憑かれて恋

香前宇里

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プロローグ

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閉ざされた障子越しから漏れゆく、男女の声。

「すぐにいかせて・ ・ ・ ・あげましょう」

 男の低く官能的な声は、女の身体を震えさせ、高みへと導いていく。

「もう駄目ぇぇ! 私イッちゃう、イッちゃう――――っっ!!」

 ――――なんて。

 三流エロ小説みたいな事が繰り広げられてるように見えますが。

栄慶えいけいさんっ、何やってるんですか!」

 スパンと勢いよく障子を開けた、私の目に飛び込んできたのは、先ほど高みへと導かれたであろう若い女性……と言っても、少し服は乱れているが裸ではない。

 そして気を失ってるようでピクリとも動かない。

 そんな彼女の姿を凝視する私に、男はニヤリと口角を上げながら答えた。

「見れば分かるだろう? ちょうど今、この者に憑いた霊を逝かせてやったところだ」

お経責め・・・・でな」

「表現間違ってますよ!!」


 ――ここはとある町の住宅街に佇む小さなお寺、斎堂寺。

 彼の名は永見栄慶ながみえいけい27歳、斎堂寺十七代目住職です。

 そして今しがた行われていたのは“御祓い”だったのです。
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