鍵の在処ーカギノアリカ

カルトン

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死後の世界と真紅のドラゴン

名探偵・飛鳥

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「んーーー!」
「陽子なんて言おうとした?」
飛鳥はひきつった笑顔で陽子に言うと彼女の口を止めていた手を解放した。
すると陽子は空気を読まずにすんなりと、
「え、アツにアスはラブラブだって」
言ってしまった。
「な、なな、なに言ってんの陽子。わたしが敦也にラ、ラブラブ。そんなわけあるわけ!」
飛鳥は焦り呂律が回らなくなっていた。手もしどろもどろで、顔も真っ赤に染まっている。
「だって、小学校のときからずっとアツの一番近くで、アツのこと見てきたじゃん。なんかもー、むちゅーって感じで」
「それは敦也が心配だったからよ!」
「ほんとー」
にやにやしながら飛鳥を見る陽子の瞳はとても楽しげだった。それと同時に陽子の瞳は飛鳥の言葉を見破る力があるような気もした。
「……うぅ」
飛鳥は何も言い返せなかった。友達に嘘をつくのは嫌だし、嘘をついても陽子だとすぐにばれそうだったからだ。
「アス大丈夫だよ。わたしが隣にいてあげるよ。今アスはとても辛いんでしょ。わたしがアスを支えるよっ」
陽子に励まされた飛鳥は教室にたどり着くと、午前中の授業が早く終わることを願いながら真剣に受けた。
四時間目の授業が終わり昼休みになると、陽子に一言言ってから飛鳥はバックに詰めてあるブレザーを手に取り走り出した。
「陽子ありがとう、わたし頑張るよ!」
「おう、なんか知らんが頑張れ!」
飛鳥は傘山先輩がいるであろう場所を回った。
教室、生徒会室、図書室。しかし、どの場所にも傘山先輩の姿はなかった。
飛鳥が諦めかけたそのとき傘山先輩が行きそうな場所が浮かびました。その場所にいる可能性は飛鳥が知っている傘山先輩だとあり得ないと思い、いつのまにか選択肢から外していたのかもしれなかった。
彼女が最後に向かった場所は今日二度目となる体育館裏だ。
そして、飛鳥は見つけた。体育館に背中を任せて立っているブレザーを着ていない傘山先輩を。
「や、どうしたんだい瀧川くん」
飛鳥に気づいた傘山先輩はカレーパンの残りを口にすべて突っ込み飲み込んでから言いました。
「傘山先輩こそどうしてここに」
傘山先輩は静かに言います。
「敦也くんには酷いことをしたと思ってね。僕がしっかり部長として部をまとめていれば矢沢のような奴が部にいることはなく、敦也くんが苦しめられることもなかったのにね」
傘山先輩はとても反省しているようだった。自分がしていたことのせいで敦也が死んでしまったと思っているのでしょう。
飛鳥が昨日とても後悔の涙を流したように、傘山先輩も後悔しているようです。
「瀧川くん、ごめんね。君と敦也くんは幼馴染みだから、敦也くんを失って辛いよね」
傘山先輩は飛鳥に近づき、慰めるかのように髪を優しく撫でた。
飛鳥は傘山先輩の行動に驚き一歩下がる。
「何するんですか!?」
傘山先輩は飛鳥の拒絶の反応なんて気にせず、彼女を抱きました。
「……え?」
飛鳥は焦りもせず驚きもせず、何が起きたのか理解するのに苦労する。
「いま一番辛いのは君なんだ。大切に思っていた敦也くんを失い絶望に暮れているのは君だ。だから、僕が少しでも君にし空いてしまった絶望の穴を埋めてあげるよ。これから……ずっと」
傘山先輩はなんの躊躇いも躊躇もなく、昼間から少女を抱き口説きました。
飛鳥は傘山先輩の言葉にはびっくりしました。急に抱きつかれ、急に告白され。
何か違和感を感じてもいました。
虫がよすぎるんじゃない?
わたしは敦也を好きだ。それはもう否定しない。そして、傘山先輩はわたしのことを好きだ。でも、わたしは敦也を好きだから傘山先輩に好意なんて抱かなかった、むしろ敵意を抱いていた。
だから、傘山先輩のその想いは敦也がいるいじょう叶うはずなどなかった。 しかし、敦也が死んでしまったいま。飛鳥が好きだった人消え彼女の心にはぽっかりと穴が空いている。
そして、傘山先輩はそのぽっかりと空いてしまった穴を埋めるため飛鳥に告白した。
彼女の心の穴を埋めるのは自分しかいないみたいに。
敦也が消えた悲しみを共感できるのは自分しかいないみたいに。
やはり、虫がよすぎるんじゃないか。
「あなたは何をしたんですか?」
飛鳥は、傘山先輩に不安と疑問と恐怖を抱いていた。
「何を、誰に?」
質問を質問で返され飛鳥は、少しイライラする。
「あなたが敦也を殺したんじゃないですか」
飛鳥は傘山先輩を突き飛ばし、抱いていた疑問を傘山先輩にぶつけた。
「何を言っているんだ瀧川くん。僕が敦也くんを殺した。そんな冗談笑えないよ」
笑いながら傘山先輩は飛鳥に言う。
確かに笑えない冗談だ。でも、これが冗談じゃないとしたら。
「あなたは敦也を殺すために、矢沢先輩を利用したんじゃないですか」
「もとから矢沢君の素行は悪かった。警察の話によると敦也くんに暴力を振るっていて、度を越えてしまったと彼も認めているらしい。だから、矢沢君が敦也くんに暴力を振るったのは偶然なんじゃないかな」
飛鳥が中学時代敦也から聞いた話では、優しいバスケの巧い先輩のはずだ。
敦也が知らなかった、矢沢先輩の高校一年の間に矢沢先輩を変える何かが起きたのか。
「僕が君を幸せにする。さぁ、こっちに来るんだ」
傘山先輩の瞳は何かにとり憑かれたみたいな怪しい色をしていた。
一歩ずつ傘山先輩がわたしに近づくたびに、飛鳥は一歩下がり距離をとる。
「わたしはあなたが嫌いなの、だからあなたとは付き合えません!」
飛鳥は自分の気持ちを言い放った。
「大丈夫だよ。一緒に過ごせばすぐに気持ちは変わるさ」
怪しい色の瞳を輝かせながら傘山先輩は一歩前に出る。
「わたしにあなたと過ごす気なんてない」
「……誰が瀧川くんを守るんだ。誰が瀧川くんを幸せにするんだ!」
傘山先輩は立ち止まり飛鳥に向けて叫んだ。その叫びは飛鳥を思ってくれている証拠なのだろうか。
「敦也、敦也がわたしを守ってくれる」
静かに言い放つと、傘山先輩は両手で髪を掻きむしり、瞳を大きく開き叫んだ。
「敦也は死んだんだ、敦也はもういないんだよ、死人が瀧川くんを守れるのか!」
「はい、敦也はわたしを守るために必ず帰ってくるから。だから、わたしは待ってる。ずっと、待ってるんです」
飛鳥の言葉を聞いた傘山先輩は唇を血が出るまで強く噛み、飛鳥を睨み付け憤りを抑えてから言った。
「敦也が帰ってくる……そんなことあるわけな」
「敦也は帰ってきます。敦也は約束したから。もう心配させないように強くなるって。だから、敦也は強くなって帰ってきます」
飛鳥は傘山先輩の言葉が言い終わる前に言葉を重ね、傘山先輩の口を閉じさせた。
「ごめんなさい、わたしは敦也が好きです。だから、あなたとは付き合えません」
丁寧にわたしは想いを告げ、傘山先輩の想いを断った。
傘山先輩は苦笑いしながら、去っていく飛鳥を見て言った。
「六時に君を待ってるから!」
飛鳥は傘山先輩の想いを背中で受けながら教室に走り出していた。
本来の傘山先輩を探していた目的であるブレザーを返すことに気づいたのは教室に着いてからだった。
体育館裏に一人残された傘山は呆然と呟いた。
「あぁーあ、振られちゃったら。仕方ないか、敦也が死ぬのが悪いんだ」
傘山はシャツの袖をまくり、腕に描かれたイラストを眺めながら呟いた。
「仕方ない、彼女も殺すか。俺の思い通りにならないものはすべて壊す」
傘山の腕に描かれたイラストは神に見える。法衣をまとい、輪を頭上に乗せ、翼を生やし。しかし、その翼は片方にしか生えていなかった。片方の翼はまるで何かにむしり取られたようになっていた。
このイラストを身体のどこかに付けたグループが世界的に有名になるのはまだ先の話だった。






