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死後の世界と真紅のドラゴン
マスターの力
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「なんで力が封印されているんだよ」
「それは神の副産物の力だよ」
咲夜が指を立てながら言う。
「神の副産物ってなんなんだ?」
「わたしも知りません」
敦也の言葉に同調する凜。
「神の副産物とはダンジョンに隠されている宝の一つのことだよ。ダンジョンに隠されている宝は食材や武器や生活必需品が基本的にあるんだ。レアな場合に神器や神の副産物があることがあるんだ」
神の副産物。なかなか便利なものみたいだ。
「神の副産物は所詮は副産物なんだよ。一回っきりといった感じのものが多いんだよ」
京子さんの言葉から推測すると。
「瀬尾先輩の呪いというか封印は対象にできるのが一回だけで、解ければそこで終了ということか?」
「そ、満点正解だ。花丸をあげよう」
宙に花丸を描く京子さん。
「誰が瀬尾先輩にそんな封印したんですか?」
凜の質問に咲夜は答えようとする。
「それは、他のギルドのマスターなんだけど……その前に」
咲夜はリングをかざすと言った。
「ドリンクコマンド-オレンジジュース」
目の前にオレンジジュースの二リットルペットボトルとコップが四つが現れた。
飲み物まで出せるのか。リング便利すぎだろ。
「休憩しよ。喉疲れちゃった」
ペットボトルを開けると「プシュ」と中身が咲夜の身体に襲いかかる。
噴き出したオレンジジュースが咲夜の頭から身体を濡らした。
ベトベトに濡れた頭を横にブンブンと振って水滴を飛ばしてからから、「わー」と驚きと悲しみが混ざったような声をあげた。
オレンジジュースが入っていたペットボトルは中身が四割ほど出てしまっていた。
「咲夜着替えるかい」
「うん、そうする。もうベトベトだよー」
京子さんの提案に賛成し咲夜はクローゼットに小走りで近づくと、扉を開き中を見回し服を手に取ったりして服を選び始める。
京子さんは、中身が減少したオレンジジュースをそれぞれのコップに注いで敦也と凜に渡した。
「敦也くんちょっと待ってて。すぐ着替えるから」
そう言いながら咲夜が上の服を脱ぎ出したので、いきなり凜が敦也の両目を覆ってくる。
「咲夜、わたしが代わって説明しておくよ。ゆっくり着替えな」
「えー、大丈夫だよ」
「大丈夫じゃないよ咲夜。女の子なんだから、敦也くんみたいな変態の男の前で着替えては駄目だよ」
「うー……」
京子さんの母親っぷりを受けて、咲夜は唸ってから手を叩き合わせ机とベットを樹の壁が分けた。
「変態じゃないんだけどな」
「そろそろ始めていいかな」
「あっ、すいませんお願いします」
ジト目で敦也を見ていた京子さんは、コップに入ったオレンジジュースを飲み干してから話の続きを始めた。
「リンリン達は、もうギルドが十個あるのはもう知ってるよね」
「はい、でもその内の一個のNo.Sというギルドが潰されて、ギルドは今九個なんですよね」
「そうだよリンリン。偉いね、天才だね、秀才だね、可愛いね、よく出来たねー、一緒に寝よう。で、とりあえずそのギルドのことを詳しく説明しようか」
コホンと咳払いしてから話し出した。
「まず、ギルドは三つの派閥に別れてる。今にでも【鍵の在処】にたどり着きたいグループ。ゆっくりじっくり【鍵の在処】を目指すグループ。夢猫はじっくりグループに入ってるよ。それと、【鍵の在処】を目指さず閉ざされた世界で生きることにしたグループ。あとは、No.Sだけのどっちつがずの自由なグループと」
「なんでグループに別れてるんだ?」
敦也の質問に京子さんは指で、ホロ画面の中の一つを指す。
「すべて生き返る道のせいだね。生き返る道のマスターが夢猫の咲夜みたいに穏やかな性格だったらこんな状態になってはいなかったよ。現段階どのギルドも【鍵の在処】を目指していない。いや、目指してはいけないことになっているんだよ」
