鍵の在処ーカギノアリカ

カルトン

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青色の世界と黄金の鎧騎士

厳しい人だなぁ

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「い、いるさどっかに! たぶん、おそらく、必ず!」
脳裏に飛鳥を思い浮かべながら、敦也はそう口にした。
「いてくれるといいわね、そんな子が」
「まずは生き返らなきゃだけどな」
敦也が笑みを浮かばせると、立ち上がった氷道が振り返り、
「だったらはやく修行を始めたら……生き返るためには強くならなくちゃでしょ」
「そうだな、頑張りますよ、氷道殿」
ライの口調を少しだけ真似て敦也はベッドから下りて部屋の外へ向かいながら、氷道の頭にぽんと手を置いた。





トオンの峡谷から落下して一日が経ち昼過ぎ。
敦也はライとともに開けた場所にいた。
右を見るとまるで隕石が落ちてきたかのような巨大なクレーターがあり、敦也にはそれをライが作ったことを簡単に想像できた。
「では、敦也殿……修行を始めるで御座るが。まず、その前に修行内容について説明しておこうと思うで御座る」
「あぁ、なんだってやるぜ」
前はいきなり谷底へ蹴り落とされたんだし。
ライが話を切り出して修行内容を伝えだす。
「敦也殿は魔力の使い方が下手すぎるで御座る。トオンの峡谷から落下する際に、敦也殿は落下の衝撃に堪えるために身体を強化しようと魔力を大量に放出しました。その放出した魔力が多すぎたので御座るよ」
「だから、魔力が尽きて雷がでなかったのか」
昨日の落下後の鎧騎士戦で雷がです、鎧騎士アーマーナイトとまともに戦えなかったことを思い出す。魔力の配分もしっかりしなくちゃダメと。
「そうで御座るよ。敦也殿の魔力が尽きてしまい戦えなくなり、凜殿に負担がかかりすぎた。それが昨日の氷道殿がピンチに陥った原因に御座るよ」
「あぁ、俺が悪かったのはわかってる。俺の力が足りなかったから、氷道にあんな怖い思いをさせてしまったんだ。もうあんな思いはさせたくない」
「敦也殿には魔力のコントロールのトレーニングをしてもらいます。そして、それと同時進行で拙者の雷を、能力を使った体術を教えていくで御座る」
「……体術か」
魔力のコントロールのような基礎のトレーニングをやらされることは敦也には容易に想像できていた。文句はないし、今の自分は基礎もしっかりしていないから基礎も必要なことはわかっていた。
しかし、ライから体術を教えられることを知り、表には出さなかったが内心ではかなり喜んだ。師と出会わなかった敦也は今までその場任せの大胆な戦い方だった。だが、ちゃんとした体術を覚えることによって、戦い方が変わりモンスターに勝てるようになるかもしれないと思ったのだ。
「拙者の体術のほうも先に説明しておくで御座るよ。普通の打撃技などの基本技などもあるが、拙者が作り上げた奥義のような十の技があるで御座る……まぁ、拙者は神器があるから技は変わるが、敦也殿にはその基本技と十の奥義のような技を覚えてもらいたいで御座る」
「十の奥義のような技……」
「あぁ、ちなみにその十の奥義のような技にはすべてまとめてこう名付けているで御座る。超放電と……試しに一発見てみるで御座るが」
「おぉ、マジか!?」
ライからの提案に敦也は目を輝かせて、ライの一挙手一投足に集中した。
風が吹き抜けて、地面の草がざわわと揺れる。
ライは右手を突き出して、技の名を口にした。
「超放電一の技・轟雷の鋭槍サンダーランス
ライの右手に彼女の背丈と同じぐらいの雷でできた槍が現れた。その雷色の槍はゴロゴロビリビリと轟きながらその形を維持している。
「すげぇな……」
敦也の口から洩れたのは感嘆の言葉だけだった。
今まで敦也が自分の能力の電雷で使えたことと言えば、雷を飛ばすことか何かに雷を纏わせることぐらいだ。
だから、ライが目の前で雷を凝縮させて槍の形にして、それを維持していることに彼はかなり驚いているのだ。雷の形を変化させようという発想が今まで浮かばなかったし、何よりそれが実行できる力がなかった。
