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あやかしと神様の過去のこと
3☆寂しく孤独の拠り所
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葛葉子は最近までうろ覚えてはいた。
思い出すには必要最低限なことまでは…
ジジ様があんな性格だったという事を思い出すように、ふとした瞬間忘れていた記憶が蘇る…
毎日がめまぐるしく忘れていただけの事に似ているが、すっぽり抜け落ちていたものが戻ってくる感覚だった。
戻ってこないものもまだあるかもしれない……
晴房を見つめるが、見つめるのは過去の思い…
「それが父様にも私も一番良い事だと思ってたの…」
今思えばやってはいけない事。
皇室、宮中を守る神である、晴房を攫うことは恐れ多いことだとゾッと背筋が寒くなる。
戸惑いで瑠香の顔を見る。
瑠香は無表情だった。
無表情で葛葉子をじっと見る。
少し告白するのが怖い。
「なんでも、聞くから言ってくれ」
瑠香は葛葉子の隣に腰を下ろし肩を抱く。
「怒らないできいてくれる?」
「怒らないよ。絶対に」
不安な顔をする葛葉子のおでこにキスをして怒らない約束をする。
それに安心してつぶやくように記憶を口にする。
「私、皇室を裏切ろうとしてた……」
恐れ多くて震える葛葉子の手をぎゅっと握り
「うん。でも、裏切ってない」
それは未遂だから罪にも問えない些細なこと…
いらぬ心配を取り除く言霊を瑠香は言う。
少しテレパシーで父も自分も読んで葛葉子の事情は知っていたが詳しくはわからないから、疑い監視をしていた。
それに、心に、記憶になかったことは読めない。
ただ、皇室を裏切ろうとしている父を恐れて嫌っていたことだけを知っていただけだ。
晴房を一緒に探して風邪をこじらせ、白狐になったという事実だけしかしらなかった。
葛葉子も今まではその認識で十分だったが思い出してしまった…それ以前の記憶と感情を…
「巫女として生活するのが窮屈だったの…」
あの時のことを語る。
晴房はずっと抱っこされっぱなしで離れない。
晴房に関わることだし聞きたいらしい。
だが、阿倍野家の事を理解するかは分からない。
ましてや、母親のことはタブーにされている。
晴房がいると詳しく聞けなくなる。
厄介なことに、晴房もテレパシーを使える。
「晴房はどっかいってろ。」
「やだ!ハルも葛葉子の話ききたい!」
晴房は葛葉子の腰に手をまわして離さない。
審神者の瞳でハルの神を見ると聞かせてやれと言われた。
晴房を引き剥がすのを諦めて座り直す。
「友達もいなくて、寂しくて寂しくてしかたがなかったの……」
同い年の巫女もいなかったし、意地悪もされた…
それは、神殿を穢した房菊の妹だという疑いもあったのも思い出した。
表には出さないけれど神殿はとても大切なところだから巫女として許せない人もいた。
疑われていることはとても辛かった…
瑠香は更に手を握るし肩を抱く…
つらそうな表情を無意識にする…
瑠香は感受性が高い…
人の心の痛みまで自分のものに感じるが愛しい恋人の事だから、なおさらだった。
「でも、一人じゃなかったんだよ。私を世話してくれた人はいたよ…」
そう、ひとりじゃなかった…
瑠香のように優しくて世話を焼いてくれた、姉の房菊と同じ年の巫女がいた…
「なんて、名前だっけ…」
その人の名前は思い出せないが、思いだそうと影のぼやけたイメージを具体的にしようとしたら…
「うっ!」
鋭い痛みに額を抑える。
「葛葉子!?」
晴房も心配そうに見上げる。
「葛葉子どうした?大丈夫か?」
「うん、思い出したこと以外思おだそうとすると頭が痛い…なんだろう……」
その人の名前を顔を思い出そうとして頭にピシッと頭痛が走った…
何かの呪詛……?と一瞬不安に思うが、
「無理はするな。思い出したことだけでいいよ」
瑠香は言いながら、その世話してくれたという巫女を怪しく思う…
(後で思い出したなら調べてみる必要があるな…)
陰陽寮は生年月日も部署も素性もシフト表もしっかり管理してある。占いで良き日、忌日で宮中のシフト変更するからだ。
「…でも、そのひとは里下がりでいなくなってしまって…
そのあと陛下の御身体が急変して宮中が慌ただしくなった。
「慌ただしさに乗じて晴房を攫おうとしたの…」