「えっ、なんで……!?」
京子さんの言葉に敦也は驚きを隠すことができなかった。
【鍵の在処】を目指してはいけないことになっている。つまり、閉ざされた世界での目標を奪うようなものだ。
「九天会議の話し合いの結果だよ。いまギルドは九個あるだろう、グループそれぞれに三つのギルドが入ってるんだよ……会議の議題はこうだった。危険の高い【鍵の在処】の攻略の一時停止。まず、閉ざされた世界での生存を望む三つのギルドがこれに賛成。発議者の生き返る道マスターで四人目。あとは、じっくりグループから一人賛成して今の状態になっていると。それと同時にある一つの条約も作られた。ギルド相互不可侵条約だ。全てのギルドはギルド同士で戦えないんだ。それは、戦争の防止になっているからいいけど、生存派グループには裏の顔があるという噂があるんだよ。モンスターの殺戮を道楽にして、それの延長線上で人を狩っているとかいうね」
「えっ、整理させてください」
凜が手を振り京子さんが一気に言ったたくさんのことを整理する。敦也も京子さんが言った生存派の裏の顔という話しには強く驚いた。
「九天会議が【鍵の在処】を目指さない条約と、ギルド相互不可侵条約を作り。裏の顔があるギルドが生存派のギルドの狩りをしていると言う話ですか」
京子さんは凜が整理した内容に強く頷いてから、優しく否定した。
「うん。リンリン違うよ、惜しかったね。生存派のギルドが人を狩っているという噂があるんだよ。難しかったね、しかたないよリンリン」
もはや過保護か。
「京子さん、その噂って本当なんですか?」
「ブラックゾーンにいるソロプレイヤーから聞いた噂だからね、虚偽は解らないよ確かめなければね。でも、ギルド相互不可侵条約があるから、何度ギルドを尋ねても門前払いさ」
ギルド相互不可侵条約。まるでその生存派ギルドを守るために作られたみたいな。
「と、瀬尾君の呪いについての話だったね。あれは三年前まだギルド相互不可侵条約が作られる前だったから、ギルド間の領土争いが頻繁に行われていた。領土争いって言っても、死傷者が出ないように攻めてきたギルドの人数に合わせるというルールがあったんだけど、これも九天会議ね。ある日一番近いギルドのマスターが単体で領土争いを申し込んできたんだよ。そのときちょうど咲夜や攻略組はギルド外のダンジョン攻略に言っていて、残ってるメンバーで一番強い瀬尾君が向かい討つことになったんだよ。そのギルドとは何度か領土争いをしているし話もした。実際同盟を組む形も作れるはずだった。でも、そのギルドのマスターは領土争いが始まると瀬尾君の魔力を神の副産物で封じ去っていったんだよ」
凜がそこまで聞いて思った疑問を口にした。
「なんで、その時瀬尾先輩を倒さなかったんだろう。だって、魔力が使えない瀬尾先輩なんてギルドマスターなら楽勝ですよね。去ってくれてありがたいですけど」
凜の疑問はごもっともである。いつか、封印が解かれる危険性があるなら、効果が発動しているうちに殺しておくのがベストだろう。
「それはわたしたちも謎だよ。去る前に瀬尾くんに耳打ちしてらしいけど、瀬尾君は否定するし……どこのマスターも考えることは解らないんだよ」
京子さんがやれやれと首を振ると、着替え終えた咲夜が樹の壁を解除し椅子に座りなおした。
「考えることは解らないとは酷いな。わたしの考えは」
「楽しければそれでいいでしょ」
咲夜の言葉に被せるように京子さんが言った。
「言わないでよ京子さん、酷いよー」
ふぐのように顔を膨らませる咲夜の頭を京子さんは胸に抱きしめる。
「うー、可愛いよー。咲夜わたしの娘にならないか。いや、妹がいいか」
「やっ、たまに変な京子さん嫌い!」
咲夜の頬に自分の頬すりすりする京子さんを咲夜は突き飛ばした。
「嫌いって言わないでよ。わたしは大好きだよ咲夜ー」
咲夜に凄い勢いで飛び付く京子さん。
咲夜は椅子から後ろに飛び退ると、リングに向かい詠唱。
「《神樹の実》、顕現」
