた。
「ご、ごめんね、お父さんとお母さんはどこかな?今度はそっちを探そうか?」
薫は葛葉子と瑠香を指差して、
「目の前にいるじゃん!」
きつね耳、尻尾は阿倍野家に現れる血筋の証拠…だと瑠香は思う。
「あーあー…呪術解けちゃうよ……」
肩をすくめて、仕方ないというように桂は微笑む。
その手にはさっき葛葉子が襲われ落ちた簪を握ってる。
「あまりにラブラブすぎる両親を時逆の呪法を成功させたから若い頃をちょっと邪魔して引き剥がしてやろうかと思って過去に来ちゃったんだけど、やっぱり、無理みたい。今も昔もラブラブすぎるよ」
早口でそう物騒なことを桂は言う。
「え?両親って…?」
葛葉子は意味がうまく飲み込めないけれど…
「もしかして、お前たちはオレたちの子供か?」
察しが良い瑠香は、信じられないというように二人を見つめる。
確かに、ルカの神が夢でみせた子供二人だ。
「え、ほんとに!こんなカワイイ子どもたちが!?」
葛葉子は夢をすっかり忘れてしまったらしい。
葛葉子は二人に触ろうとしたら、スカッとカラ振った。
「あれ?どうして?」
「バレたら帰るのが掟なんだ…」
未来のことはバレては行けない決まり事。
「にいちゃん!早く本物のとーさん。かーさんにあいたいよ!」
「わかったよ。すぐに帰れるよ。」
ポンポンと弟の薫の頭を撫でる。
「またね、かーさん。とーさん。」
「バイバイ!」
若い二人をじっくり観察忘れないように見つめて、
「ここで会ったことは二人は忘れちゃうけど………」
大好きだよ…いつまでも…
ボーン!
と花火が鳴って、二人は、ハッとする。
花火大会が始まった。
「なにしてたんだっけ?」
「キスの続きだよ…」
「ちがうよ!
てか、お母さんたちと合流しなきゃ!」
暴漢に襲われたのはわかるけどなんで襲われたか原因を思い出せない。
けれど些細なことだと思った。
陰陽寮長は場所取りして、家族の集合を待っていて、遅れてきた二人に鋭い瞳で息子をにらみ
「ナニしてたのか?」
「し、してないよ。」
大輪の花火が空に咲き誇る。
瑠香の肩に頭を寄せて、肩を抱かれながら見あげる。
家族で見る花火はいいものだと葛葉子は思った。
「来年も見られたらいいなぁ」
「再来年もずっと見られるよ。」
さらに、ぎゅっと肩を引き寄せ耳元で…
「オレの奥さんになってるんだから…」
☆
「何してた?」
父が二人を必死に探して見つけてくれた。
「迷子してた。」
薫が狐の尻尾と耳を出して言う。
「迷子?」
そう不思議に思いつつ。
息子の薫にキスをすると耳と尻尾が消えてもとの普通の子供に戻る。
「それにしても、人酔いするくせに迎えに来てくれるなんて嬉しいよ」
「ん?そんなの昔のことだよ。」
「ほんと?それと、これ。思い出した?」
桂は父にかんざしを差し出した。
「………そういうことか」
父は瞳を一瞬見開いたけれど、ふっと優しく微笑む。
忘れた記憶はきっかけがあれば思い出す。
それは、当時、妻が大切なかんざしを無くしたことに焦った菊の模様のかんざしで思い出した。
父は二人の愛しい子供をぎゅっと抱きしめた。
「叔母さんも叔父さんも待ってるよ。さあ、急ぐぞ。」
息子たちの手を引いて妻の元へ急ぐ。
「ねえ。父さん…来年も、再来年もみんなで花火見ようね。ずっと…」
「ああ…そうだな…」
三人が無事帰ってきて、ほっとした母は、
「遅いぞ、お前たち!心配したんだから!」
「かーさん!お待たせ!」
「かーさん!大好き!」
薫は母の胸にダイブして抱擁する。愛おしそうに薫を抱き締め、桂も抱きしめる。
母は今も昔も変わらず子どもたちに優しいと、桂は思う。
ボーンと大きな大輪の花火を家族全員見上げて見とれる。
花火は毎年美しく夜空に咲き誇るのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ワイルド・プロポーズ
藤谷 郁
恋愛
北見瑤子。もうすぐ30歳。
総合ショッピングセンター『ウイステリア』財務部経理課主任。
生真面目で細かくて、その上、女の魅力ゼロ。男いらずの独身主義者と噂される枯れ女に、ある日突然見合い話が舞い込んだ。
私は決して独身主義者ではない。ただ、怖いだけ――
見合い写真を開くと、理想どおりの男性が微笑んでいた。
ドキドキしながら、紳士で穏やかで優しそうな彼、嶺倉京史に会いに行くが…
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる