169 / 181
あやかしと神様の愛の契(最終回)
4☆戦いの誓(うけい)
しおりを挟む
扉を開ければ阿倍野屋敷でしかも直接、威津那の部屋の空間だった。
部屋は広い空間になっていて家具も何もかも壁紙に張り付いているように見える。
異空間の中に威津那はアンティークの椅子に腰掛け足を組み余裕の表情で扉を開けて入ってきた瑠香を見る。
「最終決着だね…まずは、誓をしようではないか…」
瑠香は扉を閉めて、気を緩めず威津那と瞳を合わせ、訝しみつつ、勝った方が正しい宿命ということかと思う。
恨みっこなしの誓だ。
「何を懸けるのですか?」
「私が勝てばこの国は皇は滅びる…葛葉子は九尾の狐のあやかしのまま生き続ける」
愛しの娘の葛葉子が生き残るための誓でもある。
同じく葛葉子を愛しく想う瑠香は一瞬息を飲む。自分の誓は真逆だからだ……
「……オレがあなたを止められたのならば……葛葉子はオレの妻になり……」
次の言霊を躊躇うが、阿倍野殿に負けるということは自分は死ぬという事で葛葉子は自分以外の男のものになる可能性もあると考えると、
「瑞兆になり陛下を日和国を寿ぐ…!」
躊躇いは消えていた。
「お前は…娘の死を望むのだね…」
「ともに日和国で幸せに過ごすためです…その為にあなたを止める!」
自分勝手なのはわかってる…
どうしょうもないことだ…
だけどそれはお互い様だっ!
キッと、阿倍野殿を睨む。
「さぁ、はじめようか!」
威津那は手を瑠香にかざすと数千羽のカラスが現れて瑠香を襲う。
瑠香はルカの神の力を最大限に使うため、体から香茂家代々の香の力を揺らめかせ空間になじませ発して、光の粒子がきらめき、襲いかかるカラスたちを光の粒子に変えて一瞬にして消す。
瑠香に触れることもなく霧散していくのを威津那は見て、
「神そのものになったか…」
「葛葉子の魂を取り戻すためには神になるしかなかった…」
「それでは、愛の言霊を一生言えないではないか………それで良かったのか…?」
威津那は神の依り代として後悔した…
晴房が生まれる前に死んだ橘に愛してると言えなくて…
分っていた事だけれど言えなかった事が口惜しい…
死する橘にも言えなかった…
それは自分の心との葛藤だった…陛下を一番尊敬していることを裏切りたくなかった…
今は裏切ってもなんとも思わないが伝える相手が死んでしまったら無意味だった…
悔し紛れにハルの神の力の半分を自分にとどめてある。
威津那もまだ神の依り代として力が使えた。
それもこれも陛下に神誓をしたからだ…
「愛の言霊がなんだというのです……
生きている間にたくさん愛情を伝えることはたくさん出来る…
オレは今すぐ葛葉子を抱きたい…言霊を言えない代わりに…
何度でも繋がって離れたくない!」
瑠香は本心で熱を込めて叫び宣言する。
その言葉に威津那は嫌な顔をする。
それは…自分だってそうだった。
その思いは今でもあるが肉体のなくなった橘に会えただけでもそれだけでも…心から嬉しかった…
なのに、この男は…
自分は父親だからだろうか…その隠さない思いに威津那は怒りが無条件で湧く…
「…ただの……年頃の性欲の塊のような男に娘をやれるかっ!」
ブァっ!
っと大きなカラスが背後に現れ、距離があるはずなのに黒いくちばしは容赦なく瑠香の腹を突き刺す。
もう少し楽しめるかと思ったが、威津那はおのれの短気さに呆れ、ため息を吐いた。
だが、黒きカラスは白い紙が包帯のように巻きつき黒い人形の紙になって封じられた。
瑠香は式神だった。
煙を発したときに式神を用意していた。
「オレも一応陰陽師…父の息子なんでね…」
背後にいつの間にかまわっていて光の縄で首を絞められる。
瑠香の父である陰陽寮長は式神に詳しく呪術に長けていたことを威津那は思い出し苦笑する。
首を後ろに向き、赤い瞳で瑠香を余裕で見る。
「……私を殺せるのか?」
「殺るしかないのならば…」
瑠香は人を呪殺したことはない…
本当は殺したくはない…これは脅しでしかない……
瑠香にできることはお香の力を使い記憶を奪う、縛り、消すことだ…
「あなたをここまでにした記憶を…すべて消す…それで終わりだ……」
愛しい橘のことを忘れさせられるということだと思うとゾッとする。
「それをされるくらいなら、死んだほうがマシだね…だけど…」
赤い瞳を閉じて苦笑する。
「死ぬのは君だよ……」
気配を消していた葛葉子は瑠香のそばに寄り添い鋭い爪で胸を貫いた。
部屋は広い空間になっていて家具も何もかも壁紙に張り付いているように見える。
異空間の中に威津那はアンティークの椅子に腰掛け足を組み余裕の表情で扉を開けて入ってきた瑠香を見る。
「最終決着だね…まずは、誓をしようではないか…」
瑠香は扉を閉めて、気を緩めず威津那と瞳を合わせ、訝しみつつ、勝った方が正しい宿命ということかと思う。
恨みっこなしの誓だ。
「何を懸けるのですか?」
「私が勝てばこの国は皇は滅びる…葛葉子は九尾の狐のあやかしのまま生き続ける」
愛しの娘の葛葉子が生き残るための誓でもある。
同じく葛葉子を愛しく想う瑠香は一瞬息を飲む。自分の誓は真逆だからだ……
「……オレがあなたを止められたのならば……葛葉子はオレの妻になり……」
次の言霊を躊躇うが、阿倍野殿に負けるということは自分は死ぬという事で葛葉子は自分以外の男のものになる可能性もあると考えると、
「瑞兆になり陛下を日和国を寿ぐ…!」
躊躇いは消えていた。
「お前は…娘の死を望むのだね…」
「ともに日和国で幸せに過ごすためです…その為にあなたを止める!」
自分勝手なのはわかってる…
どうしょうもないことだ…
だけどそれはお互い様だっ!