すると、咲夜の手の上に小さな植木鉢とそれに植えられている盆栽のような小さい樹が現れた。その樹からは三つの林檎ほどの大きさの果実が生えていた。
その果実を一つのもぎとると果実をかじると咲夜と植木鉢がふわふわと浮かび上がった。
その瞬間この部屋の空気が変わった気がした。重力の重さが変わった気がした。
凜の顔にも笑顔はなかった。敦也も咲夜が何かをすることは解った。
「ごめん、咲夜わたしがやり過ぎた。落ち着こう。だから、それは」
京子さんは謝罪を口にするが時すでに遅しというやつだ。
京子さんがなにかに飛ばされたみたいにふっ飛び、部屋の壁に勢いよくぶつかった。
「京子さん!?」
敦也も凜もなにが起きたか解らずふっ飛ばされた人の名前を叫ぶ。
「じゃー、続きを始めようか」
ふわふわ浮かびながら、咲夜は説明の続きを始めようとする。
敦也も凜も京子さんがふっ飛んだことでまだ唖然としていた。
「どうしたの二人とも。鳩が波動砲を喰らったような顔して」
いやいや、鳩が波動砲喰らったら即死だろと思考内で突っ込んでから、咲夜を向く。
「今のはなんだったんだよ?」
敦也がいますべき質問がこれでいいのか焦り纏まりすらしない。
「いまのって?」
何故かはぐらかす咲夜。 「いや、京子さんがふっ飛んで」
「わっほんとだーびっくりー」
京子さんが埋め込まれた壁を見て、棒読みで驚いたような素振りを見せる咲夜。
「マスターその樹はなんですか?」
凜が落ち着きを取り戻したらしく、今度は凜が咲夜に質問する。
「わたしの趣味だよ」
「盆栽が趣味の小学三年生がどこにいるんだよ!! 」
咲夜の答えに思わず叫んでしまう。
「ま、マスターって……ぼ、盆栽が趣味なんですか。知りませんでした」
動揺を隠せない凜は言葉がいちいち切れる。
「おい凜信じるなよ!」
「マスターが嘘吐くはずないじゃん」
「えっ、いやいや、嘘だよ凜ちゃん」
「…………えーーー!!」
驚きのあまり絶叫する凜。
「信じている人を疑わない、リンリンの良いころだね」
京子さんが凜を後ろから抱き、落ち着かせようとすると京子さんがまたなにかに飛ばされたみたいに横にふっ飛んだ。
「京子さん!」
凜だけが名前を叫ぶ。敦也はもう叫ぶ気にならなかった。
「じゃー、説明しようか……これがわたしの神器の《神樹の実》」
咲夜が示す神樹の実とはやはりあの植木鉢の樹の実のことだろう。神器ってなんでもあるのか。
「これは実を口にするたび力がアップしていくんだよ。まず、一つ目を食べると魔力上昇と重力操作、引力と斥力の操作が可能になるんだよ。ちなみな味はリンゴ味。食べたらまた時間が経ったら実はなるよ」
神樹の実は三つだから三段階パワーアップするらしい。
「二つ目を食べると、咲夜は十年後の姿に変わりそれはもう可愛い姿に変わ」
京子さんが立ち上がりながら言い終える前に、強力な重力が潰しまた床に倒れる。
「十年後の姿ってわたしよりも年上ってことに」
凜ももう京子さんには反応しないらしい。
京子さんも何回も潰されてよく平気だな。その時点でもう感服する。
「そうよ、十年後のわたしの姿はどんな人も釘付けになるんだから。京子さんや軽音ぐらい胸もあるんだから!」
「ちなみに胸は相変わらずペッタン」
また立ち上がりながら言う京子さんは顔を赤くする咲夜に潰された。
「さて、戻そうか。敦也くんはなにが知りたい?」
相変わらずふわふわ浮かびながら、軸を戻そうとする。
「何でこの塔は十階建てなんだ?」
敦也はこの部屋に上がるとき思った疑問を訊いてみる。
「それはね、このギルドのみんなに目標を持たせるためだよ」
「目標を」
「塔にはまだ空きフロアがある。だから、そこに住めるようになるため強くなるとか。【鍵の在処】を目指すという大きな目標を追うよりは、人間小さな目標をコツコツやってたほうがゴールは早いと思うんだよね」
この子は本当に小学三年生なのだろうか。まだ自分のこととか考えてそうな歳だが、自分以外の人のことも考えている。