「どうしたのアス、深刻そうな顔しちゃってさ」
陽子は昼休みが終わる直前に帰ってきてから、飛鳥の顔が深刻そうな顔になっているのが心配でたまらなかった。
「よかったんだよねあれで」
「ん、昼休みに何かあったのかい?」
「傘山先輩を振ってきた」 「そうか、傘山先輩を振ったか……え、傘山先輩って三年の?」
「うん、そうだけど」
「はー、アス何してんのさ。あの傘山先輩がアスに告白してくれたんでしょ。なんで振っちゃうのさ」
陽子が椅子から叫びながら飛び上がり、クラス中の注目を集める。
授業中に叫びながら勢いよく立ち上がればそうなるだろう。
陽子は謝罪しながら椅子に座った。
「アス、何してくれるのさ」
「陽子が勝手に自爆したんでしょ」
「で、何で傘山先輩を振ったのさ」
陽子が話の話題をもとに戻した。
「その前に傘山先輩ってそんな人気なの」
「アス知らないの!」
また叫びながら勢いよく立ち上がり、注目を集めてしまう陽子は苦笑いでそれを受け流した。
昼休みの廊下で話を再開することになった。
「傘山先輩はここら辺じゃかなり有名な企業の御曹司で成績優秀、素行良好、運動能力抜群、しかもイケメン。この学校の女子生徒なら知っている先輩だよ」
陽子が傘山先輩について紹介する。
飛鳥は陽子から初めて傘山先輩がどのような人か聞いて、傘山先輩が凄い人といのを理解する。そして自分は噂に疎かったことに驚いた。
「で、何で傘山先輩を振ったのさ」
「陽子も知ってるでしょ、わたしは敦也が好きなんだよ。傘山先輩を好きにはなれないよ」
「ん、アツはもういないじゃん」
「ふふ、敦也は帰ってくるの」
「ん、わけ解らんよ?」
そうだ、まだわけは解らないままだ。敦也の死の真相を結局、飛鳥はまだ知らない。
もう傘山先輩からは情報を得られないだろうし。
飛鳥の中にある仮説を確証に運ぶためには、ある人と接触しなければいけなかった。
でも、飛鳥はそのある人に接触するのが恐かったのだ。
「陽子はわたしのこと好き?」
飛鳥の質問に陽子はすぐに答え抱きついてきた。
「うん、大好きだよ。友達として、ずっと友達でいてあげるよ」
陽子の明るい素直さが嬉しくて、涙腺が緩みそうになる。
「陽子、わたしに勇気をちょうだい」
「おう、アスならできるぞ。だって、わたしの大親友だからな!」
陽子は拳を飛鳥の胸にぶつけ勇気を注入する。
「ありがとう陽子。さ、六時間目も頑張ろうか」
チャイムが鳴り始めると同時に飛鳥は教室に走り出していた。
陽子の肩までかかっている髪が風に吹かれ覗かれたうなじに、傘山先輩にもあった片翼の神のイラストがあることを飛鳥は知るよしもなかった。

