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あやかしと神様のエピローグ
あやかしと神様の恋愛未満
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陛下が崩御なされた日は雨が降っていた。
まだ新年になったばかりの悲しい国民にとっての最大の悲報…
国中は悲しみにくれる…
だが、陛下お側にお仕えする宮中の者は新たな祝皇陛下即位に慌ただしかった。
神の化身である瑠香と晴房は三種の神器を捧げ持つ役目を仰せつかっていたのに晴房は行方をくらましていた。
晴房は前祝皇陛下に可愛がられていた。
陛下の死を信じられないようだったが、まさか行方不明になるとは…
(新なる祝皇を認められないという幼いながらの抵抗か?)
と瑠香は考えるが、皇太子であられた新祝皇にも恐れながらなついていた。
晴房は誰にも恐れなく接する。
いや、東殿下以外は…
東殿下に三歳の頃怒られて以来苦手らしい。
奥に務める者たちで探すことになった。
奥に仕える者は皇族殿下の世話周りをする侍女職、陛下の神事を、補助し行う掌典やその神事に携わる者陰陽寮の者たちも晴房をさがす。
陰陽寮の庭の仕切りの藪が、がさり、と藪がうごいたのを気づいた瑠香は、
「もしかして晴房か?」
と問うと、がさりと藪から巫女が出てきた。
「……晴房やっぱりいないの?」
しゅんとした顔をしてそうつぶやいた。
雨にびしょ濡れだからなおさら残念という雰囲気を醸し出す。
なんで、陰陽寮に巫女が?と疑問に思うが、陛下の即位の準備で本職の物は忙しく見習いの者たちが探していると聞いていたので巫女見習いか…と瑠香は察した。
子供で神の化身といえど、穢を嫌う巫女にも号令をかけたのかと晴房の迷惑にムカつくが、自分の監督不行届でもある。
なんとか自分が責任を持って探さなければと思っていたら、
「わ、私と一緒に晴房を、探さない…か?」
巫女からそう言ってきた。
「私は、晴房を見たことないから…どんな子か知りたい…知ってるなら教えて…」
「まぁ…いいけど…」
雨に濡れてまで探してくれていることに申し訳なくなって、
「とりあえず、屋根の下でまってて」
急いでタオルと傘を持って巫女に近づき頭にタオルをかけて拭いてあげた。
巫女に遠慮なく触っていいものではないが、なぜだか放っておけなかった…
ずぶ濡れで助けを求める子猫見つけた感覚にも似ている。
巫女はビクリと体を震わせ固くする。
男は穢という概念を持っているので触られることになれていないらしい。
だいたいの水分を拭い、タオルを外すと、
「あ、ありがとう」
頬を染めて、微笑したこの巫女はとても可愛く見えてドキリと胸がなる。
巫女は瑠香を見るとハッとして距離を咄嗟に取ったとき裾の長い袴を持ち上げるのを忘れていて踏みバランスを崩し階から落ちそうになったところを抱き寄せて、阻止した。
見つめ合ったその時ルカの神が未来を見せた。
一瞬光に思考が包まれる、そこに淡く映し出されたのは、
大人になって美しい女性になったこの巫女と傍らに大人の自分がいて、子どもたちにほほ笑みかけているイメージ…
とても幸せな、家庭を築いているイメージが映しだされた。
幸せだという心も伝わる…
未来の自分に魂が重なると、未来の自分は、
「その子を離すな…そばにいろ…できる限り…その子を愛せ」
とせつなげに告げられた…
未来の自分に命令されるとは思わなかった…
いや、命令というよりか懇願か…
この日和国に生まれて自分が一番幸せだと感じるもの…
作りたいもの
築きたいと夢見ているもの…
それを実現するための、未来は目の前にいるこの巫女以外ありえないと…なぜだか確信してしまった…
「ち、ちかいよ…離して…」
あまりにもじっと腕を掴み見つめられるものだから、驚き戸惑う…
「ご、ごめん!」
瑠香は咄嗟に手を離す。
「は、晴房を、さがそうか…」
瑠香は少しぎこちなくそう言った。
広い陰陽寮や寮外も探す晴房をともに探す。
軒下も潜って探してみるが見つからない…
瑠香は晴房の事より正直、一緒に探す巫女の方を気になっていた…
晴房を探しているのに大切なものを自分はもう見つけた気分になっていた。
一生懸命晴房を探す、巫女を、ずっと目で追っていた…