「さて、では次にこのギルド方針でも説明しようか!」
咲夜は机を一回指で叩きホロ画面を変えた。
「わたしたち夢猫の現在の方針はざっくり言いますと、じっくりゆっくりこの世界を攻略して、【鍵の在処】を目指そうという感じです」
「それは神の副産物の力だよ」
咲夜が指を立てながら言う。
「神の副産物ってなんなんだ?」
「わたしも知りません」
敦也の言葉に同調する凜。
「神の副産物とはダンジョンに隠されている宝の一つのことだよ。ダンジョンに隠されている宝は食材や武器や生活必需品が基本的にあるんだ。レアな場合に神器や神の副産物があることがあるんだ」
神の副産物。なかなか便利なものみたいだ。
「神の副産物は所詮は副産物なんだよ。一回っきりといった感じのものが多いんだよ」
京子さんの言葉から推測すると。
「瀬尾先輩の呪いというか封印は対象にできるのが一回だけで、解ければそこで終了ということか?」
「そ、満点正解だ。花丸をあげよう」
宙に花丸を描く京子さん。
「誰が瀬尾先輩にそんな封印したんですか?」
凜の質問に咲夜は答えようとする。
「それは、他のギルドのマスターなんだけど……その前に」
咲夜はリングをかざすと言った。
「ドリンクコマンド-オレンジジュース」
目の前にオレンジジュースの二リットルペットボトルとコップが四つが現れた。
飲み物まで出せるのか。リング便利すぎだろ。
「休憩しよ。喉疲れちゃった」
ペットボトルを開けると「プシュ」と中身が咲夜の身体に襲いかかる。
噴き出したオレンジジュースが咲夜の頭から身体を濡らした。
ベトベトに濡れた頭を横にブンブンと振って水滴を飛ばしてからから、「わー」と驚きと悲しみが混ざったような声をあげた。
オレンジジュースが入っていたペットボトルは中身が四割ほど出てしまっていた。
「咲夜着替えるかい」
「うん、そうする。もうベトベトだよー」
京子さんの提案に賛成し咲夜はクローゼットに小走りで近づくと、扉を開き中を見回し服を手に取ったりして服を選び始める。
京子さんは、中身が減少したオレンジジュースをそれぞれのコップに注いで敦也と凜に渡した。
「敦也くんちょっと待ってて。すぐ着替えるから」
そう言いながら咲夜が上の服を脱ぎ出したので、いきなり凜が敦也の両目を覆ってくる。
「咲夜、わたしが代わって説明しておくよ。ゆっくり着替えな」
「えー、大丈夫だよ」
「大丈夫じゃないよ咲夜。女の子なんだから、敦也くんみたいな変態の男の前で着替えては駄目だよ」
「うー……」
京子さんの母親っぷりを受けて、咲夜は唸ってから手を叩き合わせ机とベットを樹の壁が分けた。
「変態じゃないんだけどな」
「そろそろ始めていいかな」
「あっ、すいませんお願いします」
ジト目で敦也を見ていた京子さんは、コップに入ったオレンジジュースを飲み干してから話の続きを始めた。
「リンリン達は、もうギルドが十個あるのはもう知ってるよね」
「はい、でもその内の一個のNo.Sというギルドが潰されて、ギルドは今九個なんですよね」
「そうだよリンリン。偉いね、天才だね、秀才だね、可愛いね、よく出来たねー、一緒に寝よう。で、とりあえずそのギルドのことを詳しく説明しようか」
コホンと咳払いしてから話し出した。
「まず、ギルドは三つの派閥に別れてる。今にでも【鍵の在処】にたどり着きたいグループ。ゆっくりじっくり【鍵の在処】を目指すグループ。夢猫はじっくりグループに入ってるよ。それと、【鍵の在処】を目指さず閉ざされた世界で生きることにしたグループ。あとは、No.Sだけのどっちつがずの自由なグループと」
「なんでグループに別れてるんだ?」
敦也の質問に京子さんは指で、ホロ画面の中の一つを指す。
「すべて生き返る道のせいだね。生き返る道のマスターが夢猫の咲夜みたいに穏やかな性格だったらこんな状態になってはいなかったよ。現段階どのギルドも【鍵の在処】を目指していない。いや、目指してはいけないことになっているんだよ」
「えっ、なんで……!?」