刑務所の面会室に飛鳥はいた。
もちろん、犯人側ではなく関係者側だ。飛鳥はここである人から話を聞こうと考えていた。
白い壁越しにある人が座るのを確認してから、飛鳥は口を開く。
「はじめましてですね、矢沢先輩」
「あぁ、はじめましてだ……瀧川飛鳥でいいんだよな」
飛鳥は静かに首を動かし頷く。
「まず、謝らせてくれ。すまなかった、俺は敦也を殺す気なんてなかったんだよ」
矢沢先輩は頭を深く下げて飛鳥に謝罪した。
「なんで敦也を殺したんですか?」
「飛鳥君が来たらすべてを話すつもりだった。俺は敦也が死んでしまった理由をすべて話そう」
矢沢先輩は頭を上げ、飛鳥の眼を見てすべての真相を話し出した。
「まず、俺は敦也を嫌いじゃなかった。むしろ、後輩として好きだった。たしかに敦也はバスケの技術面では劣っているほうだった。でも、それ以外の方面では敦也は優秀だった。敦也がチームを支え盛り上げていたと言っても過言ではない。自分では試合に出れないから、出るメンバーのサポートをしたり敦也は俺達を支えてくれていた」
飛鳥はこのとき初めて敦也がバスケでどれだけ貢献しているのかを知った。
飛鳥は試合に出られない敦也をカッコ悪いと思ったことはなかった。でも、敦也はいつも何をしているのだろうと思うことはあった。
「俺が高校でバスケ部に入り部内で技術で部員よりに勝っていた。俺はそれで目立ちすぎてバスケ部の先輩に目をつけられた。先輩から色々なことを命令され、俺は逆らおうとはせず従っていた。すると、いつのまにか俺に不良のレッテルが貼られていた」
飛鳥は静かに矢沢先輩の話を聞いていたが、矢沢先輩も苦労している人だと飛鳥はこの時気づいた。
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