どうして、神に仕える巫女にこんなに胸が高まるのか……
しかも、切ないほどに胸が締め付けられるくらい……
一目惚れをしてしまった……
結局見つからなくてしょげて巫女寮に帰る見習い巫女に、
「晴房見つけたら連絡するから…心配いらないよ。文を出すよ」
宮中の連絡手段は文だった。
男の自分が行くのはきっと憚られるので、式神を使うのが得意な陰陽寮長の父に頼もうと思う。
むしろ、自分も、手紙を出せる式神が使えるように努力しようと思った。
なまじ便利な香を操る能力を持っているために、陰陽師らしく式神なんか使う事を考えなかった。
「…うん…絶対教えてね…」
巫女はやはり悲しい顔をしてうつむいてそうつぶやくように言う。
巫女はこっちを見てくれない。
「じゃ、これで…」
巫女は踵を返して巫女寮に帰ろうとする。
「まって!」
咄嗟に瑠香は巫女を引き止める。
指をつなぐ、いや小指を触れただけ。
「っ!」
こっちを見てくれた…
驚いた顔をして、瑠香を見る。
それは困惑で、悲痛な表情にも見えてなぜだか瑠香は胸が痛い…
巫女はすぐにふいっと顔を背けて巫女寮に小走りで帰っていった。
空はいつの間にか晴れ間が覗いて神々しい光が降り注いでいると思うと、空から晴房が降ってきた。
その後、疲れて眠る晴房とともにうたた寝をしてから、即位式は滞りなく行われた。
☆☆☆
そろそろ、過去の自分が訪れると直感する。
傍らには美しい女性に成長した妻の葛葉子の肩をだいて、寄り添わせて幸せを味わいながら子ども達を見守っていた。
淡い光が瑠香の意識を奪う。
そこに、十年前の自分が現れる。
その巫女から離れるな…
どうか、巫女を葛葉子を、救っておくれ…
自分にできなかったのだから過去の自分にも葛葉子を救えない…
その後の巫女…葛葉子の宿命を変えることはできないと知りながら…
その子を離すな…そばにいろ…できる限り…その子を愛せ…
「瑠香…?どうしたの?ぼーっとして」
「君の美しさに見とれてた…」
そう言って、子供の前で何度もキスをする。
子どもたちは見て見ぬふりをしてくれる。
過去も未来も変えられない…わかってる。
ならば、そばにいられるだけそばにいたい。ずっと、葛葉子と幸せを離さないと誓う…
そして今宵も飽きずに妻に愛していると言霊に出さない分、互いの肌を重ねて愛し合うのだった…
まだ新年になったばかりの悲しい国民にとっての最大の悲報…
国中は悲しみにくれる…
だが、陛下お側にお仕えする宮中の者は新たな祝皇陛下即位に慌ただしかった。
神の化身である瑠香と晴房は三種の神器を捧げ持つ役目を仰せつかっていたのに晴房は行方をくらましていた。
晴房は前祝皇陛下に可愛がられていた。
陛下の死を信じられないようだったが、まさか行方不明になるとは…
(新なる祝皇を認められないという幼いながらの抵抗か?)
と瑠香は考えるが、皇太子であられた新祝皇にも恐れながらなついていた。
晴房は誰にも恐れなく接する。
いや、東殿下以外は…
東殿下に三歳の頃怒られて以来苦手らしい。
奥に務める者たちで探すことになった。
奥に仕える者は皇族殿下の世話周りをする侍女職、陛下の神事を、補助し行う掌典やその神事に携わる者陰陽寮の者たちも晴房をさがす。
陰陽寮の庭の仕切りの藪が、がさり、と藪がうごいたのを気づいた瑠香は、
「もしかして晴房か?」
と問うと、がさりと藪から巫女が出てきた。
「……晴房やっぱりいないの?」
しゅんとした顔をしてそうつぶやいた。
雨にびしょ濡れだからなおさら残念という雰囲気を醸し出す。
なんで、陰陽寮に巫女が?と疑問に思うが、陛下の即位の準備で本職の物は忙しく見習いの者たちが探していると聞いていたので巫女見習いか…と瑠香は察した。
子供で神の化身といえど、穢を嫌う巫女にも号令をかけたのかと晴房の迷惑にムカつくが、自分の監督不行届でもある。
なんとか自分が責任を持って探さなければと思っていたら、
「わ、私と一緒に晴房を、探さない…か?」
巫女からそう言ってきた。
「私は、晴房を見たことないから…どんな子か知りたい…知ってるなら教えて…」
「まぁ…いいけど…」
雨に濡れてまで探してくれていることに申し訳なくなって、
「とりあえず、屋根の下でまってて」
急いでタオルと傘を持って巫女に近づき頭にタオルをかけて拭いてあげた。
