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尾州編
第十七話 歓談
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{食堂にて}
人間、話し合うより殴り合った方が分かり合える事がある。体育会系。脳筋の理論だろうが、それは確かに証明された。
殺し合い一歩手前のような空恐ろしい試合後、食堂に移動し、何故か宴会となった。用意された葡萄酒に果実を絞ったジュース。大皿に盛りつけられた野菜にハム、パンやチーズ。子供達もすっかり泣き止み、成長期の旺盛な食欲で食べ物を口に運んでいた。
レイトン・ライデンと柳生宗不二は酒杯を交わし、先程の試合について議論を交わしている。とにかく、盛り上がっていた。
「ライデンさんって何者なんですか?」
「ん? せんせーはせんせーだよ」
「騎士なんですか?」
「違うけど、すっごく強いだろ!。この前も嫌な連中を簡単に吹っ飛ばしたんだぜ!。この辺じゃ、みんなに頼りにされてんだ」
分かる気がする。まさに頼れる先生だ。
時折、レイトン・ライデンは子供達に皿を持ってこさせると、そこにたんまりと野菜をのせて食べる様に促している。
野菜嫌いな子は、涙目になっていた。それでも、必死に食べている。何か、健気だ。
「食べないと、もっとたくさんのっけてくるんだよ」
なるほど、容赦ない。好き嫌いに関しては厳格だ。
「なるほど。それで家を探していたと」
「おうよ。どこも気に入らなくてな。しかし、ここは大層気に入ったぞ」
「それは良かった。部屋は用意しておくよ。今日にもここに移動するのかい?。掃除とか、色々と準備もあるんだけど」
「うむ。そうさせてもらおう。なに、世話になるのだ。掃除ぐらい任せてもらおう。七夜のは料理の腕がいいからのう。炊事をやらせるといいぞ」
「そうか。それは助かるよ」
ちょっと、勝手に決めないで。よし、こうなったら一言言ってやろうか。
「......俺はそれで構いません。色々と御迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」
きっぱりと抵抗は諦めた。本音と別の事を言ってしまう自分が、情けないが、気にしてもしょうがない。
「いや、これからが楽しみだよ。なにしろ、本気で戦える相手がいなかったしね」
「それなら柳生さんの事、よろしくお願いします。よかったですね、柳生さん。剣術友達ができましたよ」
ちゃっかり、恩人にしてトラブルメーカーの柳生宗不二を押し付けようと企んだが、浅はかな企みなど、すぐに看破された。
レイトン・ライデンには笑顔で首を横に振られ、拒否される。
「七夜の。もしかして、馬鹿にしておるのか?」
「そんな命知らずな真似、出来ませんよ」
ただ、ちょっと自由が欲しいだけです。柳生宗不二という問題児から。
この後は、打ち解けるとまではいかなかったものの、美味しい食事に舌鼓を打ち、好奇心旺盛な子供達に話をせがまれ、藤堂七夜は困惑し切った。
柳生宗不二は酔っぱらった勢いで、自らの武勇伝を歌い始め、一部の子供達は目を輝かせて聞き入っていた。
騒がしくも楽しい時間はあっという間に過ぎ、時刻はもう少しで深夜という時間となった。
思い思いの格好で寝てしまった子供達を、レイトン・ライデンが寝室に運び、藤堂七夜は台所に食器を運び、洗って片付ける。柳生宗不二は大の字になって、イビキをかいて熟睡。
貯蔵用の水瓶の水をすくって、桶の中に溜める。水は貴重だ。無駄に使うなどと、贅沢過ぎる事らしい。旅の途中、現代にいた感覚で水を使ったら、霧隠紫門が眉を吊り上げて、頭を殴られた。それ以来、水は大切に扱うようにしている。
たわしでゴシゴシと皿の汚れを拭い、空の桶に放り込む。それが終わると、それらを水の入った桶にくぐらせて、皿洗いは完了だ。