キッと、阿倍野殿を睨む。
「さぁ、はじめようか!」
威津那は手を瑠香にかざすと数千羽のカラスが現れて瑠香を襲う。
瑠香はルカの神の力を最大限に使うため、体から香茂家代々の香の力を揺らめかせ空間になじませ発して、光の粒子がきらめき、襲いかかるカラスたちを光の粒子に変えて一瞬にして消す。
瑠香に触れることもなく霧散していくのを威津那は見て、
「神そのものになったか…」
「葛葉子の魂を取り戻すためには神になるしかなかった…」
「それでは、愛の言霊を一生言えないではないか………それで良かったのか…?」
威津那は神の依り代として後悔した…
晴房が生まれる前に死んだ橘に愛してると言えなくて…
分っていた事だけれど言えなかった事が口惜しい…
死する橘にも言えなかった…
それは自分の心との葛藤だった…陛下を一番尊敬していることを裏切りたくなかった…
今は裏切ってもなんとも思わないが伝える相手が死んでしまったら無意味だった…
悔し紛れにハルの神の力の半分を自分にとどめてある。
威津那もまだ神の依り代として力が使えた。
それもこれも陛下に神誓をしたからだ…
「愛の言霊がなんだというのです……
生きている間にたくさん愛情を伝えることはたくさん出来る…
オレは今すぐ葛葉子を抱きたい…言霊を言えない代わりに…
何度でも繋がって離れたくない!」
瑠香は本心で熱を込めて叫び宣言する。
その言葉に威津那は嫌な顔をする。
それは…自分だってそうだった。
その思いは今でもあるが肉体のなくなった橘に会えただけでもそれだけでも…心から嬉しかった…
なのに、この男は…
自分は父親だからだろうか…その隠さない思いに威津那は怒りが無条件で湧く…
「…ただの……年頃の性欲の塊のような男に娘をやれるかっ!」
ブァっ!
っと大きなカラスが背後に現れ、距離があるはずなのに黒いくちばしは容赦なく瑠香の腹を突き刺す。
もう少し楽しめるかと思ったが、威津那はおのれの短気さに呆れ、ため息を吐いた。
だが、黒きカラスは白い紙が包帯のように巻きつき黒い人形の紙になって封じられた。
瑠香は式神だった。
煙を発したときに式神を用意していた。
「オレも一応陰陽師…父の息子なんでね…」
背後にいつの間にかまわっていて光の縄で首を絞められる。
瑠香の父である陰陽寮長は式神に詳しく呪術に長けていたことを威津那は思い出し苦笑する。
首を後ろに向き、赤い瞳で瑠香を余裕で見る。
「……私を殺せるのか?」
「殺るしかないのならば…」
瑠香は人を呪殺したことはない…
本当は殺したくはない…これは脅しでしかない……
瑠香にできることはお香の力を使い記憶を奪う、縛り、消すことだ…
「あなたをここまでにした記憶を…すべて消す…それで終わりだ……」
愛しい橘のことを忘れさせられるということだと思うとゾッとする。
「それをされるくらいなら、死んだほうがマシだね…だけど…」
赤い瞳を閉じて苦笑する。
「死ぬのは君だよ……」
気配を消していた葛葉子は瑠香のそばに寄り添い鋭い爪で胸を貫いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ワイルド・プロポーズ
藤谷 郁
恋愛
北見瑤子。もうすぐ30歳。
総合ショッピングセンター『ウイステリア』財務部経理課主任。
生真面目で細かくて、その上、女の魅力ゼロ。男いらずの独身主義者と噂される枯れ女に、ある日突然見合い話が舞い込んだ。
私は決して独身主義者ではない。ただ、怖いだけ――
見合い写真を開くと、理想どおりの男性が微笑んでいた。
ドキドキしながら、紳士で穏やかで優しそうな彼、嶺倉京史に会いに行くが…
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる