主婦と神様の恋愛事情

花咲マイコ

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スケバンの恋の行方

3☆討伐準備

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 今回はトンネル内で亡くなった暴走族の幽霊退治だ。
 暴走族仲間内で噂になっていた怪談だった。
 トンネル内で幽霊の暴走族が丑三刻に現れた勝負を挑むという。
 その暴走族に負けると命を取られて幽霊の暴走族の仲間にさせられてしまうという恐ろしい噂。
 実際トンネル内外でバイク以外の事故も起きている。
 腕のある退魔師も挑もうとするがバイクの腕はよろしくなく退治するものはいないらしい。
 税金を使ってやっと完成したトンネルの噂を払拭せねばと陛下の命が降るり榊誠と雪が承ることになった。
 雪は《宮中の太刀の者》の榊誠のバイクに駆け寄る。
 怪我しないようにライダースーツを着た。
 プロテクターもつけてもらって武具のようだと思う。
 用意してくれたのは桜花子おうかこ姉。
 桜庭家の長女で桜太郎の姉。
 ハキハキして世話すぎで明るい女隊長のような従姉妹義姉である。
 雪とは真逆な性格をしていたが気が合った。
 十二年前は退魔の太刀に選ばれていたが、三年前にコメリカ人と結婚して今は日和に帰省中だった。
「今日から物忌でよかったのか、悪かったのか……事故ったらごめんね?」
 榊誠さかきまことは先に自分の運のなさを雪に両手を合わせて謝る。
 榊誠は二十四歳の優男で、桜庭家の道場の愛弟子でもある。
 物忌とは運気が悪い時に家に籠って運気が戻るまで閉じこもっていなくてはならないのだが、宮中に勤めるものたちの物忌の基本は陛下に障る運気を避けるためのものなので、本当に運気が悪いというわけではない日もあるのだが、運が悪い事に今日は榊誠の運勢は悪かった。
「まぁ、女難に要注意って書いてあっただけだから事故にはならないと思うから大丈夫だよね?」
 あははと、能天気に笑って頭を掻く。
「私、女子ですよ?」
 雪も微笑んでそういう。
「そうだったね。まぁ退魔の太刀の気配が女子という事を打ち消しちゃうから大丈夫。うん。」
 榊誠は、うんうんと一人で納得している。

《私が、憑依すれば百戦錬磨の超人的な武士になるからな》
 女子ではないという事はそういう意味かと納得した。
「女の子扱いしてほしいのは桜太郎さんだけだし…いいですよ。」
 その桜太郎は雪のことを許嫁だとしても妹としか思っていない事はバレバレでそのことを思うとイライラする……

 そのストレスを今日も悪霊にぶつけてやろうと思うと口元が歪む。

「雪ちゃん。」
 榊のバイクに跨ろうとしたら、叔母の咲羅子が声をかけてきた。
 手には切り火石をもって背中に切り火を放つ。
「これでいいわ。誠くんもね」
榊誠にも切火をする。
「ありがとうございます。咲羅子さん」
「これはお狐様の力を持った切り火だから凶の運気をも払ってくれるわ…」
 そう言って咲羅子は大切そうに切り火をいつも愛おしそうに見つめる。

「これはかけがえのない親友に作ってもらったものなの……きっと橘も守ってくれるわ」
 確かに大した怪我もなく悪霊やあやかしと戦えているのは叔母さんの切り火のおかげだと思える。
「本当は私も悪霊退治に行きたいけど、もう年だからね。雪ちゃん、私の分も頑張ってね」
「はいっ、頑張ります!」
 雪は咲羅子も大好きだった。
《いつも思うが、咲羅子も柔らかくなったな…》
 神様の太刀はそう笑った。

 咲羅子の期待になんでも頑張りたくなってしまう。
 それは桜太郎と結婚することの根底にあった希望だった……。
 血は従姉妹として繋がっていてももっと強い繋がりと家族になりたかった。
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