桶の水は、網目の細かいザルでろ過しておく。数日間は、この水で洗うのだ。現代の感覚でいえば、汚いのだろうが、意外と水は汚れていない。そういう工夫がなされているらしい。
濡れた皿を、清潔な布で拭い、棚に戻していく。うん。綺麗になったものを見ると気分がいい。
食堂に戻ると、レイトン・ライデンが一人、酒杯を傾けていた。まだ、飲み足りないようだ。
「ご苦労様。悪かったね。片付けを任せてしまった」
「いえ、これぐらいは」
レイトン・ライデンに促され、藤堂七夜は椅子に座る。
本当なら、食事が終わった後、宿に戻り、荷物を片づけ、今日中に越して来るはずだったのが、それを提案した張本人、柳生宗不二は満足そうな顔で酔い潰れた。
彼を宿まで運ぶなどという、無謀な行為はしたくなかった。レイトン・ライデンに頼んで、今日は一泊させてもらい、明日は朝一で両福亭に戻るつもりだ。
「ところで、君の流派は何処だい?」
「......剣は、習った事はありません」
「その割には、釣り合わない刀を腰に下げているね」
あぁ。彼ぐらい凄い人だったら、気になるよな。
レイトン・ライデンの指差した先には、歌仙伝・蜃。やっぱり、自分には相応しくないよな、と苦笑しながら、この刀を手にした経緯を話した。
どうにも、レイトン・ライデンという人物には隠し事ができない。自然と話したくなってしまう、不思議な何かを持っている。そんな人物だ。
「......そうか。刀が君を選んだんだね。それで、その刀をどうするんだい?。厄介な連中を引き寄せてしまうような、そんな気がするんだけど」
「でしょうね。でも、手放すなんて事はできないし、結局、肌身離さず持っているだけです」
「なら、戦い方を学んだ方がいい。その刀を欲しいと思う輩は、これから出てくるだろう。その時、誰かが助けてくれる訳じゃない。最初も最後も、必要なのは、【自分の力】だ。君は、力を身に着けるべきだ」
「............そう、ですね。俺も、そう思います」
これは本心だ。この世界は、俺が思っている以上に、ずっと危険な世界だ。
人間、話し合うより殴り合った方が分かり合える事がある。体育会系。脳筋の理論だろうが、それは確かに証明された。
殺し合い一歩手前のような空恐ろしい試合後、食堂に移動し、何故か宴会となった。用意された葡萄酒に果実を絞ったジュース。大皿に盛りつけられた野菜にハム、パンやチーズ。子供達もすっかり泣き止み、成長期の旺盛な食欲で食べ物を口に運んでいた。
レイトン・ライデンと柳生宗不二は酒杯を交わし、先程の試合について議論を交わしている。とにかく、盛り上がっていた。
「ライデンさんって何者なんですか?」
「ん? せんせーはせんせーだよ」
「騎士なんですか?」
「違うけど、すっごく強いだろ!。この前も嫌な連中を簡単に吹っ飛ばしたんだぜ!。この辺じゃ、みんなに頼りにされてんだ」
分かる気がする。まさに頼れる先生だ。
時折、レイトン・ライデンは子供達に皿を持ってこさせると、そこにたんまりと野菜をのせて食べる様に促している。
野菜嫌いな子は、涙目になっていた。それでも、必死に食べている。何か、健気だ。
「食べないと、もっとたくさんのっけてくるんだよ」
なるほど、容赦ない。好き嫌いに関しては厳格だ。
「なるほど。それで家を探していたと」
「おうよ。どこも気に入らなくてな。しかし、ここは大層気に入ったぞ」
「それは良かった。部屋は用意しておくよ。今日にもここに移動するのかい?。掃除とか、色々と準備もあるんだけど」
「うむ。そうさせてもらおう。なに、世話になるのだ。掃除ぐらい任せてもらおう。七夜のは料理の腕がいいからのう。炊事をやらせるといいぞ」
「そうか。それは助かるよ」
ちょっと、勝手に決めないで。よし、こうなったら一言言ってやろうか。
「......俺はそれで構いません。色々と御迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」
