ユニークスキル【アカウント作成】で幾多の種族で最強になる

たぬきゅらー。

文字の大きさ
3 / 6
鬼人族編

2話 名前はまだない

しおりを挟む
 とりあえず、賭けには成功したようだ。危険が全くなさそうな心地の良い風が吹く草原で目を覚ます。行ったことはないがヨーロッパののどかな田舎のような場所だ。こういうところで昼寝したら気持ちいいだろうな、なんて異世界に来て早々のんきなものだ。自分でも笑ってしまう。

 さっきから目を覚ますとか笑うとか、人間の行動をしているつもりだが、できてはいないだろう。

 なぜなら、俺は人間ではないのだからっ!!

 何を隠そう。俺は人間ではなくスライムになることを選んだのだ。理由はそれが一番俺の理想の生き方ができそうだったからだ。理想の生き方といえば、俺が天界でこの姿になったのは、ユニークスキルの取得条件を満たすためだ。だが、そのスキルを取得するとスキルポイントが心許なくなってしまう。そのため、まずはレベル上げをしたいと思う。

 だが、この広い草原には隠れる場所がない。このだだっ広い草原にいればいつどこから襲われてもおかしくないため、隠れる場所のある近くの森に移動することにした。

 ふーーっ、やっと森についたのだが、俊敏1はあまりにも遅い。きっとはたから見たら身長50センチの青いナメクジみたいだっただろう。レベルアップで得たステータスポイントの使い道はとりあえず、俊敏に決定した。

 木陰に隠れ周囲を確認する。森といってもさっきいた草原がそうだったように、なんだか暖かい感じがするから、あまり強い魔物が出てこないと思う。ほとんど俺の願望だが。風魔法はCランクを所持しているが、如何せん魔力4しかないため無駄な消費はできず、大量の敵を一度に相手取ることもできない。

 しばらく木陰で魔物を探していると、ズルーーーズルーーー何かを引きずる音が聞こえてきた。
 この音は間違いない、この木陰に来るまでに何度も聞いた馴染み深い音、スライムの足音だ。足音が聞こえる方向に目をやる。そこには50センチくらいの青い球体がナメクジのように這っていた。うーん、なんと惨めな。自分で言ってて悲しくなる。あれはどう見ても青いナメクジだ。

 青いナメクジだが、念のため鑑定眼(D)でステータスを確認する。よし、問題ない。Fランク風魔法1発で十分に倒せそうだ。

 「吾輩はスライムである。名前はまだない」と木陰から心の中で叫ぶ。 
 では、準備も整ったことだし武士道精神にのっとり、いざ尋常に勝負!!

 風魔法・ウィンドカッター

 4しかないMPが残り1になるが、無事魔法は成功し目の前のスライムの身体が真っ二つに分断される。

 レベルがあがりました―――脳内にレベルアップのアナウンスが流れてくる。

 よっしゃー!所詮は青いナメクジなのだ。
 初陣で勝利した。俺はこの戦法で勝って勝って勝ちまくってやるんだ!そんな青春スポーツマンガのような一幕を挟みつつ、幾体のスライムを狩っていった。

 「ステータスオープン」
______________________________________________________________________________________________________________________________________________________

ステータス
名前 :ーーー
年齢 :0歳
種族 :スライム
レベル:5
HP :4/12
MP :4/12
筋力 :6
耐久 :6
俊敏 :6
知力 :6

装備 :なし

ユニークスキル:スキル図鑑
        アカウント作成 New
    スキル:風魔法(C)
        鑑定眼(D)
        経験値取得率上昇(B)New
       

スキルポイント:40



スキル説明 
 『アカウント作成』・・・【権能】アカウント作成、???、???、???
 アカウント作成:新たな生命を作り、それに応じたステータスを取得することができるスキル。アカウントとは、サンプルを摂取することで、因子を抽出し新たなステータスを獲得を取得できる。

 経験値取得率上昇:ランクが高ければ高いほど経験知取得率が上昇する。パーティーを組んだ時、経験知を共有できる。

______________________________________________________________________________________________________________________________________________________


 来る日も来る日も木陰の前を通り過ぎるスライムを狩り続け、ついに5レベルになった。レベル5になったところで、スライムを種族に選んだ理由であった念願のユニークスキル:アカウント作成を取得した。このスキルを取得するには、俺以外には絶対に達成できないであろう条件があった。それは、女神の体の一部を摂取することである。そのために、天界で身体を手に入れなければならなかったのである。それに、スライムは全身のどこからでも摂取できるため、条件を満たすために打って付けであった。

 アカウントというのはステータスとステータスを持っている主体のことである。つまり、俺であればステータスとスライムこれら二つを総称してアカウントという。ステータスが主体の認知を可能にしているというわけである。ステータスがなければ生命体という認知をされない。ここでいうステータスとは、種族やスキル、能力値の総称である。つまり、アカウント作成とは、種族やスキル、能力値などのステータスが全く異なる生命を作り、そのすべてが新しい自分になるということだ。例えるならば、ゲームでいうセーブデータのようなものである。もちろん、新しいアカウントを作成しても既存のアカウントが使えなくなるわけではない。

 このスキルがあればアカウントを作成するだけで、人生をやり直せるということであり、新天地に新たな姿で臨めるということである。ただし、種族のサンプル、つまり身体の一部を摂取しなければならないため、今すぐに人族や上位種の龍人族などのアカウントを作成することはできないのである。

 全く知らない異世界での第二の人生で何をしたいかわからなかった俺の、なんでもできるように、やりたいこと全部できるように、を叶えてくれる最高のスキルである。

 “アカウント作成”の権能はほとんど明らかになっていない。権能の内容はスキル図鑑にも記されておらず、そもそも、アカウント作成以外に権能があることすら記述がない。明らかになっていない能力がほとんどだが、アカウント作成だけでも十分すぎる。

 さらに、経験値取得率上昇を取得した。
 経験値取得率アップはかなりのレアスキルでスキルの解放条件がなかなか鬼畜だった。というか、スキル図鑑を持っていなければ発見すらされないだろうというものだった。その条件というのが、変顔をしながら魔物を5体倒すというものだ。あの女神様完全にふざけているだろ。なんだその条件、なぜ命のやり取りをしながら変顔をしなければならないんだ。だが、スキル図鑑を持っていなければ見つけられないスキルだろうし、この世界のほとんどの者が持っていない貴重なスキルというわけだ。スキル図鑑、すごく便利なスキルだ。

 スキルポイントは1レベル上がるごとに、5ポイント獲得できた。そして、“アカウント作成”に100ポイント、経験値取得率上昇(B)に150ポイント消費した。
 
 一方、ステータスは1レベル上がるごとに、HPとMPが2上昇しそれ以外が1上がった。
ステータスポイントでMPと俊敏を中心に上げた。
 
 さて、俺の次の目標はスライム以外の魔物を捕食することだ。アカウントを作成するためにサンプルを摂取しなければならない。俊敏も十分上がったし、変顔からもスライム狩りからも卒業だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...