主婦と神様の恋愛事情

花咲マイコ

文字の大きさ
1 / 95

1☆雪と晴房の恋愛事情☆出会い

しおりを挟む


 秋晴れの日曜日、桜庭の道場は竹刀の音が鳴り響く。
 当主の桜庭季節は八十を超える歳だが背筋も頭もシャキッとしている。
 元軍人らしいキリッとした一本気の強さをもっている。
 そんな人柄に惹かれた門下生が休日になると、道場に通う。

 義父を慕う門下生のために、雪はお茶汲みの手伝いをしている。

 雪は今年で三十五歳。十六歳になる一人息子がいる。
 旦那は六年前に離婚しているが、義父は息子の方を勘当し、嫁である雪に財産を生前贈与をした。

 雪には両親はいないし、実家も無かった。
 幼い頃、親戚であるこの桜庭家の世話になり、幼い頃から許嫁として育てられ、この家の長男である桜庭桜太郎と結婚した。


 彼には他に好きな人がいることを知りつつ、無理やり振り向かせた歪みが出た結果の離婚だ。

 かわいそうな思いをさせたのは息子の李流だ。

 その息子のために母として、父の分もしっかり親としての勤めを果たそうと決めていた。

 その息子も早くも独り立ちのような形で、宮中で働きながら学校に通い、実家には帰ってこれない。

 少しさみしい気がするけれど、
 李流がやりたい事を見守るのも親の勤め。

 だけど、自分の生きがいが、希薄になって空虚な穴が空いた感じがした。
 これから私は何をして、何を考えて生きればいいのだろう…

 義父は恋人を作ってもいいのだよと言ってくれるけれど、作る気もないし、そんな恋にときめく年でもないと思っていたのに……

 昨夜、出会ってしまった。
 心を楽しくさせてくれる男性に……

「私と子供を作らないか」
 というセクハラなプロポーズを出会ったばかりで言った綺麗な男の人に。
 名前は晴房といった。
 まだ二十八歳くらいだと言っていた。
 少し話をして和んだけれど、

「明日もこの時間に会う約束だ」

 強引に約束を決めて、手の甲にキスをして仕事に戻っていってしまった、神主の格好をした晴房さん。

 夕暮れの暗さに電灯の明かりで怪しげな雰囲気だけれども神々しい人、不思議な人……

 出会って一日も経っていないのに晴房の事ばかり考えてしまっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

処理中です...