あやかしと神様の恋愛成就

花咲マイコ

文字の大きさ
111 / 181
あやかしと神様の夏休み(番外編)

15☆あやかしと神様の神楽舞☆前編

しおりを挟む
 休暇の最後の日、近所の小さな神社で、奉納の舞をするはずの巫女(主催者の娘)が風邪を引いてできなくなったらしく、急遽葛葉子が巫女として奉納の舞をする事になった。

「うーん。私、あやかしだし穢されない?」
 あやかしと言っても今はなぜだか狐になることができない、普通の人間だけれど…
 葛葉子は少し及び腰だった。

「でも、神でもあるだろ。
それに、稲荷の社の祭だし。ちょうどいいんじゃないか?」

 本格的な巫女姿の葛葉子を見てみたいと瑠香は思う。
 それに、衣瀬で修行をした巫女だ。
 舞など簡単に舞えるだろうと思う。
 ルカの神も楽しみにしているようだ。

「それに風邪じゃなくて、その巫女やるはずだったのに妊娠しちゃってたらしいのよ。」
 と、瑠香の母は頬に手を当ててため息を吐く。

「うーん。しかたない。やるよ!」

 そういうと用意されていた巫女装束に着替えてきた。
 宮中では普段着で見慣れた小袖姿だが、千早を着て前髪に細やかな金の細工をされた花のかんざしをして、真っ赤な紅を指している。
 髪も水引きをつけてまとめられている。

「……うつくしい…」

 瑠香は、思わず口に出していた。
 さすが、衣瀬いせで修行した巫女らしく凛としている。
 穢れてはいけない巫女のオーラを放っている。

 血筋もあるだろう。
 正装だと、神憑きの巫女らしく神々しさがます。

 瑠香は息を止めて葛葉子に見とれられ、

「は、はずかしぃょ…」
 葛葉子は、袖で顔を半分隠して照れた。

「ついでに、お前も巫女姿になって二人で舞え。」
 突然、陰陽寮長は瑠香に命令する。

「は?姉さんがやればいいじゃないか…」
 葛葉子が舞うところをじっくり見るつもりだったのに…

「私が舞が苦手なの知ってて言ってんの?」
 真陽は瑠香に笑顔で凄む。
 幼い頃の一緒に舞をして散々だったことを思い出した。
 それ以来真陽は巫女は無理だと悟ったしなる気も更になくした。

「幼い頃きっちり仕込んだだろ?」
 陰陽寮長は逃げられないように瑠香に呪いをして金縛りにした。

「え?ちょっと、父さん!どう言うことだ!」

「さっそく化粧してあげる!」
 真陽はやる気満々で化粧する。

 瑠香はなされるまま、葛葉子とペアルックにされてしまった。

「わーっ!
真陽姉ほんとそっくり!」

 葛葉子は、興奮する。
 化粧された瑠香は女性らしさがまして中性的というか、神のように感じる。

「なんで、こんなことに…」
 やっと開放されて青ざめる。
 床に手をついてがっくりする。

「もっと事実は複雑でね、妊娠した巫女の夫がもう一人の巫女の彼氏だったらしくてね…」
と、ため息を吐いて、またもやとんでもない真実を母は言う。

『もう巫女なんかやってられっかー!!!』
 と傷心旅行に旅立っていったらしい。

 その事実を聞いた瑠香と葛葉子は言葉をなくし、呆れてしまう。

「それじゃ、しかたないな。恋愛中の巫女と巫覡の出番だな」
 ニッと笑う瑠香は艶っぽく男女中性的で神様みたいで神々しい。
 葛葉子はどきりと胸がなる。
 神に微笑まれたと感じる。

 ルカの神を見たことないけれどこんな姿をしているんだろうなぁと思った。

(あ、そういえば、ババ様の若い頃に似てるのかな?)

 恋人を少し複雑な気持ちで見てしまった。


 二人は左手に榊を持ち、右手に、鈴を持つ。
 左右対称の動きをすると思えば、榊を互いに向けて繋げて、見つめ合いながら、音に合わせ舞う。

 空気が張り詰めて、奉納を見るものは息を呑む。

 神が降りてきたかのような、緊張感に凜とした静寂感を醸し出す。

 そして、恋人同士のあやかしと神様の舞は妖艶だった。

陽と陰
男と女
光と闇
神とあやかし

 どちらも対立し、けれど互いになくてはいけない存在…。

 そして、舞を舞う二人も互いに支え愛しあう男女。

 日和国を作った最初のふた柱が互いを求め恋、愛し合うような舞を舞いそれを見たものは今までにない舞に見とれる。

 そして、舞を舞う二人が一番互いが互いに見とれてる。



 鈴の音が清々しく鳴る。
 ルカの神は喜んでいるのがわかる。

 二人の舞を見とれているのは、人だけではなく、ウカ様と八尾比丘尼が神楽を見に来ていた。

 いつもは煩悩で、葛葉子を見つめるのに純粋に美しい女神に見える思える。

 葛葉子も瑠香を素敵な男神に思える…

 集まった人たちも二人を見とれている。

(こういう舞台は初めてだ。)
《え…巫女なのに?》
 葛葉子は、テレパシーはできないけれど、瑠香が、受け取ってくれると思うので心のまま応える。

(見習い中だったから、最高位の巫女の後を継ぐと言っても…)
 死んでしまってあやかしになって今に至る。

《…ごめん、葛葉子》
(ん?私は幸せだよ。あやかしになって瑠香と出会えて、結婚もできるし。)

「ぜったいに、妻にするからっ…!」

 舞を踊っていて、テレパシーで会話するのに最後に耐え切れなくなった瑠香は、榊も鈴も放り出して、葛葉子を抱きしめてキスをする。

「る、瑠香!」
 封じられてるから深いキスしても狐にならない。
 見に来た客は一瞬ポカーンとしたけれど、きやーっ!素敵!と騒ぎ出す。
 ざわめきと、パチパチと盛大な拍手が鳴る。
 ウカ様も荻姫。萩尾も八尾比丘尼も二人の行為に微笑んでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

ワイルド・プロポーズ

藤谷 郁
恋愛
北見瑤子。もうすぐ30歳。 総合ショッピングセンター『ウイステリア』財務部経理課主任。 生真面目で細かくて、その上、女の魅力ゼロ。男いらずの独身主義者と噂される枯れ女に、ある日突然見合い話が舞い込んだ。 私は決して独身主義者ではない。ただ、怖いだけ―― 見合い写真を開くと、理想どおりの男性が微笑んでいた。 ドキドキしながら、紳士で穏やかで優しそうな彼、嶺倉京史に会いに行くが…

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...