「てか、それ体術じゃねぇじゃないか!!」
「ん、そうで御座るな。まぁ、轟雷の鋭槍はこの超放電の技を使うための準備運動の一つのような技で御座るよ」
そう言って、ライは敦也と距離をとって、槍を構えるとぶんぶん振り回し始めた。それはどう見ても槍の扱いに慣れている人の動きで、敦也には到底真似できそうにはなかった。
槍を振りながらステップを踏むライが敦也には目をやらずに説明を続ける。
「敦也殿いいで御座るか。この轟雷の鋭槍の良いところは、相手が剣や刀や槍などの武器を持つ相手に相対しやすいこと。さらに、この轟雷の鋭槍にはもう一つとっておきがあってで御座って、な!!」
ステップの動きと槍を振る動きを止めたライは、力を込めて槍を力一杯遥か上空に放り投げた。
槍はすさまじい勢いで天に突き進むと、巨大な雷轟とともに爆発した。
「なんだよ今の!?」
「轟雷の鋭槍は雷を凝縮させて槍の形にしているで御座る。その槍は手元を離れて数秒すると凝縮されていた雷を爆発させるので御座るよ」
「つまりは遠距離攻撃にも有利な技ってわけか」
「そうで御座るな……まぁ、いきなり大きな槍を作るのは難しいだろうから、まずはこうしたらいいで御座るよ」
ライはそう言ってまた右手を突きだし五指を伸ばした。まるでその五指の先端に集中しろと言わんばかりに。
すると、ライの五指の先からビリビリと雷の線が伸びて、線の先に小さくなった轟雷の鋭槍が現れた。
「へぇ、そんなこともできるのかよ」
「これは魔力コントロールのトレーニングにも使えるで御座るよ。五指それぞれの魔力は均等にしなくてはいけないのだ。多すぎたら五指の先同士の槍がぶつかりその時点で大爆発。低すぎたらたいした威力にはならないで御座るよ」
そう言ってライは腕を振り抜いて五指の先にある槍をまた遥か上空に飛ばした。
そして、上空で五連続の花火のように、雷轟を轟かせて爆発した。
「この縮小版の轟雷の鋭槍なら飛ばしても小さくて敵に気づかれにくいので、敵は破壊力の大きな爆弾が飛んできているのに気づかずにドカーンで御座る!」
「なるほど、たしかにそれは便利だな」
「そうで御座ろう…………ではこれをどうぞ」
「え?」
ライから敦也に手渡されたのは一つの大きな巻物だった。
「それに超放電すべての技の名前とやり方が書かれているで御座る。それを見て頑張るで御座るよ」
「え、ちゃんとした指導とかしてくれないのか!?」
「拙者は朝っぱらから男女交際を見て少し気分が悪くて……それ以前に拙者はもとから教えるのは苦手で御座るし」
「でも、それじゃ今までと変わらないんだ! 俺は強くならなきゃいけないんだ! だから、俺を強くしてくれよ!」
敦也は自分の思いをライにそのままぶつけた。彼は強くならなきゃいけない。今の仲間を守るために、【鍵の在処】にたどり着いて生き返り、飛鳥と再開するために。
モンスターと戦って勝てるような力が。どんな恐怖にも打ち勝つ勇気が。絶望の状況から導きだす希望を。今の敦也はどうしてもはやく欲しいのだ。
ライは迫真の敦也の表情を見て、はぁ、と短く息を吐いた。そして一歩ずつ彼に近づいてから、右肘をを後ろに突きだす。
「歯、食い縛るで御座るよ」
「は?」
次の瞬間、ライの右拳に雷が纏われたかのように見えると、その右拳は敦の顔面に伸びてきて顔を凹ませて彼を吹き飛ばした。
敦也は飛んで地面に落下してからも勢いで引きずられたままで、木にぶつかってその動きが止まった。
「何すんだよライ!!」
彼は顔面に手を当てながらライに叫ぶ。鼻からは血が出ていた。
「敦也殿あなたはバカですか、アホですか、死んでますか、生きてますか、最低な人間ですか。俺を強くしてくれねぇ……誰かに教えられたら敦也殿は強くなれるで御座るのか?」
「あ、あぁ、そうだ! ちゃんと体術とかも磨いて、技も覚えて。俺は強くなれるさ」
「あなたは誰かにあぁしなさい、こうしなさいと言われなくちゃできない人間で御座るか? 自分で考えて行動できない。敦也殿、あなたが今まで強くなれなかったのは強くなろうとするためにすることを考えるのを止めていたからに御座らぬか? 自分が強くなるためにどうやったらいいのか。自分で考えられないようじゃ強くはなれないで御座るよ…………もし、目の前で仲間が死にそうなときあなたは助けられないですよ」
