あやかしと神様の恋愛成就

花咲マイコ

文字の大きさ
181 / 181
一周年記念番外編

あやかしと神さまの占い結果

しおりを挟む
 日和国の宮中にある陰陽寮は占いのスペシャリストが集まる。
 卜部圭吾うらべけいごは、葛葉子にタロット占いを披露していた。
 学校の友だちが恋に悩んでいて…という話をしたら、気の良い卜部は「占ってあげるよ」と言って職務外時間で帰り際に占いをしてあげていた。
「スペシャリストに占ってもらうなんて高くつくぞ。」
 と瑠香は、にやにやしながら葛葉子を脅した。
「えっ!そ、そうなのですか?」
 瑠香の言葉に本気で焦って問う。
「いやいや、遊びだから。いいんだよ。」
 遊びと言っても本格的だが、これは卜部の趣味であった。
 陰陽師としての仕事とは別だ。
「瑠香くん、葛葉子ちゃんをいじめちゃだめだよ。」
 十歳年上であるが同期の卜部は瑠香を窘める。
「可愛いからつい、いじめてしまうんです。」
 瑠香はニコニコと笑顔で堂々と応える。
「か、可愛いとか、言うな!恥ずかしいだろ!」
 葛葉子は照れてそっぽを向いて尻尾をパタパタと落ち着かないすがたは可愛い。
 結果は学生のうちは恋人未満友だち以上をキープするが望みを捨ててはいけないと言う事だった。
「つぎは、君たち二人のことを占ってみようか?」
 いつもニコニコ顔の卜部は二人をやはりニコニコしながら見て言った。ちょっとしたサプライズでもあり、傍から見ればお似合いだと思うし恋の行方を卜部自身占いたかった。
「ええっ!どうせなら陛下と私の相性を占ってほしいです!」
 葛葉子はどうやら本気で陛下の側室を狙っているらしいのは陰陽寮に住む者たちは察していたが…
「それならオレにもわかる。
 最悪な結果もしくは縁がない。」
 卜部も思っていた事を瑠香は、遠慮せずに意地悪して言う。
「うーーっ!意地悪!瑠香なんか大ッキライ!」
 意地悪言われて涙目で葛葉子はそう叫んだ。更に、瑠香の胸をポカポカ叩く。瑠香はそうされて余裕で嬉しい。
 晴房の年なみの女の子の扱いに苦笑する。いや、むしろ晴房はそんな意地悪をしない子供でもあるけれど…
「まぁまぁ、とりあえず君たちの三ヶ月を占ってみようか?」
 タロット占いは三ヶ月までなら確実に占い結果が出る。特に卜部圭吾の占い率は高い。
 タロットカードを、広げてまぜて、三束にして真ん中を一番上にして、カードを切っていく。
 葛葉子はもとより瑠香と真剣にタロットのスプレッド(展開)を見つめる。
「過去は、審判のカード」 
 天使がラッパを吹いて、棺桶から人が生き返っている絵のカードだ。
「意味は復活。死したものも蘇る。」
「……当たってる。」
 葛葉子はポツリとつぶやく。 死ぬはずだった葛葉子は白狐のあやかしに助けられて生き返ったのだから。
「現在は悪魔のカード。縛られている関係。意に沿わない契約。」
 悪魔が真ん中に書かれていて左右に男女が鎖でゆるい首輪をしているカードだ。
「葛葉子はオレの仮としても眷属にされてる…そういうことかな?」
「あとは…まぁ、腐れ縁という意味もあるよ。」
 とキーワードを卜部は口にした。
「未来は、恋人のカード、 縛られた関係から、神に導かれ惹かれ合う関係になる。」
 天使が男女を祝福するように見守っているカードだった。
「へぇ…いいですね!」
 珍しく瑠香は感嘆した。恋人のカードというのが嬉しい。
 さらに、スプレッドを読み上げる。
「二人の関係的には戦車のカード。
 戦ってる、相反する心でも加速する運命。」
「うーん。そうなのか…」
 葛葉子は思い当たるフシはある。本心は口には出したくないけど…
「周囲が思っていること、運命のカード。運命なのではと思って応援しているよ」
 卜部も応援しているし、瑠香の父の陰陽寮長も応援している。
「最終的には、太陽のカード。
二人はとても仲良くなるとでてるよ。」
 怖いものなし、望めば何でも叶う明るい未来のカードである。
「子供もできちゃうかもね。子供がキーワード。」
 卜部はスプレッドしていて良いカードが出てホッと胸をなでおろした。悪い兆しのカードが出てなくて良かった。
「それって、瑠香と結婚するってこと…?」
 葛葉子は複雑な顔をする。
 嫌じゃないけど、どうしても陛下一人しか愛せない。
「さらに、仲良くなっていくってことだよ。そこまでに、重要な対応策は皇帝のカード。」
 威厳のある立派な身なりをした壮年の男性のカードだった。
「とても良い力強い権威ある人物が二人の関係を良くするということだよ。」
 葛葉子は、何かを察したように耳をピクピクと動かして、
「皇帝ってことは陛下のことだからお互い陛下をお守りする誓約をしてるんだから陛下をお守り支えることで二人の仲が深まっていくということだなっ!」
 と思いついた言葉を葛葉子は言った。それは魂の中にいる白狐の思いが口に出たような感覚だったが…
「うん。ずばりそういうことだよ、がんばってね。」
 卜部はそういって瑠香の肩をたたいて励まして新妻が待つ自宅に帰った。

 ……と言われたのが約三ヶ月前。
 九尾の狐事件は今や陛下の瑞兆になるための試練で、やはり陛下を思うことで二人の仲は深まっている。



「卜部さんの占いってほんっとあたったね!すごいね!」
 思い出していま無事夫婦になって幸せでいることを実感した。
「でも、すっかり忘れてた。忘れたかったのかも。あの頃、瑠香のこと意地悪で嫌いだったから。」
 それはホントのことだ。キスは優しくて心が少しずつ溶かされていって今に至ると思う。
「今は?」
 せつなげにつぶやくように瑠香は言う。
「好き……大好きだよ」
「オレもだよ…もっと伝えたい…いい?」
「ん…」
 そう言ってキスを繰り返す二人を見守るルカの神はフフッと笑った。
 タロットカードの絵の様子そのものでもあった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

ワイルド・プロポーズ

藤谷 郁
恋愛
北見瑤子。もうすぐ30歳。 総合ショッピングセンター『ウイステリア』財務部経理課主任。 生真面目で細かくて、その上、女の魅力ゼロ。男いらずの独身主義者と噂される枯れ女に、ある日突然見合い話が舞い込んだ。 私は決して独身主義者ではない。ただ、怖いだけ―― 見合い写真を開くと、理想どおりの男性が微笑んでいた。 ドキドキしながら、紳士で穏やかで優しそうな彼、嶺倉京史に会いに行くが…

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...