晴房を攫って阿倍野に帰って幸せに暮らそうと思ってた…
約十年間の巫女修行(休みをもらって親のもとに帰れたりはしたけれど)から帰って阿倍野に帰った時、父は変わらずとても優しかった。狂っている事も気が付かなかった。
宮中で巫女として働かなくていいと言われたけれど、せっかく修行したのだから、仕事をしたかった。
神憑きは私にしかできないのだから。
葛葉子の意思は強かったけれど、周りからは特別扱いされて同じ巫女仲間からは羨ましがられた。
仕事に誇りを持っていたけれど、友達はいなかった…
いや、出来なかった…
だから、一人で、あまりにも寂しかった。
そんな時、父から手紙が来て晴房を連れて阿倍野に戻ってこいと書いてあった。
寂しさのあまり、父の文に従ってしまった。
「私達家族が幸せになるために晴房を連れ出したかった…」
そう言って晴房の頭を撫でる。
まるで昔話のエンディングのように幸せになれると信じてた…
寂しさのあまりにそれが拠り所になっていた…
父様は晴房を連れて帰っておいでと言ってくれた優しさだけが希望になっていたほどに……
先帝陛下がご崩御なさったばかりで宮中宮殿すべての職員がが慌てていて悲しんでいて、神事で重要な役目を持つ晴房が行方不明になったと知って、探すフリして連れ出そうとした。
「でも見つからなくて、晴房を探していた瑠香と一緒に探したんだよ」
二人のほうが、探しやすいし晴房のことをよく知ってそうだと思った…
でも男だから怖くてまともに顔を見てなかった。
葛葉子は、瑠香の顔を見て苦笑する。
「あれから、オレはおまえのことずーーっと忘れられなかった…」
「瑠香…」
葛葉子の頭を抱き、自分の頭に寄せさせる。
「一目惚れだった…でも、巫女だから諦めもあったんだよ…」
男は巫女にとって不浄。
神以外触れてはいけない存在…
「でもよく考えれば、オレは神の化身だ…お前を抱いても穢さない」
不浄にならない…はずだ。
煩悩だらけの男だとは己でわかってるけど、それは、葛葉子に限りだ。
「う、誓中だから今はダメだよ」
「うん、だけど、もう諦めないから、覚悟しておいて…
メチャクチャ優しくするから…」
「う、うん…」
葛葉子は瑠香の囁きに恥ずかしくなる…
さらに、思い出してくる
あの時のことを…あやかしになってしまった出来事を…
思い出すには必要最低限なことまでは…
ジジ様があんな性格だったという事を思い出すように、ふとした瞬間忘れていた記憶が蘇る…
毎日がめまぐるしく忘れていただけの事に似ているが、すっぽり抜け落ちていたものが戻ってくる感覚だった。
戻ってこないものもまだあるかもしれない……
晴房を見つめるが、見つめるのは過去の思い…
「それが父様にも私も一番良い事だと思ってたの…」
今思えばやってはいけない事。
皇室、宮中を守る神である、晴房を攫うことは恐れ多いことだとゾッと背筋が寒くなる。
戸惑いで瑠香の顔を見る。
瑠香は無表情だった。
無表情で葛葉子をじっと見る。
少し告白するのが怖い。
「なんでも、聞くから言ってくれ」
瑠香は葛葉子の隣に腰を下ろし肩を抱く。
「怒らないできいてくれる?」
「怒らないよ。絶対に」
不安な顔をする葛葉子のおでこにキスをして怒らない約束をする。
それに安心してつぶやくように記憶を口にする。
「私、皇室を裏切ろうとしてた……」
恐れ多くて震える葛葉子の手をぎゅっと握り
「うん。でも、裏切ってない」
それは未遂だから罪にも問えない些細なこと…
いらぬ心配を取り除く言霊を瑠香は言う。
少しテレパシーで父も自分も読んで葛葉子の事情は知っていたが詳しくはわからないから、疑い監視をしていた。
それに、心に、記憶になかったことは読めない。
ただ、皇室を裏切ろうとしている父を恐れて嫌っていたことだけを知っていただけだ。
晴房を一緒に探して風邪をこじらせ、白狐になったという事実だけしかしらなかった。
葛葉子も今まではその認識で十分だったが思い出してしまった…それ以前の記憶と感情を…
「巫女として生活するのが窮屈だったの…」
あの時のことを語る。
晴房はずっと抱っこされっぱなしで離れない。
晴房に関わることだし聞きたいらしい。
だが、阿倍野家の事を理解するかは分からない。
ましてや、母親のことはタブーにされている。
晴房がいると詳しく聞けなくなる。
厄介なことに、晴房もテレパシーを使える。
「晴房はどっかいってろ。」