「……!! でも!!」
たしかにライの言うことは合っている。その通りだ。けれど、敦也はそれを認めたくはなかった。自分が強くなることから逃げていた、努力することから逃げていたことを認めることになるからだ。
「でもじゃないで御座るよ。拙者は一人で強くなった……ならば敦也殿も強くなれるはずで御座るよ。同じ人間ならば」
「あんたと俺じゃ持っている才能が違うんだよ! 俺は生前から何もできなくてまわりの奴等に笑われて、蹴られて、殴られて、終いには殺された。全部俺に才能がなかったからだ。俺が持ってなかったからなんだ! 俺は自分が何もできないことを知っている! けれど、俺を仲間だと思ってくれる夢猫のために、元いた世界で待っているはずの友達のために強くなって生き返ろうって思ったんだよ!」
「……それで」
敦也の叫びを聞いたライは短くそれだけ言って、地面に座り込んで彼を見つめた。
「弱い自分も頑張って戦っているから褒めてください?」
ライは首を右にちょこんと傾ける。
「優しくしてくださいですか?」
ライは首を左にちょこんと傾ける。
「評価してくださいですか?」
またライは首を右にちょこんと傾ける。
「何言っているで御座るか……敦也殿は。この世界はそんな世界じゃないで御座るよ」
「違う、俺はそんなことを言いたいんじゃない」
いや、そうなのだ。敦也はそれを認めたくない。認めたら自分が嫌いになるから。
「一つ昔話をするで御座るよ」
「なんだよ……」
ライは首を上に傾けて、晴れ渡る雲一つない青空を見た。
「夢猫はグレンモル区と呼んでる三人一組スリーマンセルの特別部隊があるで御座る。その三人には今は特別な任務をやってもらっているで御座る。そのグレンモル区のメンバーは異常な連中で、能力を持っていないが魔力を膨大に持つのもいれば、魔力も能力も持たないのもいれば、最初から目が見えないのもいるで御座るよ」
「はぁ、魔力や能力がなくて戦えるのかよ!?」
敦也はそんな馬鹿げた話しに呆れて息を吐くことしかできなかった。
この世界はモンスターと戦わなくちゃ生きていけない世界なのだ。それなのに魔力や能力がないのに特別な任務を任せていいのだろうか。
「普通ならそう思うよね。拙者もそう思っていたで御座るよ。だけど、魔力も能力を持たない雄大は今は夢猫で三番目に強いで御座るよ」
「魔力も能力もないのにか……」
「雄大は運動神経も頭の良さも残念で不器用で、さらには魔力も能力もなくてもうどうしようもない奴だった……しかし、雄大は強くなることを選んだ」
「何でだよ……」
「それは夢猫の初期は戦えるメンバーが少なかったからで御座るからな……自分も戦えるようになったら夢猫への恩返しになると思ったので御座ろう」
魔力や能力もなく、運動神経も頭の良さも残念なのに夢猫のために強くなろうとした。
敦也は俺のために、ギルドのために強くなることを選んだ。
「何が違うんだよ……そいつと俺と」
「簡単な話で御座る……自分を信じることを敦也殿はあまりしないからで御座るよ」
「……自分を信じること……」
「敦也殿……あなたは自分に才能がないと言った。そんなのみんな持っていないで御座るよ。才能、そんかものがちゃんと世の中にあったら努力する人はいなくなるで御座るよ。天才なんていない、才能なんてない……あるのは努力するだけで御座るよ」
「努力するだけ、か」
「敦也殿、あなたの現状は弱い。弱すぎるで御座るよ。だから、あなたはこれ以上は弱くはならない。ならば、今から強くなればいいじゃないか。強くなろうと思うのなら努力して、強くなって師匠である拙者をいつか越えて欲しいで御座るな」
ライは優しく微笑んでそう言うと、立ち上がって敦也のもとへ歩いた。
「拙者は敦也殿が心から本当に強くなろうと願うなら全力で力を貸すで御座るよ」
ライは手を差し出し敦也も手を伸ばした。
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