主婦と神様の恋愛事情

花咲マイコ

文字の大きさ
73 / 95
雪と東殿下と学校七不思議

5☆いざ出発!

しおりを挟む
「どの学校の七不思議も、生徒を残らせたくないデマってこともあるんだけど、今回は当たりだったね!」

 東殿下は瞳を輝かせて神に拝むように手を組んで願いが叶った事を喜んでいる。

 幾つも転校しては不思議体験していたが、どれもハズレだった。
 当たったとしてもいじめられて悲しい生徒の霊だったりした。
 それはそれで問題だったが、今回はそんな悲しいことも無い学校で、いたずら好きな幽霊が集まる不思議な土地柄のようだと思う。

 もう少しよく調べれば何かいわくつきなことがわかりそうだが、今の現状をクリアしてから調べるとするかと東殿下は考える。

「で、二宮くん。あとどこ行けばいいの?」
 怪しげな生徒にそう訪ねる。
 二宮とは東殿下が勝手につけた名前だ。
 下の名前はやっぱり金次郎なのかしらと雪は思う。
【二宮くん】と言われた生徒は否定もしない。
 嫌な顔しない。
 仮面を貼り付けたように笑顔だ。
「それで、どこまで七不思議をなされたのですか?」
 雪が閉じこめられる前まで色々経験なさったようだ。
「まずは、体育館でいきなりバスケットボールが生首になるって噂を聞きつけて、成仏させたんだよ。てか、いたずら好きな浮遊霊だったけどね。」
 雪もその話は従兄弟から聞いたことがあった。
 従兄弟は桜太郎が、雪より十二歳年上で兄妹たちは二、三歳、づつ歳が離れている。六人兄妹だ。
 そして雪が一番年下である。
 学校の噂は色々聞いていたりしたが実際見たことはないらしい。
 むしろ、義父の季節の影響で好き嫌いが分かれる。
 桜太郎は嫌いな方だった。むしろいないと信じているので雪は桜太郎に幽霊事件の事は話さない。
 義母はどちらでもなく、太刀に選ばれた者は幽霊は近づかなくなる体質になるためもう見ることが出来ないと嘆いていた。
 バスケットボールの噂を聞いた時、「誰かその部活に入りなさい!」とか冗談を言っていた事を思い出して、口元を抑えて、ふふっと笑う雪だった。
 東殿下はそんな可愛い笑いをするんだと少し雪に見とれた。

「……で、他にも怪談があるよと言われて、定番の十三階段?ってやつ。というか、十三階段以上あって、ずーっと永遠に階段上り下りさせられそうになって、御札を貼ったら、止まったんだよね。」
 東殿下は、やれやれという仕草をした。
 東殿下の御札はどんなあやかしにも幽霊にも有効な東殿下独特のシラスの力を込めた御札だ。
 結界も張れれば封印もできるすぐれものだ。

(今すぐその怪しい生徒に貼ってやればいいのに……)
 と雪は二宮を睨み思うが、東殿下は七不思議を全てクリアする気満々だ。
「こんなほんとに、不思議現象初めてだからできる限り調べたいよね⁉」
 瞳をきらめかせて、雪に同意を求める。
「あとどこと、どこを調べるのですか?」
 雪は諦めてそう尋ねた。
「音楽室とトイレと理科室かな?」
「でも、特別室は向こうの校舎ですよね。先生はまだいると思うんですけど…」
 橋になっていてどの階でも第二校舎につながるのだ。
「空間が別だからいないよ。安心して」
と二宮くんは言うが、安心なんてできるわけもない。
(むしろ不安がましたわ!)
 と雪は思う。
「でも、それじゃまだ七つになりませんよね?」
 七不思議なのに、六しかないとはどういう事だろうと思う。
 二宮は、ニヤニヤ笑ってる。
 答える気はないようだが、

「最後の七つ目を知った生徒は行方不明になって、わからないと言うよね!それほど面白い事が起こるってことだよね?楽しみだよね!」
 と目を輝かせて東殿下はさらに興奮気味だった。
 その恐ろしさに怖気付くことの無い七不思議の恐怖も形無しな態度に怪しげな生徒は苦笑する。
「もうすでに、外の世界では東殿下は行方不明になってますから、迷惑かけずに早く帰りましょうよ…」
「フフ、帰れたらいいね。」
さらっと、二宮はそう言ってニヤニヤ笑っていることに不気味さと苛立ちで今すぐ叩き斬ってやりたい気分だ。

 雪は二宮に対して警戒を解かずに東殿下と共に並んでいざ七不思議探検に歩き出すのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...