「やだ!ハルも葛葉子の話ききたい!」
晴房は葛葉子の腰に手をまわして離さない。
審神者の瞳でハルの神を見ると聞かせてやれと言われた。
晴房を引き剥がすのを諦めて座り直す。
「友達もいなくて、寂しくて寂しくてしかたがなかったの……」
同い年の巫女もいなかったし、意地悪もされた…
それは、神殿を穢した房菊の妹だという疑いもあったのも思い出した。
表には出さないけれど神殿はとても大切なところだから巫女として許せない人もいた。
疑われていることはとても辛かった…
瑠香は更に手を握るし肩を抱く…
つらそうな表情を無意識にする…
瑠香は感受性が高い…
人の心の痛みまで自分のものに感じるが愛しい恋人の事だから、なおさらだった。
「でも、一人じゃなかったんだよ。私を世話してくれた人はいたよ…」
そう、ひとりじゃなかった…
瑠香のように優しくて世話を焼いてくれた、姉の房菊と同じ年の巫女がいた…
「なんて、名前だっけ…」
その人の名前は思い出せないが、思いだそうと影のぼやけたイメージを具体的にしようとしたら…
「うっ!」
鋭い痛みに額を抑える。
「葛葉子!?」
晴房も心配そうに見上げる。
「葛葉子どうした?大丈夫か?」
「うん、思い出したこと以外思おだそうとすると頭が痛い…なんだろう……」
その人の名前を顔を思い出そうとして頭にピシッと頭痛が走った…
何かの呪詛……?と一瞬不安に思うが、
「無理はするな。思い出したことだけでいいよ」
瑠香は言いながら、その世話してくれたという巫女を怪しく思う…
(後で思い出したなら調べてみる必要があるな…)
陰陽寮は生年月日も部署も素性もシフト表もしっかり管理してある。占いで良き日、忌日で宮中のシフト変更するからだ。
「…でも、そのひとは里下がりでいなくなってしまって…
そのあと陛下の御身体が急変して宮中が慌ただしくなった。
「慌ただしさに乗じて晴房を攫おうとしたの…」
晴房を攫って阿倍野に帰って幸せに暮らそうと思ってた…
約十年間の巫女修行(休みをもらって親のもとに帰れたりはしたけれど)から帰って阿倍野に帰った時、父は変わらずとても優しかった。狂っている事も気が付かなかった。
宮中で巫女として働かなくていいと言われたけれど、せっかく修行したのだから、仕事をしたかった。
神憑きは私にしかできないのだから。
葛葉子の意思は強かったけれど、周りからは特別扱いされて同じ巫女仲間からは羨ましがられた。
仕事に誇りを持っていたけれど、友達はいなかった…
いや、出来なかった…
だから、一人で、あまりにも寂しかった。
そんな時、父から手紙が来て晴房を連れて阿倍野に戻ってこいと書いてあった。
寂しさのあまり、父の文に従ってしまった。
「私達家族が幸せになるために晴房を連れ出したかった…」
そう言って晴房の頭を撫でる。
まるで昔話のエンディングのように幸せになれると信じてた…
寂しさのあまりにそれが拠り所になっていた…
父様は晴房を連れて帰っておいでと言ってくれた優しさだけが希望になっていたほどに……
先帝陛下がご崩御なさったばかりで宮中宮殿すべての職員がが慌てていて悲しんでいて、神事で重要な役目を持つ晴房が行方不明になったと知って、探すフリして連れ出そうとした。
「でも見つからなくて、晴房を探していた瑠香と一緒に探したんだよ」
二人のほうが、探しやすいし晴房のことをよく知ってそうだと思った…
でも男だから怖くてまともに顔を見てなかった。
葛葉子は、瑠香の顔を見て苦笑する。
「あれから、オレはおまえのことずーーっと忘れられなかった…」
「瑠香…」
葛葉子の頭を抱き、自分の頭に寄せさせる。
「一目惚れだった…でも、巫女だから諦めもあったんだよ…」
男は巫女にとって不浄。
神以外触れてはいけない存在…
「でもよく考えれば、オレは神の化身だ…お前を抱いても穢さない」
不浄にならない…はずだ。
煩悩だらけの男だとは己でわかってるけど、それは、葛葉子に限りだ。
「う、誓中だから今はダメだよ」
「うん、だけど、もう諦めないから、覚悟しておいて…
メチャクチャ優しくするから…」
「う、うん…」
葛葉子は瑠香の囁きに恥ずかしくなる…
さらに、思い出してくる
あの時のことを…あやかしになってしまった出来事を…
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