きっぱりと抵抗は諦めた。本音と別の事を言ってしまう自分が、情けないが、気にしてもしょうがない。
「いや、これからが楽しみだよ。なにしろ、本気で戦える相手がいなかったしね」
「それなら柳生さんの事、よろしくお願いします。よかったですね、柳生さん。剣術友達ができましたよ」
ちゃっかり、恩人にしてトラブルメーカーの柳生宗不二を押し付けようと企んだが、浅はかな企みなど、すぐに看破された。
レイトン・ライデンには笑顔で首を横に振られ、拒否される。
「七夜の。もしかして、馬鹿にしておるのか?」
「そんな命知らずな真似、出来ませんよ」
ただ、ちょっと自由が欲しいだけです。柳生宗不二という問題児から。
この後は、打ち解けるとまではいかなかったものの、美味しい食事に舌鼓を打ち、好奇心旺盛な子供達に話をせがまれ、藤堂七夜は困惑し切った。
柳生宗不二は酔っぱらった勢いで、自らの武勇伝を歌い始め、一部の子供達は目を輝かせて聞き入っていた。
騒がしくも楽しい時間はあっという間に過ぎ、時刻はもう少しで深夜という時間となった。
思い思いの格好で寝てしまった子供達を、レイトン・ライデンが寝室に運び、藤堂七夜は台所に食器を運び、洗って片付ける。柳生宗不二は大の字になって、イビキをかいて熟睡。
貯蔵用の水瓶の水をすくって、桶の中に溜める。水は貴重だ。無駄に使うなどと、贅沢過ぎる事らしい。旅の途中、現代にいた感覚で水を使ったら、霧隠紫門が眉を吊り上げて、頭を殴られた。それ以来、水は大切に扱うようにしている。
たわしでゴシゴシと皿の汚れを拭い、空の桶に放り込む。それが終わると、それらを水の入った桶にくぐらせて、皿洗いは完了だ。
桶の水は、網目の細かいザルでろ過しておく。数日間は、この水で洗うのだ。現代の感覚でいえば、汚いのだろうが、意外と水は汚れていない。そういう工夫がなされているらしい。
濡れた皿を、清潔な布で拭い、棚に戻していく。うん。綺麗になったものを見ると気分がいい。
食堂に戻ると、レイトン・ライデンが一人、酒杯を傾けていた。まだ、飲み足りないようだ。
「ご苦労様。悪かったね。片付けを任せてしまった」
「いえ、これぐらいは」
レイトン・ライデンに促され、藤堂七夜は椅子に座る。
本当なら、食事が終わった後、宿に戻り、荷物を片づけ、今日中に越して来るはずだったのが、それを提案した張本人、柳生宗不二は満足そうな顔で酔い潰れた。
彼を宿まで運ぶなどという、無謀な行為はしたくなかった。レイトン・ライデンに頼んで、今日は一泊させてもらい、明日は朝一で両福亭に戻るつもりだ。
「ところで、君の流派は何処だい?」
「......剣は、習った事はありません」
「その割には、釣り合わない刀を腰に下げているね」
あぁ。彼ぐらい凄い人だったら、気になるよな。
レイトン・ライデンの指差した先には、歌仙伝・蜃。やっぱり、自分には相応しくないよな、と苦笑しながら、この刀を手にした経緯を話した。
どうにも、レイトン・ライデンという人物には隠し事ができない。自然と話したくなってしまう、不思議な何かを持っている。そんな人物だ。
「......そうか。刀が君を選んだんだね。それで、その刀をどうするんだい?。厄介な連中を引き寄せてしまうような、そんな気がするんだけど」
「でしょうね。でも、手放すなんて事はできないし、結局、肌身離さず持っているだけです」
「なら、戦い方を学んだ方がいい。その刀を欲しいと思う輩は、これから出てくるだろう。その時、誰かが助けてくれる訳じゃない。最初も最後も、必要なのは、【自分の力】だ。君は、力を身に着けるべきだ」
「............そう、ですね。俺も、そう思います」
これは本心だ。この世界は、俺が思っている以上に、ずっと危険な世界だ。
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