切なさと君と僕

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魔法の時間

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好きでした。





今までずっと冷たい態度を取ってごめんなさい。


先輩に彼女がいるのは最初から分かっていたから、、




もっと好きになるのが恐かった。




可愛くない後輩でごめんなさい。




返事は要りません。
答えはわかっています。
聞いてもらえただけで、充分です。




聞いてもらった代わりに、、
これ、良かったら使って下さい。




ネクタイなんですけど。




重い、と思ったら、私のいないところで捨てて下さい。






全然構いませんから。






俺達の代のサークルの卒業飲み会で、
宴もたけなわの中
居酒屋の外まで君は俺を連れ出した


店先にあつらえた控えめなスポットライトの
光を背に、

駐車場の四辺にある街灯のオレンジ色が届かない中心部で、
俺は君と向き合っている。







気にならないほどの小雨が
互いの傘を音もなく打つ。





目も回るような展開。

いや、これは酒のせいなのか?





とにかく俺は、君が俺のことをそんな風に見ていたことに一番驚いている。






君が、恥ずかしそうに、何かに耐えるように少し早口で思いの丈を述べるのを





固まったままの思考回路で受け止める。





ただ、目の前にいる君はいつもの君じゃなかった。




いつもの飄々とした、世の中を達観したような余裕のある君じゃなくて、







ただ1人の女の子。






俺のことが好きだった、と告白する等身大の女の子。






正直、そんな君は少し可愛いとおもった。






後輩、というフィルターを1枚取って見た君は、かすかに肩を震わせている。











     ありがとう。  







君が差し出したネクタイを受けとる。




ポール・スミスのネクタイだ。




高かっただろうに。







すごいね、ポール・スミス。





なんて、平凡な感想が口から滑り落ちる。







嬉しいよ。普通に。もらったらさ。







改めて君を見る。







この儀式をどう終わらせようか?







多分その一瞬の間でお互いそんなことを考えたと思う。







先手は、俺。










      ありがとう。   










君に2歩歩み寄って、右手を差し出す。






俺が近づいて、君は瞬間たじろいだように見えたが、






その白くて、ふっくらした小さな手を代わりに差し出した。






傘を上手く使って顔を少し隠しているから、君の表情がうまく読み取れない。







俺の手と君の手が、そっと繋がる。











俺はきっと






君はきっと





この感触を忘れないだろう。







とくとくと、言い知れない君の気持ちが
手を通して伝わってくるようだった。







自分が思っているよりも、俺は君の手をしっかり握っていたように思う。







数秒間、に思えた握手が優しく糸を切ったように離れた時、






ハッと改めて俺と君が置かれた状況を理解した






まるで今まで魔法にかかっていたよう
で、余韻が雨に溶けていく。










戻りましょうか












一点の曇りもない声。







目の前にいるのは、いつもの後輩の顔をした君だった。

































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