巫女に遠慮なく触っていいものではないが、なぜだか放っておけなかった…
ずぶ濡れで助けを求める子猫見つけた感覚にも似ている。
巫女はビクリと体を震わせ固くする。
男は穢という概念を持っているので触られることになれていないらしい。
だいたいの水分を拭い、タオルを外すと、
「あ、ありがとう」
頬を染めて、微笑したこの巫女はとても可愛く見えてドキリと胸がなる。
巫女は瑠香を見るとハッとして距離を咄嗟に取ったとき裾の長い袴を持ち上げるのを忘れていて踏みバランスを崩し階から落ちそうになったところを抱き寄せて、阻止した。
見つめ合ったその時ルカの神が未来を見せた。
一瞬光に思考が包まれる、そこに淡く映し出されたのは、
大人になって美しい女性になったこの巫女と傍らに大人の自分がいて、子どもたちにほほ笑みかけているイメージ…
とても幸せな、家庭を築いているイメージが映しだされた。
幸せだという心も伝わる…
未来の自分に魂が重なると、未来の自分は、
「その子を離すな…そばにいろ…できる限り…その子を愛せ」
とせつなげに告げられた…
未来の自分に命令されるとは思わなかった…
いや、命令というよりか懇願か…
この日和国に生まれて自分が一番幸せだと感じるもの…
作りたいもの
築きたいと夢見ているもの…
それを実現するための、未来は目の前にいるこの巫女以外ありえないと…なぜだか確信してしまった…
「ち、ちかいよ…離して…」
あまりにもじっと腕を掴み見つめられるものだから、驚き戸惑う…
「ご、ごめん!」
瑠香は咄嗟に手を離す。
「は、晴房を、さがそうか…」
瑠香は少しぎこちなくそう言った。
広い陰陽寮や寮外も探す晴房をともに探す。
軒下も潜って探してみるが見つからない…
瑠香は晴房の事より正直、一緒に探す巫女の方を気になっていた…
晴房を探しているのに大切なものを自分はもう見つけた気分になっていた。
一生懸命晴房を探す、巫女を、ずっと目で追っていた…
どうして、神に仕える巫女にこんなに胸が高まるのか……
しかも、切ないほどに胸が締め付けられるくらい……
一目惚れをしてしまった……
結局見つからなくてしょげて巫女寮に帰る見習い巫女に、
「晴房見つけたら連絡するから…心配いらないよ。文を出すよ」
宮中の連絡手段は文だった。
男の自分が行くのはきっと憚られるので、式神を使うのが得意な陰陽寮長の父に頼もうと思う。
むしろ、自分も、手紙を出せる式神が使えるように努力しようと思った。
なまじ便利な香を操る能力を持っているために、陰陽師らしく式神なんか使う事を考えなかった。
「…うん…絶対教えてね…」
巫女はやはり悲しい顔をしてうつむいてそうつぶやくように言う。
巫女はこっちを見てくれない。
「じゃ、これで…」
巫女は踵を返して巫女寮に帰ろうとする。
「まって!」
咄嗟に瑠香は巫女を引き止める。
指をつなぐ、いや小指を触れただけ。
「っ!」
こっちを見てくれた…
驚いた顔をして、瑠香を見る。
それは困惑で、悲痛な表情にも見えてなぜだか瑠香は胸が痛い…
巫女はすぐにふいっと顔を背けて巫女寮に小走りで帰っていった。
空はいつの間にか晴れ間が覗いて神々しい光が降り注いでいると思うと、空から晴房が降ってきた。
その後、疲れて眠る晴房とともにうたた寝をしてから、即位式は滞りなく行われた。
☆☆☆
そろそろ、過去の自分が訪れると直感する。
傍らには美しい女性に成長した妻の葛葉子の肩をだいて、寄り添わせて幸せを味わいながら子ども達を見守っていた。
淡い光が瑠香の意識を奪う。
そこに、十年前の自分が現れる。
その巫女から離れるな…
どうか、巫女を葛葉子を、救っておくれ…
自分にできなかったのだから過去の自分にも葛葉子を救えない…
その後の巫女…葛葉子の宿命を変えることはできないと知りながら…
その子を離すな…そばにいろ…できる限り…その子を愛せ…
「瑠香…?どうしたの?ぼーっとして」
「君の美しさに見とれてた…」
そう言って、子供の前で何度もキスをする。
子どもたちは見て見ぬふりをしてくれる。
過去も未来も変えられない…わかってる。
ならば、そばにいられるだけそばにいたい。ずっと、葛葉子と幸せを離さないと誓う…
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