京子さんの言葉に敦也は驚きを隠すことができなかった。
【鍵の在処】を目指してはいけないことになっている。つまり、閉ざされた世界での目標を奪うようなものだ。
「九天会議の話し合いの結果だよ。いまギルドは九個あるだろう、グループそれぞれに三つのギルドが入ってるんだよ……会議の議題はこうだった。危険の高い【鍵の在処】の攻略の一時停止。まず、閉ざされた世界での生存を望む三つのギルドがこれに賛成。発議者の生き返る道マスターで四人目。あとは、じっくりグループから一人賛成して今の状態になっていると。それと同時にある一つの条約も作られた。ギルド相互不可侵条約だ。全てのギルドはギルド同士で戦えないんだ。それは、戦争の防止になっているからいいけど、生存派グループには裏の顔があるという噂があるんだよ。モンスターの殺戮を道楽にして、それの延長線上で人を狩っているとかいうね」
「えっ、整理させてください」
凜が手を振り京子さんが一気に言ったたくさんのことを整理する。敦也も京子さんが言った生存派の裏の顔という話しには強く驚いた。
「九天会議が【鍵の在処】を目指さない条約と、ギルド相互不可侵条約を作り。裏の顔があるギルドが生存派のギルドの狩りをしていると言う話ですか」
京子さんは凜が整理した内容に強く頷いてから、優しく否定した。
「うん。リンリン違うよ、惜しかったね。生存派のギルドが人を狩っているという噂があるんだよ。難しかったね、しかたないよリンリン」
もはや過保護か。
「京子さん、その噂って本当なんですか?」
「ブラックゾーンにいるソロプレイヤーから聞いた噂だからね、虚偽は解らないよ確かめなければね。でも、ギルド相互不可侵条約があるから、何度ギルドを尋ねても門前払いさ」
ギルド相互不可侵条約。まるでその生存派ギルドを守るために作られたみたいな。
「と、瀬尾君の呪いについての話だったね。あれは三年前まだギルド相互不可侵条約が作られる前だったから、ギルド間の領土争いが頻繁に行われていた。領土争いって言っても、死傷者が出ないように攻めてきたギルドの人数に合わせるというルールがあったんだけど、これも九天会議ね。ある日一番近いギルドのマスターが単体で領土争いを申し込んできたんだよ。そのときちょうど咲夜や攻略組はギルド外のダンジョン攻略に言っていて、残ってるメンバーで一番強い瀬尾君が向かい討つことになったんだよ。そのギルドとは何度か領土争いをしているし話もした。実際同盟を組む形も作れるはずだった。でも、そのギルドのマスターは領土争いが始まると瀬尾君の魔力を神の副産物で封じ去っていったんだよ」
凜がそこまで聞いて思った疑問を口にした。
「なんで、その時瀬尾先輩を倒さなかったんだろう。だって、魔力が使えない瀬尾先輩なんてギルドマスターなら楽勝ですよね。去ってくれてありがたいですけど」
凜の疑問はごもっともである。いつか、封印が解かれる危険性があるなら、効果が発動しているうちに殺しておくのがベストだろう。
「それはわたしたちも謎だよ。去る前に瀬尾くんに耳打ちしてらしいけど、瀬尾君は否定するし……どこのマスターも考えることは解らないんだよ」
京子さんがやれやれと首を振ると、着替え終えた咲夜が樹の壁を解除し椅子に座りなおした。
「考えることは解らないとは酷いな。わたしの考えは」
「楽しければそれでいいでしょ」
咲夜の言葉に被せるように京子さんが言った。
「言わないでよ京子さん、酷いよー」
ふぐのように顔を膨らませる咲夜の頭を京子さんは胸に抱きしめる。
「うー、可愛いよー。咲夜わたしの娘にならないか。いや、妹がいいか」
「やっ、たまに変な京子さん嫌い!」
咲夜の頬に自分の頬すりすりする京子さんを咲夜は突き飛ばした。
「嫌いって言わないでよ。わたしは大好きだよ咲夜ー」
咲夜に凄い勢いで飛び付く京子さん。
咲夜は椅子から後ろに飛び退ると、リングに向かい詠唱。
「《神樹の実》、顕現」
すると、咲夜の手の上に小さな植木鉢とそれに植えられている盆栽のような小さい樹が現れた。その樹からは三つの林檎ほどの大きさの果実が生えていた。
