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あやかしと神様の愛の契(最終回)
6☆異心なき想い
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威津那はその場に倒れる。
「父様っ!死んじゃうの!?
私のせいでっ……!」
葛葉子は人の姿になって顔を青ざめて泣く。
「なんとかしてやる!」
瑠香は神の力を使い火傷を消す。
外見の火傷は治っていく。
癒やす力もルカの神の化身になれば簡単なことだったが、威津那は本気で瑠香を殺そうとしていた呪いを取り消すことはできなかった。
呪詛返しは防げなければ死するのみ…
だが死なせたくない。
葛葉子のために…
「いい…私の負けだ…このまま私を死なせてくれ…」
瑠香の癒やしの手を威津那は止める。
「橘を亡くしてから生きるのが辛かった……」
威津那は赤い瞳から涙があふれる。
「房菊も、葛葉子も、先に私を置いて逝ってしまう事が見えていた……」
その瞳を一度閉じて瑠香を見る。
「神憑きは命短いのが定めだ…とくに阿倍野は特殊だ…知っていて橘を愛した……
けれど実際、その時が来た時…どうしょうもなく悲しく辛くて耐えられなかった…」
瑠香もその時のことを思うと辛い…
葛葉子が亡くなる辛さはついさっき経験済であるが、どこかで生き返ると思っていた…それは宿命ではなかったから…
だがその時が来たら自分も威津那と同じように辛くて狂ってしまうのだろうと思うから気持ちは痛いほど伝わる。理解できる……
「私はその辛さを皇室にあたった…陛下を…愛していたからこそ神誓をした事を恨んだ… 」
威津那は無念に歯を食いしばる…
「……だが、それだけではないはずだ…」
幼い声だがが大人びた口調をする晴房を三人は見る。
後ろには、ジジ様がいて裸の葛葉子にシーツをかけてやる。
「おまえは陛下を憎む分、陛下を祝皇を愛していた……さらに親しい皇太子殿下であられた次世代の祝皇をもな…」
ハルの神の晴房は威津那の手を小さな手で握る。
神にとって依り代は可愛い我が子と同じだ。
「今上帝は…陽の気が元来お強い。
陽だけならば、世は血気盛んになり乱れた世になるだろう。
陰の気は衰退を司るが強すぎる気を抑えることができる…
その陰の気の存在になる事ががお前の宿命。
調和させて日和を守る事を、お前は憎しみのあまり忘れてしまったんだ…わざと宿命を変えてな…」
だから、ハルの神は宿命を瑠香を使い、ただそうとした。
もとから定められていたものだが、黒御足は宿命を変える力を多少なりとも持つのだ。
ハルの神が定めた宿命だとしても抗おうとするくらいなのだから神といえどここまでの宿命に戻すのに策を弄した。
「そうだったな…橘が生きていた時までは見えていた…理解していた」
威津那は苦笑して葛葉子の中にいる橘を見る。
威津那は陰気わ溜めすぎて魂を黒に染め過ぎて、闇に落ち、陽の気を止めることも忘れてしまった…
瑠香はハルの神が、葛葉子を陛下のために瑞兆にするためだけに宿命を定めていただけじゃない企みはあると思っていたが、そこまで計画していたとは…と関心してしまった。
「黒御足の家は本来、陛下を慕い『陰』からお支えする一族という事はそういうことなのだ…」
だけど、レッドスパイに身をやつした一族は滅んだ。
残る血筋は晴房と威津那だけだ。
「この晴房の身は神の身になったが黒御足の役目は定まっておる。陰として生涯この身は祝皇のためにある」
「どこまで行っても私達は陛下をお慕いする魂は滅びないということだな…恐れいったよ…」
威津那は、ふふっと笑い皇室を滅ぼす事を完全に諦めた。
その諦めもハルの神は分かっていたのだろう。
「その事を陛下はご存知だ。
そして、菊の綿布を下賜された…」
晴房の狩衣の懐から綿布をだし、威津那の胸に置く。
菊の綿布は重陽の節の前の月夜に菊の花に綿をおおって香りや露を移し綿布で体を拭えば長寿を願えると言われている。
「それを陛下自らお作りになり、お前にと言われたのでな…」
それは、威津那の幸せを祈る思いが込められていた…
威津那は眉間にシワを寄せて感動のあまり涙が溢れて流れる。
胸が苦しいほど嬉しさが満ち足りてしまう…
「あぁ…我が祝皇よ…なんと有りがたき幸せなことか……」
陛下の威津那を大切に慈しみ祈りを込めた思いだけですべての恨みが消えていく…
心を鬼にしてでも、陰の気を高めて陰陽の安定を純粋に図ろうと思っていた心を取り戻す。
「これ以上穢が消えてしまえばお役に立てない…」
菊の綿布を葛葉子に渡す。
「それは…葛葉子が受け取ってくれ…十五年…と言わず、もっと、もっと長く生きておくれ…」
そう言って力のない手で葛葉子の頭をなでる。
「父様…ありがとう……」
葛葉子は父の胸で泣く。
心臓の音が弱いと感じる…
もう時間がない…
威津那もわかっている…
黄泉に逝かず、現世で陰の気を陛下のために魂ごとお守りするお役目を果たすことを……
「父様っ!死んじゃうの!?
