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1☆雪と晴房の恋愛事情☆出会い
しおりを挟む秋晴れの日曜日、桜庭の道場は竹刀の音が鳴り響く。
当主の桜庭季節は八十を超える歳だが背筋も頭もシャキッとしている。
元軍人らしいキリッとした一本気の強さをもっている。
そんな人柄に惹かれた門下生が休日になると、道場に通う。
義父を慕う門下生のために、雪はお茶汲みの手伝いをしている。
雪は今年で三十五歳。十六歳になる一人息子がいる。
旦那は六年前に離婚しているが、義父は息子の方を勘当し、嫁である雪に財産を生前贈与をした。
雪には両親はいないし、実家も無かった。
幼い頃、親戚であるこの桜庭家の世話になり、幼い頃から許嫁として育てられ、この家の長男である桜庭桜太郎と結婚した。
彼には他に好きな人がいることを知りつつ、無理やり振り向かせた歪みが出た結果の離婚だ。
かわいそうな思いをさせたのは息子の李流だ。
その息子のために母として、父の分もしっかり親としての勤めを果たそうと決めていた。
その息子も早くも独り立ちのような形で、宮中で働きながら学校に通い、実家には帰ってこれない。
少しさみしい気がするけれど、
李流がやりたい事を見守るのも親の勤め。
だけど、自分の生きがいが、希薄になって空虚な穴が空いた感じがした。
これから私は何をして、何を考えて生きればいいのだろう…
義父は恋人を作ってもいいのだよと言ってくれるけれど、作る気もないし、そんな恋にときめく年でもないと思っていたのに……
昨夜、出会ってしまった。
心を楽しくさせてくれる男性に……
「私と子供を作らないか」
というセクハラなプロポーズを出会ったばかりで言った綺麗な男の人に。
名前は晴房といった。
まだ二十八歳くらいだと言っていた。
少し話をして和んだけれど、
「明日もこの時間に会う約束だ」
強引に約束を決めて、手の甲にキスをして仕事に戻っていってしまった、神主の格好をした晴房さん。
夕暮れの暗さに電灯の明かりで怪しげな雰囲気だけれども神々しい人、不思議な人……
出会って一日も経っていないのに晴房の事ばかり考えてしまっていた。
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