その果実を一つのもぎとると果実をかじると咲夜と植木鉢がふわふわと浮かび上がった。
その瞬間この部屋の空気が変わった気がした。重力の重さが変わった気がした。
凜の顔にも笑顔はなかった。敦也も咲夜が何かをすることは解った。
「ごめん、咲夜わたしがやり過ぎた。落ち着こう。だから、それは」
京子さんは謝罪を口にするが時すでに遅しというやつだ。
京子さんがなにかに飛ばされたみたいにふっ飛び、部屋の壁に勢いよくぶつかった。
「京子さん!?」
敦也も凜もなにが起きたか解らずふっ飛ばされた人の名前を叫ぶ。
「じゃー、続きを始めようか」
ふわふわ浮かびながら、咲夜は説明の続きを始めようとする。
敦也も凜も京子さんがふっ飛んだことでまだ唖然としていた。
「どうしたの二人とも。鳩が波動砲を喰らったような顔して」
いやいや、鳩が波動砲喰らったら即死だろと思考内で突っ込んでから、咲夜を向く。
「今のはなんだったんだよ?」
敦也がいますべき質問がこれでいいのか焦り纏まりすらしない。
「いまのって?」
何故かはぐらかす咲夜。 「いや、京子さんがふっ飛んで」
「わっほんとだーびっくりー」
京子さんが埋め込まれた壁を見て、棒読みで驚いたような素振りを見せる咲夜。
「マスターその樹はなんですか?」
凜が落ち着きを取り戻したらしく、今度は凜が咲夜に質問する。
「わたしの趣味だよ」
「盆栽が趣味の小学三年生がどこにいるんだよ!! 」
咲夜の答えに思わず叫んでしまう。
「ま、マスターって……ぼ、盆栽が趣味なんですか。知りませんでした」
動揺を隠せない凜は言葉がいちいち切れる。
「おい凜信じるなよ!」
「マスターが嘘吐くはずないじゃん」
「えっ、いやいや、嘘だよ凜ちゃん」
「…………えーーー!!」
驚きのあまり絶叫する凜。
「信じている人を疑わない、リンリンの良いころだね」
京子さんが凜を後ろから抱き、落ち着かせようとすると京子さんがまたなにかに飛ばされたみたいに横にふっ飛んだ。
「京子さん!」
凜だけが名前を叫ぶ。敦也はもう叫ぶ気にならなかった。
「じゃー、説明しようか……これがわたしの神器の《神樹の実》」
咲夜が示す神樹の実とはやはりあの植木鉢の樹の実のことだろう。神器ってなんでもあるのか。
「これは実を口にするたび力がアップしていくんだよ。まず、一つ目を食べると魔力上昇と重力操作、引力と斥力の操作が可能になるんだよ。ちなみな味はリンゴ味。食べたらまた時間が経ったら実はなるよ」
神樹の実は三つだから三段階パワーアップするらしい。
「二つ目を食べると、咲夜は十年後の姿に変わりそれはもう可愛い姿に変わ」
京子さんが立ち上がりながら言い終える前に、強力な重力が潰しまた床に倒れる。
「十年後の姿ってわたしよりも年上ってことに」
凜ももう京子さんには反応しないらしい。
京子さんも何回も潰されてよく平気だな。その時点でもう感服する。
「そうよ、十年後のわたしの姿はどんな人も釘付けになるんだから。京子さんや軽音ぐらい胸もあるんだから!」
「ちなみに胸は相変わらずペッタン」
また立ち上がりながら言う京子さんは顔を赤くする咲夜に潰された。
「さて、戻そうか。敦也くんはなにが知りたい?」
相変わらずふわふわ浮かびながら、軸を戻そうとする。
「何でこの塔は十階建てなんだ?」
敦也はこの部屋に上がるとき思った疑問を訊いてみる。
「それはね、このギルドのみんなに目標を持たせるためだよ」
「目標を」
「塔にはまだ空きフロアがある。だから、そこに住めるようになるため強くなるとか。【鍵の在処】を目指すという大きな目標を追うよりは、人間小さな目標をコツコツやってたほうがゴールは早いと思うんだよね」
この子は本当に小学三年生なのだろうか。まだ自分のこととか考えてそうな歳だが、自分以外の人のことも考えている。
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