私のせいでっ……!」
葛葉子は人の姿になって顔を青ざめて泣く。
「なんとかしてやる!」
瑠香は神の力を使い火傷を消す。
外見の火傷は治っていく。
癒やす力もルカの神の化身になれば簡単なことだったが、威津那は本気で瑠香を殺そうとしていた呪いを取り消すことはできなかった。
呪詛返しは防げなければ死するのみ…
だが死なせたくない。
葛葉子のために…
「いい…私の負けだ…このまま私を死なせてくれ…」
瑠香の癒やしの手を威津那は止める。
「橘を亡くしてから生きるのが辛かった……」
威津那は赤い瞳から涙があふれる。
「房菊も、葛葉子も、先に私を置いて逝ってしまう事が見えていた……」
その瞳を一度閉じて瑠香を見る。
「神憑きは命短いのが定めだ…とくに阿倍野は特殊だ…知っていて橘を愛した……
けれど実際、その時が来た時…どうしょうもなく悲しく辛くて耐えられなかった…」
瑠香もその時のことを思うと辛い…
葛葉子が亡くなる辛さはついさっき経験済であるが、どこかで生き返ると思っていた…それは宿命ではなかったから…
だがその時が来たら自分も威津那と同じように辛くて狂ってしまうのだろうと思うから気持ちは痛いほど伝わる。理解できる……
「私はその辛さを皇室にあたった…陛下を…愛していたからこそ神誓をした事を恨んだ… 」
威津那は無念に歯を食いしばる…
「……だが、それだけではないはずだ…」
幼い声だがが大人びた口調をする晴房を三人は見る。
後ろには、ジジ様がいて裸の葛葉子にシーツをかけてやる。
「おまえは陛下を憎む分、陛下を祝皇を愛していた……さらに親しい皇太子殿下であられた次世代の祝皇をもな…」
ハルの神の晴房は威津那の手を小さな手で握る。
神にとって依り代は可愛い我が子と同じだ。
「今上帝は…陽の気が元来お強い。
陽だけならば、世は血気盛んになり乱れた世になるだろう。
陰の気は衰退を司るが強すぎる気を抑えることができる…
その陰の気の存在になる事ががお前の宿命。
調和させて日和を守る事を、お前は憎しみのあまり忘れてしまったんだ…わざと宿命を変えてな…」
だから、ハルの神は宿命を瑠香を使い、ただそうとした。
もとから定められていたものだが、黒御足は宿命を変える力を多少なりとも持つのだ。
ハルの神が定めた宿命だとしても抗おうとするくらいなのだから神といえどここまでの宿命に戻すのに策を弄した。
「そうだったな…橘が生きていた時までは見えていた…理解していた」
威津那は苦笑して葛葉子の中にいる橘を見る。
威津那は陰気わ溜めすぎて魂を黒に染め過ぎて、闇に落ち、陽の気を止めることも忘れてしまった…
瑠香はハルの神が、葛葉子を陛下のために瑞兆にするためだけに宿命を定めていただけじゃない企みはあると思っていたが、そこまで計画していたとは…と関心してしまった。
「黒御足の家は本来、陛下を慕い『陰』からお支えする一族という事はそういうことなのだ…」
だけど、レッドスパイに身をやつした一族は滅んだ。
残る血筋は晴房と威津那だけだ。
「この晴房の身は神の身になったが黒御足の役目は定まっておる。陰として生涯この身は祝皇のためにある」
「どこまで行っても私達は陛下をお慕いする魂は滅びないということだな…恐れいったよ…」
威津那は、ふふっと笑い皇室を滅ぼす事を完全に諦めた。
その諦めもハルの神は分かっていたのだろう。
「その事を陛下はご存知だ。
そして、菊の綿布を下賜された…」
晴房の狩衣の懐から綿布をだし、威津那の胸に置く。
菊の綿布は重陽の節の前の月夜に菊の花に綿をおおって香りや露を移し綿布で体を拭えば長寿を願えると言われている。
「それを陛下自らお作りになり、お前にと言われたのでな…」
それは、威津那の幸せを祈る思いが込められていた…
威津那は眉間にシワを寄せて感動のあまり涙が溢れて流れる。
胸が苦しいほど嬉しさが満ち足りてしまう…
「あぁ…我が祝皇よ…なんと有りがたき幸せなことか……」
陛下の威津那を大切に慈しみ祈りを込めた思いだけですべての恨みが消えていく…
心を鬼にしてでも、陰の気を高めて陰陽の安定を純粋に図ろうと思っていた心を取り戻す。
「これ以上穢が消えてしまえばお役に立てない…」
菊の綿布を葛葉子に渡す。
「それは…葛葉子が受け取ってくれ…十五年…と言わず、もっと、もっと長く生きておくれ…」
そう言って力のない手で葛葉子の頭をなでる。
「父様…ありがとう……」
葛葉子は父の胸で泣く。
心臓の音が弱いと感じる…
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